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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
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16. 水中爆破処分訓練 3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

そのあとで、彼は俺をシミュレーターの中に連れて行った。


ドアが閉まる音は鈍かった。


「バタン」ではない。


分厚い金属同士が嚙み合う、低い「ゴウン」という音。


一度閉まると、外の世界は切り離される。


艙内の光は弱く、床と壁沿いに走る数本のガイドライトだけが見える。中央には半開放式の作業プラットフォーム。その横に、モード切り替え可能な圧力セクションが三つ。その最奥に、巨大な液体シミュレータタンクがあった。壁は強化透明素材で、中の水は不自然なほど黒い。まるで夜そのものを注ぎ込んだような色だ。


ドアのすぐ内側に立ち、一瞬、本気で引き返したくなった。


水が怖いわけじゃない。


この静けさが、「人を丸ごと飲み込む何か」にしか思えなかった。


レナードは制御卓の前に立ち、変わらぬ平坦な声で言った。


「今日は爆破を教えない」


俺は一瞬、固まった。


「は?」


彼は俺を見る。


「今日は、急いで爆破しないことを教える」


……「今日は何かを爆破する」より、この一言のほうがずっと怖い。


レナードは端末を操作し、前方の艙壁にミッションブリーフィングが投影された。


目標:敵前線水中通信/補給中継ステーション 条件:単独潜入、通信制限、酸素配給二十七分 任務:目標を九十分以内に作業不能にし、かつ故障を内部事故として少なくとも三十分間誤認させること


読み終えて最初に思ったのは「難しすぎる」ではなく、「これは爆破の授業じゃない」だった。


これは——


「濡れ衣の授業だ」思わず口に出る。


レナードは俺を見て、淡々と言った。「よい。お前が二つ目に学ぶことだ。本当に価値のある破壊は、音を立てない」


手を上げ、シミュレーションプールの向こう側の施設内部図を呼び出す。


「敵に、自分がいつから死に始めたか分からせないことだ」


思わず息を飲んだ。この授業の内容は、精巧に気持ち悪い。


レナードが道具を配り始めた。


低出力ブレイクチャージが三本。


管路粘着カッターが一組。


信号遅延パッチが一枚。


圧力センサーの故障に偽装できる小型干渉コアが一つ。


その道具一式を眺めながら、これまで「爆破の専門家」に抱いていたイメージが、いかに浅かったかを思い知る。


本当の高級な「壊し方」は、大きな場面じゃない。炎が空を焦がすわけでもない。主人公が爆発を背に歩くわけでもない。


敵の腹の中にほんの少しの「誤り」を仕込んで、静かに立ち去る。あとは彼らが自分で、封艙手順、誤判断、誤修理、対応の遅れの中を歩みながら、施設全体を一歩一歩棺桶に送り込む。


レナードが最初のブレイクチャージを渡してきた。


「目的は見せることじゃない」


彼は言った。


「相手が死ぬ直前まで、まだ何とかなると思わせることだ」


……了解した。この授業は「危険」を超えて、「心理的外傷教材」の領域に入った。


---


実習が始まると、艙内の照明がさらに一段落ちた。


シミュレーションプールの警告灯が一度点滅し、黒い水の中に施設外壁の輪郭がゆっくりと浮かび上がった。完全な大型基地ではなく、一部のモジュールだけだ。外殻、点検ハッチ、サイドパイプ、センサー杭、二本の模擬輸送ライン。教官が一人の自尊心を上品に壊すには十分な構成だ。


レナードの最初の指示はシンプルだった。


「入って、九十分後に崩壊が始まる三つのポイントを探せ」


黒い水を見つめる。


「探すだけで、爆破はしない?」


「探すだけだ」レナードは言う。「爆破できる人間は多い。いつ爆破しないべきか知っている人間のほうが、価値が高い」


呼吸器を装着し、プラットフォームの端に立って、深い黒を見下ろす。


波はない。音もない。恐怖を貯めるために掘られた井戸みたいに、静かだ。


俺はこういう場所が嫌いだ。汚さでも暴力でも、顔面に向かって直接拳を振ってくる類いの嫌さじゃない。もっと陰湿だ。足を踏み入れた瞬間から、世界が人間の論理で動くのをやめる。


「星野」レナードの声が通信に入る。「何を見ている?」


水面を見つめたまま、正直に答える。


「今日の死に方が美しくないかどうか、確認してます」


「違う」


白目を剥きたい。


「では、ご教示ください」


「入口を見ろ」彼は言う。「怖いと思ったとき、まず入口を見ろ。一番暗い場所ではなく、どこから入れて、どこから出られるかを見ろ」


少し固まった。この言葉は変だ。戦術のように聞こえない。生存の習慣のように聞こえる。黒い水の中に本当に長くいた人間が、最初のルールとして絞り出したような言葉。


余計なことは言わず、深く息を吸って、飛び込んだ。


冷たい。普通の冷たさじゃない。入った瞬間、皮膚も、鼓膜も、後頭部も、歯の根まで、同じ低温に一斉に触れられるような冷たさ。


呼吸器が動き始め、耳に残るのは自分の吐息だけになる。黒い水の中では視界が短く刈り込まれ、ライトを当てると、むしろ「見られたくないもの」を照らしているような感覚がした。


施設の外壁に向かって泳ぎ、グローブが金属表面に触れたとき、最初の感触は「硬い」ではなく「滑らか」だった。薄い粘着質の冷たさが表面に張りついているみたいだ。


前方に三つのルートがある。


点検ハッチ。側面パイプの中間層。下部の循環ポンプ外殻。


普通なら点検ハッチを選ぶ。ドアみたいだから。物語の主人公が進むべき場所みたいだから。


だから俺は一秒止まって、下へ向かった。


通信でレナードの声が入る。


「理由は」


ポンプ外殻と配管の接続部をライトで照らしながら答える。


「点検ハッチは、『答えとして見せるための場所』に見えるから。本当に何かが起きたとき、最初の修理班が必ず向かうのはあそこです。崩壊を遅らせたいなら、最後まで疑われない場所から動かすほうが得です」


レナードはすぐには返さなかった。彼の教授スタイルでは、これはおそらく「続けろ、まだ止めるほど馬鹿なことはしていない」という意味だ。


下部を探りながら、最初のポイントを見つけた。


メインポンプではない。メインポンプの隣にある、目立たない圧力差補正管だ。


手でマーキングの仕草をする。


「ここです」俺は言う。「わずかな誤差を出させる。短時間では止まらないが、徐々にシステム全体の圧力差を歪ませる。最初はセンサーの誤作動か局所的な詰まりだと思われる」


「次は」


さらに前へ進み、施設の側面を回り込んで、通信ケーブルバンドルが外殻に入る直前の保護ボックスを見つけた。


「ここが二つ目です」俺は言う。「メインの通信を切るんじゃない。バックアップ伝送を遅延させる。警報は出せるが、精度が落ちて、返答も遅れる。これが一番えぐい。中の人間はまず機器を疑い、次に互いを疑い、最後に自分たちが攻撃されていることを疑う」


水の中が一瞬静まり返った。それからレナードが言う。「三つ目」


その場で止まり、ライトで外殻の継ぎ目を照らす。


メインハルは駄目だ。早すぎる。点検ハッチも駄目だ。目立ちすぎる。


最終的に視線が止まったのは、サイドコンパートメントの下部にある、普段は誰も二度見しない緊急排圧弁座だった。


ほぼ同時に、理解した。


「……ここです」


「理由は」


その弁座を掴んで、少し心拍が上がった。


「もし前の二点で彼らが動き始めていたら、最後にここを最悪のタイミングで詰まらせれば、封艙手順が半分しか機能しなくなる」俺は言う。「中の人間は事故を隔離しているつもりで、実は事故を育てている」


通信の向こうで二秒、沈黙した。それからレナードが言った。


「上がれ」

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「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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