15. プロトタイプ 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
博士はすぐには出ていかなかった。
ベッドサイドでデータをもう一度確認し、俺の呼吸と心拍が本当に下降傾向に入ったのを確かめてから、医療箱を閉じる。
「昼までは刺激物は避けること。熱すぎるシャワーも駄目。高強度の活動も禁止」彼は言う。「呼吸リズムの乱れ、視界の過剰な明度、四肢の震えが再度出たら、すぐ医療モニターを呼びなさい」
ベッドヘッドに寄りかかったまま、少し重いまぶたを上げる。
「博士」
「何だね」
「次、またこんなことになったら」
「うん」
「本当に、あなたの実験報告書の上に吐くかもしれませんよ」
博士は俺を見て、あっさり答えた。
「それなら、回復は順調ということだ。反抗する余力がある」
医療箱を持ち上げ、ようやく部屋を出て行く。
ドアが閉まると、部屋はまた静かになる。
だがさっきまでの静寂とは違った。
後頭部のパッチが、まだじわじわと冷たさを流し込んでいる。絡まりきった神経の上に、薄い氷の膜を貼っているような感覚だ。窓の外はすでに完全に明るく、基地の遠くからかすかな訓練警報が聞こえてくる。新しい一日の開始を知らせる音——その中で、俺だけが、少数の「一時停止中」に回された。
皮肉な話だ。
昨日まで、「少しはこの場所のリズムが分かってきたかな」と思っていた。今日、二本の薬にまとめて殴られ、ついでに尊厳まで火葬に回された。
ゆっくりと体を沈め、枕に顔を半分埋めて、天井を見上げる。
午前は休整。午後は戦術判読。三日間、薬剤は二重チェック。L-7は一時停止。
レオが、俺のリズムを自ら調整した。
これは保護じゃない。修正だ。「俺は簡単に燃え尽きていい消耗品じゃない」と、誰かがようやく認めたということだ。
……少なくとも、今のところは。
目を閉じて、口角をわずかに持ち上げた。
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「午前休整」と聞いて、ベッドの上で高級な雑巾になる許可だと解釈した。
半分だけ合っていた。
確かに半分は、ベッドの上でくたばっていた。
後頭部の抑制パッチはまだ貼られていて、薄い氷の刃を何枚も重ねて、昨夜の薬害でぐちゃぐちゃになった神経を丁寧に削ぎ直されているみたいだ。体はまだ少しだるく、手足は一枚薄い膜を挟んだみたいに違和感がある。力は七割くらい戻ってきていて、残りの三割は医療システムのどこか遺失物センターにでも置き忘れてきた感じ。
天井を見上げながら、真面目に考える。
——今日を正式に『聯邦特戦キャンプ・高級軍用品メンテナンスデー』と命名するべきか。
文学的には悪くない。出版してくれる出版社は、この世に存在しないだろうが。
チャイムが鳴ったとき、てっきりモニター担当がパッチ交換に来たのだと思った。
だから髪を直す気力もなく、ほぼ廃品回収待ちの状態でドアを開けに行った。
ドアを開けた瞬間、煙草の匂いがした。
濃くはない。ごく薄い。危険と不機嫌を一緒に塩漬けにしてコートに染み込ませて、そのまま上品に連れてきたような匂い。
ミラが立っていた。
黒灰色の戦術ジャケットをゆるく羽織り、短く刈った髪はナイフで断ち切ったみたいに鋭い。右目の義眼には、細い青いラインが光っている。今日は葉巻はくわえていないらしい。この部屋に医療モニターが付いているのを知って、一応文明人としての自制心を発揮しているようだ。
まず俺を一瞥する。
顔色から肩のラインまで、さらにまだ少し頼りない足元まで、ざっと検分する。
昨日まで普通に撃てていたのに、今日は整備ラインに戻されている銃を査定する目だ。
「生きてるな」結論を下す。
ドア枠にもたれながら、掠れ声で返す。
「ご心配痛み入ります。人生で一番優しいお見舞いの言葉です」
ミラは鼻を鳴らし、そのまま部屋に入り、金属製の小さな缶を机の上に放った。
見下ろす。
電解質補給ドリンク。
軍用。
パッケージのダサさからして、「味には一切期待するな」と親切に教えてくれている。
俺は顔を上げて彼女を見た。
「わあ、手土産まで」
「勘違いするな」ミラは言う。「今日の午後、授業中にあんたが倒れたら面倒だからだ」
……なるほど。
これはミラだ。
完璧に、ミラだ。
彼女は部屋の中を一周し、視線がベッド脇の医療パック、使用済みパッチの包装、机の上の飲みかけの水を流れていく。座ろうとはせず、机の端に寄りかかって腕を組む。高級な災害そのものが、被害状況を検分しに来たような佇まいだ。
「昨夜は派手だったらしいな」
俺は片眉を動かした。
「『二本の薬に共謀されて事故教材になりかけた』という意味なら、なかなかドラマチックでした」
ミラは俺を見て、口元をごく薄く動かした。
「今朝、もう営内に広まってる」
目を閉じる。
「やっぱり」
「一番笑えるバージョン、知りたいか?」彼女はゆっくりと言う。「バージョン一、部屋の中で痙攣して医療モニターを叩き起こした。バージョン二、博士が深夜に配合表を引っ張り出して、死人より顔色が悪かった。バージョン三——」
少し間を置いて、わざとこちらを見る。
「大佐が直接あんたの部屋に入って、かなり長い時間いた」
俺は無表情で彼女を見る。
「そのバージョン、フロア中の目を洗浄するのに最適ですね」
ミラの口元の笑みが、ようやく少しはっきりした。
「安心しろ。ここの噂は人より早く育って、人より早く死ぬ」
「励みになります」
「バージョン四もある」彼女は付け足す。「あんたが博士の美しい配合プロセスに、でかい穴を開けたというやつだ」
それは少し興味が湧いた。
眉を上げる。
「そのバージョンは気に入りました」
「本当のことだからな」ミラは言う。
部屋が一瞬静まり返った。
彼女は俺を見た。義眼の青い光が、ほんのわずかに収縮する。
「ここで一番厄介なのが何か、分かるか、星野?」
「上官が多い。狂人も多い?」
「違う」彼女は言う。「誰もが自分でリスクをコントロールできると思っている。そのリスクが足を生やして走り出すまでは」
その言葉は平板で、どこにも力点がなかった。
でも俺には分かった——彼女は俺を笑っているんじゃない。
システム全体を笑っている。
それは少し意外だった。
ドア枠に寄りかかったまま、ゆっくり口を開く。
「つまり今日来たのは、走り出したリスクに俺が食われてないか確認するため?」
「半分な」
「残り半分は?」
ミラは俺を一瞥して、相変わらず毒のある口調で言う。
「薬を少し食らって、少し転んで、少し恥かいたくらいで、殻に閉じこもって泣き始めるタイプじゃないか確かめに来た」
……本当に、口の悪い人間だ。
なのに、なぜか笑いたくなる。
「残念ながら」俺は言う。「泣くとしても、医療モニター付きの部屋は選ばない。優雅じゃないので」
ミラが鼻を鳴らした。
「その口だけはちゃんと回復してるな」
彼女がいきなり手を上げ、予告なしに何かをこちらへ投げた。
ほとんど反射で手を出す。
パシッ。
訓練用の薬莢だ。冷たく、小さく、手のひらに落ちてきた。
一瞬止まる。
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