210.木星へ 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私が艦橋に戻った時、歩みは安定していた。
少なくとも、そう見えた。
帝国の黒い長靴が甲板を叩き、過剰なほど冷静な音を立てた。一歩一歩が、まるで私のために先に宣告しているかのようだった——よし、星野副艦長、短い離線はここで終わり。さっさと頭を第三皇女の部屋から引きずり出して、戦術席に詰め込みなさい。
問題は、足は戻れても、頭は必ずしも戻れないということだ。
さらに厄介なのは、あれは頭の問題ではなく、体温の問題で、視線の問題で、軽いのに胸に引っかかって降りてこない言葉の問題だということだ。あれは艦載コンテナのように損管班が封印して倉庫に送れるものではない。規格外の私物のように、堂々と指揮中枢に付いてくるのだ。
簡単に言えば。
私の体は戻ってきた。
心の一部は、まだヘートヴィヒの部屋の扉の前で居座っていた。
そして艦橋というのは、何もなかったふりをしたい時に、専門家を派遣してその顔の皮を標的にする場所だ。
「小さなお姫様はいかがでしたか?」
案の定、最初に撃ってきたのはジェスだった。
ジェス・マッカロウはコンソールの縁に全身を預け、黒市で一番の特ダネを買った娯楽記者のように笑い、目を輝かせていた。その目は損害管制官と恋愛小説のナレーターを副業にしているのではないかと疑わせるほどだった。
「胸に抱かれて、『シモつらいよ』みたいなバージョンはあった?」ジェスはさらに語尾を甘く引き伸ばし、私の生理的嫌悪感を刺激するのに十分なほど粘着質にした。「ああ、私のお姫様——」
「黙りなさい、ジェス」私はまだ席に完全に座り切る前に、国際的な友好のジェスチャーを一つ送った。「そのシナリオは三流の詩人でさえ恥ずかしくて路上で歌えないわ」
「あらあら、そんなに怖い顔して」ジェスは少しも傷つかず、むしろさらに意地悪そうに笑った。「じゃあ本当に進展があったのね?」
「あなたの頭が外装甲の補修に使えたら、防御力が少なくとも五パーセント上がるわ」
「それ、褒め言葉として受け取るわ」
「私はそんなつもり——」
「それで?」真紀の声が割り込んできた。
九島真紀は艦長席に座っていた。帝国の黒制服を着た彼女は、他の誰よりも刀の鞘のような整然さを帯びていた。ジェスのように言葉を花飾りにして飛ばすことはせず、ただ私を一瞥した。その一瞥は薄く、正確で、人の喉を乾かせるのが上手かった。
「抱き合ったの?」
艦橋が半秒静まり返った。
それからジェスが、意味が非常に下品で、感情が非常に豊かな「おおー」という声を出した。
私は危うく手の戦術板に亀裂を入れそうになった。
「お願い、私が行ってどれくらい経ったと思ってるの」私は声を平らに保ち、副艦長らしい専門的な口調で、ある種の非常に専門的でない後ろめたさを隠そうとした。「ヘートヴィヒを部屋に送ったらすぐ戻ってきたわ」
「本当に?」真紀は私を見た。
この女は普段、戦術会議で人をX線で照らすように見る。今その目で私を見ると、戦術スキャンよりずっと質が悪い。戦術スキャンで分かるのはせいぜい腰に銃があるかどうかだが、真紀のこの目は、私の魂がさっき皇女の部屋に置き忘れてきたかどうかを問うているようだった。
「抱擁くらいなら、別にいいのよ」真紀はゆっくりと言った。
「額に触れるくらいも、いいわ」ジェスがすぐに引き継ぎ、何か存在してはいけない感情促進研究会に参加しているかのような熱意を見せた。
「頬をすり合わせるくらいも、いいわよ」彼女はさらに加算した。
「口づけ——」
「ジェス・マッカロウ」真紀が口を開いた。
音量は上げず、机も叩かなかった。
だがその六文字が落ちた瞬間、艦橋の空調さえ空気を読んで自動的に半度下がったかのようだった。
「これ以上言ったら、艦橋の外で罰立ちよ」
「え?」ジェスは天下の大冤罪を受けたような顔をした。「私、艦長に合わせていただけじゃないですか。さっきは二人漫才をしていると思ってたんですけど——」
「ジェス」私は今生で最も誠実な口調で言った。「黙りなさい」
「副艦長まで怒るんですか」
「それはあなたが本当に手に負えないから」真紀はそう言い終えてから、視線を私の顔から主投影へと移した。「いいわ、冗談はここまで。会議に戻る」
真紀のこの言葉は見えない刃のように、さっきの乱雑で甘ったるく、社会的に死にそうな起鬨を真っ二つに切った。
次の瞬間、艦橋は艦橋に戻った。
つまり、巨大で、冷たく、高価で、いつでも全員まとめて地獄に送れる職場に戻った。
私は副艦長席に座り、戦術板を起動した。青白い星図が宙に展開し、オリオン座α付近の航路は割れたガラスのように細かく美しく、不吉だった。さっきのジェスの言葉の連なりは、何かの艙室に押し込まれて封印されたようで、まだ完全には消えていないが、もうここに持ち出すのは適切ではなかった。
これがアスガルドの艦橋の日常だ。
一分前には頬をすり合わせていいかどうかを議論していた。
次の一分には、人を祖先十八代ごと引力の井戸に折り畳む死の回廊を突破するかどうかを議論しなければならない。
帝国皇族特造艦の職場環境は、心理士を即日退職させるほど健全だ。
「重要事項を整理するわ」真紀が口を開いた。
メイン投影に航路図が拡大され、オリオン座αの狭い回廊区域が点灯した。刃先で刻まれた傷口のようだった。
「今の私たちの目標は、帝国軍と戦い続けることではない」真紀は言った。「連邦に帰る方法を考えることよ」
艦橋の全員が頷いた。
アスガルドを奪ったことが「以後天下無敵」を意味するなどと誤解するほど馬鹿な者は、ここにはいない。フライブルクが蒸発した光景はまだ全員の網膜に焼き付いている。だが問題は、トール・ハンマーで帝国全体を一隻ずつ指名して消せるわけではないということだ。
神の兵器は強い。
だが帝国全体に盗まれた戦利品として追われたら、最終的には面倒なことになる。
真紀は手を上げ、星図上に一本のルートを引いた。
「だが連邦に帰るには、オリオン座αの狭い回廊地帯を必ず通らなければならない」
私は話を引き継ぎ、指先で赤いマーカーを拡大した。
「ホーエンツォレルンが、そこで待っている」
この名前が出た瞬間、ジェスでさえもはしゃぐのをやめた。
ホーエンツォレルン。
それは一隻の船でも、普通の艦隊でもない。帰路の咽頭に硬く食い込んだ骨だ。要塞、封鎖、火力ノード、重力異常帯——すべての面倒なものが申し合わせたように積み重なって、そこで私たちが自ら飛び込んでくるのを待っている。
「超光速航行は不可能?」蘭・ヴァイスが眉をひそめた。
通信長として、蘭の声は普段ほとんどの人より安定している。だが今、その安定の中にも、不承不承な現実感が少し混じっていた。悪い知らせを伝えるのが彼女の仕事だからといって、彼女がそれを好きなわけではない。
「ジャンプの再起動は?」蘭はまた尋ねた。
「不可能よ」真紀は答えた。処刑の宣告のように簡潔だった。「あの地帯は重力異常、航行不能区域、小型ブラックホール群に満ちている。アスガルドのユグドラシルが顔を立ててくれたとしても、物理法則が突然神話を信じ始めるわけではないわ」
彼女は一拍置き、さらに付け加えた。
「強行突破しようとしたら、ロイが先に正気を失うわ」
指名されたロイ・ハルトマンは乾いた笑みを浮かべた。
謙遜ではない。「この千三百五十メートルの皇族の怪物を重力異常と小型ブラックホールの間に通せ」と言われた専門の操舵士が、最低限の社交礼儀を保つために絞り出した文明的な表情だ。
「一応言っておくけど」ロイは操作手袋を直し、まるで自分の精神状態のために事前に遺書を書いているかのような真剣な顔で言った。「もし本当にそこまで行ったら、正気を失う前に、なるべく船を真っ直ぐ保つようにするわ」
「感動的ね」ジェスは言った。「危うく涙が出そうだった」
「それ、幸災楽禍よ」
「くだらないこと言ってないで、長生きした方が現実的よ」私はルートを手前に引き寄せ、あの悪意そのもののような狭い航路を見た。「今のところ唯一可能な方法は、直接強行突破して、『ニフルヘイムの霧』を起動することよ」
艦橋の中央に対応するシステム情報が浮かび上がった。それはアスガルドの特殊なステルス・光学迷彩システムで、理論上はこの帝国の王座級の怪物を霧の中の山影のように、敵のセンサーに輪郭は見えても実体は掴めない状態にできる。聞こえはいいが、実際に使うと、損害管制官と機関長が二人そろって早期に禿げるほどのリスクを伴う。
「理論上は可能よ」私は言った。
「『理論上』という三文字を付けた途端、急に嫌な予感がしてきた」ジェスが口を挟んだ。
「あなたの直感が、たまに理性に追いついているってことよ」
「副艦長、あなたが人を罵倒する時、本当に魅力的ね」
「ありがとう、そういう評価を得たかったわけじゃないけど」
続きを話そうとした時、通信の割り込み音が艦橋の周波数に突然入ってきた。
パチンという音と共に、ハーヴィー・ノックスの機油まみれの顔が投影の隅に現れた。
その画面の衝撃は強烈だった。
艦橋が高価な皇族の観星廳だとすれば、機関室は明らかに文明社会が「動けばいい」という言葉を最も赤裸々に実践している場所だ。ハーヴィーはそこに立ち、機油と疲労を顔に貼り付け、四台の反応炉と素手で戦い終えて、勝敗未決のような状態だった。
「失礼、機関室から割り込むよ」ハーヴィーは言った。
「どうぞ」真紀は頷いた。
ハーヴィーは息を吸い、技術者特有の平静な表情をした——つまり、平静であればあるほど、事態は通常より深刻だということだ。
「水を補充した方がいい」
艦橋が二秒間静まり返った。
私は瞬いた。
ロイも瞬いた。
蘭も瞬いた。
責められても仕方ない。その言葉はあまりにも場の空気を壊す冷笑話のように聞こえたからだ。
帝国の封鎖を突破する方法、重力異常を越える方法、神話級の戦艦を連邦に帰還させる方法を議論していたら、機関室が突然入ってきて言った——すみません、みなさん、先に水の問題を片付けましょう。
宇宙戦史の荘厳さは、よくこうやって死ぬ。
「氷でも液体でも構わない」ハーヴィーは続けた。「こっちには四台のヘリウム・水素駆動炉が動いている。さっきの交戦で損傷したいくつかの区画は何とか安定させたが、改めて確認したら、水の備蓄量が足りない」
「数千年後も、人類は水不足の問題に直面している」ジェスは肩をすくめ、全銀河文明の輓歌を書いているかのような悲痛な口調で言った。「科学の進歩に一体何の意味があるのか」
「少なくとも、あなたが艦橋で無駄話をして真空に吸われなくて済むようにしてくれているわ」私は言った。
真紀は私たちを無視し、直接要点を掴んだ。
「地球の水は使えないの?」
ハーヴィーは「濃いスープを反応炉に入れてみますか」という顔をした。
「頼むよ、これはヘリウム・水素駆動炉で、廃水回収炉じゃない」ハーヴィーは手を上げ、汚れていて、工業文明に何度も踏み躙られたような色をした汚染星を一つマークした。「炉を直接廃棄したいなら、あそこのものを使えばいい」
「なるほど」ジェスは頷いた。「つまり私たちが不足しているのは水ではなく、『艦を燃やさない高級な水』ね」
「その表現は意外と正確だ」ハーヴィーは言った。
私は手でこめかみを押さえた。
帝国の皇族特造艦。
四台のヘリウム・水素駆動炉。
皇帝級 戦闘巡洋艦を蒸発させたばかり。
全艦、帝国黒制服の連邦の学生。
今、どこで清潔な水を見つけるかを真剣に議論している。
この光景は荒唐無稽なほど完結している。
私は深呼吸し、突っ込みたい気持ちと副艦長の職責を一緒に飲み込み、ユグドラシルに向き直った。
「コンピューター、固体水または液体水の補充に適した場所を推薦して」
ユグドラシルの、神託のようでもありカスタマーサービスのようでもある、いつも通り平穏な声がすぐに応答した。
「木星の衛星、エウロパをお勧めします」
メイン投影が即座にエウロパのデータ図に切り替わった。白い氷層、深層海洋、資源の標記。美しくて、「よかった、水がある」という楽観的な錯覚を引き起こすのにちょうどいい。
それからユグドラシルは次の一文を加えた。
「ただし、エウロパには帝国軍が駐留しています」
艦橋の空気が再び冷えた。
私はその注記を二秒見つめ、最後に堪えきれなかった。
「あなたも帝国軍のシステムでしょう?」私は言った。「まるで自分が連邦のシステムみたいに言うわね」
ユグドラシルは一瞬の間もなく答えた。
「私はヘートヴィヒ殿下のものです」
ジェスがその場で意味深長な「わおー」という声を出した。
私も危うく一緒に「わお」と言いそうになった。
この答えをどう言えばいいか——あまりにも直球だ。テーブルに突き刺した刃のように直球だ。帝国、連邦、艦艇システム、軍事識別、あらゆる大義名分が、その言葉の前では突然余分に感じられた。
帝国のものではない。
艦隊のものでもない。
どの制度のものでもない。
ヘートヴィヒのものだ。
ある意味で、この言葉はアスガルド自体よりもアスガルドらしかった。
高貴で、任意で、危険で、自分が忠誠を誓う対象を常識的な倫理の順序で並べるつもりが全くない。
こんな時に彼女のことを思うべきではなかった。
それでも思ってしまった。
彼女の部屋の過剰なほど静かな空気。真っ直ぐ立っているのに今にも割れそうな背中。私だけが見える距離で、ついに見せた小さな脆さ——それは弱さでも甘えでもなく、あまりにも多くのものを切り続けた刃が、ある瞬間にほんの少し震えるような脆さだった。
そして私は、自分がさっき本当に彼女を抱かなかったことを思い出した。
額に触れなかった。
頬をすり合わせなかった。
ジェスが十八ページの低俗な脚本を即興で書けるようなことは、何一つしなかった。
だが問題は、何もしないことが、実際に何かをするよりもずっと厄介なことがあるということだ。
なぜなら、それはしたくなかったのではないということだから。
手を伸ばしたら、多くの境界線が戻れなくなるとわかっていただけで。
「副艦長?」蘭が静かに私を呼んだ。
私は我に返り、メイン投影をずいぶん長く見つめていたことに気づいた。
「……ごめん」私は咳払いをし、意識を戦術マップに引き戻した。「エウロパは選択肢の一つだが、帝国軍が駐留しているということは、補水任務を半強行・半浸透作戦として考えなければならないわ」
真紀は頷き、明らかにすでに会議を正しい軌道に戻していた。
「感情相談と高級飲料水の問題は後にして」真紀は言った。「今、いくつかのことを確認するわ。第一、アスガルドは現在の備蓄では長距離帰還は不可能。第二、ホーエンツォレルンの封鎖線は必ず通る必要がある。第三、反応炉の用水を先に補充しなければ、その後のどの方案も、より体裁よく死ぬ方法を議論しているだけになる」
「艦長、その総括は本当に安心感があるわ」ジェスは言った。
「なら安心しながら仕事しなさい」
ロイが手を上げた。クラス会で、みんなが今すぐ壁に突っ込もうとしているのを指摘せざるを得ない可哀想な会計係のように。
「エウロパへ向かうとしたら、航路は木星の重力井の縁に近づく。アスガルドは通れるが、高調な加速モードは避けなければならない。でないと帝国の駐留軍は目が見えなくても、怪物が家に侵入してきたとわかる」
「通信面も厄介ね」蘭は眉をひそめた。「エウロパには帝国の哨戒ネットワークがある。正規の通信をしたら痕跡が残る。潜入するなら、外部への信号を最小限に抑えるか、帝国内部の移動を偽装しなければならない」
「それは少し使えるわね」ジェスは顎に手を当てた。「全艦が帝国黒制服を着ているんだから、使わないと服装予算に申し訳ない」
「ようやくまともなことを言ったわ」私は言った。
「副艦長、今日あなたが人を褒める方法はやはりひどくねじれているわ」
「ありがとう、私は性格が安定しているから」
「それは誇れることじゃないと思うけど……」ロイが小声で突っ込んだ。
私は無視して、直接行動の枠組みを示した。
「エウロパへ行くなら、三層で考える必要がある」私は手を上げて戦術タグを引き出した。「第一層、アスガルド本体はステルスを維持し、駐留軍の主力と正面接触しない。第二層、必要に応じて小隊が資源施設や倉庫ポイントを処理し、高純度の氷体と液体水を優先的に確保する。第三層、いかなる接触も『帝国内部の異常な移動』というグレーゾーンに収め、相手が最初から連邦の学生が皇族の旗艦を乗り回して水を盗みに来たと判断しないようにする」
「このタイトル、気に入ったわ」ジェスは言った。「みすぼらしくも気品があるって感じ」
「今の私たちは、まさにみすぼらしい中で気品を保っているのよ」真紀は淡々と言った。
この言葉はあまりにも的確で、私は拍手したくなった。
そう、みすぼらしい中で気品を保つ。
これがアスガルドの現状を最もよく表している言葉だ。
外から見れば、帝国の特造旗艦で、黒曜石のような皇族の怪物で、フライブルクを宇宙の塵に変えられる王座級の兵器だ。内から見れば、睡眠不足で、感情過負荷で、反応炉の用水のために悪態をつきたい学生士官の集団だ。
荒唐無稽。
だがその荒唐無稽さゆえに、かえってリアルだ。
「機関室からもう一つ」ハーヴィーは投影の中で咳払いをし、存在感を取り戻そうとした。「エウロパへ行くなら、長引かせないで。こっちは持ちこたえられるが、その『持ちこたえ』は医者が家族に『今のところ安定しています』と言う時の意味であって、患者がマラソンを走れるという意味じゃない」
「了解」真紀は言った。「ハーヴィー、現状を維持して。必要な物資はリストにして提出して」
「了解」ハーヴィーは少し間を置いてから付け加えた。「それと、『水の補充』を飲料水のボトルを交換するみたいに言う奴がいたら、機関室に連れてきて自分で反応炉を見てもらう」
ジェスは即座に両手を上げて降参した。
「工学への敬意を欠いた発言はすべて撤回します」
「本当に撤回しろよ」ハーヴィーは通信を切る前に、「艦橋の人間は余計なことをするな」という目を残していった。
投影が消えると、艦橋は短い沈黙に包まれた。
真紀は星図を見た。
私は真紀を見た。
そして私たちはほぼ同じ一秒に決断した。
「よし」真紀は口を開いた。その声は釘を打つように確固としていた。「まずエウロパへ向かい、用水を補充する」
私は彼女の言葉が落ちると同時に、戦術マーカーを新しい航路に更新した。
赤い線が再び引かれ、木星系の縁に沿って危険で美しい弧を描いた。
「ロイ、航路を調整して」私は言った。
「了解、副艦長」
「蘭、通信偽装の予備案を準備して」
「了解」
「ジェス、ニフルヘイムの霧が途中で過負荷になった場合、どの区画を優先して保護し、どれを諦めるか、損管班と事前に確認しておいて」
「了解」ジェスは素早く答えた。さっきまで皇女が私の胸に飛び込む方法を研究していた女と同一人物とは思えないほど速く。「ついでに一言——」
私は斜めに彼女を見た。
ジェスはニヤリと笑い、声を低くした。
「さっきのあなたの様子を見ると、本当に部屋まで送っただけだと信じ始めたわ。あと三分長く滞在していたら、副艦長は今頃まっすぐ歩けなかったでしょうね」
私は本当に戦術板を彼女の顔に叩きつけたかった。
だが副艦長として、時として最大の自制心は冷静さではなく、投げたいものを本当に投げないことだと知っている。
「ジェス」私は無表情で言った。「もう一言でも言ったら、真紀に本当に艦橋の外で罰立ちをさせてもらうよう頼むわ」
「副艦長」真紀が静かに続けた。「その件は頼まなくてもいい。今すぐできるから」
ジェスは即座に口を閉じるジェスチャーをした。
艦橋は再び忙しくなった。
航路計算、通信マスク、ステルスパラメーター、反応炉の負荷予測、データが一行ずつ宙に流れていく。全員が自分の位置に戻り、乱気流を経験した後の機械楽団が、再び秩序を強引に保ちながら演奏を続けるように。
私は副艦長席に座り、エウロパへ向かう航路を見つめながら、表面上は標準モードに戻っていた。
冷静。
明確。
実行可能。
本来あるべき姿のように。
だが自分だけがわかっていた。それは完全ではないと。
私の神経の一部は、さっきの部屋の扉の内側に留まっていた。あの過剰なほど静かで、過剰なほど近くて、過剰なほど危険な場所に。ヘートヴィヒの、あまりにも多くのものを見てきたのに、ある瞬間だけ私だけを見てくる目の中に。
本当に厄介だ。
私は人を部屋まで送った。彼女が休むためで、自分が後遺症を発症するためではない。
だがアスガルドはそんなことを気にしない。
この船は人の面倒事を収集するために作られたかのようだ。帝国、連邦、皇女、追手、反応炉、水不足、封鎖、そして副艦長の当直時間中に現れるべきでない心拍の乱れ。
私は低く息を吐き出し、目を上げてメイン投影のエウロパを見た。
氷。
水。
帝国の駐留軍。
よし。
さっきの部屋のあの、人を口を開かせるほど静かな距離感に比べれば、少なくともこれらは私が比較的慣れている種類の危険だ。
「アスガルド、木星航路へ転進」
真紀が命令した。
私はそれに続いた。いつの間にか磨かれたリズムで。
「全艦、低探知航行シーケンスに入れ」私は言った。「エウロパへの出発準備」
命令が伝わった瞬間、艦体の深部から低い共鳴が伝わってきた。
それは慰めでも鼓舞でもなかった。
どこかの巨獣が暗闇の中で肩を動かし、王座のような巨大な体を、次の長い狩りの姿勢に整え直したような感覚だ。
アスガルドは前進し始めた。
そして私はついに一つのことを悟った。
私は確かに、ヘートヴィヒの部屋から艦橋へ戻ってきた。
だが何かは、もう少し時間をかけなければ、戻ってこられないかもしれない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




