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勇者が二人  作者: にのぴ
21/22

南への道中 二日目

 南への二日目の夜、一行は街道沿いの宿に泊まった。


 夕食を済ませた後、私は宿の外に出た。

夜風が冷たかった。

空には星が出ていた。


 しばらく一人でいると、足音がした。レオンだった。


 「外にいたのか」


 「少し風に当たりたくて」


 レオンは隣に立った。

空を見た。

しばらく、二人とも何も言わなかった。


 レオンとこうして黙って並んでいることは、子供の頃から何度もあった。

言葉はなかった。

それがこの幼馴染との距離感だった。


 「レオン」


 「なんだ」


 「怖いですか」


 「怖い」


 「どんな風に怖いですか」


 レオンは少し考えた。


 「お前に何かあった時に、俺が間に合わないことが怖い」


 「間に合わない」


 「お前が東部で負傷した時、俺はもう少し後ろにいた。もう少し前にいれば、防げた。そういうことが、また起きるかもしれない」


 私はレオンを見た。


 「あの時は、私が前に出すぎていました。レオンのせいじゃない」


 「それはわかっている。でも怖い」


 「怖さの理由がわかっていても、怖いんですね」


 「そうだ」


 エレナは空を見た。


 「レオン、一つ聞いてもいいですか」


 「なんだ」


 「昔から、私のそばにいてくれていますね」


 「そうだな」


 「なぜですか」


 レオンは少し間を置いた。


 「放っておけないから」


 「放っておけない、というのは」


 「お前は一人で抱えすぎる。昔からそうだ。抱えて、抱えて、折れる寸前まで抱えて、それでも顔に出さない。そういうお前が、放っておけない」


 私は少し黙った。


 「今も、そうですか」


 「今は少し違う」


 「どう違いますか」


 「今のお前は、人に頼れるようになった。宗一郎に欠点を直してもらって、シオンに隣にいてもらって、フィリアさんから話を聞いて。昔は全部一人で抱えていたが、今は違う」


 「変わりましたか、私」


 「変わった」


 「どう変わりましたか」


 レオンはしばらく黙った。


 「顔が、違う」


 「どう違いますか」


 「以前は、正しくあろうとしている顔だった。今は、ただそこにいる顔だ」


 私は少し考えた。


 「ただそこにいる顔」


 「うまく言えないけどな。以前は、勇者でなければならないという顔をしていた。今は、エレナという顔をしている」

 私は返す言葉が見つからなかった。


 「レオン」


 「なんだ」


 「ありがとうございます」


 「礼はいい」


 「でも言葉にしたいので」


 「……そうか」


 レオンは空を見た。


 「宗一郎さんに頼む、と言ったんですか」


 私が言うと、レオンが少し動きを止めた。

 「聞いていたのか」


 「聞こえてました」


 「驚いたか」


 「驚きました。でもありがたかったです」


 レオンは少し間を置いた。


 「言ったのはお前だけのためじゃない。俺のためでもある」


 「どちらでも、ありがたいです」


 「そうか」


 「レオンが言いたいことを、代わりに言ってくれる人がいる、ということが、私には心強いです」


 レオンはしばらく黙っていた。


 それから、短く言った。


 「……そうか」


 それだけだった。

でも私には、それで十分だった。


 「寒くなってきました。中に入りましょう」


 「ああ」


 二人で宿の中に入った。

食堂では、シオンがまだ何か食べていた。


 「まだ食べていたんですか」


 「お腹すいてたから」


 「夕食を食べたばかりですよ」


 「テオと同じって言ってたじゃん。代謝が高いんだよ、私も」


 テオが甲高い声で何か言った。


 「仲間だ、と言っていますか」


 「腹が減ったと言っている」


 「今食べているのに」


 「テオは常に腹が減っている」


 レオンが苦笑した。フィリアが紅茶を飲んだ。

私は席に着いた。


 外は寒かったが、食堂は温かかった。

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