03. 九死に一生の脱出 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
髪が犬に噛まれたみたいに乱れている。
耳の横にまだ血がある。
顔は灰色と赤が混ざって、地獄の撮影現場から無断欠勤して帰ってきたみたいだ。
正直に言って、誠実なほど醜い。
私は思わず舌打ちした。
「クソ」
「どうしましたか」
「今、絶対ひどい顔してる」
大学兵は一瞬、固まった。こんなタイミングでそういう結論が出てくるとは思っていなかったらしい。
「……本気で言ってますか」
「当たり前でしょ」
私は張り付いた前髪を手で払おうとして、そのまま乾いた血の塊に触れた。感触が最悪で、いっそ一束ごと切り落としたくなる。
「さっき脳漿、血、冷却液、灰埃が全部一気に飛んできたんだけど。今頃毛先が廃棄ケーブルみたいに絡まってるはず。耳からは血が出てる。顔に焦げ跡もあるかもしれない。この状態で写真でも撮られたら、もう一回撞船した方がマシ」
彼は二秒ほど私を見た。
それから、真面目な顔で言った。
「大丈夫ですよ」
私は眉をひそめた。
「何が」
「そんなに悪くない」
「慰めてるの?」
「事実を述べているつもりです」
私は目を細めた。
「一回死にかけてから、急に度胸がついた?」
「そうかもしれません」
一拍置いて、彼は付け加えた。
「あとは、眼鏡がないので細部まで見えていない、というのもあります」
「……殴られたい?」
彼は今度こそ、声に出して笑った。
周りの連邦兵は、まだ魂が半分抜けたような顔をしているのに、何人かがそっとこちらを盗み見た。表情は「この二人、何か病気なのか」と「こんな状況でまだ痴話喧嘩する余裕があるのか」の中間あたりだ。
私は即座に睨みつけた。
見るな。
もう一度見たら、観覧料を取る。
外の戦況は、まだ動いていた。
連邦艦隊は明らかに持ち直した。
持ち直しただけじゃなく、逆に食い返し始めている。帝国側翼で包囲の口を閉じようとしていた何隻かが、巡洋艦を失ってから、全体的に動きが慎重になった。怖いんじゃない。用心せざるを得ないのだ。今の彼らは、連邦の主力、残骸帯、火力軸、そして「また別の友軍のはずの艦が突然狂って突っ込んでこないか」を同時に警戒しなければならない。
この種の心理的圧力は、数字にしにくい。
でも、使い勝手がいい。
怖いと思った瞬間、人は半拍遅れる。
戦場では、半拍が命取りになる。
遠くで帝国の艦が一隻、連邦の副砲に側舷を咬まれた。外装甲が鮮やかな青い火花を散らして弾けた。致命傷じゃないが、陣線全体がわずかに後退した。
私は背もたれに身を預け、ようやく少し力を抜いた。
力を抜いた瞬間、痛みが全部戻ってきた。
肩が痛い。
肋骨が痛い。
耳が痛い。
いつの間にか、太腿も打撲していた。
全身が一度バラされて、組み直されたみたいだ。しかも二本ネジが足りない、安物の組み直し方で。
「……っ」
息を吸い込んだ。
大学兵がすぐに振り向いた。
「どこが痛いですか」
この聞き方が、妙に自然すぎた。
自然すぎて、一瞬頭が止まった。
待って。このセリフって、もう少し静かで、もう少し雰囲気があって、できれば照明も柔らかい場所で言われるものじゃないの?外ではまだ砲撃が続いているんだけど、こういうことを言われると心拍数の調整が難しい。
「全部」
私は正直に答えた。
「特に肩。あと肋骨。あと、自尊心」
「自尊心も痛くなりますか」
「さっきあなたの前で、飛んで、転がって、壁に激突して、血を流して、髪もこの状態になったんだけど。どう思う?」
「……そこは私には手当てできません」
「分かってる」
彼は私を見て、何か言おうとして、最後は低く「うん」とだけ言った。
大した音じゃない。
なのに、なぜかさっきの砲撃より集中力を奪われる。
私は苛立って、頭を後ろに倒した。
クソ。
戦争って本当に嫌だ。
他人の血を浴びて、人を真っ二つにして、何百メートルもある鉄の棺桶が宇宙で解体されるのを見るだけじゃ足りなくて、一番みっともなくて、一番認めたくない瞬間に、まあまあ悪くない大学兵を隣に放り込んで、心拍数を艦隊砲撃の発射表より乱させてくる。
こんな設計、全然必要ない。
本当に、全然。
「どうかしましたか」彼が聞いた。
私は口をへの字にした。
「別に」
私は外の、私たちが潰した帝国巡洋艦の残骸を眺めながら、心の中でゆっくりと結論を出した。
「ただ、一緒に狂ったんだから、せめてお互いの墓石に何を刻むか、知っておいた方がいいかなと思って」
彼は半秒、静かになった。
それから笑った。
今度の笑みは薄かったけれど、さっきまでのどれより、生きている人間の笑い方だった。
「いいですよ」
彼は言った。
「じゃあ、自分の名前もちゃんと刻んでくださいよ」
私は白い目を向けた。
「任せて」
後頭部を座席に預け、脱出艇のエンジンが低く震えるのを聞きながら、外では連邦の砲火が一輪ずつ戦況を取り戻し、帝国の残艦が火の尾を引いて後退していくのを眺めた。
「私みたいなのは、死んでもそんなに長くは醜くない」
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医療艙の匂いは、いつだって「文明社会が自分は屠殺場じゃないと言い張るときの匂い」だ。
消毒液、オゾン、焦げたプラスチック、それから甘ったるい止血ゲルの臭い。全部が混ざり合って、長く嗅いでいると「連邦は患者に『やっぱり戦場で死んだ方が早い』と思わせるために、わざとこんな臭いにしているんじゃないか」という気分になってくる。
私は検傷ベッドの上に座り、自動医療アームに頭を固定されていた。
耳の横の傷口が洗浄されたばかりで、冷たい無菌液が首筋を伝って流れ落ちていく。痒くて、罵倒したい気分だ。肩も固定し直されて、脇腹を押すと鉄釘が骨の隙間に残っているみたいに痛い。要するに、全身が色々な方法で「おめでとう、また生き延びたね、請求書は後で」と伝えてきている。
ありがとうございます。
「動かないで」
目の前に立つ軍医は顔も上げずに言った。声が三日死んだ教科書みたいに平らだ。
「右耳外側、裂傷三点二センチ。肩部重挫。肋骨軽度骨折の疑い。軽い脳震盪もあり。また動いたら縫い目が曲がっても知りませんよ」
私は目を細めて彼を見た。
「まるで私が自分から顔を戦艦にぶつけに行ったみたいな言い方ですね」
軍医がようやく顔を上げた。
「戦闘記録には、敵艦に対して衝突機動を行ったと記録されています」
「船が突っ込んだんです。私の顔じゃなくて」
「結果は大差ないですが」
「全然違います」
私は口で言い張りながら、隣の大学兵——正確には、まだ生きている大学兵——が小さく笑うのを聞いた。
即座に睨んだ。
「何が面白いの」
「いえ」彼は一方の手に、どこから調達してきたのか温かい飲み物を持ちながら立っていた。外套の肩口が一か所焼け落ちていて、割れた眼鏡は医療艙で配給された透明の視力補正具に替わっている。全体的に少し片付いてはいるが、戦場から這い上がってきた雰囲気は隠しきれない。「軍医と『顔で突っ込んだかどうか』を議論している人を、初めて見ました」
「見識が狭かっただけ」
「今日、色々と広がりました」
私は冷たく鼻を鳴らして、前を向いた。
本当に嫌だ。
このやつは今、妙に面倒くさいリズムを掴み始めている。はっきり口答えするわけでもなく、わざと逆らうわけでもない。ただ平たく一言を放り込んで、こちらの一番認めたくない部分にきっちり当ててくる。
さっきのセリフも。
さっきの笑いも。
全部、殴りたい。
医療アームが二本の針先みたいな固定クランプを伸ばし、耳の傷口をそっと開いた。
次の瞬間、滅菌光線が照射された。
私の全身が、反射的に強張った。
「……っ」
クソ。
これは本当に痛い。
大きな痛みじゃない。細くて、熱くて、刺さる痛みだ。嘘をつく人間を専門に攻撃するために作られたみたいな種類の痛みで、叫ぶほどじゃないと思っているのに、身体は正直に縮む。
隣の人間がそれを見ていたのは、明らかだった。
次の瞬間、あの面倒くさい大学兵が、ごく平静な声で言った。
「さっき、かすり傷って言いませんでしたか」
私は無表情で答えた。
「言いました」
「今、ベッドの縁を掴んでいますが」
私は下を見た。
……本当に掴んでいた。
しかも、かなり強く。
私はすぐに手を離し、何もなかったふりをした。
「正常な反射反応です」
「はあ」
「その『はあ』、全然誠意がないですね」
「同情が必要かと思いまして」
「同情はいらない。鎮痛剤が欲しい」
軍医が割り込んだ。
「さっき断りましたよね、鎮痛注射」
私は二秒黙った。
「……あのときは、ここまで痛いと思っていなかった」
「次からは、自分の根性を過信しないことをお勧めします」
「連邦が先に医療機器の設計を改善してくれれば、過信する必要もないんですが」
軍医は私を無視した。たぶん、前線の傷病兵を診すぎて、「狂人が自分で喋り終えるまで待つ」という悟りの境地に達しているのだろう。
私は縫合されながら、なんとか意識を別のところに向けようとした。
それから、また不覚にも隣の人間を見てしまった。
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「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




