03. 九死に一生の脱出 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
脱出艇が射出された瞬間、私は初めて「棺桶から蹴り出される」という感覚を理解した。
飛ぶんじゃない。
蹴られる。
小さな艇全体が、性格の悪い神様に掴まれて宇宙の奥へ適当に放り投げられたみたいに暴れた。シートベルトが肩に食い込み、背もたれに思いきり叩きつけられ、肺の空気が一瞬で全部絞り出される。視界が一秒、黒くなった。
……クソ。
もし私がこの先、投書する機会があるとしたら、第一通目は絶対に脱出艇の設計部門に送る。
この乗り心地、刑務所の鉄板ベッドより下だ。
艇が回転している。
左に半回転、そのまま後方の爆散衝撃波に押されて右へ弾かれ、警告灯が潰れかけのバーの閉店セール最終日みたいに狂った点滅を繰り返す。隣の連邦兵は、一人が乾いた嘔吐を繰り返し、一人が祈りを捧げ、もう一人は頭でも打ったのか、固定バーを抱えながら「お母さん、ちゃんと勉強します」とぶつぶつ言っていた。
……そうか。
今頃いい子になろうとして、少し遅くないか。
私は何とか首を横に向けて、大学兵がまだ生きているか確認した。
彼は私の右隣に座っていた。シートベルトが胸を斜めに押さえ、呼吸が荒い。割れたレンズはもうどこかへ飛んで行ったらしく、眼鏡がない。眼鏡がなくなると、眉骨、目尻、さっき熱線に掠られた焦げ跡まで、全部が妙にはっきり見えた。
正直に言う。
この距離は、普通の戦友に許容される社交的な安全圏を、だいぶ超えている。
ただ今の脱出艇は缶詰みたいに狭いから、文句を言える立場でもない。
彼が視線に気づいたのか、こちらに顔を向けた。
「生きてますか」
私は目を回した。
「がっかりさせてごめんね」
「いや」彼は息をついて、口の端をわずかに動かした。「さっき一緒に死にかけたのが無駄じゃなかったか、確認したかっただけです」
「安心して。あなたは得した」
私は口の端についた、自分のものかどうかも分からない血を手の甲で拭った。
「あの規模の集団自滅型戦術、毎日見られるものじゃないから」
「できれば一生見たくなかったです」
「それなら図書館に行くべきだった。前線に来るべきじゃなかった」
彼は低く笑った。
本当に、変なやつだ。
さっきまで艦橋で私と一緒に命を賭けて、今は内臓がスムージーになりかけているのに、まだ笑える。普通、こういうやつは神経が太いか、私から何か良くないものを感染させられたかのどちらかだ。
後者の確率が、どんどん上がっている。
脱出艇の自動安定システムがようやく機能を取り戻し、激しい回転がゆっくり収まった。前方の小型観測窓から外の景色が正位置に戻り、私はあの帝国巡洋艦の姿を初めてちゃんと見た。
……うわ。
近くで見ると、本当にひどい。
普通のひどさじゃない。
軍事アカデミーの新入生に見せたら、教官が五秒間黙ってから「諸君、これが主炉と推進器に狂人を近づけてはならない理由だ」と言い出すレベルのひどさだ。
あの巡洋艦は、完全に真っ二つになっていた。
前半分の艦体はまだ主構造をいくらか保ったまま、自分がもう死んでいると気づいていない巨獣みたいに、長い火の尾と破片を引きずって前へ滑り続けている。後半分はもっと直接的で、ほとんど全部が崩れていた。内部の爆発がまだ層になって外へ捲れ続け、減圧噴流が炎、残骸、それから細かく見ない方がいいものと混ざりながら、断面から吐き出され続けている。
ときどき、緊急脱出ポッドが破孔から弾き出されるのが見えた。
成功したものもある。
弾き出された直後に、飛散した装甲板や高熱破片に直撃されて発光するゴミになったものもある。
残酷だ。
でも戦場はそういうものだ。みんな生きたがっている。ただ、生き残るのが少し遅かった人がいるだけだ。
さらに遠くでは、連邦艦隊がその隙間に食い込んでいた。
さっきまで帝国に押し込まれていた第二艦と第四艦が、自分にも怒りがあることを突然思い出したみたいに、主砲を一斉射撃、また一斉射撃と、帝国の中段防線に叩き込み続けている。第一艦が巡洋艦を仕留めた光束が散えてから間もなく、次の副砲群が射界を修正し、残骸回避で姿勢が崩れた帝国艦の側面を狙い始めた。
帝国は崩れていない。
それは良いことだ。
あれぐらいで全線崩壊するなら、私は自分が知能の低い教育モードと戦っていたのかと疑い始める。
向こうはまだ退き、防ぎ、立て直している。
ただ、主導権がもう向こうにはない。
戦場というのは麻雀に似ている。どれだけ順調に牌を引いていても、いちばん肝心なところで誰かにテーブルをひっくり返されたら、その後の数巡は全部崩れる。
そして今しがたテーブルをひっくり返したのは、残念ながら私だ。
そう思ったら、少し気分が良くなった。
「逆転しましたね」
大学兵が低く言った。
私は前方に交錯する砲火と翻転する艦影を眺めながら、鼻腔に残る脱出艇の焦げたプラスチック臭の中で、二秒ほど経ってからゆっくり答えた。
「まだ言い切るな」
「いつもは断言するじゃないですか」
「それは私が締めるときじゃないときの話」
一拍置いて、付け加える。
「それに、連邦が一番得意なことは、あと少しで勝てるところで自分から転ぶことだから」
「……それは説得力がありますね」
「でしょ」
艇の中の連邦兵の一人が、ついに震えた声で口を開いた。「ぼ、僕たち、これは成功ですか?」
私は横目で見た。
顔にまだ誰かの血がついているのに、目だけが人生初の大当たりを引いたみたいに輝いている。正直、前線でこの顔は危ない。早めに喜ぶやつは、だいたい早めに死ぬ。
「まあ、そうかな」
私は言った。
「ただし、今すぐ武勇伝を語り始めないことが前提で」
「え?」
「今ここで自分がすごいと思い始めたら、宇宙は大抵その次の瞬間に授業をしてくれる」
「……」
「だから私みたいに、低く構えておけ」
大学兵がそれを聞いて、思わずこちらを向いた。
「『低く構える』という言葉に、相当深刻な誤解がありませんか」
「ないよ」私は顔色ひとつ変えず言った。「あの規模の衝突から生きて出てきて、まだ控えめじゃないって言う?」
「全然」
「うるさい」
彼は笑った。
今度は、さっきより少しはっきりと。
眼鏡がなくなると、普段の「教授の資料整理を手伝っていそうな文弱感」がかなり薄れる。今は髪が乱れ、襟元が緩み、耳の横に熱線が掠めた焦げ跡が残っていて——なんというか、妙に、まずい「戦損感」がある。
クソ。
この世界はどうなっているんだ。
普段は教務課の回覧文書みたいなのに、一戦終えたら突然ライトノベルの表紙に出てくる「誤解させる系の男性キャラ」になるやつが存在するのか。
私は視線を外に向け、外の残骸帯を見ているふりをした。
逃げているわけじゃない。
外の方が安全なだけだ。
うん。
少なくとも、向こうから目が合ってくることはない。
「なぜ戻ってきたんですか」
彼が突然言った。
私は自分の唾液でむせそうになった。
「は?」
「最後の帝国兵のことです」
口調は静かで、技術的な確認でもしているみたいだ。
「先に躱すか、誰かに補射させることもできたはずです。それなのに、直接飛んできた」
……こいつ、何か病気か。
戦闘後の最初の行動が、自分の手足が全部揃っているか確認することでも、連邦が勝ったかどうか確認することでもなく、こういう面倒な質問をすることなのか。
私は眉をひそめた。
「言ったじゃないですか。あなたが帝国語を読めるから」
「それだけですか」
「他に何があるの」
彼は私を見た。
何も言わない。
ただ、見ている。
眼鏡がないと、この人の目が本当に厄介だ。鋭いわけじゃないのに、こちらが強がっているのをあまりにも分かりやすく映してくる。
見られているのが鬱陶しくなって、私は先に口を開いた。
「それに、あなたが死んだら、誰が報告書を書くの?誰が操作台を見るの?誰が帝国語を訳すの?この艦でのあなたの機能性、かなり高かったんだけど、大学兵」
「なるほど。機能性が高いだけですか」
「他に何だと思ってたの」
彼は半秒、黙った。
それから、ごく静かに言った。
「少しぐらい、惜しいと思ってくれてたのかなと」
……クソ。
その一言は、反則だ。
さらっと流すように言われる言葉の方が、よっぽど性質が悪い。
耳の根元がまたじわっと熱くなった。
脱出艇の照明が乱れていて、良かった。たぶん、そんなに分からない。
たぶん。
「考えすぎ」
私は正面を向き直し、わざと不機嫌そうに聞こえるように声を整えた。
「稀少な資源を無駄にしたくなかっただけ」
「そうですか」
「そうです」
「……なるほど」口の端がまた少し上がる。「一貫して強情ですね」
「今から蹴り出すよ」
「理論上、スペースが足りないので無理です」
「……」
クソ。
口答えを覚えてから、本当に面倒くさい。
しかも笑いたくなってくるのが、さらに面倒くさい。
脱出艇の航法システムが低く唸り、航路をわずかに修正して、外から転がってくる装甲残骸を避けた。その破片が観測窓を掠めた瞬間、ガラスにぼんやりと自分の顔が映った。
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