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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:静音潜航
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222.一足お先にアーリーアクセス! 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

脱衣所の外側の扉が遠慮なく少しだけ引き開けられ、最初に覗いたのは「捕まえた」と顔に書いてあるジェスであった。彼女は視線を巡らせ、ほぼ瞬時に、私と真紀の間にあった、完全に片付けきれていないあの距離感を捕捉した。


そして、彼女は笑った。


商標登録できそうなほどの、あの標準的な悪戯っぽい笑顔であった。


「あららー」


彼女は語尾を長く引き伸ばし、バスタオル一枚を巻いただけで堂々と入ってきた。温泉に入りに来たというより、不時着艦への臨検にでも来たかのような態度であった。


「お二人さん、随分といい場所を選んで親睦を深めてるじゃないですか」


「ジェス」


真紀の声は平坦であった。


凍りつく直前の水面のように、冷徹な平坦さであった。


「まずは体を洗いなさい」


「こっわーい、会長様」


ジェスは口では文句を言いながらも、空気を読んで両手を挙げた。


「私はただ、生徒会が公共の資源をこっそり横領していないか確認しに来ただけなのに」


「してるぞ」


私は無表情に引き継いだ。


「おまけにお前は今、不法侵入中だ」


「よかった、じゃあ絶好のタイミングね」


彼女がそう言い終わるや否や、扉の外から二つ目の足音が聞こえた。


「ジェス、先に体を綺麗に流してからじゃないと、湯船に入っちゃ駄目よ」


ランが後ろから入ってきた。口調は相変わらず安定している。温泉に引きずり込まれたというより、浴場の公共秩序を巡回しに来たかのようであった。銀色のショートヘアには水気がつき、普段の事務的な雰囲気が少し減って、髪を洗った後まだ完全に乾いていないような柔らかさが増している。


そして私は不運にも、もう一秒長く見てしまった。


……なるほど。


制服というのは、本当に欺瞞に満ちた文明の産物であるらしい。


私は即座に視線を戻し、さっきのは彼女の立ち姿が士官学校の基本礼儀に適合しているか観察していただけだというふりを決め込んだ。


「星野、あんたの今の目、すごく怪しかったわよ」


ランが不意打ちで一言放った。


「気のせいだ」


「だといいけど」


口ではそう言いながら、彼女の目ははっきりと『あんたのことは分かってる、誤魔化すな』と弾劾していた。


ランよりもさらに静かに現れたのは、アカリであった。


彼女はどこかの死角から現れ、バスタオルを巻いて蒸気の端に立っていた。相変わらずの半死半生ぶりで、この世界の贅沢や騒ぎには大して興味が持てないという様子であった。


彼女は顔を上げて周囲を一瞥し、極めて短い評価を下した。


「広いね」


私は危うく、この温泉エリアのために抗議しそうになった。


この規模、この配置、生徒会の指導的正当性を直接生み出せるほどの豪華さを前にして、お前はただ「広いね」の一言で済ますのか。いつかホーエンツォレルンが彼女の目の前で爆発したとしても、彼女はきっと「ちょっとうるさいね」としか言わないだろう。


事態はここまででも十分に混沌としていた。


だが、入り口の辺りにもう一つの人影が現れた。


「あなたたち、浴場の規則は守り——」


二階堂・フレイヤが扉のそばに立ち、言葉の途中でようやく中の人間をはっきりと視認した。


「……っ、なんだ、会長と副会長ですか。驚かせないでください」


私はその場で振り返った。


「誰がフレイヤを引き込んだんだ?」


「ジェス」


ランとアカリが異口同声に答えた。


クリーンで、無駄がなく、極めて法的な効力を持った復唱であった。


私は息を呑み、即座にジェスを指差した。


「ジェス! やっぱりか! またお前か。お前が一番最悪だ!」


「ちょっと!」


フレイヤが瞬時に毛を逆立てた。先ほどの風紀委員長としての自制心など、私の一言で危うく吹き飛ぶところであった。


「星野シモ、どう意味ですか? 『引き込んだ』って何ですか? 私は害獣か害虫か何かですか!」


「違う」


私はとても誠実に彼女を見た。


「お前は風紀委員長だ」


「全然良くなってませんよ!」


「私にとっては同じようなもんだ」


「死にたいんですか?」


温泉のドタバタ劇が、風紀委員長の現場執行へと急転直下しそうになったその時、真紀がついに冷たく口を開いた。


「全員、こっちに来て座りなさい」


音は大きくない。


だが十分であった。


全員がほぼ同時に一拍止まり、ジェスでさえこっそり唇を尖らせるだけで、すぐには言い返せなかった。


真紀は腕を組み、熱気の中に立っていた。その表情は完全に、『これ以上一言でも騒いだら、目力だけであんたたちをタイルにめり込ませるわよ』という会長モードに切り替わっていた。


「綺麗に洗ってからじゃないと、湯船には入れないわ」


かくして、異様な光景が出現した。


私たち六人は、本当に洗い場で円になって座ったのだ。


心温まる癒しの女子浴場図でもなければ、優雅で高級なセレブの温泉の夜でもない。人数が多すぎ、個性が雑多すぎ、規律感と騒ぎたい欲求が衝突した結果、生徒会長によって強制的に互助入浴チェーンに編成された、集団行動矯正イベントのような有様であった。


真紀はまず私の背中を流した。


私は運命を受け入れて背を向けて座り、心の中で、あと半步で危険な領域に踏み込みそうになっていたあのピンク色の空気に、痛切な哀悼の意を捧げた。


反対側では、ジェスが非常に馴れ馴れしくランの担当を引き受けていた。


「ラン、あんた肩硬すぎじゃない?」


「それは私が、あんたみたいに他人に迷惑をかけることでリラックスするタイプじゃないからよ」


「その言葉、結構傷つくんですけど」


「なら、まずは存在を消しなさい」


「うわ、毒舌。好き」


その隣では、アカリがフレイヤにお湯をかけていた。その光景には非常に不条理な調和感があった。なぜならアカリは、人の背中を流す時でさえ、長距離索敵の照準プロセスを実行しているように見える人間だからだ。一方のフレイヤは、最初は『私、あなたたちとそんなに親しかったですか』という防備の態度だったのに、少し座っていただけで、不甲斐ないことに肩の力が抜けてしまっていた。


「フレイヤ、右肩の方が硬いね」


アカリが平坦に言う。


「……分かってます」


「よく怒るからだよ」


「それが原因じゃありません」


「私はそうだと思うな」


私は危うく吹き出しそうになった。


風紀委員長も結局は人間だ。どれほど規律を吸って生きていても、お湯と規則的なこする動作に触れれば、防御を二割ほど下ろさざるを得ないのだ。


そして最も常軌を逸しているのは、当然ジェスであった。


彼女はランを泡立てながらも、目はあちこちを泳いでいた。この入浴イベント全体の中で、次に騒ぎを起こせそうなポイントを探しているかのようであった。案の定、まもなく彼女はターゲットをフレイヤに絞った。


「わーお」


ジェスが突然語尾を伸ばした。その声にこもった、天下が乱れるのを恐れない興奮感に、私は瞬時に非常に嫌な予感を覚えた。


「フレイヤ、普段あんなにきっちり着込んでるから、本当に全然分かんなかったわー」


フレイヤがまず呆然とした。


「……何のことですか?」


「極めて客観的な風紀観察レポートを作成中よ」


「何を観察してるんですか!」


ジェスは彼女を完全に無視し、大げさに宙で寸法を測る真似までした。専門の免許もないのに現場で寸法を測ろうとする悪徳仕立て屋のようであった。


「ここに正式に大声で報告しまーす」


彼女は大きく息を吸い込み、洗い場全体にはっきり聞こえる音量で宣言した。


「風紀委員長、二階堂・フレイヤ、Eカップ! 風紀違反です!」


空間全体が一秒静まり返った。


次の瞬間、フレイヤが完全にキレた。


「ジェーースッ!」


その聲に込められた殺気は、温泉の中で低出力の怒りの爆弾を起爆させたのに等しかった。彼女は振り返るなり飛びかかろうとし、バスタオルが危うく吹き飛びそうになったが、アカリが無表情のまま彼女の手首を掴んだ。まるで予測済みの事故を阻止するように。


「フレイヤ、床滑るよ」


「離してください! あいつ殺します!」


「ほらね、激怒した」


ジェスは後ろに縮こまりながらも、憎たらしい一言を付け加えた。


「右肩がそんなに硬いのは、感情管理に問題があるからだって言ったでしょ」


「黙りなさい!」


ランがついに耐えきれず、木桶の水を直接ジェスの背中に浴びせた。


「まずは自分の体を綺麗にしてから喋りなさい!」


ジェスは水をかぶって「わっ」と飛び上がったが、足元を滑らせ、危うく木桶の中に座り込みそうになった。慌てて横の仕切り板にしがみつきながらも、振り返って抗議することは忘れない。


「ラン、これ公私混同の復讐でしょ!」


「そうよ」


ランは躊躇なく答えた。


真紀はようやく手を上げ、眉間を押さえた。


目の前の光景を見ながら、私はただ、先ほどまでの私と真紀だけの危険な静寂が、今や石鹸の泡が追加された修學旅行的な災難のプールへと攪拌されてしまったことを感じていた。


さらに悪いことに——


私は少し笑いたくなっていた。


いや、少しではない。


ひどく笑いたかった。


この光景が本当に荒唐無稽すぎたからだ。数分前、私と真紀はここで危うく熱気を別のものに変えてしまうところだった。数分後、ここは風紀委員長がジェスを追い回し、アカリが物理的に制止し、ランが直接木桶で天罰を下し、真紀が管理に失敗しながらも威厳を保たなければならない浴場のCEOとして中央に立つ場所へと変わっていた。


私はうつむいて顔を腕に埋め、はっきりと肩を震わせな。


真紀が私を一瞥した。


「シモ」


「……ん」


「あんたが今笑ったら、事態はもっと悪化するわよ」


「分かってる」


私は必死に言った。


「でも、これって艦史の付録に書かれるような、レクリエーション管理の失敗事例みたいだと思わないか?」


彼女は答えなかった。


だが、彼女の口角も微かに動いたのが見えた。


ほんの一瞬。


ごく薄く。


だが、私には見えた。


それで十分であった。


ともかく、怪しげな背中の流し合い、不必要なサイズの通報事件、空間を切り裂くような風紀委員長の制裁ショーを経て、私たち六人はどうにか自分の体を綺麗に洗い終えた。


正式に報告書に書けない「事故」の始まりへ向かって。


前方(ぜんぽう)に大浴場(だいよくじょう)がある。


先ほど脱衣所から遠目に一角を覗いただけであったが、実際に足を踏み入れてみると、あの想像図が全く虚偽ではなかったことに気づかされる。浴場全体は想像以上に広大であり、中央の主浴槽は熱霧と灯火に包まれた湖のごとく、その水面は高いドームの下で柔らかな金色と淡い青が交錯する光を反射していた。左右の副浴槽はそれぞれ異なる光を映し出し、一方は冷たく、一方は暖かく、湯に浸かる時の感情の出口まで二種類用意されているかのようであった。高い柱と壁面の浮き彫りが空間全体に儀式的な雰囲気を与え、頭上の透明なドームは星河(せいが)を丸ごと上部に被せている。夢のように遠く、それでいて、見上げれば水面に落ちてきそうなほど近くに感じられた。


庭園側の休憩エリアも微かに視界に入る。低いテーブル、茶器、石灯籠、そして美しく整えられすぎた松の影。そこに熱気が板張りのテラスに沿ってゆっくりと這っていく。全体の雰囲気は戦艦のそれではなく、金と狂気を併せ持った帝国の庭師が、四季と銀河を一緒に設計図に浸し込んだかのようであった。


ジェスは湯船の縁(へり)に立ち、左右を見渡して、極めて真摯な感嘆を漏らした。


「これ、温泉なんかじゃないわ」


「じゃあ何だ?」


私が問う。


彼女はこの蒸気と星光の広がりを見つめ、神聖なまでの口調で言った。


「これは貴族の汚職の証拠物件よ」


私はついに声を出して笑った。


真紀でさえ彼女を訂正するのを諦め、淡々と一言落としただけであった。


「もう一言喋ったら、足湯に戻すわよ」


「うわ、こっわ」


「私はずっと怖いわよ」


「でも今の台詞、甘えてるみたいだった」


私は即座に振り向いてジェスを見た。


こいつ、今夜は本当に戦死したいらしい。


真紀はただ冷ややかに彼女を見つめていた。私が彼女のために三秒間黙祷を捧げたくなるほどに冷酷な視線であった。幸い、ジェスの生存本能は最後の瞬間に正常に機能し、即座に両手を挙げて降伏すると、空気を読んで一番に湯船に滑り込んだ。


お湯が体を包み込むと、彼女はその場で心地よさのあまり、尊厳の欠片もない長いため息を漏らした。


「あー……これぞ生きてるって感じ」


ランが続いて入り、涼しげな声でトドメを刺した。


「あんた、さっき会議室でも同じこと言ってたわよ」


「あれとは違うの。さっきのは精神的な生存で、今は肉体的な生存よ」


「あんたの肉体の判定基準、随分と安っぽいのね」


アカリが最後に総括した。


「でも、正直だね」


フレイヤは最初、「あなたたちとは距離を置いた方が安全ですね」という顔をしていたが、お湯が肩まで浸かると、彼女も明らかに静かになった。顔にだけは、風紀委員長としての最後の意地が辛うじて残っている。彼女はジェスから一番遠い場所に座り、別の規律説明会でも開いているかのように姿勢を正していた。少しでも気を抜けば、このトラブルメーカーたちに屈したことになるとでもいうように。


私と真紀が最後に入った。


熱いお湯が包み込んだ瞬間、私は危うくその場で溶けてしまいそうになった。


誇張ではない。


トワイライトの射程から温泉の湯船まで、この一日の落差はあまりにも大きすぎる。連邦軍事史と修学旅行のパンフレットが殴り合いの喧嘩をして、勝負がつかないまま生み出された産物の中に、無理やり押し込まれたかのようであった。


私は湯船の壁に背中を預け、息を吐き出した。


真紀は私のすぐ隣に座った。お湯と蒸気を隔てて、彼女の肩が触れるか触れないかの距離にあった。


熱いお湯が人をほぐすと、人間の本性も一緒に浮かび上がってくる。


この言葉を連邦士官学校の生活指導マニュアルに書き込めば、また私がでたらめを言っていると思われるだろう。だが今この瞬間、目の前の湯船に浸かる連中を見ていると、これが真理だとしか思えなかった。


「この後、サウナ室も体験しなきゃ」


ジェスは水面にほとんど横たわるようにして漂い、帝国のトワイライトの下から命からがら逃げ帰ってきたのではなく、豪華温泉宿泊券でも当てたかのように上機嫌であった。彼女は湯船の中を泳ぎ回っている。正確に言えば、水泳とラッコの背泳ぎと大型トラブル製造機の自己放流の中間のような方法で、お湯の中をあちこち揺れ動いていた。


フレイヤの額に青筋が立ち、その場で声を上げた。


「ジェス・マッカロウ、温泉で泳がないでください! まったく、あなたには基本の礼儀もないんですか!」


ジェスは振り返ってとぼけようとした。


だが、真紀が一声呼んだだけであった。


「ジェス」


すると、奇跡が起きた。


さっきまでお湯の中で自由を謳歌していた水生のトラブルメーカーが、即座に大人しくなり、行ぎよく体を正面に向け、縁のそばに座り直したのだ。それどころか「私、元からお行儀いいですよ」という無実の顔まで作っている。


この光景を見て、私の心には一つの感想しか残らなかった。


さすが、対ジェス汎用兵器。


対艦用の兵器もあれば、対要塞用の兵器もある。環境や戦術に応じた兵器が開発される中で、ジェスのごとく普段は人間の言語で説得するのが困難な生物に対処するための専用兵器も存在するのだ。真紀は明らかに最後のカテゴリーに属しており、しかも高性能の量産型であった。


ジェスは座り直したものの、口は休んでいなかった。彼女は腕を縁に乗せ、お湯に浸かりながら、今にも溶けそうなほどリラックスした顔で、意見を述べ続けた。


「でもさ、本当にここのお湯最高すぎない? この後ミストサウナにも行って、ドライサウナにも行って、それから――」


彼女が数え終わる前に、真紀が極めて平坦に遮った。


「やりたいことがあるなら早くしなさい」


彼女は縁に寄りかかり、ただ時間を確認させるだけのように平坦な口調であった。だがその平坦さの中には、一切の妥協を許さない切れ味があった。


「深夜を過ぎたら、男子の入場時間になるから」


湯船の中が一拍静まり返った。


いわゆる男子とは、もちろん神秘的な新種などではない。ロイ、D、ハーヴィーの可哀想な三人組のことだ。いくらここが豪華でも、ローテーションは守らなければならない。生徒会が旨味を全部吸い尽くして、お湯の一滴すら他人に分け与えないわけにはいかないのだ――もっとも、正直なところ、真紀が最初からそのことを真剣に考慮していたのかは少し疑わしいが。


それを聞いたジェスは、あからさまに顔をしかめた。


「三人で独占とか、ずるすぎでしょ」


その「ずるい」という言葉には怨念がこもっていた。男子に同情しているのではなく、自分がこの楽園から追い出されることで人格を傷つけられたかのように。


私は壁に寄りかかったまま、気だるく返した。


「なら、お前が残ってあいつらの相手をしてやればいい」


ジェスは即座に私を振り返り、ひどく嫌そうな目をした。


「遠慮しとくわ」


彼女はそう言いながら、意味深にランの方をちらりと見た。


「後で誰かさんに、彼氏を横取りしたって勘違いされそうだし」


私が他人の不幸を喜ぶ暇もなく、ランは即座に演技を放棄した。


「ロイはそんな男子じゃないわよ!」


その庇い方は見事であり、少しの躊躇もなかった。お湯のせいで顔が少し赤い。熱のせいか、ジェスの言葉に刺されたせいかは分からない。とにかく、その反応は本能的であり、普段の「あんたなんか相手にするだけ無駄」という冷静な余裕は微塵もなかった。


それを見たジェスは、瞬時に目を輝かせた。


まずい。


あれは彼女が、おもちゃが勝手に動き出したのを発見した時の、最も標準的な歓喜の表情であった。


「おやー?」


彼女は語尾を伸ばし、湯船の底で価値計り知れない弱みをすくい上げたかのような笑みを浮かべた。


「ラン、あっさり認めちゃって――」


「黙りなさい」


「まだ最後まで言ってないのにー」


「あんたが口を開いてろくなことがあった試しがない」


「あらら、そんなにムキになって庇うと、本当に気にしてるって勘違いされちゃうわよ?」


ランが今にもお湯を直接彼女の顔にぶちまけそうになったので、私は先回りして言葉を遮った。


「お前ら二人とも、その辺にしとけ。羽目を外しすぎるな」


大人ぶって言ったわけではない。


本当に予感があったのだ。ジェスをこのままこの路線で滑らせておけば、今夜この熱いお湯の中で、別の人間関係の事故が煮上がるのは時間の問題だと。さっき会議室で風紀教育の第一ラウンドが終わったばかりだ。今、浴場で第二ラウンドが開幕するくらいなら、私が直接フレイヤのために当直報告書のフォーマットを印刷してやった方がマシだ。


ジェスはまだ何か言いたげだったが、彼女が口を開きかけたその時、真紀が直接動いた。


彼女が立ち上がったのだ。


熱いお湯が彼女の肩のラインと腕に沿って滑り落ち、ごく薄い霧を巻き起こす。意図的に作ったポーズではない。だが、彼女には元々、立ち方、座り方、さらには立ち上がる動作一つで、次の議題を宣告するような支配的な能力が備わっている。だから、ただこうして立ち上がっただけで、周囲の雑然とした空気を少しだけ押し戻した。


そして、彼女は私に向かって手を差し出した。


「行くわよ、シモ」


彼女は言った。


「サウナ室へ」


……よろしい。


実によろしい。


この言葉は表面上は何の変哲もなく、生徒会長としての当然の権利すら帯びている。ただ次の浴場施設を体験しに行くだけで、騒ぎ立てるほどのことではない、と言わんばかりに。


問題はここだ。


私は彼女をよく知りすぎている。


こういう時に手を差し出すのが、ただ人を立たせるためだけの単純な動作ではないと知っているほどに。その動作には、あからさまなえこひいきが含まれていた。私には分かるが、他人に弱みを握られるほどではない、絶妙な親密さ。『この連中の騒ぎには十分付き合ったでしょ。さあ、私と来なさい』と言っているかのように。


湯船の他の面々も、明らかにそれに気づいていた。


ジェスはまず瞬きをし、それから口角をつり上げ始めた。非常に憎たらしく、私を苛立たせるための奇妙な言葉をすでに脳内で十個は用意しているかのように。


ランは明らかに視線を逸らし、『私は何も見ていない。ただ水面の反射を研究しているだけよ』という真面目な顔を作った。残念ながら、耳の裏のまだ引ききらない熱が、彼女の冷静さを裏切っているが。


アカリが一番極端だった。


彼女はただちらりと目を上げただけで、また平坦に視線を戻した。その反応全体が、『うん、生徒会内部の権力構造は安定している。異常なし』と言っているようだった。


そしてフレイヤは――


彼女は眉をひそめた。


不満でもなく、驚きでもない。


風紀委員長として、脳内でこの場面を急速に審査しているようだった。『会長が副会長をサウナ室に誘う』という事象が果たして疑わしいものなのか、それとも単なる生徒会メンバーによる浴場施設の共同利用に過ぎないのかを。


彼女の脳内でその規則体系が高速回転しているのが目に見えるようだった。


本当にお疲れ様だ。


私は真紀の中宙に止まったままの手を見つめ、ふと笑いたくなった。


さっき洗い場で危うく事故になりかけたあのピンク色の空気は、ジェスたちに攪拌されて粉々になったはずだ。それなのに、この女がただ立ち上がり、私に手を差し出しただけで、あの過剰に熟しすぎた、だからこそ格別に危険な感覚を、少しずつ掬い上げてしまうのだ。


狡猾すぎる。


「どうしたの?」


真紀が私を見下ろし、淡々とした口調で言った。


「副会長はいい湯加減で、動きたくなくなった?」


「考えてたんだよ」


私は彼女の手のひらに自分の手を重ね、引っ張り上げられるままになりながら、口では習慣的に言い返した。


「生徒会長がこうして堂々と人を指名するのは、職権乱用の疑いがあるんじゃないかって」


彼女の手はとても安定していて、そして熱かった。


この温泉全体が、彼女の忍耐とえこひいきで沸かされているのではないかと思うほどに。


「違うわ」


真紀は私を引き上げた後も、顔色一つ変えなかった。


「効率的な施設利用のための分流よ」


私はその場で服従した。


見ろ。


これが生徒会長だ。


人を単独で連れ出すことさえ、公共空間の管理最適化スキームのように語れるのだから。


ジェスは案の定、我慢できなかった。


「わー、施設利用の分流ですかー」


彼女は縁に伏せ、顎を乗せて私たちを見上げながら、金魚鉢をかき回そうとする猫のような笑顔を浮かべた。


「なら会長、私も一緒にミストサウナに行って、お二人の利用効率を見届けましょうか?」


真紀は彼女を見向きもせず、極めて平坦に一言落とした。


「結構よ」


「どうして?」


「あんたはうるさいから」


私は危うく足を滑らせて笑うところだった。


この理由は完璧すぎた。


完璧すぎて、ジェスでさえ不服そうに唇を尖らせるだけで、反論の余地がなかった。なにしろ彼女は本当にうるさいのだ。可能性があるのではなく、絶対に。


フレイヤが横から冷ややかにトドメを刺した。


「私は会長の判断を支持します」


「ちょっと、あんたまで?」


「実際の観察に基づいた結果です」


「みんなして私を仲間外れにする」


「仲間外れじゃないわ」


ランがついに口を開き、極めて平坦な口調で言った。


「リスク管理よ」


湯船に再び小さな笑いが起こった。


私は真紀に手を引かれて縁に向かいながら、振り返ってお湯の中に残った四人を見た。この光景が、いかいにもアスガルドらしい荒唐無稽さを持っているとふと思った。


一方はダメージコントロール士官、通信長、レーダー手、風紀委員長が一つの鍋に浸かり、口では互いを貶し合いながら、ようやく神経を半寸だけ緩めることを許している。もう一方は生徒会長が副会長を指名して連れ出している。その理由は極めて正当に聞こえるが、実際のところ、その中に公務が三割、休息が二割、残りの五割は正式な議事録には書けないような代物が混ざっていることは、おそらく私たち自身しか知らない。


私が縁の石段に足を踏み入れると、お湯が脚を伝って滑り落ち、空気が急に少し冷たくなった。


真紀はまだ手を離していない。


ただごく自然に、私を外へと連れ出した。



「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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