206.迫真の演技 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
バスが検問所の前で停車した時、ふと思った。この世で最もスリリングなことは、暗殺でも被弾でもない。
銃撃戦から転がり出てきたばかりの連邦の二年生三百人を引き連れ、帝国士官学校生に扮して、本物の帝国軍を騙すことだ。
しかも、六台のバスを一度に。
こんなことを学生会の年次報告書に書くとしたら、タイトルはせいぜい「校外学習における応変能力実習」といったところだろう。付録に至っては、監査委員まで巻き添えにしないよう、直接燃やしてしまうことをお勧めする。
私はA班の車の前ドアのそばに立ち、座席に手をかけ、急ごしらえの負傷兵に扮したクラスメイトたち越しに、前方の金属製の柵を見つめた。両側の警戒灯がゆっくりと回転し、灰白色の朝霧を格子状に切り裂いている。
帝国軍港の検問所は、民間施設のように体裁を取り繕ったりはしない。鉄骨、火力プラットフォーム、センサー塔、バリケード。どれもこれも馬鹿正直に配置されており、壁に「妙な真似をしたら吹き飛ばすぞ」と書いていないだけの誠実さだ。
よろしい。こういう、悪意をそのまま建築様式にしたような場所は嫌いじゃない。
車速が完全に落ちると、前方の歩哨が手を上げ、停車の合図を出した。もう一人の将校らしき男がすでにこちらへ顔を向け、フロントガラス越しに鋭い視線を走らせ、車体の弾痕と煤の跡を掠め、最後に最前列のヘートヴィヒで視線を止めた。
その停止は、ほんの一瞬だった。
だが、相手が彼女を認識したのが私にはわかった。
車内は誰も口を開かない。
さっきまでコルセットが帝国の税制みたいにきついと文句を言っていた女子も、今は大人しい。全員が静まり返り、誰かが唾を飲み込んだだけで全車を道連れにして死ぬのではないかというほどの静けさだった。
真紀は私の左後方に立ち、すでにあの帝国制服に着替えている。ハイカラー、深色、ピンと張った肩のラインが、彼女の全体を鋭く引き締めていた。彼女は私を見ず、ただ冷ややかに車のドアへ視線を落としている。もし最初に飛び込んでくる人間が本当に手を出してきたら、何秒でそいつの関節をすべて外せるかを計算しているかのようだ。
ヘートヴィヒは最前列に座り、背筋を真っ直ぐに伸ばしていた。
私は腰を屈め、彼女に小声で一言だけ告げた。
「殿下、ここからはあなた次第です」
ヘートヴィヒはすぐには答えず、ごく軽く息を吸い込んだ。膝の上に置かれた指が一度きつく握られ、それからゆっくりと開かれた。それは躊躇ではなく、本来なら皇女に、帝国に、秩序に属するはずの何かを、無理やり自分の顔に貼り直しているような動作だった。
そして、彼女は顔を上げた。
その瞬間、この女はやはり面倒だ、とふと思った。
普段は巨大な肖像画や煩雑な礼儀作法、高等教育にまとめて振り回されている帝国の書記官のように見えるくせに、いざという時には、本当に「皇女」という二文字を身に纏うことができるのだから。
車のドアを叩く音がした。
帝国軍の警備兵が一人ドアのそばに立ち、もう一人の少佐らしき軍官が窓に近づき、鋭い視線を中へ走らせた。車内の血の匂い、薬の匂い、汗の匂いは、ドア越しでもいくらか漏れ伝わっているはずだ。その点は満足だった。人間は血の匂いを嗅ぐと、自動的に想像力を悲惨な方向へと補完してくれる。
軍官が低い声で口を開き、帝国語で言った。
「Identifizieren Sie sich und schildern Sie die Lage.」(身分を明かし、状況を説明せよ)
よし、本番だ。
私は先を争って答えなかった。
私が口を開くのが早すぎれば、かえって後ろめたく見える。
だから次の瞬間、ヘートヴィヒが手を上げ、前方の窓ガラスを直接少しだけ下げた。早朝の冷たい風が吹き込み、彼女の額の髪を微かに揺らした。彼女はその軍官を見据え、声は高くないが、車内の全員の心拍数を半分に押さえつけるほど安定していた。
「Ich bin Hedwig von Wittelsbach.」(私はヘートヴィヒ・フォン・ヴィッテルスバッハ)
車外の警備兵二人が明らかに震え上がった。
その軍官は即座に直立不動となり、右手を上げ、口調まで変えた。
「Eure Hoheit.」(殿下)
ヘートヴィヒは彼に息継ぎの隙を与えず、そのまま上から押し潰した。
「Das Hotel wurde von Bewaffneten angegriffen, und Studenten der Militärakademie haben mich beim Durchbruch eskortiert. Es gibt viele Verwundete, die sofort in die internen Einrichtungen des Militärhafens verlegt und dort versorgt werden müssen. Ich verlange die Öffnung der Durchgänge sowie die unverzügliche Benachrichtigung der internen medizinischen und Sicherheitskräfte, um uns in Empfang zu nehmen.」
(ホテルが武装集団の襲撃を受け、軍事学院の学生たちが私を護衛して突破した。負傷者が多数おり、直ちに軍港内部の施設へ移送して処置する必要がある。通路の開放と、内部の医療および警備部隊へ受け入れの通知を要求する)
早口だが、全く乱れていない。正式な言葉遣い、正確なリズム。くだらないことで時間を無駄にさせるなという、上位者特有の習慣が滲み出ている。最も致命的なのは、彼女の話し方に演技の痕跡が微塵もないことだ。私はふと、あることに気づいた。
普段、自分の肖像画が大きすぎると小声で文句を言っているあの姿の方が、実は省エネモードだったのかもしれない。
こちらが本来の出力なのだ。
軍官は明らかに彼女の気勢に完全に圧倒されていたが、それでも本能的に車内をもう一度覗き込んだ。
「Diese Studenten ...」(この学生たちは……)
ヘートヴィヒの声がさらに冷たくなった。
「Sie sind diejenigen, die mich vom Tatort eskortiert haben.」(私を現場から護送した者たちよ)
彼女は一拍置き、相手を真っ直ぐに見据えた。
「Einige von ihnen wurden schwer verletzt, als sie die Angreifer aufhielten. Major, wenn Sie jedes einzelne Gesicht hier überprüfen wollen, kann ich gerne hier stehen bleiben, bis Sie fertig sind. Sollte jedoch auch nur einer von ihnen sterben, weil die Behandlung verzögert wurde, können Sie mir gleich jetzt einen Bericht darüber schreiben, wer die Verantwortung dafür trägt.」
(襲撃者を食い止めるために、重傷を負った者もいる。少佐、もしここで一人一人の顔を照合したいというのなら、終わるまで私がここに立って付き合ってあげてもいい。だが、もし処置が遅れて一人でも死者が出た場合、その責任が誰にあるのか、今すぐここで報告書を書いて私に見せなさい)
見事だ。
あまりにも見事だ。
これはもう検問突破ではない。身分という名の公文書を、相手の脳天に直接叩きつけているようなものだ。
その少佐の顔色が微かに変わった。明らかに「手続きの正義」と「検問所で皇女を怒らせて軍歴を終わらせたくない」という二択の間で、困難な選択を迫られている。
私がついでに追い討ちをかけようかと考えた矢先、B車の向こう側が非常に協力的に発作を起こし始めた。
まず、悲惨で層の厚い泣き叫ぶ声が響き、続いて数人の叫び声が重なった。
「Wo bleiben die Sanitäter!」(衛生兵はどこだ!)
「Es geht zu Ende mit ihr!」(この子、もうもたない!)
「Halte durch, schlaf jetzt nicht ein!」(しっかりしろ、寝るな!)
上出来だ。
私にはわかる。その中で最も技術点が高い泣き声の主は、二階堂だ。
この女、言い争いの才能を正業に向けると、実にいい仕事をする。その泣き声は嘘くさくもなく、わざとらしくもなく、問題を今すぐ後回しにしたくなるような絶妙な崩壊感を帯びていた。検問所の兵士どころか、私でさえ涙を拭くタオルを渡したくなるほどだ。
軍官の注意は案の定そちらへ引きつけられた。
彼が後ろの車列に顔を向けると、ちょうどB車のドアの隙間から血まみれのガーゼが垂れ下がっているのが見えた。中では人が暴れており、その乱れ方は本物だった。車全体が今にも腐り落ちそうなほど、リアルだった。
彼は眉をひそめ、傍らの警備兵に小声で二言三言指示を出し、それから再びこちらへ向き直った。
「Eure Hoheit, laut Vorschrift muss ich zumindest die Formation der Eskorte und deren Verbleib bestätigen.」
(殿下、規定により、少なくとも護送編成と行き先は確認しなければなりません)
ついに来た。
手続きというやつは、ゴキブリのようなものだ。どれほど環境が悪化しても、完全には死に絶えない。
ヘートヴィヒは私を振り返らなかったが、彼女が待っているのはわかった。
このタイミングで私がまだ縮こまっていたら、あまりにも野暮だ。
私は一歩前に出た。意図的に、彼女の肩の斜め後ろ半マスの位置に立つ。それは非常に絶妙な立ち位置で、護衛のようにも見え、学院の上級生が場を仕切って補足説明をしているようにも見えた。私は口を開き、極力抑え気味に、言葉少なに、そして訛りをできるだけ帝国寄りに寄せて答えた。
「Die Königliche Militärakademie und die unterstützenden Studenten haben die Eskortformation vor Ort vorübergehend neu formiert. Fahrzeug A fungiert als Vorhut, Fahrzeug B konzentriert die Schwerverletzten, und die nachfolgende Kolonne transportiert die mittelschwer Verletzten sowie die unverletzten Studenten. Das Ziel sind die internen Sicherheitszonen und medizinischen Stationen des Militärhafens. Zuerst wird der Transfer Ihrer Hoheit abgeschlossen, danach erfolgt die Überprüfung.」
(王立軍事学院と支援の学生は、現場で護送編成を一時的に再編した。A車を先導とし、B車に重傷者を集中させ、後続の車列で中等傷および無傷の学生を輸送する。目的地は軍港内部の安全区および医療ステーション。殿下の移送を最優先で完了させ、その後、監査を受ける)
私は嘘をついていない。
本来なら非常に危険な事柄を、非常に退屈な現場処置の要約のように包装しただけだ。
これは私の最も得意とすることの一つだ。
軍官は私を見つめ、半秒ほど視線を止めた。私の顔が、彼の記憶にある帝国の士官学校名簿のどこかに存在しないか判断しているようだった。それも無理はない。今の私の姿は、帝国制服を着て、髪をまとめ、肩のラインを張り、おまけにさっきまでの一連の騒動で醸し出された「今日は人が死にすぎた、煩わせるな」という苛立ちを纏っている。帝国体制の中で培養された人間に、少なからず似ている部分があるはずだ。
不運なことに、私はこの手の役を演じる天賦の才がある。
彼がさらに質問しようとした時、車の後方から極めて小さな鼻をすする音が聞こえた。
私は視界の端でそれを捉え、危うく吹き出しそうになった。
A車に乗っている、普段は口数の多い男子生徒だった。彼は恐怖のあまり本当に泣きそうになっていたが、私の命令をまだ覚えていたため、必死に自分を「合理的な帝国負傷兵」の泣き方に修正しようとしていたのだ。素晴らしい。少なくとも授業の要点を覚えている人間がいた。
車外の警備兵が中をさらに二度ほど覗き込み、その顔の表情が肉眼でわかるほど「面倒くさい、早く行かせろ」という方向へ滑り始めた。
これこそが私の狙った効果だ。
人は証拠によって説得されるのではない。大抵の場合、面倒くささによって説得されるのだ。
ヘートヴィヒがここでさらに一言付け加えた。
「Wenn Sie eine Verifizierung benötigen, können Sie die Nachricht an das Hauptquartier weiterleiten lassen, um meine Identität und die Berichte über den Angriff direkt zu bestätigen.」
(もし核閲が必要なら、司令部へ報告を上げさせ、私の身分と襲撃の記録を直接確認すればいいわ)彼女は一拍置き、声のトーンをさらに冷たくした。「Aber die Durchgänge müssen jetzt geöffnet werden.」(だが、通路は今すぐ開けなさい)
その少佐は、ついに持ちこたえられなくなった。
彼は即座に直立不動となり、傍らに向かって大声で命じた。
「Schranken hoch, interne Kräfte benachrichtigen, Prioritätskorridor!」(ゲートを上げろ、内部に連絡、優先通路だ!)
金属の柵が上がり始めた。
側面の火力プラットフォームもすぐに旋回し、車列正面へのロックオンを解除した。後方の二人の兵士が足早にコントロールパネルへ走り、もう一人は次の検問線への連絡に走った。ヘートヴィヒの一言で、検問所全体が「お前たちを調べる」から「早く殿下を通せ」へと瞬時に切り替わった。
これが身分の威力だ。
そして私が最も嫌悪し、同時に最も利用せざるを得ないものでもある。
第一のバリケードが完全に下りた時、少佐は自分の職務の完全性を少しでも補填したかったのか、低い声で尋ねた。
「Eure Hoheit, ist es erforderlich, dass ein Sicherheitsdetachement Sie als Eskorte begleitet?」 (殿下、警備分隊を随行護衛につける必要はございますか)
この言葉を聞いた瞬間、私の首の後ろが引き締まった。
もし本当に警備分隊がついてきたら、その後の芝居はもうおしまいだ。全員まとめて昇天した方が早い。
ヘートヴィヒも明らかにそれをわかっていた。
彼女はほとんど間を置かず、直接答えた。
「Nicht nötig.」(不要よ)
そして彼女はわずかに顔を向け、視線をその少佐の顔に落とした。
「Ich wurde gerade erst aus dem Angriff herausgeholt und möchte nicht noch mehr Leute sehen, die zwar Waffen tragen, aber am Tatort nicht rechtzeitig zur Stelle waren. Lassen Sie Ihre Soldaten auf den Posten, die sie sichern sollen, und sorgen Sie dafür, dass im Militärhafen kein zweiter Zwischenfall passiert.」
(私は今、襲撃から連れ出されたばかり。銃を持ちながら現場に間に合わなかった人間を、これ以上見たくないの。あなたの兵は守るべき部署に残し、軍港内で二度目の不測の事態が起きないようにしなさい)
この一言は、残酷なまでに的確だった。
少佐の顔色はその場で一層青ざめ、返答を遅らせることすらできなかった。
「... Zu Befehl, Eure Hoheit.」(……はっ、殿下)
私は拍手を送りたくなった。
さすがは帝国の皇女。銃を使わずとも、人を直立不動のまま叩きのめすことができる。
車のドアの外にいた兵士たちが後退し、通行許可の合図を出した。運転手は明らかに緊張でハンドルを握り潰しそうになっていたが、命令を受けるなり即座にアクセルを踏み込んだ。A車が再び滑り出した時、車内の全員が肺に溜め込んでいた半息を同時に吐き出したかのようだった。ただし、運まで一緒に吐き出してしまうのを恐れるように、音は立てなかった。
バスはゆっくりと検問所を通り抜けた。
私はすぐにヘートヴィヒを振り返ることはせず、前方の第二内部管制門を見据えながら、小声で一言だけ言った。
「見事でした、殿下」
ヘートヴィヒは前列に座ったまま、二秒置いてから返した。
「今の私、完全に共犯ね」
「おめでとうございます。実務の授業が正式に始まりましたよ」
真紀が隣に立ち、淡々と言った。「副会長、あなたが人におめでとうと言う場面は、いつも安定しておかしいわね」
「会長のお褒めに預かり光栄です」
「褒めてないわ」
「そう受け取っておきます」
真紀は私を無視し、ただごく軽くヘートヴィヒを一瞥した。
その一瞥には、先ほどほどの警戒心はなかった。代わりに別の何かが混じっていた。信頼ではない。少なくとも、まだそこまで早くはない。どちらかといえば、ヘートヴィヒがただ肖像画の前で気まずそうにしているだけの皇女でも、単なる政治的象徴でもないことを、ついに認めたという感じだった。彼女は、ある瞬間において、一列の車隊を帝国軍の銃口の下から実際に連れ出すことができる人間なのだと。
この点は非常に重要だ。
なぜならこの瞬間から、彼女は単なる護送対象ではなく、艦船強奪未遂、あるいは間もなく成功するであろう強奪事件の、共同署名者の一人となったのだから。
私は振り返り、バックミラーを見た。
後続の五台が次々とついてきている。B車は相変わらず説得力のある惨状を呈しており、C、D、E、F車も狼狽と辛うじての体裁の間を保っている。検問所の兵士たちは柵を上げ、連絡を取り、道を空けるのに忙しく、誰もわざわざ車に乗り込んで一人一人の顔を確認しようとする暇人はいない。
よし。
人間はやはり、自分が脳内で補完した物語に説得されやすい生き物だ。
特にその物語の中に、皇女、襲撃、血、負傷兵、そして責任追及が含まれていれば。
これらの要素が揃えば、手続きの方から勝手に膝をついてくれる。
最後の車が無事に第一検問所を通過した時、私はようやく椅子の背から手を離した。いつの間にか、掌に薄っすらと汗をかいていた。
緊張は、当然ある。
私はただ、その緊張を「人を陥れたくてたまらない笑顔」で包み込むのが得意なだけだ。
真紀が私の方へ半歩近づき、声を極端に潜めた。
「さっき、あなたがもう半言遅れていたら、私が言葉を奪っていたわ」
「それは感動するわね」私も声を潜めた。「会長がついに、私と一緒に叛国未遂に正式に付き合ってくれる気になったってことだから」
「これ以上ふざけたこと言うなら、今すぐあなたを窓から投げ捨てるわよ」
「ここは帝国軍港よ。そんなことしたら外交問題になるわ」
「今更外交問題を気にするの?」
真紀の顔は相変わらず冷たかったが、今の彼女が私を見る目は、もはや学生会副会長を見ているのではなく、外見は無傷だが内部構造が解体すればするほどヤバい爆弾を見ているような気がした。
私は非常に謙虚に返した。
「ずっと気にしてるわよ。ただ、実践のアプローチが少し前衛的なだけ」
真紀は目を閉じた。
その動作の意味は、おそらく「ドアが完全に閉まる前に、この前衛的な実践ごと彼女を外へ放り出すべきか」を真剣に検討しているのだろう。
残念ながら、彼女は結局堪えた。
ここが彼女の怖いところだ。その場で首を絞めるより、九島真紀はまず借りを記録し、事態が終わってからゆっくりと取り立てることを得意としている。こういう人材こそが最も恐ろしい。彼女は感情的になっているのではなく、忍耐強いからだ。
ヘートヴィヒは前列に座り、私たちのこの中身のない小声の言い争いを聞き終え、なんとごく軽く笑った。
その笑いは錯覚のように短かったが、私には見えた。
素晴らしい。帝国の皇女が叛国の縁に立った最初の副作用は、どうやらユーモアのセンスが少し回復することらしい。
バスはゆっくりと第一検問所を通り抜けた。
私は前方のフロントガラス越しに、あの少佐がまだその場に立ち、私たちが軍港内部へ入っていくのを見送っているのを瞥見した。彼は今頃、自分が今日職務を全うしたのか、それともクビを恐れて問題だらけの車列に裏口を開けてしまったのか、考えていることだろう。
答えは両方だ。
そして私は、こういう中途半端な制度的葛藤を常に尊重している。中途半端であればあるほど、利用しやすいからだ。
車が内部の専用通路に滑り込むなり、私は即座に端末を六台の車の公開周波数に繋ぎ直した。
「全委員長、聞いて。今から分担作業に入る」
今度は誰も文句を言わなかった。
私が急に説得力のある顔になったからではない。さっきあのゲートが閉まっていれば、今頃全員が帝国軍港の床に転がり、高圧洗浄機で血を排水溝に洗い流されるのを待つ羽目になっていたことを、誰もが理解したからだ。
人は一度死にかけた後、学習効率が飛躍的に向上する。
これは感動的であり、実用的でもある。
私は軍港内部の略図を公開周波数に共有し、六車すべてに前方の車道と泊位の概況が見えるようにした。
「A車は私についてきて、先導兼突入。B車は第二順位を維持、遅れないで。重傷者の集中処理は原案通り、惨状は惨めであればあるほどいい。C、D車はそれに続く準備をして。第二検問所を越えたら、直接内側のドックに寄せる。E、F車は後続人員の収容と搭乗の補填を担当。あなたたちは戦闘の主力じゃない。あなたたちは三百人の二年生を生きて船に押し込むための鍵よ」
ロイの声が先に聞こえた。
「せめて、どの船に乗るかくらい先に言ってくれないか」
「今言うところよ」私は言った。
そう言って、私は窓の外へ視線を向けた。
朝霧と軍港の鉄骨の間に、いくつかの艦影がゆっくりと輪郭を現し始めていた。大型主力艦は遠すぎるし、面倒だ。外周に停泊している古い船は接近しやすいが、帝国の官僚システムそのもののように鈍重だ。本当に狙う価値があるのは、中段の泊位に停泊している、完成したばかりの新造艦だけだ。
艦体の塗装は腹立たしいほど清潔で、角度も美しい。泊位に停まっている姿は、鞘から抜かれたばかりで、まだ本当の血を吸っていない刀のようだ。
新造艦には、非常に可愛らしい特徴がある。
大抵の場合、性能は良く、外見も威圧的だが、引き渡し初期の編成が最も乱れやすいのだ。艦橋、技術、格納庫、警備、多くの場合が混成部隊であり、人間よりもプロセスの方が成熟している。いざ近距離で戦闘になれば、艦隊で数年揉まれた老練な艦よりも反応が鈍いことが多い。
言い換えれば、こういう代物は盗むのにうってつけだ。
「目標は三号内泊位のあの新造艦」私は言った。「引き渡し直後で、正式な戦闘要員は定員割れ。外周の警戒の方が内部の反応より早いはず。私たちが乗り込めさえすれば、向こうが私たちをつまみ出すのは間に合わない可能性が高い」
公開周波数が一瞬静まり返った。
それからジェスが極めて正直に舌打ちをした。
「つまり、私たち本当に船を強奪するのね」
「今頃になってその事実を完全に受け入れたの? 反応が遅いわよ」私は言った。
「さっきまで、文明社会がまだ救済可能だという希望を少しだけ抱いてたのよ」
「なら抱き続けてていいわ」私は言った。「ただ、抱きしめる時は銃を持つのを忘れないで」
ハーヴィーが向こう側で長く息を吐き出した。自分が修学旅行に参加しているのではなく、非常に不健康な内容のサバイバル実習に参加しているのだと、ついに受け入れたような音だった。
「お前の一番恐ろしいところは、無茶をすることじゃない。無茶をする前に、乗っ取る艦種まで選んであることだ」
「ありがとう、事前のプランニングは重視してるの」
真紀が私の隣に立ち、腕を組みながら、冷ややかに一言補足した。
「同級生を巻き込むことも重視してるわね」
「会長、そういうことは今更気づくべきじゃないわ」
真紀は私を無視し、視線を共有図面に戻した。
私はついでに別の泊位を赤くマークした。
「それから、事が順調に進めば、私たちは一隻を奪って出港する。後方の追手を少しでも減らすために、まず一隻潰しておく必要がある」
今度はヘートヴィヒまで振り向いて私を見た。
彼女はすぐには口を開かなかったが、その目の意味は明白だった。
あなた、昨日からただの普通の学生でいるつもりなんて全くなかったでしょう。
私はその疑念を平然と受け入れ、なんなら質問を完全に補完してあげたいくらいだった。残念ながら、私は元から普通の学生ではない。普通の学生は修学旅行にお菓子と着替えを持ってくるが、私が持ってきたのは、連邦の軍紀担当官が心筋梗塞を起こしそうな退路が詰まったトランク一つだ。
私は外周寄りに停泊している中型迎撃艦を指差した。
「あれには死んでもらう」私は言った。「位置が一番外側で、予熱の完了度も一番高い。私たちが船を奪って出港した時、最初に食いついてくるのは十中八九あれよ。港を出てから追わせるより、港の中で直接腐らせた方がいい」
Dは最後列に座り、制度に抑圧された沈黙の役を縮こまって演じていたが、ここまで聞いてついに堪えきれずに目を上げた。
「それ、もう逃亡じゃないだろ」
「そうね」私は言った。「今から、これを先制攻撃と呼ぶわ」
アカリの表情がパッと明るくなった。
彼女の肩にはさっき適当に巻かれた包帯がまだ巻き付いていたが、その興奮は負傷兵のコスプレによって微塵も削がれていなかった。むしろ「死にそうだけど、やっぱり参加したい」という青春感が漂っていた。
極めて病態的だが、極めて連邦らしい。
「じゃあ、本当に帝国の軍港の中で一隻沈めるの?」彼女は尋ねた。
「すべて順調に行けば、そうなるわね」私は言った。
「超カッコいい……」
「犯罪行為を文化祭のイベントみたいに言わないで」真紀が即座に釘を刺した。
アカリは首をすくめた。
「でも、本当にちょっと似てる……」
「そのセリフは卒業するまで取っておきなさい」
よろしい。少なくともまだ馬鹿なことを言う余裕はある。精神が散っていない証拠だ。
その時、二階堂・フレイヤの声がまた公開周波数に割り込んできた。
「意見がある」
私は眉間を押さえた。
この女は本当に奇跡だ。他の人間は銃撃戦から逃げ出して、まず命の尊さを学ぶ。二階堂はまず私との口論の仕方を学び、しかも驚異的な持久力でクールダウンの時間がほぼゼロだ。
「言って」私は返した。
「車の順番を調整するべきよ」二階堂は言った。「B車を後ろにしすぎないで、二台目に置いて。後ろすぎると、わざと負傷者を芝居に使っているみたいに見える。二台目なら、前の車が先導し、後ろの車が混乱しているように見えて、本物の護送隊らしくなる」
私は二秒間沈黙した。
そして、非常に大らかに認めた。
「良い提案ね」
公開周波数の向こうも明らかに一瞬静まった。
二階堂は私が本当に彼女の意見を採用するとは思っていなかったらしく、一瞬、喉に込み上げた怒りがそのまま詰まってしまい、すぐには吐き出せなかったようだ。
私は彼女が立ち直る前に、ついでに追い討ちをかけた。
「ということで、あなたは今から正式にB車の帝国語および泣き女顧問に昇進よ」
「星野」
「ん?」
「私は泣き女顧問なんかじゃない」
「私はそんなこと言ってないわ」私は極めて無実そうに返した。「それはあなたが自分で定義したことよ」
今度はハーヴィーまで吹き出した。
二階堂は公開周波数の向こうで重い息を吸い込み、最後に歯を食いしばって言った。
「……後続の車の帝国語の言葉遣いをコントロールする手伝いはするわ。もし返答が下手な人間がいたら、私が補う」
「上出来よ」私は言った。「ついにその才能を正しい方向に使い始めたわね」
「今すぐあなたの首を絞めてやりたい」
「私の首を絞められるところまで、まずは生き延びてね」
事態が機能の割り振りに進むと、チームはチームらしくなる。ただ怯えきった三百人の二年生ではなくなる。これは非常に重要だ。人は自分のポジションを理解すると、大抵の場合、崩れにくくなる。
私はさらに指示を切り分けた。
「ロイ、E車に行って、人数と物資の再確認を担当。蘭はB車に残り、負傷者、ヘートヴィヒのライン、二階堂のラインを安定させて。ハーヴィーはC車へ。感情を抑え、口を管理し、この期に及んで英雄になりたがる奴がいたら、席に押さえつけておいて。ジェス、アカリは私と一緒に艦に乗り込む。真紀……」
私は一拍置いた。
真紀が首を傾けて私を見た。視線は淡々としている。
「何」
「私と一緒に艦橋へ来て」
彼女の眉先がごく軽く跳ねた。
「理由は」
「艦橋に入った後、艦全体を極めて教養豊かに接収できそうな人間が必要だから」私は言った。
真紀は二秒間沈黙した。
その沈黙には多くの内容が含まれていた。おそらく「やっぱり一番危険な場所を自分のために残したわね」「やっぱり私を逃がす気はなかったわね」そして「この件が終わったら、絶対に後悔させてやる」といったところだろう。
最終的に、彼女は私に一言だけ返した。
「この借りは記録しておくわ」
「順番待ちよ」
第二の扉。
本当に厄介な扉だ。
ヘートヴィヒはずっと静かだったが、ここへ来てようやく低い声で私に尋ねた。
「もし彼らが警備分隊の随行を要求してきたら?」
「断って」私は言った。「理由はさっきと同じ。銃を持ちながら現場に間に合わなかった人間を、これ以上見たくない。この一言は十分に傷つくし、十分に効果的よ」
彼女は私を見つめ、何かを言いたそうにしていたが、最後はただ頷いた。
その頷きの意味は明白だった。
彼女はもう、ただ巻き込まれただけではない。
彼女は協力している。
より正確に言えば、彼女は自らの手でこの芝居を前へ押し進めているのだ。
私は彼女を見つめ、声を少し落とした。
「殿下、この後もしあなたが口を開けば、本当に後戻りはできなくなります」
ヘートヴィヒは前方へ近づいてくる管制門を見つめ、数秒置いてから答えた。
「ここまで来た以上、後戻りも何もないでしょう」
よし。
この言葉は、ようやく共犯らしくなった。
真紀が私の隣に立った。帝国制服を纏った彼女は、雰囲気が完全に冷え切り、士官学校の背景に恐ろしいほど適応していた。もし今日が連邦の学生会長ではなく、帝国のどこかの名門士官学校の首席生がここに立っていたとしても、おそらくこんな姿だろうと、私は一瞬荒唐無稽なことを考えた。
彼女が小声で尋ねた。
「緊張してる?」
「少し」
「見えないわ」
「緊張を、人を陥れたくてたまらない笑顔で包み込むのが得意だから」
真紀は私を一瞥した。
「それは本当にそうね」
バスが減速し始めた。
私たちだけでなく、後続の五台も車間を詰めた。A車が前、B車がそれに続き、車列全体が非常に無理やり繋ぎ合わされた、しかし何故か辻褄の合う生存者護送隊のように見えた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




