帰還
王都の門をくぐったのは、五日目の夕方だった。
見慣れた城壁に見慣れた門。
帰ってきた、という感じがした。
前よりも、強く。
「お帰りなさいませ」
門番が言った。
「ただいま戻りました」
言ってから、少し不思議な気がした。
以前は、この門をくぐる時にそう思ったことはなかった。
王都は使命の場所だった。戻るべき場所、ではなかった。
でも今日は、自然に声に出ていた。
ただいま戻りました、と。
シオンが「お腹すいたー」と疲れた声で言った。
「毎回それですね」
「毎回お腹すくでしょ」
「テオと同じですね」
「え、私がテオみたいってこと?」
「食欲については」
「それはちょっと傷つく」
レオンが「似てるな」と茶々を入れた。
テオが甲高い声を発する。
「仲間だ、と言っていますか」
「腹が減ったと言っている」
「今日は本当にそうだと思います」
「ああ」
一行は城へ向かって歩き出した。
翌朝、王への報告があった。
謁見の間で、エレナは魔王を倒したことを報告した。
王は長い間、黙っていた。
大臣は複雑な顔をしていた。
言いたいことがありそうだったが、今日は何も言わなかった。
王妃が静かに目を閉じた。
「よくやった」
王が言った。
「ありがとうございます」
「覚醒も、果たしたと」
「はい。完全かどうかはわかりませんが」
「よい」
王は私を見た。
いつもの目ではなかった。王の目ではなく、老いた父親が、子供を見るような目をしていた。
「お前の母親も、強い人間だった」
「皆、同じことを言います」
「皆が同じことを言うなら、そうなのだろう」
王が少し、口元を動かした。
「続けよ」
もう、何度も聞いた言葉だった。
だが、今日の言葉は今までと違った。
承認でも謝罪でも、任せるでもなかった。
ただ、生きろ、という言葉だった。
少なくとも私には、そう聞こえた。
「はい」
私は、頭を下げた。




