199.朝食はしっかりと 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
ハードシェルのスーツケースは、大きくて重かった。
重すぎて、開けようとしたときにまず手首が抗議し、次に肩が抗議し、最後に腰が抗議した。三箇所からのクレームを、私はすべて無視した。こういう箱は、大抵、中に入っているものの方が箱自体より理不尽なのだ。重さで文句を言うだけ無駄だ。
留め具が「カチッ」と音を立てて開いた。
上蓋を後ろへ押しやり、最後まで倒して、ベッドの縁にもたれかけさせた。
最初に目に飛び込んできたものは、見覚えがあった。
オレンジ色。ブロック状。表面には赤地に黒字の警告ステッカーが隙間なく貼られている。一枚の上にまた一枚、誰かが根気よく時間をかけて、「これは爆発します」という事実を、六種類の異なるフォントで繰り返し伝えているかのようだった。
「……感熱式気化爆薬」
小さく声に出して読んだ。
驚いたからではない。こういうとき、物の名前を口に出すと、脳が現実を冷静に受け入れる助けになるからだ。雪風で学んだ、数少ない役に立つ生活の知恵の一つだった。
そして、二段目。
ひどく几帳面に畳まれた制服が一着。黒地に銀の縁取り、硬い襟、真っ直ぐな肩の線、胸元の小さな帝国徽章が、部屋の明かりを反射して曇った冷たい光を放っている。標準モデル。制服に興味のない私でさえ、一目で銀河帝国正規軍の士官用常装だとわかるほど標準的だった。
問題がある。
銀河帝国軍は、女性の軍隊への参加は効率を下げ、規律を乱し、軍心を揺るがすと考え、さらに私が一番気に入っている理由――「不必要な感情的トラブルを引き起こす」という理由で、女性の従軍を禁止している。それに伴い、帝国軍の制服はすべて男性用しか作られていない。
そして今、男性用の帝国軍士官常装が、私のおとなしいスーツケースの中に静かに横たわっている。
それを三秒間見つめた。
「……ヴィスラン大佐」
私は非常に平坦な声で言った。
「これ、私に着ろってことですか?」
誰も答えない。
部屋はちょうどいい具合に静かで、私の頭の中の星野シモが、非常に小さな声で笑っているのが聞こえるくらいだった。
制服を持ち上げたとき、折り目から薄い小冊子が滑り落ち、「パサッ」と音を立ててベッドの上に落ちた。
拾い上げた。
表紙は、公的機関特有の、敬意を抱かせるほど安っぽいクリーム色の紙だった。そこには、少し間抜けに見えるほど几帳面なゴシック体で、五つの大きな文字が印刷されていた。
「速習 帝国語入門」
その五文字を見た。
その五文字も私を見た。
「……」
小冊子を開き、適当なページをめくった。そこには、無難なレイアウトで例文が書かれていた。
「Guten Tag, Herr Oberst!(長官、おはようございます)」
「Jawohl, Herr Oberst!(はい、長官)」
「Meldung: Der Gang ist frei(報告します、通路はクリアです)」
「Grüßen Sie!(敬礼)」
もう一ページめくった。
「Bitte zeigen Sie Ihren Ausweis(身分証を提示してください)」
「Ich bin mit der Durchführung des Auftrags beauftragt(本官は任務遂行の命を受けています)」
「Kein Kommentar」
さらに一ページ。
「Halt!(止まれ)」
「Hinlegen!(伏せろ)」
「Hände hoch!(手を挙げろ)」
小冊子をそっと閉じ、ベッドに戻した。
「……ヴィスラン大佐」
もう一度彼の名前を呼んだ。
「この小冊子の例文の順番、少しおかしくないですか?」
たとえば、正常な語学の入門教材なら、例文の順番は通常、「こんにちは」「ありがとう」「ごめんなさい」「トイレはどこですか」だ。「長官おはようございます」「ノーコメント」「伏せろ」ではない。
もちろん、私の「正常」という言葉の定義が、ヴィスラン大佐とは少し違うだけかもしれないが。
制服を脇に置き、さらに掘り下げた。
ウィッグが二つ。一つは長く、一つは短い。長い方は銀河連邦 月面駐在武官府の武官候補生が結ぶような低いポニーテール用で、短い方は……うん、短い方は軍人の髪型だ。正確に言えば、男性軍人の髪型だ。
短い方を持ち上げ、明かりに透かして見た。作りがいい。生え際の処理が特に細かく、もみあげの縁の処理まで本物そっくりだ。
「……なるほど」
なるほど。ヴィスラン大佐、あなたという人は、本当に細部まで悪態をつきたくなるほど作り込んでいる。
さらにその下。
ホテルスタッフの制服一式。黒いベスト、白いシャツ、細身の蝶ネクタイ、スリムなスラックス。軍服と同じくらい几帳面に畳まれている。
それから――
チェストバインダーと補正下着のセット。ハーフタイプ。
それを見た。
それも私を見た。
「……」
手に取り、重さを量り、素材を確認した。伸縮性のある生地、内側には平らに押し潰すための補強構造があり、カッティングは冷酷なほど無駄がない。「少し押さえる程度」の日常用ではない。「着た後二日間は胸が消滅する」プロ仕様だ。
心の中でヴィスラン大佐の評価を一つ書き加えた。
追記一:この大佐は、本人の身体構造を、本人以上に熟知している。
この事実はあまり気持ちのいいものではない。しかし考え直してみれば、大佐がバインダーのサイズすら計算できない人間なら、私がどのリストに押し込まれ、どの部屋で殺され、死体がどの通風管に捨てられるかなど、計算できるはずがない。
そう考えれば、ここまで正確に計算されていることには、むしろ感謝すべきなのかもしれない。
私は感謝しなかった。バインダーを横の山――制服、ウィッグ、小冊子――の上に置いた。それは非常に絵になる小さな丘を形成した。何かのコスプレ同好会の展示作品のようだが、テーマがあまり健全ではない。
さらに掘る。
下層。
真ん中の柔らかい仕切り板をめくった。
折りたたみ式のオートマチック・ショットガン。専用のホルスターに収められ、几帳面に畳まれている。まるでひどく凶暴なピクニック用品みたいだ。
スマート型光エネルギーサブマシンガン。銃身はつや消しのダークグレーで、グリップには生体認証ロックの小さなランプがあり、ゆっくりと緑色に点滅していた。私を認識している。この点には少し感動したし、少し泣きたくもなった。
それから弾薬。大量の弾薬。ヴィスラン大佐は補給所の半分をそのまま持ってきたのではないかと疑うほどの量だ。
この層全体を見た。
「……ヴィスラン大佐」
三度目に彼の名前を呼んだ。このときの口調に含まれる敬意は、一回目のそれとはすでに違っていた。
「あなたは私をここへ、ヘートヴィヒ殿下を守るために寄越したんですか」
一文字ずつ、ゆっくりと言った。
「それとも、テロ攻撃を起こすために寄越したんですか?」
誰も答えない。
でも、大体の答えはわかっている。彼が答えないとき、答えはいつも一番はっきりしている。
ここで終わりだと思っていた。本当に。頭の中ではもう、どの服を先に掛けようか、どのウィッグを先に試着しようか、あの可愛らしい語学小冊子をトイレで読んで、読み終わったらそのまま流してしまおうか、と算段し始めていた。
しかし、ケースを一瞥して気づいた。
おかしい。
底の深さがおかしい。
この手のハードケースの規格からすれば、外周の厚みは今見えているよりも薄いはずだ。一センチほど、食われている。多くはない。でも一度気づいてしまえば、見なかったことにはできない。
腰の後ろからナイフを抜いた。
習慣というものは、なかなか直らない。名前を変え、顔を変えても、習慣は身分ではなく本人に忠実についてくる。
ナイフの先端を仕切りの隙間に差し込み、縁に沿ってゆっくりとこじ開けた。
「カチッ」
仕切りのカバーボードが音を立てて跳ね上がった。
中身を一瞥した。
それから、ベッドの縁に座り込んだ。
疲れたからではない。
立って見ていると、そのまま部屋を出て、すべてが最初からなかったことにしてしまいたくなる衝動に駆られるようなものが、あるからだ。座って見た方が、まだ現実に向き合える。
「……本気でテロ攻撃をやる気か」
小さく呟いた。
仕切りの中には、カーボン合金製のバトルアックスが二振り、互い違いに置かれていた。
儀仗用のきれいな代物ではない。強襲搭乗作戦で引きずり出される種類のものだ――刃には折れ防止の溝が刻まれ、柄には滑り止めテープが巻かれ、末端にはハッチのロックを直接叩き割れる容赦のない鈍角のストライカーがついている。こんな斧を一本でも会場で抜けば、礼賓部門は全員辞表を書くだろう。それが二本。
二本の斧の間には、手榴弾らしきものが二つ並んでいた。
手は触れなかった。手榴弾に対する私の態度は昔から伝統的だ。触らなくていいなら触らない、見なくていいなら見ない、知らなくていいなら知らない。この三つの原則に、私は何度か命を救われている。
それから、仕切りのカバーボード全体を上にめくった。
裏返した面。
内張り。
「……」
内張り一面に、あのオレンジ色のブロックが敷き詰められていた。一番上にあったロットと同じものだが、配列はよりタイトで、密着している。一つ一つが整然と並び、まるで誰かが根気よく、弾薬庫一つ分の感熱式気化爆薬を、手作業でスーツケースの仕切りに埋め込んだかのようだった。
それを見た。
威力を計算してみようとした。
途中でやめた。計算したところで気分が悪くなるだけだからだ。
「ふざけんな」
私は非常に平坦に言った。
「この量なら、街ごと月まで吹き飛ばせるだろ」
一瞬止まった。
「ああ、くそ」笑いが出た。「ここが月じゃないか」
二秒ほど笑った。
そして止めた。この笑いのツボで長く笑いすぎると、泣き笑いになりそうだったからだ。それは訓練を受けた元中尉にとって、非常に体裁の悪いことだ。
仕切りのカバーボードを元に戻した。動作は軽く、眠っている野獣に毛布を掛けるように。この野獣が目覚めれば、非常にドラマチックな方法で、周囲の三ブロックを道連れにするだろう。そして周囲の三ブロックとは、ちょうどヘートヴィヒ殿下が明日出席する晩餐会の会場があるエリアだ。
もちろん、ヴィスラン大佐はそのことまで計算済みだ。
仕切りから注意を逸らし、ケース全体をもう一度見た。
この瞬間になって初めて気づいた――仕切りのカバーボードの内側、最も目立たない隅に、非常に小さな刻み目があることに。探さなければ絶対に見つからないほど小さい。
顔を近づけた。
アルファベットだった。短く、二画だけの、どこか気だるげで自負心に満ちた方法で刻まれたサインのイニシャル。
「L. V.」
その二文字を三秒間見つめた。
「……あなたって人は、本当に」
心の中でヴィスラン大佐に言った。
「これだけの人殺しの道具を送ってきておいて、下にサインを残すのを忘れないなんて。誰からの贈り物かわからないとでも思ったの?」
本当は、彼がなぜサインしたのかわかっている。
このケースの中のものは、すべて否認できるからだ。制服は誤配と言える。ウィッグはメイク道具、バインダーは私物、語学小冊子は記念品、ショットガンとサブマシンガンは在庫の誤発送、あのオレンジ色のブロックでさえ「定期輸送中の品目表記ミス」と言い逃れできる。
このサインだけが、否認できない。
このサインは、私に見せるために残されたものだ。敵でもなく、法廷でもなく、このケースを開ける可能性のある第三者でもない。ただ、私に見せるためだけ。
「これは私が送った。君はわかっている。君がわかっていることを、私はわかっている。君は君のやるべきことをやれ」
大体、そういう意味だ。
その二文字を、長く見つめた。
部屋に入ったときよりも、自分の心拍が少し遅くなっていることに気づくまで。
少し遅く、少し安定して、少し冷たくなっている。
この感覚は知っている。雪風がまだあった頃の、戦闘前の心拍だ。あの心拍は、もう一生味わうことはないと思っていた。でも、あった。身体が覚えていた。目の前に街一つを吹き飛ばせるだけの道具を並べられ、隅にサインを残されただけで、身体が自動的にあの状態に切り替わるのだ。
「……」
ケースを静かに閉じた。
全部は閉めない。上層は閉め、下層は少し隙間を残した。これで、誰かが急に部屋に入ってきても、一秒でケース全体を普通の、ただ少し過剰包装された公務用スーツケースに戻すことができる。
ベッドから立ち上がり、窓際へ行った。
窓の外は、やはり風のない月面都市だった。ガラスドームの向こうは非常に真面目な暗闇の宇宙で、人工の光が街の中で一区画ずつ暖色を形作っている。明日の晩餐会まで、あと約二十時間。
心の中で段取りを組み始めた。
名簿に載っている人間のうち、何人かは会場の中盤で静かに片付けられる。死体は心臓発作と誤認され、晩餐会が終わるまで誰にも気づかれない。こういうターゲットは、前菜だ。
何人かは、片付けた後、四十秒以内にそのフロア全体で私が最重要指名手配犯になる。そしてすべてのボディガード、すべての侍衛、すべての人畜無害に見えるサービススタッフが、私に向かって歩いてくる一丁の銃に変わる。こういうターゲットは、メインディッシュだ。
そして二、三人は、私が手を出した瞬間、ホテル全体がその場で封鎖され、帝国軍が十二分以内に即応部隊を街区全体に降下させ、ヘートヴィヒ殿下は混乱の中、味方の手によって「保護」という名目で連れ去られる。こういうターゲットは、デザートだ。
デザートは食べられない。少なくとも今夜は。
メインディッシュはタイミングを選ぶ。
前菜は先に手を付けられる。
そして、ヴィスラン大佐が残してくれたあの七分間のウィンドウ――あの七分間は、一番高い一皿のために取っておく。
窓の外を見つめながら、メニュー全体を頭の中で最初から最後までなぞった。なぞり終えてから、非常に重要な問題が一つ、まだ解決していないことに気づいた。
「……まず考えよう」
小さく呟いた。
「どうやって、会場に潜り込むか」
武官候補生の綾瀬汐里は正面から入れるが、厨房には入れない。
ホテルのサービススタッフは厨房を通れるが、主賓席には近づけない。
帝国軍の士官――あの黒地に銀の縁取りの男装制服――はどこでも歩けるが、一度口を開けば、本物の帝国軍人は誰でも三言以内に私が彼らの一員ではないと気づく。
例外があるとしたら。
目を閉じて、二秒考えた。
私が口を開かないこと。あの可愛らしい、例文の順番が少しおかしい『速習 帝国語入門』に、言うべきことを全部準備させること。バインダーを着け、ウィッグを被り、あの男装制服を着て、星野シモをもう一回り奥へ押し込み、綾瀬汐里すら脇へ退かせて――
名前のない、若く、無口で、赴任したばかりの少尉に見える人間だけを残し、会場の隅に立たせること。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




