210.木星へ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私はヘートヴィヒの手を引いて、艦橋を出た。
扉が後ろで静かに閉まり、真紀、ロイ、蘭、ジェス、アカリ、そして殺戮の神殿から豪奢な観星廳へと戻ったばかりのアスガルドの艦橋が、一時的に別の世界へと閉じ込められた。
艦橋の外の通路は、中よりも少し暗かった。
貧乏くさい軍艦の節電モードではない。帝国特有の、お金があって、しかも少し病的な暗さだ。壁面は控えめな深青色の金属光を帯び、床は磨かれた黒曜石のようで、細い暗金色のラインが通路の中軸に沿って前方へ伸びている。まるでこの船はただ戦えるだけでなく、逃げる道すら皇室の展示廳のように敷き詰めなければ気が済まないとでも言わんばかりだ。
歩きながら、私は思わず考えた。帝国は本当に、公金を最も不必要だが最も美しい場所に使うことに長けている、と。
ヘートヴィヒの歩みは遅くなく、支えが必要なほど力も抜けていなかった。
背中だけ見れば、主座で平然と命令を下し、黄金の便器の話で笑い、皇族の体裁と毒舌を同時に美しく保っていた第三皇女のままだった。
だが、彼女の手は冷たかった。
戦闘艦橋から出てきたばかりの人間の体温ではない。雪の中に長く立ちすぎた人間のように、外見には何も異常がないのに、骨の中がもう一寸一寸冷えていくような冷たさだ。
私は手を離そうと思った。
誰かを部屋まで送ることと、ずっと手を繋いで離さないことは、事故のレベルとして全く異なる。
特に相手が帝国の第三皇女で。
特に私が連邦士官学校の学生会副会長で、アスガルドの副艦長で、さっき彼女の兄を宇宙の空白区に変えた共犯者の一人であれば。
本来なら、ここは少し距離を置くべきだ。成熟した大人のように、礼儀正しく、抑制的に、互いに体裁を保って。
問題は、私は成熟した大人ではないということだ。
ヘートヴィヒも今は、体裁を必要としているように見えなかった。
だから私は二秒考えて、最終的に自分がそのことに気づいていないふりをすることにした。
「……さっき、みんながずいぶんはっきり見ていたわね」
ヘートヴィヒが突然口を開いた。
声は少しかすれていた。泣いた後、感情を無理に平らにした人の声だ。
「誰が?」
「艦橋のみんなよ」
彼女はちらりと私を見て、口角をごく軽く動かした。
「特にジェス。あの目は、もう心配じゃなくて、続きを期待しているのよ」
「彼女の目は普段からあまり健全じゃないわ」
私は言った。
「気にしなくていい」
ヘートヴィヒは低く笑った。
その笑いはとても軽く、薄いガラスを指先で叩いたような音だった。
少なくとも、まだ笑えている。
「星野さん」
「ん?」
「さっき、自分が私をどう慰めればいいかわからないと思っていたでしょう?」
……この人は心が読めるのか。
私は咳払いをした。
「そんなにわかりやすかった?」
「かなりわかりやすかった」
彼女は言った。
「何か言おうとしているのに、口を開いたら余計に泣かせてしまいそうで、という顔をしていたわ」
「……失礼しました。この方面のスキルが低いのは事実です」
「見ればわかる」
「ちょっと待って」
「でも、嫌いじゃないわ」
この言葉は来るのが早すぎて、軽すぎて、私は一瞬それが通路の風の音かと思いそうになった。
私は彼女を振り向いた。
ヘートヴィヒは私を見ず、ただ前方の深青と暗金が交差する長い廊下を見つめていた。さっきよりも落ち着いた表情をしていたが、それ以上に、限界まで張り続けた後、表情を作る力すら残っていないような人間の顔をしていた。
私たちはそのまま、しばらく黙って歩いた。
アスガルドは大きい。
艦橋から皇女を部屋まで送るだけなのに、飛ぶ黒金の宮殿の深夜巡礼をしているようだった。
途中、巡回中の学生に何度か出くわした。
全員まだ帝国の黒制服を着ており、ヘートヴィヒを見るなり直立し、私を見ると「副艦長がなぜ直接殿下を部屋まで送っていて、しかも手を繋いでいるのか」という微妙な表情を浮かべ、そしてものすごく頑張って何も見ていないふりをした。
よし。
どうやら今日からアスガルド艦内で最も不足しないものは、武器、緊張、政治的嵐に加えて、もう一つ増えることになるらしい——噂だ。
「見られているわ」
ヘートヴィヒがまた言った。
「わかってる」
「手を離さないの?」
私は一歩分だけ歩みを止めた。
この質問は意地悪だ。
意地悪なのは、彼女が手を引き抜くわけでもなく、触れるなと言うわけでもなく、ただ静かに選択権を私の前に投げ出すからだ。私が本当に認めるかどうか、試しているかのように。
私は前方の廊下の突き当たりにある、ゆっくりと開いていく自動扉を見つめ、できるだけ自然に聞こえるように答えた。
「今離したら、後ろめたそうに見えるから」
「後ろめたくないの?」
「……別に」
私は一拍置いた。
「あなたが聞くから、少しそうなったわ」
彼女はついに振り向いて私を見た。目の奥に、薄く、疲れていて、でも本物の笑みが宿っていた。
「なら、まだ離さないで」
まずい。
今の彼女の状態では、私が部屋まで送って休ませるはずなのに、話のリズムはずっと彼女に引っ張られている。これは第三皇女の本領なのか、それとも私の意志力が連邦士官学校の教育に申し訳ないほど弱いのか。
もう一つ扉を過ぎると、周囲はさらに静かになった。
この区画は明らかに皇族と高位権限の艙段に近い場所で、装飾もさらに過剰だった。アーチ型の壁面に刻まれた紋様は宝飾品の内側の彫刻のように細かく、光源は見えない継ぎ目の中に隠され、通路全体を深海色の月光に浸したように照らしていた。
私は思わず舌打ちした。
「帝国は本当に、人が住める場所を人が住めないようにするのが好きね」
「どういうもののように見えるの?」
ヘートヴィヒが尋ねた。
「美術館、神殿、それから高価すぎて触れないショールームのサンプル品」
「アスガルドは元々、普通の人間のために作られていないから」
「その言葉があなたの口から出ると、説得力が腹立たしいほど高いわ」
ヘートヴィヒはすぐには返さなかった。
少し沈黙した後、彼女はごく軽く言った。
「でも今、この船の上で一番普通の人間らしくないのは、あなたたちのはずよ」
私は彼女を一瞥した。
「それは褒め言葉なの、それとも私たちが今日どれだけ荒唐無稽なことをしたかの確認?」
「両方よ」
彼女は目を伏せた。
「普通の学生は修学旅行の途中で銀河帝国第一号の特造艦を奪わないし、追撃圏から離脱する前に第二皇子を艦ごと宇宙から削除したりもしない」
「あなたも参加していたでしょう。自分だけ綺麗に切り離さないで」
「わかってる」
彼女の返答は速かった。
速すぎて、私は一瞬どう返せばいいかわからなくなった。
ヘートヴィヒが立ち止まった。
私もそれに合わせて止まるしかなかった。
目の前にあるのは、周囲の他の艙室の扉よりも高く、静かで、明らかに値段が歯に刺さるような扉だった。扉の脇には大袈裟な紋章もなく、ただ深色の金属の上に、繊細で冷淡に近い皇族の紋様の線が一本嵌め込まれているだけだ。控えめで、抑制的で、高価で、人を寄せ付けない。
彼女によく似ている。
認証の後、扉は音もなく滑り開いた。
中は私の想像より落ち着いていた。俗っぽい金碧輝煌ではなく、広く、深い色で、静かだった。床と壁の素材はアスガルド全体の黒鋼と暗金の意匠を踏襲し、窓の外には果てしない星の海が広がっている。艦橋の観景廳の一部を切り取り、より個人的で、より孤独なバージョンに仕立てたようだ。
扉の前で任務完了と思っていたが、ヘートヴィヒは中に入った後も手を離さなかった。
だから私は、彼女に引かれるようにして、半歩だけ部屋の中に入ってしまった。
扉が後ろでゆっくりと閉まった。
カチャ。
その音は大きくなかった。
だが落ちた瞬間、世界が突然小さくなった。
私と彼女だけになるほど小さく。
彼女の呼吸がまだ少し乱れているのが、はっきりと聞こえるほど小さく。
私が真剣に意識し始めるほど小さく——今、私は帝国の第三皇女と、彼女の個人艙室で二人きりになっていて、しかもまだ手を繋いでいる。
こういう状況を報告書に書いたら、おそらく保存不適切と判断されるだろう。
ヘートヴィヒは扉に背をもたれ、すぐには奥へ進まなかった。
私も動かなかった。
彼女は私を見た。目尻にはまだ泣いた後の薄い赤みが残っていた。脆くて一触即発という感じではなく、むしろ何か端正であろうとするものが、水に浸かった後にようやく本来の木目を見せているような感じだった。
「星野さん」
「うん」
「さっき艦橋で、私がまだあなたたちの側に立っているかと聞いたでしょう」
彼女の声はとても軽かった。
「今も、答えを知りたい?」
私は彼女を見て、喉が少し締まった。
「もし今、立っていないと言ったら、私は一人で第三皇女を主座まで担いで再起動できるか考え始めなければならないわ」
ヘートヴィヒは笑った。
今度の笑みは短かったが、少し本物になった。
「ひどいわね」
「私はこれを現実主義と呼んでいる」
「いいえ、あなたはロマンスをすべて生存率と交換しているのよ」
「褒め言葉として受け取るわ」
彼女は私の冗談を受け取らず、ただゆっくりと視線を私たちがまだ繋いでいる手に落とした。
「私は、あなたたちの側に立っているわ」
この言葉はとても平坦だった。
誓いも修辞も、皇女らしい荘厳な宣言もない。
だからこそ、その重みはより深かった。
「第三皇女だからでも、アスガルドが今あなたたちの手にあるからでもない」
ヘートヴィヒは目を上げた。
その目は、部屋の少し暗い光の中でとても深く見えた。星の海の最も遠い場所が視線を引き戻し、私だけに向けてくるかのように。
「さっき私が命令を下した時、あなたが目を逸らさなかったから」
私は少し呆気に取られた。
彼女は続けた。
「あなたは私を、利用すべき皇族の権限としても、壊れかけた可哀想な人間としても見なかった」
彼女の声が小さくなり始めた。
「あなたは私に、一緒にこの重荷を背負うかどうか、選ばせてくれた」
部屋は言葉にならないほど静かだった。
私はさっきの質問が馬鹿げていると、ずっと思っていた。
ちょうど開いた傷口に刃を差し込むような問いだと。
だが今、彼女の言葉を聞いて、私はふと気づいた。彼女が気にしていたのは問い自体ではなく——私が本当に聞いたということだったのかもしれない。
彼女が当然こちらの側にいると決めつけるのではなく。
彼女を当然の資産として計算に入れるのでもなく。
彼女自身に選ばせたのだ。
……これは私が思っていたより危険だ。
なぜなら、一度人に自分で選ばせて、その人が本当にあなたを選んだ時、その重みはあなたの上に降り落ちてくるから。
私は無意識に手を握り直した。
ヘートヴィヒは引き抜かなかった。
「綺麗な言葉は言えないわ」
私は彼女を見て、ゆっくりと口を開いた。
「それに正直に言えば、今の状況で『あなたはよくやった』とか『あなたは間違っていない』とか言っても、安っぽく聞こえるだけ」
彼女はごく軽く頷いた。
「わかってる」
「だから言えるのは——」
私は一拍置いた。
「今、もし何も感じないと思っているなら、それでも構わない。私たちはまだ感じる余裕がなかっただけだから。さっきのは家族の問題じゃなくて、戦闘の判断よ。まず生き延びて、それから残りを少しずつ片付けていけばいい」
ヘートヴィヒはずっと私を見ていた。
自分がまた慰めを戦術会議の議事録に変えてしまったのではないかと疑い始めるほど、長く。
それから、彼女は突然半歩前に出た。
たった半歩。
だが元々遠くなかった距離が、一瞬で危険になった。
私の背筋が一度強張った。
彼女は私にそれほど触れなかった。ただ空いていたもう片方の手が、私の襟元の端に軽く触れた。戦闘で乱れた黒制服を整えているようでもあり、ただ私という人間が本当に目の前に存在しているのかを確かめているようでもあった。
彼女の指先は少し冷たかった。
鎖骨の近くに触れた時、私の呼吸が危うく乱れそうになった。
「星野さん」
彼女は低く言った。
「あなたのその言い方、全然優しくないってわかってる?」
「……それは覚悟していたわ」
「でも、とても役に立つ」
彼女は私の衿元の小さなしわをゆっくりと伸ばした。その動作は、純粋に身なりを整えているにしては遅すぎた。
「これが、あなたらしい」
私はそれまで何とか持ちこたえていた。
「あなたらしい」という言葉が出た瞬間、胸の中の何かが、不甲斐なく乱れた。
まずい。
料理でいう「七分の火加減」の危険がどこにあるか、今わかった。すべてにまだ正当な理由をつけられるが、正当な理由が重なると、空気が呼吸のためではなく、火をつけるためのものに変わる、ということだ。
「ヘートヴィヒ」
私は名前を呼んだ。
彼女は「ん」と返したが、退かなかった。
今の私たちの距離は、もう少し頭を傾ければ、彼女のまつ毛の根元にまだ拭い切れていない湿り気が見えるほど近かった。彼女は泣いた後で目がまだ赤く、それでいてあの過剰なほど端正な美しさを保っていた。崩れることすら上品にやってのけるように。
これは私に対して非常に不親切だ。
非常に。
「もう少し近づいたら、航海日誌に書きにくい事態になるわ」
私は自分の声をできるだけ冗談のように聞こえさせようとした。
彼女は私を見て、目の中の笑みがついに少しはっきりした。
「副艦長閣下は今、私に警告しているの? それとも注意を促しているの?」
「……両方よ」
「それは光栄に思うべきかしら?」
「こういう時にまだからかう余裕があるのは感心しないで」
ヘートヴィヒは二秒間静かになった。
それから、彼女の手が私の衿元からゆっくりと上へ移動し、指の腹が私の顎の側面を軽く掠めた。
撫でているのではない。
危険なものが本当に存在するかどうかを確かめているような感触だった。
私は全身が強張った。
彼女も大して余裕があるわけではなかった。見えていた。彼女の呼吸も実は安定していなくて、扉の前にいた時よりもさらに乱れていた。ただ彼女は持ちこたえるのが上手くて、動揺すら精巧に計算された礼節のように見せることができた。
「星野さん」
彼女の声はさらに低くなった。
「もし今、もう少しだけ傍にいてほしいと思ったら、それはわがままかしら?」
私は彼女を見つめ、頭の中で同時に三種類の答えが浮かんだ。
一つ目は理性版:わがままではないが、非常に危険。
二つ目は副艦長版:わがままだが、おそらく私は承知する。
三つ目は、一番出てきてはいけない版:あなたがそんな目で見続けるなら、少しの間だけでは済まないかもしれない。
残念ながら、今はまだ三つ目を言えない。
だから私は、ある種の折衷した正直さを選んだ。
「わがままよ」
私は言った。
「でも今の私には、あなたをからかえる立場にないわ。だって私はまだここに立っていて、すぐに艦橋に戻らなかったんだから」
ヘートヴィヒは少し呆気に取られた。
それから、本当に笑った。
さっきの薄い、場を繕うための笑みではなく、少し揶揄われて、少し疲れていて、そして少しやっと私の弱みを掴んだという笑みだった。
「あなたもそんなことが言えるのね」
「普段もそんなに面白みのない生き方をしているわけじゃないから」
「それなら安心したわ」
彼女は静かに言った。
私たちはそのまま立っていた。
近すぎるほど近く。
静かすぎるほど静かに。
誰もさらに前に出なかったが、誰も後ろへも引かなかった。
今この瞬間、どちらかが少しだけ頭を傾け、少しだけ角度を変えたなら、今夜の「副艦長が皇女を部屋まで送った」という任務は即座に「学生会に書面での説明を求める」レベルの事案に変わる。
そして最もまずいのは——
私は本当に、唇が触れたらどうなるか、知りたかった。
その考えが頭に浮かんだ瞬間、私は自分を連邦士官学校の校則ハンドブックに包んで冷静になりたくなった。だがもう浮かんでしまったのだから、見て見ぬふりでは解決しない。
ヘートヴィヒも何かに気づいたようだった。
彼女は私を見て、視線がほんの少し下に落ち、またすぐに戻ってきた。ほとんど動作と呼べないほど小さな変化だったが、まるで誰かが空気の中に火で一筆書いたようだった。
……終わった。
彼女は気づいている。
私も、彼女が気づいていることに気づいている。
それでも彼女は最後、何もしなかった。
ただ、ごく軽く、ごく短く、ほとんど成立しないほど短い時間、額を私に寄せた。
口づけではない。
本当の意味での抱擁とも呼べない。
ほとんど存在しないに等しいほど短い、それでいて何も起きなかったふりができないほど親密な接触だった。
「少しの間だけ、こうさせて」
彼女は低く言った。
私は一秒強張り、それからゆっくりと力を抜いた。
「……いいわ」
私のもう片方の手が上がった。彼女の肩に触れようとして、少し考えて、最後は彼女の後頭部のすぐ傍に、完全には触れないまま、軽く止めた。進んでも退いてもいい支点を与えるように。
彼女はそれ以上前に出なかった。
私も出なかった。
それだけで、もう心臓は逃げるように乱れていた。
どれくらい経ったか、おそらく数秒だけ、ヘートヴィヒは自分から後ろへ退いた。
距離が開いた瞬間、部屋の空気がまた呼吸できるものに戻った。
私はここで初めて、ずっとあの息を完全には吐き切れていなかったことに気づいた。
ヘートヴィヒは手を上げて目尻を押さえ、回復は早かった。さっきの数秒が酸素不足で私が見た幻だったかのように。
「ごめんなさい」
彼女は言った。
「少しわがままだったわ」
「あの程度でわがままなら、私のあなたへの道徳評価基準はかなり甘いわね」
「そう?」
「だってあなたはさっき、自分の兄を吹き飛ばすよう命令したばかりよ。それに比べれば、誰かに少し傍にいてほしいと頼むのは、十分に法律の範囲内だわ」
彼女は半秒固まり、それからまた笑った。
今度は、少し楽に笑えた。
よし。
やはり私は、ひどい比喩で場を救うことの方が得意らしい。
私は扉の方へ一歩退き、なるべく普通で、専門的で、さっき危うく何かが起きそうだった副艦長らしく見えるよう努めた。
「少し休んで」
私は言った。
「艦橋に戻るわ。じゃないと真紀が、皇女を部屋に送るのにどうして迷子になったのかと直接メッセージを送ってくるわよ」
ヘートヴィヒは私を見て、目の中にはさっきの柔らかさがまだ完全には散っていなかった。
「星野さん」
「ん?」
「また確認したくなったら——」
彼女は少し間を置いた。
「私がまだあなたたちの側に立っているかどうか、直接聞きに来ていいわ」
私は彼女を見て、また喉が少し乾いた。
「わかった」
「それと」
「まだあるの?」
ヘートヴィヒの口角がわずかに上がった。私が知っているあの、優雅で少し意地悪な彼女がようやく戻ってきた。
「さっきのは、まだ答えが出ていないわよ」
私は固まった。
「何が?」
「もう少し近づいたら、航海日誌に書きにくい事態になる、って言ったでしょう?」
彼女はごく軽く笑った。
「いつかあなたが報告書を書くのがそれほど怖くなくなった時に、また来て」
……この女。
私はその場に立ち尽くし、まる二秒沈黙してから、ようやく自分の顔の温度を何とか許容できる範囲に押し込んだ。
「殿下」
私は平静を保つのに全力を注いだ。
「今のあなたは、全然休息が必要な人には見えないわ」
「あなたが残って観察してくれる?」
「結構よ、副艦長はまだこの部屋を生きて出たいから」
彼女は笑いながら私を見た。
私は扉を開けに向かい、途中でやはり振り返らずにいられなかった。
ヘートヴィヒは部屋の中の星の海の光と影の前に立っていた。黒制服が彼女を普段よりも冷たく、薄く、何か自分を一片一片拾い集めようとしているものに見せていた。だが少なくとも今、彼女の目の中にはさっきのあの崩れかけた空洞だけが残っているわけではなかった。
私は、今夜のことを何もなかったことにはできないだろうと突然思った。
彼女が泣いたからだけではない。
彼女が皇女で、共犯者で、兄を殺す命令を下した人間だからだけでもない。
彼女が額を寄せてきたその一瞬、私が退きたくないと思ったからだ。
……よし。
どうやら帝国だけでなく、今は私自身の安全距離も一緒に問題を抱えているらしい。
「戻るわ」
私は言った。
「ん」
ヘートヴィヒは頷いた。
それから、扉が閉まる直前の一秒、彼女はまた一言付け加えた。
「星野さん」
「何?」
「航海日誌を書く時、私が泣きすぎた様子にしないでね」
私は彼女を見て、ついに笑い出した。
「安心して」
「綺麗に書いてあげるから」
扉が閉まった後、私は外でしばらく立ち止まった。
アスガルドの廊下は相変わらず静かで、深青色で、暗金色で、過剰なほど高価で、何も変わっていないようだった。
だが私にははっきりわかっていた。何かが変わったと。
しかも、かなり面倒な変わり方をした。
私は手を上げて、さっき彼女に触れられて危うく短絡しそうになった顎を押さえ、長く息を吐き出した。それから諦めて、艦橋の方向へ歩いて戻った。
……仕方ない。
まず会議に出よう。
他の問題は、私たちに本当に生きて家に帰る命があってから考えよう。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




