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勇者が二人  作者: にのぴ
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幕間 レオン

 レオンがエレナのことを好きだと気づいたのは、かなり後になってからだった。


 子供の頃から一緒にいたから、最初は気づかなかった。

空気みたいなもので、ずっとそこにあるものは意識しない。

意識するようになったのは、エレナが剣を握り始めた頃だ。


 真剣な顔で剣を振っているエレナを見ているうちに、何かが変わった。

 変わった、とわかったのにしばらくかかった。

わかってからも、どうするかは決めなかった。

決める必要がないと思っていた。今でも、そう思っている。


 エレナには使命がある。


 勇者の使命を背負って生きている。その重圧を、レオンは子供の頃から見てきた。

見てきたから、自分が重荷になるべきではないと思っている。

エレナが抱えているものは、すでに十分重い。

そこに自分の感情を乗せるのは、違う気がした。


 だから黙っている。黙って隣にいる。それがレオンの答えだった。

川岸でエレナが指揮官を仕留めた時、レオンは少し後ろから見ていた。

腕で攻撃を受けて、それでも突き出した剣が届いた瞬間。


 胸が痛かった。


 腕で受けたことが痛かった。

しかしそれだけではなかった。

エレナがそこまでやれる人間になっていたことが、少し痛かった。

頼もしいと思った。

でも痛かった。


 矛盾しているとわかっていた。


 頭に手を置いた。ぽん、と一回だけ。

言葉は出なかった。出せなかった、というより、言葉にする必要がなかった。

エレナはわかっていた。それで十分と思ったから。


 帰路の夜、宗一郎に話しかけたことを、レオンはまだ考えていた。


 頼む、と言った。


 言えた、という感覚があった。言いたかったことを、言えた。

言葉が下手だと思っていた。でも言えた。

たった一言だったが、言えた。


 宗一郎は「わかった」と言った。

あっさりしていた。

でもその言葉が、本当のことだとわかった。

この男は嘘をつかない。

わかった、と言ったなら、わかったのだ。


 宗一郎に対して 嫉妬がないと言えば嘘になる。

その感情はある。でも嫉妬より大きいものがある。


 エレナが変わっていくのを、一番近くで見てきた。

その変化の中に、宗一郎がいる。

だとすれば、宗一郎はエレナに必要な人間だ。

必要な人間を、感情で遠ざけるのは違う。


 帰り道、少し後ろを歩きながら、レオンはエレナと宗一郎が並んで歩くのを見ていた。

二人の足音が、同じ速さで進んでいた。


 それを見て、レオンは少し目を伏せた。

伏せてから、また前を向いた。


 エレナが笑っていた。

シオンが何か言って、エレナが答えて、笑っていた。

子供の頃から知っている笑い方ではなかった。

もっと別の、今のエレナだけが持っている笑い方だった。


 それを見て、胸が痛かった。

でも同時に、よかった、と思った。

よかった、という気持ちの方が、少しだけ大きかった。

それでいい、とレオンは思った。


 ――それでいい。


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