202.私の王子様は、女の子 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
夜の帝国ホテルの外観は、昼間よりもさらに、公然かつ合法的な誇示のように見えた。
昼の帝国ホテルが単に「高価」なだけだとすれば、夜のそれは、「高価」という言葉だけでは圧迫感が足りないとでも言わんばかりに、権力と歴史、そして貧者に対して決して友好的ではない美意識のセットを無造作に付け加えたかのようだった。
月面都市の明かりの中にそびえ立つその建物の、外壁の暗色の石材と金属の骨組みは冷ややかに輝き、アーチ窓は直接ドーム天井に挨拶でもしに行きそうなほど高く、車寄せは儀仗隊が一列に並んでその場で回れ右をしても互いの自尊心をぶつけ合わずに済むほど広かった。
正面に沿って伸びる柱の列は、一本一本が真っ直ぐに整えられ、「秩序」という言葉をそのまま建築に打ち込んだかのようだ。頂部の装飾は複雑だが軟弱ではなく、むしろドイツ系特有の硬質な華麗さがあった。
もっと簡単に言えば、この建物の設計理念が「歓迎いたします」ではなく、「我々に歓迎されるに値する人間であれ」であることを、一目で理解させる場所だということだ。
残念ながら、今夜の私はおそらくその「値する」人間だった。
あるいは少なくとも、制服と招待状が私をそう見せていた。
人波に続いて中に入ると、エントランスに敷かれた深紅の絨毯は過剰なほどに柔らかかった。靴底が沈み込み、足音はほとんど聞こえない。客に自分の足音の責任すら負わせたくない、とでも言っているかのようだ。
ドアの内側両脇には帝国ホテルの迎賓スタッフが立っている。制服は乱れなく、笑顔は正確で、お辞儀の角度もおそらく計算し尽くされている。誰もが体裁よく見えた。昨日、臨時の労働者として潜り込んだ時には、この場所がここまで文明的だとは思わなかったが。
帝国ホテルも帝国そのものと同じで、最も得意とすることの一つは、バックヤードの死体とフロントの華やかな照明を綺麗に切り離すことなのだとしか言いようがない。
ジェスはドアをくぐるなり、声を殺して口笛を吹いた。
「わお。これ、ホテルじゃないでしょ。ベッド付きの宮殿じゃないの」
「宮殿の方がまだ少しは誠実だ」私は小声で返した。「ここは予算超過を建築様式と言い張っているように見える」
ロイが吹き出しそうになり、慌てて手の甲で口元を覆う。蘭は周囲を一瞥し、極めて淡々とした口調で言った。
「今のセリフをホテルの支配人に聞かれたら、今夜のあなたのデザートは下げられるでしょうね」
「構わない」私は言った。「私にとって、生きて帰ることへの関心は、大抵の場合デザートよりも高い」
真紀は私の隣を歩きながら、その言葉には反応せず、ただごく軽く私を横目で見た。その視線の意味は明確だ。今それだけ口が減らないなら、精神状態は少なくとも表面上はまだ使い物になるわね、というわけだ。
そしてヘートヴィヒは……。
ヘートヴィヒは道中ずっと無言のまま、ただその淡い色の瞳を上げてホテル内部を見渡していた。今夜彼女が着ているのは、学校側が晩餐会のために用意した正装仕様の制服だ。ラインは美しく引き締まり、胸元も襟元も普段より少しだけ厳かで、「両校交流」という表面上の平和な場を乗り切るにはちょうどいい。
問題は、ヘートヴィヒの顔が、元々こういう場所に似合いすぎていることだ。帝国ホテルの明かりの下に立つと、彼女は招かれた客というより、この建物が最初から彼女のために席を用意していたかのように見えた。
……今にして思えば、あの予感はおそらく錯覚ではなかった。
メインホールへ正式に入る前に、まずは前廊を抜けなければならない。
その前廊は長い。陣前逃亡を企てる者が、ドアにたどり着くまでに三度は人生を考え直せるほどに。両側の壁には暗色の木材と金属の装飾枠が嵌め込まれ、アーチ型の天井はどこまでも高く、肋骨状の構造が頭上で交差して伸びている。まるでゴシック様式の教会が、祈りを権力へとすり替え、それをわざわざ月面に持ち込んで使い続けているかのようだ。
壁灯が等間隔に並び、暖かな金色の光が石の表面と床を照らし、通路全体を国家レベルの嘘の中心へと続く道のように見せている。
突き当たりに達し、メインホールを目にした瞬間、帝国がなぜこれほどまでに美意識と威圧感をセットにして売りたがるのか、ようやく理解できた。
実際に効果があるからだ。
晩餐会のメインホールは驚くほど高かった。
天井は夜の闇に溶け込んでしまいそうで、アーチリブの構造が層をなして重なり、中央には巨大なシャンデリアが何基も連なって吊るされている。その明かりはまるで飼い慣らされた星群のように宙に浮かび、眼下にあるすべてのものを、あまりにも鮮明に、そしてあまりにも体裁よく照らし出していた。縦長の窓の両側には深青と黒金が織りなす重厚なカーテンが垂れ下がり、壁面には家紋、飾盾、レリーフが対称に並んでいる。線は鋭く、秩序は厳格で、空間全体が晩餐会ホールに改装された戦争記念堂のようだった。
ドイツ式スタイルが規律と構造を重んじるものだとするなら、ここは規律を十分に華麗に仕立て上げ、その華麗さゆえに圧迫感すら正当なものに見せている場所だ。
バンドのエリアは左、ダンスフロアは中央、両側には段差のあるテラスと長机が設けられている。基調となる色は深青、黒金、そして冷たい白。無駄に甘ったるいロマンチックさは微塵もなく、ただ「今夜ここでグラスを叩き割るなら、帝国の礼儀作法に則って割りたまえ」と言わんばかりのフォーマルさだけがあった。
そしてメインホールの最前部、ステージと演台が一体となり、一段高く設けられている場所。
それだけでも十分に人目を引く。
だが、会場の視線を一斉に引きずり込んだのは、演台でも、帝国の紋章でもなかった。
一枚の絵だ。
巨大で、誰かが「羞恥」そのものを額縁に入れて引き伸ばしたかのように大袈裟な、全身の肖像画。
その絵をはっきりと見た瞬間、私は危うく立ち止まりそうになった。
絵の中の人物は、黒に近い深青の帝国式礼装を身に纏い、金属の星章がシモのように胸元と襟元に落ちている。肩のラインは鋭く、マントは重厚で、長い髪は光の下で冷たい金で織られた川のようだ。構図全体が端正で、威厳があり、華貴で、描写は極限まで美化と神聖化が施されている。背景には帝国の象徴的な要塞と星の海の輪郭までうっすらと描き込まれており、あとは横に「これぞ帝国の未来と尊厳そのものである」と題字を入れるだけ、という有様だ。
問題は、それが皇帝ではないということだ。
時代遅れの大臣でも、宰相でも、戦争の英雄でもない。
その絵のモデルは、今、私の隣に立っている。
ヘートヴィヒ・フォン・ヴィッテルスバッハ。
私はゆっくりと、本人の方へ首を向けた。
ヘートヴィヒ本人は今、メインホールの入り口の前に立ち、異常なほど顔を赤くして、その場で消えてしまいたいとばかりにうつむいていた。耳の付け根から生え際まで真っ赤だ。彼女は自分の靴の先を睨みつけ、唇を動かし、私たちにしか聞こえないような声量で、ほとんど歯を食いしばるように小さく呟いた。
「……飾るなと言ったはずなのに」
私はその場で吹き出しそうになった。
社交辞令の笑いではない。
肺が主人を裏切りかけるレベルの、正真正銘の笑いだ。
ジェスの反応が一番早かった。雷に打たれたように目を丸くした後、自分の腕を思い切りつねり、悲鳴を無理やりねじ曲げた息の音へと押し殺した。
「ぷっ、ゲホ……あの、わあ」
「わあって何よ」ロイが低い声で言う。「まずは口元をどうにかしろ、笑いすぎて顔が歪んでるぞ」
「どうにかしてるわよ!」ジェスは必死の息の音で自己弁護する。「これは私のせいじゃないでしょ、本人の絵をあんなにデカデカと飾るバカがどこにいるのよ!」
Dは後ろに立ち、上を向いて絵を見て、下を向いてヘートヴィヒを見て、また上を向いて絵を見ていた。大型犬が初めて鏡を見たときのような困惑ぶりだ。
「ちょっと待って」Dは極めて真面目に尋ねた。「あれはヘートヴィヒなのか、ヘートヴィヒの先祖なのか、それともちょっと強そうなヘートヴィヒなのか」
「ヘートヴィヒ本人だ」ハーヴィーが眼鏡を押し上げ、冷静に補足した。「しかも服制、紋章、構図から判断するに、あれは一般的な装飾肖像画じゃない。意図的に象徴としての位階を引き上げるための、プロパガンダ用の公式肖像画だ」
「ハーヴィー、このタイミングでそんな真面目に分析されると、事態がさらに悪化するだけだから」蘭が言った。
「事態は元から最悪だ」ロイが小声で続く。「俺がヘートヴィヒなら、今頃シャンデリアを巻き込まずにあの絵を燃やす角度を計算してる」
ジェスが激しく頷く。
「そう、そう、私もそれを聞きたかったの。ヘートヴィヒ、今あそこに向かって銃を撃っても、私、見て見ぬふりしてあげる」
「ダメよ」真紀が極めて平坦に言った。「私が報告書を書く羽目になるから」
……真紀のこの一言も、殺傷能力は低くない。
ヘートヴィヒはようやく顔を上げ、冷ややかに私たちをぐるりと見渡した。彼女の普段の高貴で冷淡なオーラも、今顔が真っ赤なせいで、途端に奇妙な効果を生み出していた。威厳が少し、殺意が少し、そして彼女には珍しい、生々しいほどの窘迫感が少し。
「もし声に出して笑ったら」ヘートヴィヒは言った。「一番近くにいる人間から処理するわ」
「そのセリフ、全然説得力がないぞ」私は正直に言った。「今のお前は、まず絵師から処理したそうな顔をしてる」
ヘートヴィヒが私を睨む。
「星野シモ」
「はい」
「黙りなさい」
「了解した」
私が即答すると、ジェスは直接背を向け、壊れそうなくらい肩を震わせ始めた。
メインホールの入り口付近にいる生徒で、これに気づいたのは明らかに私たちだけではなかった。
連邦軍事学院側で、隊列を整え、会場を見渡し、冷静さを装っていた生徒たちの間に、抑えきれない微かなざわめきが広がり始めていた。
「あれ……本人だよな」
「嘘だろ、マジかよ」
「デカすぎるだろ」
「帝国って身内を持ち上げるのが上手いんだな」
「待て、ヘートヴィヒさんはあそこに立ってるぞ。絵の中のも彼女だろ」
「精神的ダメージってやつが何なのか、急に理解できた気がする」
「しっ、声がでかい。風紀委員会がこっち見てるぞ」
別の場所では、普段あまり喋らない生徒たちまでが、こらえきれずに盗み見ている。生徒会のいつも落ち着き払っている数名でさえ、今は何度か視線を泳がせ、「いくらなんでもやりすぎだろ」という本音を必死に礼儀作法の中に押し込めようとしているのが見え見えだった。
だが、ざわめきは長くは続かなかった。
メインホールの反対側の扉が開いたからだ。
帝国軍事学院の生徒たちが、入場してきた。
深色の制服の隊列は、我々よりも統一感があり、より鋭利だった。歩幅は揃い、肩のラインは真っ直ぐで、ほぼ全員が「我々は交流に来たのであって、負けに来たのではない」という表情を浮かべている。生徒というより、まだ本格的に戦場に放り込まれていないものの、呼吸すら秩序の中に組み込む方法をすでに学んでいる若き士官候補生といった方が近い。
連邦側で盗み笑いをし、盗み見ていた者たちは、即座に注意を引き戻した。
これが所謂、窮地を救うというやつだ。
つまり、帝国の生徒たちは単にやって来たのではない。
ヘートヴィヒの最後の尊厳を拾い集めるためにやって来たのだ。
真紀が半歩前に出て、私に少し近づき、声を低く落とした。
「シモ」
「ああ」
「私たちも、そろそろ準備に行きましょうか」
私は真紀の視線を追い、少し離れた生徒たちの荷物預かり所をちらりと見た。
そして、あの品物の存在を見事に思い出した。
あの、青い、Vネックの、キャミソールドレス。
「……」
私は沈黙した。
真紀が私を一瞥する。
ジェスが顔を寄せ、命知らずにも追撃をかけてきた。
「思い出したんでしょ」
「今すぐ死にたい」私は正直に言った。
「大袈裟だなぁ」
「あれは私には絶対に似合わない」私はさらに声を潜め、この精神的トラウマがメインホールの入り口で拡散しないように努めた。「晩餐会の後半にバルコニーでもたれかかってシャンパンを飲みながら、ついでに他人の心臓を握り潰すような女には似合うだろうが、任務を終わらせて生きて帰って寝たいだけの人間には似合わない」
「あなたの自己評価と現実の間には、少し距離があると思うわ」蘭が横で淡々と言った。
「いや、かなりの距離だ」ロイが補足する。
「私もあれ、絶対似合うと思うよ」ジェスが悪どく笑う。「特に、あれを着た上で不機嫌な顔をしてくれたら、最高に効果的だわ」
「それを効果とは呼ばない、事故と呼ぶんだ」私は言った。
真紀は笑わず、ただ極めて冷静に最終判決を下した。
「とにかく、着てもらうわよ」
……くそ。
一番腹が立つのは、こういう平坦な口調で、反論の余地を一切与えない真実を突きつけられることだ。
私はもう一度、メインホール前方の巨大なヘートヴィヒの肖像画を見た。
絵の中のヘートヴィヒは、帝国の美術部門と宣伝部が結託して育て上げた神聖な象徴のように、高貴で、冷艶で、威厳に満ちている。絵の外のヘートヴィヒは、今すぐステージに駆け上がってあの恥ずかしい絵を額縁ごと引き剥がしたいという衝動を抑え、必死に表情を保とうとしている。
そして私は、この豪華すぎるメインホールの入り口に立ち、自分の人生の立ち位置に全くそぐわない青いキャミソールドレスに着替える準備をしながら、突然、はっきりと理解した。
今夜は、何かが起きる。
予感のせいではない。
帝国ホテル、両校の晩餐会、帝国軍事学院、ヘートヴィヒ本人、ヘートヴィヒの羞恥肖像画、そして私のあの青いVネックのドレス。これだけのものが一晩に同時に揃って、何も起きない方が、むしろ宇宙の運行の基本論理に反しているからだ。
私は軽く息を吐き出した。
「行こう」私は言った。
「死地に赴くの?」ジェスが目を輝かせる。
「いや」私は無表情に答えた。「着替えに行く」
「それ、死地に赴くのと大して違わなくない?」ロイが言う。
「私にとっては、同じようなものだ」
これには真紀の口角すら、ごくわずかに動いた。
ヘートヴィヒは私たちのやり取りを聞きつけ、巨大な肖像画の精神的ダメージからようやく無理やり意識を引き剥がし、こちらを振り向いた。
その一瞥には、苛立ちが少し、羞恥が少し、冷たさが少し、そして、今の私にはようやく理解できる重みが少し含まれていた。
私はヘートヴィヒに向かって顎をしゃくった。
「持ちこたえろ」私は言った。「少なくとも、私が自分の羞恥問題を片付けるまでは」
ヘートヴィヒは一瞬呆気に取られた。
そして、ごく軽く、ごく短く、まるでうっかりしてしまったかのように、口角を動かした。
「……お互い様ね」
よし。
どうやら今夜が本格的に始まる前に、私たちはすでに、それぞれ異なる形の公開処刑を背負わされたらしい。
更衣室に足を踏み入れるなり、私はドアを閉めた。
そっと閉めたのではない。「できることなら、この晩餐会ごとドアの外に締め出したい」というほどの力でだ。ドアの板は私の感情を教養豊かに吸収し、体裁を崩さないくぐもった音だけを返してきた。帝国ホテルはドアでさえ人間より空気が読める。そこが本当に気に入らない。
更衣室の中は暖かく、照明も過剰に明るかった。
その光は照明のためではない。スカートのひだの一本、髪の毛の一本、人間が本来見なかったことにしたい細部のすべてを、逃さず暴き出すための光だ。簡単に言えば、私のような人間にはあまり優しくない。
自分の衣装バッグをベンチに置き、あの青いドレスを三秒間見つめた。
深青。Vネック。細いキャミソール。
生地は私に逆らうためにわざとそう進化したのかと思うほどしなやかで、スカートの裾は幾重にも垂れ下がり、明かりの下でとても静かに、そしてとても危険に光を反射している。美しいことは認める。問題は、その美しさに目的がありすぎることだ。これは歩くために着る服ではない。見られ、記憶され、ダンスフロアの中央に置かれ、ついでに会場中の視線から品定めされるために着る服だ。
そして、私がこの人生で最も必要としていないものの一つが、品定めされることである。
「……いい加減にしてくれ」
私は小声で呟いた。
ドレスは私を無視し、布地の形をした陰謀のように、相変わらず優雅にそこに横たわっていた。
正直なところ、昨日の爆薬の箱よりも、今の私はこの代物に対する警戒レベルを引き上げたい気分だった。爆薬は少なくとも誠実だ。爆発するものは爆発するし、あなたのためを思ってなどと偽善を振りかざしたりはしない。このドレスは完全にその逆だ。美しく、柔らかく、高級で、晩餐会にぴったりに見えるが、実際には人間をコンフォートゾーンから引きずり出して公開展示するための、社交的兵器に他ならない。
心の中で悪態をつきながら、制服のジャケットを脱ぐ。
動作の途中で、ふと先ほどメインホールの入り口に立ち、自分の巨大な肖像画に向かって蒸発しそうなほど顔を赤くしていたヘートヴィヒの姿を思い出し、心情が微妙にバランスを取り戻した。
よし。どうやら今夜、刑に処されているのは私一人ではないらしい。
ヘートヴィヒの公開処刑は、壁に掛けられること。
私の公開処刑は、まず自分をこの青いキャミソールドレスの中に押し込まなければならないこと。
ある意味で、私たち二人は難を共にする友と言えるかもしれない。
そう思うと危うく笑いそうになったが、次の瞬間、ファスナーが引っかかった。
「……」
私は俯き、その細く、高貴で、ひどく殴りたくなるファスナーを見つめ、二秒間沈黙した。
やはりだ。こういう服は、人間に対する最後の尊厳すら残してくれない。
私は深呼吸をし、生地を整え直し、肩紐を合わせ、ウエストラインを正し、もう一度上に引き上げる。今度は何とか協力してくれた。スカートが体に張り付いた瞬間、私の最初の感想は「美しい」ではなく「冷たい」だった。
生地が鎖骨、肩のライン、背中に沿って滑り落ちる。何も着ていないかのように軽いが、その軽さゆえに、ますます安心感がない。制服を着るということは、規律に包まれる感覚だ。
軍服を着るということは、機能に固定される感覚だ。このドレスは違う。何も包まず、何も防いでくれない。ただ坦々と私を明かりの下へ送り出し、世界に向かってこう告げるのだ。「さあ、この人間は今日こんな姿をしています。皆様、どうぞご自由に品定めを」と。
「なぜ晩餐会の前に酒を飲む人間がいるのか、本気で理解し始めたよ」
鏡の中の自分に向かって言う。
鏡の中の人間も、私を見返している。
銀白色の長い髪が肩から背筋に沿って落ち、深青のドレスが全体の輪郭を極めてすっきりと下に引き伸ばしている。ウエストのラインは過剰なほど正直に絞られ、鎖骨と肩先は照明の下で不自然なほど白い。問題は、その顔が相変わらず私自身の顔だということだ。結果として、全体の効果は非常に不協和なものになっていた。
美しい。とても不機嫌。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




