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勇者が二人  作者: にのぴ
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33/41

決着

 私は剣を納めたが 手が震えていた。


 今になって気づいた。

思えば、ずっと震えていたのかもしれない。


 光は消えていたが、剣は、まだ温かかった。


 足音がした。


 シオンが駆けてきて、私に抱きついた。


 「よかった」


 それだけ言った。声が少し震えていた。


 「ありがとうございます」


 レオンが来た。肩に手を置いた。ぽん、と一回。


 フィリアが来た。


 空き地の中心まで来て、ソラが立っていた場所を見た。


 何も言わなかった。


 しばらく、ただそこに立っていた。


 風が吹いて、葉が揺れた。


 フィリアは動かなかった。


 「フィリアさん」


 私が言うと、フィリアが振り返った。


 「伝言があります」


 フィリアは少し目を細めた。


 「ソラさんが言っていました。楽しかった、と」


 フィリアは長い間、黙って 空き地を見ていた。

ソラが立っていた場所を、ずっと見ていた。


 それからゆっくりと、目を伏せた。


 「……そうか」


 静かな声だった。

 三百年分の時間がその中にあった。


  宗一郎が来た。


 全員の後ろから、静かに前に出て、私の隣に立った。


 何も言わなかった。


 テオが肩の上で、強く光った。


 「テオ」


 私が言うと、テオが甲高い声をあげた。


 「頑張った、と言っていますか」


 宗一郎が少し間を置いた。


 「腹が減ったと言っている」


 間があった。いつもより、長い間だった。


 私は少し笑った。


 「帰りましょう」


 「ああ」


 「シチューを食べましょう。約束でしたから」


 「約束した覚えはないが」


 「言いましたよ、前に」


 「…そうだったな」


 シオンが「肉も食べたい」と言った。

レオンが「両方頼めばいい」と返した。

フィリアが「菓子屋にも行く」と続けた。


 テオがまた何か言った。


 「全部食べたい、と言っていますか」


 「腹が減ったと言っている」


 「今回は本当にそうですね」

 「ああ」


 一行が森を出た。


 空が広かった。


 雲一つない青空が広がっていた。


 私は歩きながら、剣を握った手を開いた。


 もう、震えは止まっていた。


 剣はまだ少し温かい。


 さっきまで光っていた剣は、今は元に戻っていた。

 でも確かに、変化を感じる。


 自分の中に魔族の血が流れていることを、今日初めて、呪いでも誇りでもなく、ただ自分のものとして受け取れた気がした。


 フィリアが言っていた。


ただの事実じゃ、と。


 今日ようやく、その言葉の意味がわかった。


 森を出たところで、私は振り返る。


 木々が並んでいた。


 朽ちかけていた木々の崩壊は止まっていた。

崩れずに留まっている。

その姿に私は生命を感じていた。


 生きること。

 食べること。

 言葉を紡ぐこと。 

 歩き続けること。


 そんな言葉が次々と頭に浮かんでは消えていく。


 私はざわめく森をいつまでも見ていた。


ここまでお読み頂きありがとうございます!


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毎日17:10更新です。

次回も見て頂けると嬉しいです!

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