16. 水中爆破処分訓練 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
地下第七層のドアが開いた瞬間、まず嫌な匂いがした。
消毒液じゃない。
機械油でもない。
カールのあの「金属で人を殴り続けた工業的暴力の匂い」でもない。
湿気だ。
ごく薄いのに、やけに現実味のある湿気。もともとこのクソみたいな星には存在しないはずの何かを、無理やり地下に持ち込んで、鋼板と気密扉の奥に閉じ込めて、ゆっくり発酵させたような匂い。
湿気の中には、塩分と薬剤、それから言葉にしにくい生臭い冷たさも混じっている。
深い水の中に長く浸かっていたものが、ようやく浮上しようとしている、そんな匂いだ。
俺はドアの前で立ち止まり、壁の表示を見る。
極限環境作業区/深圧シミュレーター群
上出来だ。
聯邦は今日はまた別のやり方で、俺に人生を諦めさせる気らしい。
案内の勤務士官がIDプレートを側面スロットに差し込むと、内側の第二ロックが「カチリ」と開いた。彼は中に入らず、横に退いて道を空ける。
「レナード大佐が中で待っている」
軽く頷いて二歩踏み出し、ふと思い直して振り返る。
「ついでに確認したいんですけど、今日の授業って、遺書が必要なタイプですか?」
士官は俺を一瞥し、無表情で答えた。
「必要であれば、レナード大佐が事前に知らせる」
……いい返事だ。
慰めにもならず、ユーモアもゼロ。
この区画のサービス品質、少し気に入り始めてしまった。
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中に入る。
中は広かった。天井は通常の訓練区画よりずっと高く、太すぎて笑える圧力配管が頭上を横切り、鋼梁には細かな水滴がついている。照明は冷たい色で、金属の床を手術台みたいに、いや、安置所みたいにギラつかせていた。
その奥に、円筒形の巨大なシミュレーターがある。
濃い灰色の外殻に、幾重ものシールリング。人間を閉じ込めるためだけに作られた、海底棺桶みたいな形だ。側面の透明観測窓はいまは暗く、中は見えない。基部からは太い圧力ラインと循環液のパイプが何本も伸び、低く唸っている。それはまるで、大型の生き物が眠っている音のようだった。
そして、レナードがいた。
彼はシミュレーターの前に立ち、濃色の作業服の上に聯邦環境作業官用のロングコートを羽織っていた。肌は不健康なほど白い。ミラの「冷たさ」とは違う、「長年、太陽を見ていない」白さだ。首筋と手の甲には、ところどころ淡い古傷が走っている。形は不規則で、何か粘つく海中のものに触れられ、絡みつかれ、印を刻まれたような痕だった。
彼の目の色は薄い。
あまりにも薄くて、最初に見た瞬間には、そこに感情というものが存在しないようにさえ思える。
カールが「歩く工業事故」で、ミラが「精密で毒のある火器系災害」だとしたら、レナードから受ける印象は——
死者が、呼吸の仕方を覚えて教官として戻ってきた、そんな感じだ。
立ち止まり、敬礼する。
「星野霜一等兵、報到しました」
レナードは一度だけこちらを見た。
その視線には査定も評価もない。
ただ、「こいつを水に落としたとき、どれくらいで浮いてくるか」を確かめているような目だった。
「星野」彼は口を開いた。声は低い。しゃがれてはいないが、冷水に浸してから取り出したような平らな音だ。「昨日の戦術課、悪くなかった」
少しだけ息が詰まる。
早いな。
ここは本当に訓練キャンプなのか、それとも高級ゴシップ養殖場なのか。
「ありがとうございます」俺は言う。「ということは、今日の授業はもっと痛いんですね」
「痛い」彼は言った。
……いい。
こういうふうに、お互いの時間を節約してくれる正直さは嫌いじゃない。
レナードは余計なことを言わず、そのままシミュレーター横の装備ラックへ向かった。
「着ろ」
ラックには軽量の深圧作業スーツが掛けてあった。フルシールの重装潜行服ではなく、高機動寄りの分割式外骨格式の作業スーツだ。肩、胸、膝には圧力補償プレート。背中には小型循環モジュール。呼吸器はロープロファイルのハーフマスクタイプ。横にはマグネット固定具、カッティングライン、訓練用のプラスチック爆薬モジュールに、針状のタイムチャージブレイカーが数本。
着込みながら、どうしても聞かずにはいられない。
「大佐、一つ確認いいですか」
「聞け」
「今日の授業、俺を何かすごく暗くて、すごく冷たくて、すごく濡れていて、十四歳の少女には明らかに不向きな場所に放り込む内容だったりしません?」
レナードは俺の前腕の圧力バンドを留めながら、手際よく、抑揚のない声で答えた。
「放り込まない」
彼は俺を一瞥する。
「送る」
……ありがとう。
用語選択にこだわりを感じる。
死んだあと、リボンでもかけて棺に入れてくれるのだろうか。
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