212.出撃 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
艦橋に戻ってから、作戦会議はわたしの予想よりずっと短い時間で散会した。
理由は単純だ。
計画が既に、二人の学生をエウロパの氷層下の内海へ押し込んで帝国の潜水艦を盗み、その潜水艦でプラットフォームとアンテナ群の顔面にミサイルを連発するという水準の狂気に達している場合、会議というものの機能はもはや「より合理的な案を探す」ことじゃなくなる。全員が本格的に発狂する前に、自分の負担分をきちんと引き受ける場に変わるのだ。
わたしとジェスは更衣室へ追い出された。
更衣室といっても、実際にはアスガルド後部区画の脇にある戦術整備室だ。壁には、普段は訓練カリキュラムでしか登場しない、見た目はプロっぽくて着ると尊厳が地面に落ちる装備がずらりと掛けられていた。もっとも目立つのが、あの深い青の全環境作戦服だ。
「やっぱり抗議したい」鏡の前でファスナーを鎖骨まで引き上げながら、高級冷凍食品みたいにパックされた自分を見て顔をしかめる。「この服のデザイナーは絶対に青春期の女に恨みがある」
「同意」袖口の密閉リングを調整しながら、ジェスが力強く頷いた。「この服の裁断、連邦教育体系のボディラインに対する敵意を完全に体現してる」
「そういうことを議会答弁みたいに言えるのはなぜ」
「本気だから」ジェスはため息をつき、腰のあたりを叩いた。「しかも、この服にはとんでもない効果がある」
「何の効果」
「着ると、今日は絶対にバカなことをやりに行くんだと自動的に確信できるようになる」
少し考えて、その分析が驚くほど正確だと認めるしかなかった。
作戦服そのものは着るのに苦労しない。問題は、その触感と包覆感が「任務前夜」の匂いを強烈に放っていることだ。関節の密閉リングをはめ、頸環のロック音が響いた瞬間、低予算の軍事プロパガンダ映像に自分だけ放り込まれたような気分になる。次の瞬間には、本人は寮に帰って寝たいだけなのに、無駄に熱血なBGMが流れ出しそうだった。
「副艦長」ジェスが鏡越しにこちらを覗き込み、悪戯っぽく笑った。「それ、意外と似合ってるよ」
「どこが」
「普段は口うるさいくせに、いよいよ運命に氷水をぶっかけられに行く人、みたいな美しさがある」
「あんたの審美センスは毎回わたしの我慢の限界を正確に踏んでくるな」
「これを隊友の誠実さっていうんだよ」
「これを早死にの素っていうんだよ」
最後のバックルを留め、肩を回してみる。林間学校の時よりは関節の追従性が改善されている気がする。少なくとも、しゃがむたびに骨と布地が互いに訴訟を起こしそうな窒息感はない。おそらく今回の用途がより専門的だから、蘭の言う通り、潜水装備として使うほうがずっと理にかなっているのだろう。
前提として、本当に水に入ることを受け入れていれば、だが。
そして今のわたしは、頭ではすでに受け入れているのに、感情だけがまだ逃げ道を探しているという、微妙な状態にあった。
装備を整えたわたしたちは、アスガルド後部区画へ向かうよう指示された。
そこは、さっきまで見ていた皇族生活区とは完全に別の世界だった。
星穹もない。温泉もない。ジェスが涎を垂らして革命を起こしたがっていた高級軍官クラブもない。後部区画の空気にあるのは金属と潤滑油と低周波の震動、それから「ここでやっているのは人を楽しませる仕事じゃなく、人を生かすための仕事だ」という実務的な匂いだけだ。管線が壁と天井を這い、指示灯が一列ずつ点滅し、時折整備員や輪機班の学生が脇を早足で通り過ぎ、わたしたちの格好を見て複雑な敬意――あるいは同情の目を向けてくる。
正直、前者であってほしい。
後部整備プラットフォームには、蘭とアカリがすでに待っていた。
「着替えたわよ」歩み寄りながら、襟元を引っ張る。「そろそろ答えを教えてくれてもいいでしょ、二人のフーディーニ大師?」
蘭はすぐには答えず、アカリと目を合わせた。
次の瞬間、二人は脇の大型遮蔽布を一気に引き払った。
「ジャジャーン」ジェスがなぜか効果音までつけた。
わたしがまず見たのは輪郭だった。
次の瞬間、その全貌が露わになり、わたしの表情もひどく複雑なものになった。
それは小型潜水艇のようで、同時に魚雷と救命カプセルを無理やり縫い合わせて、危険な玩具好きの人間に再設計させたような短距離用の乗り物だった。船体は細長く、外殻は灰黒色。前部には透明な観測キャノピーがあり、両側には短翼状の安定構造が収まっている。尾部には明らかに改造された高圧噴射推進ユニット。全体の大きさは、人間二人と、運命が嘲笑うためのわずかな余地がちょうど収まるくらいだった。
その物体を三秒ほど見つめた。
「……これは何?」
「短距離突撃艇」蘭はごく自然に答えた。新しく買ったコーヒーメーカーを紹介するような口調で。「Dが倉庫から掘り出してきた」
「Dは倉庫で装備を探してるんじゃなくて、考古学をやってない?」
「両方じゃない?」ジェスが楽しそうに言う。
アカリはすでに立体地図を投射していた。半透明のエウロパ断面図がプラットフォームの上方で回転し、氷殻、通路、内海、プラットフォーム、アンテナ群が層ごとに展開する。見ているだけで骨まで冷えそうな光景だった。
「外層用の宇宙服を着て、この突撃艇に乗り込む」アカリが地図上の侵入ポイントを指した。「機体の短距離推進は高圧窒素。エウロパの地表区域に入ってから、こちらがマークした外周排気帯に沿って接近する。排気口を見つけたら、そこから切り込める」
わたしは瞬きをした。
「ちょっと待って。今、『排気口』って言った?」
「言った」アカリは映像を拡大する。氷層の表面のある場所に、細い亀裂と人工補強の痕跡が現れた。「ユグドラシルが修正した図資によれば、ここに整備管道がある。海面下までつながっていて、帝国はもともと圧力調整と緊急整備通路として使っていた」
蘭が続けて補足する。
「入ってから、海面下でDPVに切り替える。機体にはソナー誘導がついているから、それを頼りに内海で潜水艦を見つけられる」
彼女はさらっと言う。
まるで「後でスクールバスで山を下りて、角を曲がればコンビニがある。道標があるから迷わない」とでも言っているかのような軽さだった。
だが、問題は、わたしたちが行くのはコンビニじゃないということだ。
エウロパの氷層下、帝国の軍事施設がある内海へ、水中スクーター二台で潜水艦を探しに行くのだ。
この任務がどうやって会議で真顔で承認されたのか、本気で訊きたくなった。
――けれど考えてみれば、あの会議の席に座っていたのは、わたし自身でもある。最後に頷いたのも、わたしだ。
よろしい。元凶の一人は、間違いなくわたし自身だった。
アカリは突撃艇の脇に歩み寄り、外殻を軽く叩いた。
「艇の中に武器がある」アカリが言った。「途中で重要な装備を落とされないように、真紀の指示で、あらかじめ艇内に固定しておいた」
「その言い方、すごく失礼に聞こえるんだけど」わたしは言った。
「過去のデータに基づいたリスク評価よ」アカリは無表情だ。
「どのデータ?」
アカリはわたしを一瞥した。
「主に、ジェスのデータ」
わたしは即座に黙った。
その反論には一切の隙がなかった。
蘭が防水バッグを渡してくる。受け取った瞬間、その重みで手首を持っていかれそうになった。
「中身は酸素マスク、予備フィルター、それから水中爆薬が数セット」蘭が言った。「突撃艇の中でうかつに開けないで。内海に入ってから確認して」
「なんで、その『うかつに開けないで』って台詞、あたしを見ながら言うわけ?」ジェスが抗議した。
「前科があるから」
「いつ!?」
「前の演習の時、装備バッグにお菓子を隠してた」
「あれは戦術補給!」
防水バッグを艇内の固定スロットに押し込みながら、コックピット内をざっと見る。中は思っていたよりずっと完備されていた。前後二座、コントロールパネルはシンプルだが、データ表示、姿勢指示、圧力モニター、外部環境の読み取り値まで、必要なものは全部揃っている。両側には緊急用武器の固定スロットと磁気固定ポイント。単なる観光用のオモチャじゃないことは明らかだった。
つまり。
これは本当にわたしたちを地獄へ送り込める装備で、しかもその送り込み方が非常に丁寧だということだ。
「任務実行中、アスガルドは近くの小惑星帯の掩蔽ポイントに錨を下ろす」アカリが続けた。「熱源とシルエットの露出をできる限り抑える。任務完了後は、プラットフォームの火力の偏りに合わせて、F班の回収ルートを修正する」
「頼もしく聞こえる」わたしは言った。
「それは、彼女たちがあなたをどうやって回収するつもりか、まだ見てないから言えるんだよ」ジェスが横で小声で補足した。
「……その情報は要らなかった」
アカリはわたしたちの精神的消耗を完全に無視して、淡々と頷いた。
「とにかく、健闘を」
健闘を。
この三文字は、他人の口から出るときは、たいてい社交辞令だ。
アカリの口から出ると、「これからあなたたちは常識では消化しきれない事態に遭遇する確率が高いので、医療班を代表してあらかじめお見舞い申し上げます」に近い意味になる。
ジェスと目が合う。
ジェスの目は、非常にまずい光を放っていた。
わたしは、自分の表情が高リスクな臓器提供同意書にサインしに行く人間のように見えないよう、懸命に努力した。
わたしたちは突撃艇に乗り込んだ。
コックピットは想像よりずっと狭く、二人が入った瞬間、「よし、これで弾殻に詰め込まれたぞ」という実感が押し寄せてきた。安全ベルトのバックルを締めた瞬間、外殻から重厚なロック音が響き、心の中でまだ抗おうとしていた部分も、現実にカチリと施錠されたような気がした。
蘭が外から最終確認を行い、頸環、酸素供給、圧力弁、コックピットの接合部を一つずつ確認していく。
「通信テスト」蘭が言った。
「星野シモ、生存」わたしが答える。
「ジェス・マッカロウ、心配になるほど精神状態は良好」ジェスが言った。
「なら正常だ」アカリの評価は容赦がない。
ジェスの尊厳のために黙祷を捧げる間もなく、イヤホンの中で真紀の声が響いた。
「時間だ」
その声が入った瞬間、コックピット全体の空気が少し狭くなったように感じた。
「ジェス。エンジンをかけて」
……ん?
一瞬、思考が止まった。
それから猛然と振り返った。
「ちょっと待て」わたしの声は、あまりにも純粋な恐怖のせいで、少し裏返っていた。「ジェス・マッカロウ、あんたこれ操縦できるの?」
ジェスはすでに操縦桿に手をかけていた。コックピットの薄明かりの中で、その横顔は異様なほど自信に満ちていた。
その自信は非常にまずかった。
専業家の落ち着いた自信じゃない。
「ああ、ようやくあたしの出番が来た」という種類の、楽しそうな自信だ。
その表情を見ただけで、うなじがじわじわとしびれ始めた。
ジェスは鼻を鳴らし、文化祭で秘蔵の隠し芸を披露する前みたいに得意げな顔をした。
「笑わせないで」ジェスは言った。「あたしが昔ゲーセンで、同い年の連中から何て呼ばれてたか知ってる?」
わたしの心は沈んだ。
普通の沈み方じゃない。氷海の深度計がまだ潜り始めてもいないのに、心理的な谷底まで真っ逆さまに落ちていくような沈み方だった。
「……何て」
ジェスは口の端を上げた。
「スペース・カウボーイ」
その瞬間、わたしは全身で爆発した。
「やっぱりそうだと思ったよぉぉぉぉ!」安全ベルトを掴み、声が副艦長として保つべき冷静さの限界を瞬時に突き破る。「ゲーセンの戦績で自信をつけてる人間に命を預けるなんて絶対ダメだって、誰か分かってくれよぉぉぉぉ――!」
次の瞬間、突撃艇尾部の高圧窒素推進器が猛烈に噴射した。
艇全体が、人生に相当な不満を抱えた神様に蹴り飛ばされたみたいに、シュッという音とともに前方へ弾け出た。わたしの悲鳴はコックピットの中でひとつ折れ曲がり、警告音と同じ言語に混ざりかけた。外の整備プラットフォームの灯りが瞬時に後退し、蘭の姿も、アカリの投影も、アスガルド後部隔壁の黒い金属のラインも、視界の中でそれぞれ一本の残像に引き伸ばされていく。
そしてジェスは――
本当に、笑っていた。
陰笑でも、虚勢でもない。
純粋で、愉快で、非常に殴りたくなる笑いだった。ずっとこの瞬間を待ちわびていたみたいに。世界が危険になればなるほど機嫌がよくなる性質みたいに。氷海も、帝国基地も、潜水艦も、ミサイルも、わたしの悲鳴すらも、彼女にとってはすべてが超高難度アトラクションの開幕にしか見えていないのだろう。
わたしは扶手を力いっぱい握り、加速の振動の中で歯を食いしばった。
――結構。
非常に結構だ。
エウロパへのこの旅で、最初に立ち塞がる敵は、帝国でも氷海でも潜水艦でもないらしい。
ジェスの操縦センスだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




