218.優雅なる海賊たち 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
AU-1206哨戒ステーションの第二当直室は、その夜、ようやく一つの真理を理解した。
宇宙で最も恐ろしいものが、必ずしも敵艦とは限らない。
貴族からの通報電話である可能性もある。
黒猫盗賊団関連の通報が最初に入った時、当直士官たちの顔にはネジをまとめて飲み込んだような表情が並んでいたが、少なくとも事案の輪郭はまだ正常だった。商船が止められ、財物を取られ、相手が盗賊団を名乗る。いくら荒唐でも、帝国の辺境勤務マニュアルという、人を殴り殺せそうなほど分厚い灰色の表紙の本が許容する狂気の範囲内には収まっていた。
二度目は違った。
通信用の赤いランプが点灯し、「貴族優先」チャンネルのラベルが即座に跳ね上がり、発信艦名にこう表示された瞬間から――豪華客船「ロイヤル号」。
当直士官はその文字列を見ただけで、背筋の半分が冷たくなった。
ロイヤル号は、ボロボロの香辛料密輸船や、金持ち田舎者を数人乗せているだけの観光船ではない。十三層建てで、貴族専用予約制、乗客名簿のフォントですら「庶民お断り」の気配を放つ巨大豪華客船だった。この種の船に何かが起きれば、面倒事は事故そのものには留まらない。親族が生え、家紋が生え、戦損報告書より厄介な責任追及の枝が何本も伸びてくる。
通信がつながった瞬間、当直室に届いた最初の声は、悲鳴でも、助けを乞う叫びでもなかった。
震え声で、涙声に近い抗議だった。
『至急、艦を――至急よ――あの連中、あまりにもひどすぎる!』
当直少佐は半分だけ息を吐いた。
結構。ここまでは、まだ普通だ。
しかし、その半分も出切らないうちに、相手の口から続いた後半が、彼の魂と制服の襟ごと引きちぎった。
『強盗のくせに、まるで公式晩餐会の出し物みたいに見事に演じるなんて、許されると思ってるの!?』
当直室が二秒ほど沈黙した。
記録担当の中尉が顔を上げた。
規則集をめくっていた法務少尉も、ゆっくりとページを押さえた。
通信士官は無表情のまま波形を再確認した。宴会場の娯楽チャンネルを誤接続したのではないかと疑って。
していなかった。
正真正銘の通報だった。
しかも、非常に真面目な通報だった。
「現在の状況を説明してください」当直少佐は、まだ正常な宇宙にいるふりをしながら言った。「容疑者の数、武装の程度、負傷者の有無――」
『負傷者はいないわ! 問題はそこじゃないの!』
今度は別の声が割って入った。ロイヤル号の総務長と思しき声で、先ほどの女性よりも明らかに取り乱していた。
『問題は、あの連中が完璧に主ホールの照明切り替えに合わせて入ってきたことよ! 主照明が落ちて、サイドライトが点いたところで、あの舞台女優みたいな子が煙の中からすっと出てきたの! あれは海賊じゃない、あれは稽古済みの……違う、もちろん海賊よ、だって宝石箱を持って行ったんだから。でも、持って行き方が礼儀正しすぎるのよ!』
記録中尉のペンが宙で止まった。
自分のペン先が走り書きしていた文を、ちらりと見下ろす。
――容疑者は財物搬出の際、態度が礼儀正しかった。
彼はしばしその行を書き留めたまま、この十二年間の士官教育のどこでこの可能性を学び損ねたのかを、心から疑っていた。
通信の向こうは、完全なカオスとなりつつあった。
女性の泣き声、男性の怒号、安全ロボットが一斉にダウンしたことへの罵声、そしてオペラのカーテンコール直後のような興奮したため息が入り混じる。
やがて、年老いているがやたら元気な声が、強引にマイクを奪った。
『補足させてもらおう!』
当直少佐は目を閉じた。
聞きたくはない。しかし帝国軍人は責任から逃げられない。
「どうぞ」
『先頭に立っていたお嬢さんは、実に言葉の選び方を心得ている。まず、われわれに落ち着くよう促し、これは強盗ではなく、「高度に任意性があり、十分な体面を保ち、かつ社会的再分配精神を兼ね備えた夜間募金活動」であると宣言した。無茶苦茶だ! 言語道断! 髪の毛が逆立つほど不条理だ! だが――』
老人は大きく息を吸い、突然声を厳かにした。
『だが彼女は、今夜のわたしのブローチの選択を、「歴史に裏打ちされた趣味だ」と褒めてくれたのだ』
当直室内で、記録中尉はそっとペンを置いた。
その場で全文を書き起こしたとしても、上に提出した瞬間に「当直中に幻覚を見た」と判断されかねないと分かってしまったからだ。
向こう側の騒ぎはまだ続いていた。
別の婦人がマイクを奪い取る。
『あの子たち、わたしのサファイアのブレスレットを持って行ったの! とても不満よ! 極めて不満! あれは母の形見なのよ! でも、黒いリボンを巻いたあの子が、今夜のわたしの肩のラインの方が、その宝石より見られるに値すると言ったの。こんな時にそんなことを言うなんて、ずるすぎない!?』
『そこじゃないでしょう!』横で総務長が悲鳴を上げた。
『そこが大事なんです!』婦人は怒鳴り返した。『それに、彼女はメインライトの真下に立たないように、とも言ったのよ。スカートのレイヤーが潰れてしまうからって。言われた瞬間、わたし、本当に二歩下がっていたの。分かる? 強盗に襲われている最中に、自分から舞台の立ち位置を変えたのよ!?』
法務少尉がゆっくりと頭を上げ、少佐を見た。
「長官」
「何だ」
「帝国刑法には、『被害者が海賊行為中に歩き位置を調整した』という判例はありません」
「知ってる」
「『容疑者が礼儀指導を行った』という項目も」
「それも分かってる」
当直少佐はそう言い終えた時、顔から三年分ほど寿命が削れたように見えた。
しかし、内容以上に致命的なのは、報告者側の立場が統一されていないことだった。
あれは凶悪武装集団だと主張する者もいれば、
精神状態に問題があるが訓練された辺境パフォーマー集団だと主張する者もおり、
極めつけには、「あれは海賊ではない、少なくとも趣味の悪いアート犯罪者だ。なぜなら、宝飾品を持ち去る前に、ロイヤル号主ホール中央の天使噴水を「力み過ぎで自信がない」と批評していったからだ」と激しく訴える者までいた。
『あいつら、シャンパンタワーの横にメッセージまで残していったんだ!』総務長はとうとう泣き声になった。『「黒猫盗賊団は、辺境巡回要員の過労促進計画へのご支援に深く感謝します」って! これは何だ! 一体これは何なんだ!』
「証拠物件ですね」と法務少尉は職業反射で答えた。
「今、法的分類を訊いてるんじゃない!」
「失礼しました、職業病でして」
最終的に、通話記録の中で最も致命的な一言を残したのは、ある若い男爵だった。
屈辱と困惑とが混ざり合った声で、AU-1206に魂の質問を投げかけた。
『必ず彼女たちを捕まえてください』
一拍置き、こう続けた。
『でも、もし捕まえたら、まず主ホールのあの入場曲の選曲者が誰なのか、聞いてもらえませんか。趣味が良すぎて怖い』
当直少佐は耐えきれず、軍帽を取り、顔に押し当てた。
泣きたかったのではない。
ただ、布越しに、自分がまだ物理法則が安定していて、行政手続きがまだ完全には崩壊していない宇宙に存在していることを確認したかっただけだ。
記録中尉は端末に映る文字列を眺め、別種の絶望に浸っていた。
目の前の公式報告欄には、項目がこれだけしかない。
事件の性質。
容疑者の特徴。
損害額の推定。
脅威レベル。
今、心から追加したい行が一つだけあった。
――被害者による容疑者の「演出」に対する満足度。
「で、長官。この件、どう処理しましょう」
法務少尉は非常に真剣に訊いた。
「海賊として記録しますか」
「被害者の半分が賛美している相手を?」
「テロリストとして?」
「政治的要求はなく、募金のレトリックしかない連中を?」
「地方武装として?」
「地方武装が、ついでに貴婦人の立ち方を矯正すると思うか?」
当直少佐は黙り込んだ。
当直室全体も黙った。
黒猫盗賊団からの初通報を受けた時、全員がただ辺境勤務の腐敗を感じていた。
しかし今、ロイヤル号が、支離滅裂で感情の折り合いがつかず、誇張された賛辞と不満が同時に詰まった正式通報を送ってきた結果、AU-1206全体にはもっと深い疑念が芽生えつつあった。
腐っているのは、勤務の方なのか。
それとも、世界そのものが、もうまともなふりをするのに飽きただけなのか。
数秒後、当直少佐は帽子をかぶり直し、深く息を吸って、老軍人として最後の威厳を保つための命令を出した。
「記録はこうだ」
「はっ」
「豪華客船ロイヤル号、本区域において正体不明の武装集団の襲撃を受ける」
「はっ」
「容疑者は自称『黒猫盗賊団』」
「はっ」
「犯行の内容には、武装による脅迫、財物の略取、艦内放送のジャック、ならびに――」
ここで喉仏が難儀そうに上下した。
「ならびに、上流社交場に対する無許可の演劇的改造が含まれる」
記録中尉の手が小さく震えた。
「長官、最後の一文……そのまま記録いたしますか」
当直少佐は彼を見た。その目は、すでに俗世を超越していた。
「そのまま書け」
「了解」
「それからだ」
「はっ」
「巡回艇を三艘出せ」
「はっ」
「それと、先日の黒猫盗賊団関連の案件分類報告を持ってこい」
「再分類なさるおつもりですか」
当直少佐は、窓の外に広がる、冗談のように暗い宇宙を見つめた。声は穏やかだった。
「いや」
と言った。
「前回、自分たちが一体何を根拠に『もうこの狂人どもを十分理解した』と思い込んだのかを確認したいだけだ」
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