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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:静音潜航
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229.状況の変化 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

アスガルドの艦橋は、今日、異常なほど静かだった。


設備が稼働し、スクリーンが光り、各々が自分の作業に没頭しているような正常な静けさではない。違う。今日のここの空気は、封鎖されたばかりの事故現場に似ていた。表面上はきれいに拭き取られ、机や椅子も元の位置に戻され、当直表まで行儀よく貼り直されているが、一歩足を踏み入れれば本能的に悟ってしまう。


ここには少し前、絶対に何かが起きたのだと。


しかも、些細なことではない。


私が副艦長兼戦術長の席についた時、こめかみがまた微かに引きつった。


半分は二日酔いの後遺症。


もう半分は、社会的な死の幻痛だ。


正直なところ、人間の脳というのは時としてとても思いやりがある。今朝のあの惨劇について、歯を磨いている時にその場で全貌を思い出させるようなことはせず、分割配送方式を採用してくれた。数分おきに時限爆弾のように羞恥心を補充してくるのだ。


例えば、艦橋に足を踏み入れた瞬間、艦長席に座る真紀の、朝の光を真っ二つに切り裂きそうなほど冷たい横顔を見た時。私の脳内には即座に、今朝あの酔い覚ましのスープが床で砕け散った音が自動再生された。


あるいは、視線がうっかりメインシートの方へ滑り、ヘートヴィヒが帝国の交渉代表も務められ、ついでに他人の人生の潔白もぶち壊せるあの優雅な姿に戻っているのを見た時。昨夜、東西南北も分からないほど酔っ払った状態で、彼女を真紀と勘違いして死に物狂いでしがみついた記憶が蘇ってくる。


さらに最悪なのは――


その二人の当事者が、今まさに艦橋に揃っていることだ。


一人は私の斜め前に座り、昨日も今朝も何もなかったかのような顔をしている。


もう一人はさらに高い位置に座り、ミルクブロンドの長い髪まで、昨夜は俗世と無縁の素晴らしい夢を見ていたかのように完璧に梳かしつけられている。


で、私は?


私は戦術モニターを無理やり見つめ、「今日はとりあえず艦橋でその場蒸発することだけは避けよう」という一点にすべての生存意志を注ぎ込むしかなかった。


「副会長」隣からジェスが声を潜めて、それでも湧き上がる野次馬根性を抑えきれない声で言った。「今日のあんた、何か人生の重大なターニングポイントから這い出してきたばかりみたいに見えるわよ」


私は振り向かなかった。


「損管官」私は戦術ディスプレイを睨みつけたまま、敬虔なまでに平坦な声で返した。「もし今日一日、今の歯の数を維持したいなら、その口は仕事に使うことをお勧めするわ」


「うわ、怖っ」彼女は舌打ちしたが、明らかに楽しそうに笑っていた。「そういう防御姿勢を取られると、かえって深く掘り下げたくなるのよね」


「試してみれば」


「私もそうしたいところだけど」二階堂の毎日の艦内通知を読み上げるように淡々とした声が、ジェスの背後から漂ってきた。「風紀と艦内の安定を理由に、彼女が自爆花火になるのを止める義務が私にはある」


私はようやく振り返った。


ジェスは腕を組み、自分のダメージコントロール席の横にもたれかかり、「私が花火よ」とでも言いたげな得意げな顔をしている。二階堂は背筋を伸ばし、制服を着た規律執行装置のように立っていた。その眼差しは、どんなゴシップでも口から出る前に半分凍死させるほど冷静だった。


混沌と秩序が並んで立つと、その光景は確かに教育的だと言わざるを得ない。


一人は煽る担当。


もう一人は消火担当。


そして私は今朝、危うく彼女たちの合同消防訓練の可燃物にされかけたわけだ。


「二人とも」真紀の声が艦長席から響いた。高くもなく、重くもない。「朝の社交が終わったなら、注意を正面に戻しなさい。九島家の護衛艦が伴走距離に入ったわ」


艦橋が即座に一段階静かになった。


これが彼女の凄いところだ。


真紀は時として、音量を上げる必要すらない。語気を極限まで平坦に押し殺し、刃を机に滑らせるように響かせるだけで、全員が本能的に襟を正す。怖いからではない。今が本当に仕事の時間だと悟るからだ。


私は視線をメインスクリーンに戻した。


アスガルドの前方の戦術プロジェクションに、青と白の識別マークが二つ、左右から私たちの先導エリアに切り込んできた。ただの伴走ではない。進入角度から見て、位置取りが非常に計算されている。一隻は先導ベクトルを占め、もう一隻は側面の修正エリアをロックしている。露骨な監視でもなく、かといって純粋な出迎えでも絶対にない。


表面上は常に礼儀を残す。


だが骨の髄では、誰よりもきれいに支配欲を包み込んでいる。


「識別完了」アカリが相変わらずの棒読みで報告した。「先導艦二隻。IFFコードは九島重工の暗号リンクと一致。モデル修正……標準的な対外公開用護衛艦の構成ではありません。武装配置は遮蔽処理済み。外装コーティングも低反射処理が施されています」


「翻訳すると」ジェスが気だるげに引き取る。「金持ちのローキー版軍艦ってことね。船体に『私はただの一般船です、見ないでください』って書きたいくらい目立たないようにして、ついでに砲を八門くらい隠し持ってるタイプの」


「九割正解」アカリが言った。


「サンキュー、プロの肯定って好きよ」


私はプロジェクション上の二隻の護衛艦を見つめ、ゆっくりと眉をひそめた。


艦影は細長く、ラインがとてもきれいに収まっている。連邦の制式護衛艦のような「武装してます」とすべての装甲板に書いてあるようなスタイルではない。九島家のものはいつもそうだ。高価で、美しく、静かで、そして静かであればあるほど、うかつに近づきたくなくなる。


あの滑らかな外殻の下に、相手を黙らせるためのものがどれだけ隠されているか分からないからだ。


ランが耳元のヘッドセットを押さえ、通信ページを素早くいくつか切り替えた。


「先導艦から誘導プロトコルを受信」彼女は言った。「アスガルドにレベル2サイレントモードへの移行を要求。不要なアクティブスキャンをシャットダウン、長距離レーダーをパッシブ受信に切り替え。進路、速度、姿勢の修正は、相手から提供されるデータパッケージによる同期誘導になります」


操舵席に座るロイが、ポップアップした航路図を見つめ、ごく軽く口笛を吹いた。


「これ、出迎えじゃないな」彼は言った。「俺たちを、存在してはいけない場所に押し込もうとしてるみたいだ」


「ようやくたまには人間の言葉を喋るようになったわね」と私は言った。


「ありがとう、副艦長。今日の君の褒め言葉は二日酔いの薬みたいにレアだ」


「褒めてない」


「分かってる。だから貴重なんだ」


真紀はこんな栄養のないやり取りには参加しなかった。


彼女はメインスクリーンだけを見つめ、指先で艦長席の肘掛けを軽く叩いた。


「誘導プロトコルを受諾」彼女は言った。「ラン、九島家の先導艦に返信。アスガルドはレベル2サイレントモードへの移行準備完了。ロイ、メイン航路の制御を渡して。ただしマニュアル修正の優先権は残すこと。アカリ、周辺観測の死角を確認。彼らが私たちをドアに招き入れようとしているのか、それともこの宙域全体の目を直接抉り取ろうとしているのか知りたいわ」


「了解」ランとアカリがほぼ同時に応えた。


ロイは息を吐き、操舵インターフェース上で新しい制御ウィンドウをスライドさせた。


「分かってたさ」彼は低い声でぼやいた。「金持ちの秘密工場が『ようこそ、まっすぐ進んで左折してください』なんて仕様なわけがない」


「じゃあ何?」ジェスが言った。「入り口に『九島重工第二秘密工場、訪問者は受付へ』って看板でも立ってると期待してたわけ?」


「黙れ。俺は今、真面目な人間の心境でこの画面に向き合う必要があるんだ」


「なら、まずは心臓を付け替えないとね」


私は彼らを無視した。


私の注意はすでに航路図に吸い込まれていたからだ。


それは、公開されているどの港区へも通じていない航路だった。


先導艦から送られてきたルートは、まず目立たない隕石帯の影に沿って滑るように進み、次に小惑星の破片が散らばる面にほとんど張り付くような狭い安全通路へと急に切り込んだ。公開星図によれば、あの辺りは廃棄された採掘区としてマークされたコールドゾーンの残骸に過ぎない。せいぜい廃棄された運搬プラットフォームや機能停止したマーカーブイが残っている程度で、アスガルドのようなサイズの艦体を飲み込める正規のドッキング施設など全くないはずだ。


言い換えれば。


目の前のこの航路自体が、嘘をついている。


「地形エコーがおかしいわ」私はスクリーンを睨みつけ、指で航路の一部を拡大した。「ここの反射がきれいすぎる。自然の遮蔽じゃない、人工的なカモフラージュよ。下に大型の可動式構造物があるはず。しかも一層じゃない」


ヘートヴィヒがようやく口を開いた。


「さすがね」


彼女の声は高くなく、それが称賛なのか、それとも別の意図があるのかいつも分からない、あの独特の平静さを帯びていた。


私は彼女を見なかった。


「殿下が最初から知っていたなら、直接言えばよかったのに」


「あそこが普通じゃないことは知っていたわ」彼女は淡々と言った。「でも九島家のものは、九島家自身に明かさせるのが礼儀というものでしょう」


「あなたの口からそれが出ると、外交辞令が機密のためにレッドカーペットを敷いているようにしか聞こえないわ」


「成熟した大人同士の思いやりだと受け取ってくれて構わないわよ」


「上流階級が共有してる悪習だと受け取らせてもらうわ」


ヘートヴィヒは反論せず、ただごく軽く笑った。


今日の彼女の回復ぶりは、不愉快なほどだ。


数時間前までこの女が白いネグリジェ姿で私の腰に抱きつき、危うく私を自室で死なせかけたことを思うと、宇宙の皇女に対するえこひいきは法改正を検討すべきレベルだと感じる。


さらに不愉快なことに、ちょうどその時、真紀が淡々と私の方を一瞥した。


その一瞥は長くは留まらなかった。


むしろプロフェッショナルなほど短かったと言える。


それでも私は、瞬時に肩を張って背筋を伸ばした。


仕方ない。後ろめたいという感情は、実際には何もしていなくても存在しなくなるわけではないのだ。


「副艦長」真紀が言った。「個人的な感情は戦術席から下ろしておきなさい」


「個人的な感情なんてないわ」


「あるわ」彼女の平静さは憎らしいほどだった。「しかも、すごくうるさい」


ジェスがその場で両手に顔を埋め、血を吐きそうなほど肩を震わせて笑いを堪えていた。


空のデータボックスを投げつけてやりたかった。


しかし今日、艦橋にいる誰もが、私よりもずっと「何事もなかったかのように生きていく」ことに適応している。これでは私が全場で唯一、今朝の事故にまだ首を絞められている人間のようだ。不公平だが、これが現実だ。だから私は深呼吸をし、不必要な連想をすべて心の奥底に押し込み、無理やり正面を睨みつけた。


ちょうどその時、アスガルドは先導ルートの第一区間に切り込んだ。


二隻の九島家の護衛艦は前と横に位置し、その姿勢は氷のように安定していた。過剰な灯りはつけず、艦尾と側舷に最低限の誘導マーカーを残すのみ。遠くの恒星の光が砕石帯と遮蔽フィールドに削り取られた後、高い位置から斜めに降り注ぎ、接近エリア全体をまだ正式公開されていない設計図のように照らし出している。すべてのラインが少しぼやけ、隠し持ったグレーのトーンを帯びていた。


「先導艦より、さらに十五パーセントの減速要求」ランが言った。


「その通りに」真紀が答える。


ロイが手首を押し込むと、修学旅行の事故の後半戦に登場するには大きすぎるアスガルドの巨体が、素直に速度を落とした。


私はこの光景を見るたびに、馬鹿馬鹿しくて笑いたくなる。


私たちはもともと、修学旅行に来た三百人の学生に過ぎなかったのだ。


三百人。


三百人の正規軍でもなく、三百人の艦隊乗組員でもなく、ましてや秘密建設計画に最初から書き込まれていた名前でもない。それなのに今、私たちはアスガルドと呼ばれる宇宙戦艦に座り、生徒会長、副会長、財務、総務、書記、レーダー手、損管官、機関長、そして危機によって無理やり各ポジションに叩き込まれた同級生たちと共に、この代物を九島重工の秘密の玄関口まで運転してきている。


時として、現実は超展開ではない。


現実はまずお前を崖から突き落とし、空中で翼の組み立て方を学べと要求してくるものだ。


「地形遮蔽、リフトアップ」アカリが言った。


メインスクリーン上の小惑星の表層が変化し始めた。


元々はただの冷たく静まり返った、衝突痕と廃棄された採掘の傷跡だらけの岩質の外殻にしか見えなかったものが、突然、極めて微細な光学的歪みを生じさせた。あの小惑星の外皮と周辺の砕石場の間に、とても薄くて巨大な膜が張られているかのようだ。普段は背景と完全に同化して見えないが、先導艦が特定の角度から進入した時だけ、表層の屈折から人工的な痕跡がわずかに漏れ出す。


次の瞬間、小惑星が割れた。


爆発でも、崩落でも、単なるハッチのスライドでもない。


前方の、岩層のテクスチャと完全に一体化していた偽装外殻の一面が、継ぎ目など全く見えない位置から左右に音もなく退いたのだ。外層の遮蔽パネルが後退し、内層の対探知プリズム面が反転する。アスガルドが通り抜けられるほど巨大なドッキング通路が、小惑星の腹腔からそのまま姿を現した。


私は無意識に息を止めた。


これは普通の入り口ではない。


誰かが小惑星を丸ごと一つくり抜き、骨を抜き取って鋼鉄、軌道、メンテナンスアーム、エネルギー伝送骨格に置き換え、衛星やレーダー、そして人間の常識を欺くのに十分な幾重もの外殻で、再び世界の一部として縫い合わせたようなものだ。


もし偽装壁が左右に分かれるのをこの目で見なければ、連邦の監視のすぐ下でこれほどの施設がこれほど長く隠されていたなんて、絶対に信じなかっただろう。


「……いくらなんでもやりすぎだろ」ロイが低い声で言った。


今回は誰も彼にツッコミを入れなかった。


全員が見入っていたからだ。


アスガルドの前方に広がるドッキング通路は広く、この巨艦が通り抜けるのに十分な幅がありながら、不気味なほど精密だった。左右の誘導灯に無駄なものは一つもなく、冷たい白色の光帯が内壁に沿って奥へと伸び、入り口全体を巨大生物の食道のように照らし出している。周囲に水も風もなく、ただ真空がフォースフィールドと指向性フィールドによって人工的に切り取られてできた安定した空洞があるだけ。漂う塵すら最小限に制御され、計算し尽くされて敷かれた黒い鏡面のように清潔だった。


アスガルドはさらに前へと滑るように進み、艦橋のメインスクリーン上の映像が進入角度に合わせて少しずつ展開していく。


左右両側の巨大なメンテナンスウォールが階層ごとに点灯し、壁面に折りたたまれた脚のように収束していた重メンテナンスアームの列が姿を現した。それらの機械腕は工具というには太すぎた。巨大な神話生物の骨格を解体するための専用器官のようだ。各関節は分厚い装甲と多層センサーリングで覆われ、アームの先端モジュールは装甲の切断、外板の溶接、駆動系の点検から、艦体内部の深層プローブインターフェースに至るまで、異常なほど細分化されて完備されていた。


さらに後方の上部空間には、高架メンテナンスレールが蜘蛛の巣のように交差し、懸架式の搬送ブリッジがレールに沿って静かに待機している。それらは今はすべて停止しているが、稼働している時よりもかえって圧迫感があった。高いところに伏せている沈黙の巨獣の群れが、下を通り過ぎるこの外来の巨大な獲物が完全に停止するのを待ち構え、一斉に飛びかかって解体し、スキャンし、分類し、再構築しようとしているかのようだ。


そしてそれは、ほんの第一印象に過ぎない。


「左側ブロック識別中」こんな場面でのアカリの棒読みは、巨大な事物のサイズを注釈するための冷静なスケールのように妙に響いた。「艦載機エリア。少なくとも三層の昇降レール。密閉式整備甲板。複数の中型艦載機中隊を同時収容可能」


私は彼女がマークしたエリアに視線を向けた。


案の定、左側内壁の中段にはいくつかの半密閉型ハンガーハッチが開いており、エッジの光帯がすでに点灯し、内部の積層式機体ラックと垂直昇降構造を露出させていた。それらの構造は、一般的な民間用ドックによくある単純な収納施設ではなく、完全な出撃準備モジュールだった。レールの幅と磁気ロックインターフェースの数を見ただけでも、観光艇を数機停めるためのものではないと分かる。


それは、機体を最短時間で再武装し、兵装を懸架し、再び戦闘状態に投入するためのものだ。


右側はさらにヤバかった。


そこには分厚い隔離壁で封鎖された一区画があり、外層からは余計な説明はほとんど見えない。ただ、壁体に埋め込まれた重装甲ロック構造と深層セキュリティゲートから、それが普通の倉庫エリアとは全く次元が違うことだけが読み取れた。


「あっち側は?」私は訊いた。


アカリがそのエリアを赤くマークする。


「密閉武庫」彼女は言った。「しかも対外公開型じゃありません」


「その言葉、すごく無駄な説明に聞こえるわよ」ジェスが言った。


「分かってます」アカリは平坦に返した。「でも、その重要性は正式に一度口に出しておく価値があります」


私は口を挟まなかった。


彼女が正しいからだ。


あれは普通の武庫ではない。


普通の武庫は、壁のまるまる一区画を艦砲すら防げそうなほどの厚さにはしないし、外側に二重の自動隔離ゲートと独立したエネルギー供給ラインを設けたりもしない。あの中に入っているのは十中八九、護衛隊が射撃訓練に使うような標準装備ではない。一隻の艦を「動く」状態から「戦える」状態へ、さらには「どれくらい戦えるのか、他人は迂闊に試さない方がいい」状態へと変貌させるための代物だ。


私はふと、喉が少し乾くのを感じた。


恐怖ではない。


遅れてやってきたある種の現実感が、私たちがこれまで意志と混乱だけで強引に乗り切ってきた航程に、ようやく追いついてきたような感覚だ。


アスガルドはおもちゃではない。


漂流した学生が偶然拾った大型避難所でもない。


これは本物の戦艦だ。


そして九島家は、これを最初から単なる事故の事後処理として扱ってなどいなかったのだ。


正面のさらに奥にあるメンテナンスコアが、私たちが深く進入するにつれてついに全貌を現した。


そこには、垂直方向の高さが現実離れしているほど巨大な中央エネルギーアーキテクチャがあった。何本もの太いエネルギー結合スロットが、脊椎に挿入される金属の導管のように、下層の基部から上部のカバー層まで一直線に伸びている。外部は高密度の絶縁シェルと幾重もの制振フレームで覆われていた。各結合スロットの横には異なる規格のインターフェースセグメントがマークされており、中型艦用、重型艦用から、明らかに公開されている軍用メンテナンス基準を超えた大型の特注接点まで、すべてが静かに並んでいた。


その静けさが恐ろしい。


なぜならそれは、使用された痕跡のない展示品ではないからだ。


正反対に、いかにも使用されそうだった。


いつの日か、正常な学園の世界観に存在すべきではないほど巨大なものがここに運び込まれ、インターフェースに接続され、修理され、補給され、改装され、あるいは生まれ変わることになるのを、誰かがずっと前から知っていたかのように。


私は見入ってしまい、こめかみに残っていた二日酔いの鈍痛すら少し押し殺された。


「副艦長」


真紀の声が私を引き戻した。


顔を上げると、彼女は艦長席に座り、余計な感情の起伏を一切見せていなかった。大半の人間が一時的に言葉を失うほどの秘密工場を目の前にしても、彼女の目にはまず、別のものに自動解体されて映っているようだった――利用可能な資源、権限の境界、リスクポイント、コントロールポイント、そして次にどう使うか。


これが九島真紀の最も恐ろしいところだ。


他人がまだ規模に圧倒されている間に、彼女はその規模を自分のリズムにどう組み込むか算段を始めている。


「進入後」彼女は言った。「アスガルドの完全なメンテナンス優先シーケンスを出して。まず艦橋システム、次に主推進系、そして内部居住区と封鎖区の権限再編。戦術長、あなたは武装と艦載機インターフェースをマークしなさい」


「了解」私はほとんど本能的に答えた。


相談はない。


意見を求めることもない。

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