19.格闘艇訓練 6
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私は友軍機の逃走ルートを見つめ、それから手を上げて、外側へ大きく膨らむ、醜い弧を描いた。
「まずは助けに行かない。」
「外側から遠回りして、見捨てたように見せる。」
「咬みついてる敵に、私が間に合わないと判断させて、注意をもっと友軍機に押し込ませる。」
J.J.が小さく笑った。
「それで?」
「で、直接あいつを撃たない。」私は遠方の戦艦の主砲旋回を見た。「あいつの想定ルートを潰す。友軍機の真正面で、さらに半秒だけ追わせる。」
「その半秒で、友軍機は機首を戦艦砲線の縁に滑り込ませられる。」
「そのとき奴は、追っているんじゃない。自分から撃たれに行く。」
通信が半拍、沈黙した。
それからJ.J.が、短く柔らかい口笛を吹いた。
「やっぱり可愛げがない。」
「ありがとうございます。頑張ってます。」
遠心艙が一気に引き上げられた。
6.3。
視界が一瞬、真っ暗になった。
気絶ではない。
視野の端が正直に告げてきた——お嬢さん、今の血圧で長台詞は無理です、と。
同時に神経接続ポイントから、軽いが苛立たしい振動が伝わる。零式が零式なりのやり方で「姿勢、姿勢、姿勢、これ以上崩れたら一緒に壁に突っ込むぞ」と警告しているようだった。
額の生え際まで汗がにじみ、歯を食いしばりすぎて顎が軋んだ。
今度はすぐには問題を出さず、J.J.が先に口を開いた。
「今君が感じているのは、機体そのものじゃない。機体の『傾向』だ。」
私は一度瞬きをして、必死にピントを戻した。
「……傾向?」
「そう。」J.J.の声は早口のままだが、珍しく純粋な悪ふざけが引いていた。「零式は小さい。速い。姿勢が攻撃的だ。でかい機体みたいに、操縦ミスを肩代わりしてはくれない。無理に修正しようとすれば、一緒に壊れに行く。」
画面の前方で、零式の模擬機体が激しくロールしている。
本当に感じ取れてしまう。それがまだ切り込みたがっていること、まだ咬みつきたがっていること、まだ前へ出たがっていることが。
言葉じゃない。
本能だ。
J.J.が低く笑った。
「わかったろ。こいつはお利口さんには向かない。」
……結構だ。
乗り物にまで人格矯正を勧められている。
第二問が叩きつけられた。
「主武装がオーバーヒート、左側推進損傷、敵機の方が速い。」
画面が切り替わる。今度はもっと近く、もっと混んでいる。
「前方はデブリ雲、後方に二機、真上には味方艦の副砲火網。」
J.J.の声はやたらと明るかった。
「さあ、この局面をどれだけ汚くできるか見せてくれ。」
私はそのデブリ雲を見つめながら、呼吸がどんどん重くなっていくのを感じた。
普通の人間なら逃げる。
少なくとも、逃げようとしているフリをする。
だがここ数日で、ここの化け物じみた教官たちは、私をどうしようもない段階まで訓練してしまった。
今の私の一番最初の発想は、「どう安全に抜けるか」ではない。
「どうやって後ろの二機も一緒に巻き込むか」だ。
「デブリ雲に突っ込む。」私は言った。
J.J.が即座に被せる。「ありきたり。次。」
……本当に鬱陶しい男だ。
私は画面を睨み、頭の中で再び一本の線が勝手に走り出した。
「隠れるために突っ込むんじゃない。」私は言い直す。
「制御を失ったフリをするために突っ込む。」
「後ろで一番せっかちな奴に、最初に食いつかせる。」
「ほう?」J.J.が笑った。
「左推進がもともと死んでるなら、姿勢が汚くても不自然じゃない。」
「そこまでなんとか持たせて——」
私はデブリ雲の一番濃い部分に、角度を一つ刻んだ。
「——ここで姿勢制御を一系統切る。失速ロール気味の挙動をわざと出す。後ろの奴が深追いしてきたら、本能的に内側へ絞り込んで、最後の射角を取りに来る。」
J.J.の笑いが、さらに濃くなる。
「で、君は?」
「立て直さない。」私は息をつき、喉の奥に再び苦みが上がるのを感じた。
「零式に、もっと落ちさせる。」
「落ちて味方艦の副砲火網の判定境界ギリギリまで行ってから、残った右推進で横っ飛びに弾き出る。」
私は指先で一閃し、その軌道をカーブした刃のように描いた。
「後ろの一機が欲張りすぎると、デブリ雲と副砲火網のあいだに挟まる。ぶつかるか、撃たれるか、どっちか。」
今度はJ.J.があからさまに吹き出した。
「星野、一つ自覚してるか?」
「何をですか。」
「君、本当に『あと少しで勝てる』っていう欲に人を殺させるのが大好きだよね。」
私は一秒だけ黙った。
……くそ。
腹立つほど図星だ。
反論しかけた瞬間、遠心艙が第三段階に切り替わった。
6.8。
その瞬間、魂と胃袋をまとめて連邦に献上しかけた。
全身が椅子に叩きつけられ、画面が一気に灰色に褪せ、耳の中で世界全体が高速脱水にかけられたみたいな轟音が鳴る。
喉が締まり、危うくその場で終わるところだった。
「袋は右手側。遠慮はいらない。」J.J.が、実に手慣れた声で促す。
「……黙ってください……」
「いいね。罵倒できるうちは、まだ脳に血が行ってる。」
今なら本気で殺せる気がした。
残念ながら手足は固定されている。唯一有効な攻撃手段のはずの言葉も、G値の前では私の将来の道徳観より薄っぺらい。
前方の画面が再度切り替わる。
今度は戦術図ではない。簡易版の零式操縦インターフェースだ。姿勢指標、推進量、ベクターノズル修正、敵機フレームが一斉に立ち上がる。神経連結がさらに一段深く圧し込まれる。
そして、突然「わかって」しまった。左へのスリップをどう修正すべきか。
考えたわけではない。
身体が先に知っていた。
零式が、自分の癇癪持ちの性格を、少しだけ貸してくれたみたいに。
反射的に修正行動を取る。
右手をほんの少し絞る。
左肩をわずかに引く。
呼吸を短く切る。
今にも私をスピンへ引きずり込もうとしていた力を、真正面から拒まず、横へ受け流す。
画面の中の機体姿勢が、ほんのわずかだが、本当に安定した。
J.J.の声から、初めてあからさまな冗談が引っ込んだ。代わりに、ちゃんとした熱が滲んだ。
「そう、それだ。」
「機体と喧嘩するな。」
「馬に乗ってるんじゃない。機嫌の悪い狂人と交渉してると思え。」
……ありがとう。
その比喩、腹が立つくらいにわかりやすい。
私は歯を食いしばったまま、次の姿勢修正もどうにか切り抜けた。
二度目。
三度目。
別に格好よくはない。
でも死んでいない。
警告音が短く鳴って、すぐにグリーンのインジケーターへ変わった。
基礎神経連結同期率:合格
姿勢修正許容範囲:可
高G戦術判読:異常高値
「合格」に安堵する暇もなく、遠心艙が減速を始めた。
高Gから解放される感覚は、むしろさっき以上に気持ち悪い。
胃が突然、「本当は言いたいことが山ほどある」と思い出したかのように、全力で意見を主張し始める。
視界が元の明るさを取り戻したとき、頭の中に残っていた願望は一つだけだった。
結構。
今「将来の目標は何か」と聞かれたら、真摯にこう答える。「とりあえずここで吐かないこと」と。
艙門が開いた。
冷たい空気が流れ込んだ瞬間、本気で泣きそうになった。
J.J.は外に立ち、腕を組み、「面白いおもちゃ」を見つけた子供そのものの顔で私を見下ろしていた。
「いいね、小魚ちゃん。」彼は身を屈め、火を点けそうなほど明るい目で私を覗き込んだ。「第二ラウンドでも頭が回ってる。大したもんだ。」
私は背もたれに凭れたまま、舌がちゃんと仕事を思い出すまで二秒かかった。
「教官が……そんなに楽しそうに笑うと……」
「どうした。」
「私の苦しみが……本当に鑑賞用なんだって……思えてくるんですけど……」
J.J.が一度瞬きした。
「『思えてくる』じゃない。」彼は笑って言った。「その通りだ。」
……吐き気が増すほど正直だ。
本日のテーマにふさわしい。
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