表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
哲学と私 あるいは、チンポジ博士の講義  作者: チンポジ博士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/104

無知のベールとは。

 無知のベールとは何か。


 その問いを出すと、博士は紙ナプキンに短く書いた。


 自分がどの立場になるか分からない状態で、ルールを考えること。


「見えないんですか」


「見えない」


「何が?」


「自分の立場だ」


 博士はコーヒーを飲んだ。


「無知のベールとは、哲学者ロールズが唱えた思考実験だ」


「思考実験ですか」


「そうだ。自分がどの立場になるか分からない状態で、社会のルールを考える」


「かなり大きいですね」


「かなり大きい」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分が誰になるか分からないまま、ルールを選べ。


「それが無知のベール?」


「そうだ」


「自分が金持ちか貧乏か分からない」


「はい」


「健康か病気か分からない」


「はい」


「多数派か少数派か分からない」


「はい」


「強い側か弱い側か分からない」


「はい」


「才能があるかないかも分からない」


「はい」


「その状態で、どんなルールを選ぶか」


「なるほど」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分が有利な席に座る前に、椅子の並べ方を決める。


「かなり分かりやすいですね」


「かなりチンポジだ」


「早いですね」


「近い」


「普通に考えると、人は自分に有利なルールを作る」


「そうですね」


「金持ちは金持ちに有利なルールを」


「はい」


「強い者は強い者に有利なルールを」


「はい」


「多数派は多数派に有利なルールを」


「はい」


「自分のベスポジを基準にパンツを作る」


「来ましたね」


「避けられない」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分の立場を知っていると、自分に寄せる。


「ありますね」


「ある」


「では、それを一度隠す」


「隠す?」


「ベールをかける」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 無知のベール。


「自分がどの立場か分からない」


「そうだ」


「すると?」


「どの立場になっても、ひどく困らないルールを選びやすくなる」


「公平に近づく」


「そうだ」


「たとえば」


 博士は紙ナプキンに丸をいくつか描いた。


「部屋に椅子がある」


「はい」


「一つだけ豪華な椅子」


「はい」


「一つだけ壊れた椅子」


「はい」


「残りは普通の椅子」


「はい」


「君は、どの椅子に座るか分からない」


「嫌ですね」


「その状態で、椅子のルールを決める」


「はい」


「壊れた椅子に座った者は我慢しろ、というルールを選ぶか」


「選びにくいですね」


「なぜ」


「自分が壊れた椅子に座るかもしれないからです」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 最悪の席に座るかもしれない。


「これが効く」


「強いですね」


「強い」


「では、全員同じ椅子にする?」


「それが公平では?」


「場合による」


「出ましたね」


「出る」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 同じ。

 公平。

 公正。


「混ぜるな」


「違うんですか」


「違う」


「全員に同じ椅子を配る」


「はい」


「だが、身体の大きさが違う」


「はい」


「怪我をしている者もいる」


「はい」


「長く座れない者もいる」


「はい」


「同じ椅子が、公正とは限らない」


「同じ処理が、公正とは限らないんですね」


「そうだ」


「全員に同じものを配ればよい、という話ではない」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 同じ処理が、公正とは限らない。


「では何を見るんですか」


「どの立場になっても、受け入れられるかを見る」


「なるほど」


「無知のベールは、優しさの話ではない」


「違うんですか」


「違う」


「思いやりでは?」


「近いが違う」


「では?」


「自分がどの席になるか分からない状態での合理性だ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 かわいそうだから助ける。

 自分がそこに座るかもしれないから設計する。


「違いますね」


「違う」


「前者は善意」


「後者は制度設計」


「そうだ」


「かなり重要ですね」


「かなり重要だ」


「ここでチンポジ哲学だ」


「来ましたね」


「君は、どのチンポジで生まれるか分からない」


「嫌な言い方ですね」


「だが通る」


「通るのが嫌です」


「続ける」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 自分がどんな身体か。

 どんな感覚か。

 どんな椅子が合うか。

 どんなパンツが合うか。

 事前には分からない。


「つまり?」


「自分がどのベスポジの人間になるか分からない状態で、ルールを考える」


「かなりロールズですね」


「たぶん怒られるが、かなり近い」


「では、その状態で全員同じパンツを履け、というルールを選ぶか」


「選びにくいです」


「なぜ」


「自分に合わないかもしれないからです」


「そうだ」


「では、強い者が好きに決める、は?」


「選びません」


「なぜ」


「自分が弱い側になるかもしれないからです」


「そうだ」


「では、多数派が全部決める、は?」


「怖いですね」


「なぜ」


「自分が少数派かもしれないからです」


「そうだ」


 博士はうなずいた。


「これが無知のベールの力だ」


「ただし」


「ただし」


「無知のベールも万能ではない」


「そうなんですか」


「そうだ」


 博士は紙ナプキンに書いた。


 何を隠すか。

 何を知っていることにするか。


「ここが難しい」


「なるほど」


「全員が何も知らなければ、何も決められない」


「はい」


「だが、自分の立場を知りすぎると、自分に寄せる」


「はい」


「だから、自分の個別事情は隠す」


「はい」


「でも、人間社会の一般知識は残す」


「難しいですね」


「ロールズだからな」


 博士は今日の答えをまとめた。


 無知のベールとは、自分がどの立場になるか分からない状態で、社会のルールを考えるための思考実験である。


 自分が金持ちか貧乏か、強い側か弱い側か、多数派か少数派か、健康か病気か、才能があるかないかを知らない。


 その状態で、どんなルールなら受け入れられるかを考える。


 自分の立場を知っていると、人は自分に有利なルールを作りやすい。


 だから一度、自分の立場にベールをかける。


 無知のベールは、単なる優しさではない。


 自分がどの席に座るか分からない状態で、それでも受け入れられる椅子の並べ方を考える技術である。


「博士」


「何かね」


「チンポジで言うなら?」


 博士は少し考えた。


「自分がどんなチンポジで生まれるか分からない」


「はい」


「どんな椅子が合うかも分からない」


「はい」


「どんなパンツが合うかも分からない」


「はい」


「強い側か弱い側かも分からない」


「はい」


「その状態で、部屋のルールを決める」


「なるほど」


「では、無知のベールとは?」


 博士は最後に一文を書いた。


 無知のベールとは、自分がどのベスポジに生まれるか分からない状態で、それでも履けるパンツのルールを考えることである。


「ロールズに怒られますね」


「たぶん怒られる」


「でも分かります」


「なら通る」


 博士は静かにコーヒーを飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※この作品は深掘りしたいなら全文を生成AIへ入力してください。
[宣伝][完結済]股間に聖剣があった ――分かり合えないと分かり合う哲学
チンポジ哲学が生まれる話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ