194.乱闘 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「星野、ヘートヴィヒ」
私が「乱闘?」と口にしたのとほぼ同時に、九島真紀が立ち上がった。椅子の脚が床を擦って、短い音を立てた。
彼女はドアへ向かいながら、余計な前置きを一切省いて言った。
「星野、場所は?」
端末を耳から少し離し、向こうで二階堂が焦っているのに無理やり規律のトーンを維持しようとしているのを聞き流しながら、真紀に答えた。
「第三射撃場」
真紀は足を止めなかった。
「二階堂は何て?」
通話を切り、端末をポケットに突っ込んで後を追う。
「第三射撃場で乱闘騒ぎだって通報があったらしい」
そう言い終えた瞬間、心が沈んだ。
くそ。
非常に嫌な予感がする。
「ああ、今日は残業だな」という普通の不吉さではない。もっと具体的で、もっと厄介で、トラブルが手足を生やしてこっちに手を振っているような予感だ。
代表戦の予選名簿が貼り出されたばかりで、第三射撃場なんて普段は人が散歩で通るような場所じゃない。このタイミングでの乱闘は、九割九分、選抜絡みだ。
そして選抜絡みとなれば、単に誰かが口を滑らせて殴られた、という単純な話では済まない。
数分後、第三射撃場の外周に足を踏み入れる前に、すでに騒ぎが聞こえてきた。
一、二回の言い争いではない。
正真正銘の、乱闘の音だ。
靴底が床を擦る音、拳が体に当たる鈍い音、怒号、罵声、そして金属のフェンスにぶつかったときの短い振動音。冬はただでさえ音が硬く響く。新年の冷気がまだ抜けきっていない空気の中で聞くと、誰かが学校の規則書で直接人の頭を殴りつけているように聞こえた。
真紀の眉がすぐに下がった。
ヘートヴィヒは何も言わず、さらに歩調を速めた。彼女が今日着ているのは、校内用の少しフォーマルな冬服に暗い色の上着で、髪もきっちり結ばれている。乱闘を止めに行くというより、ハイレベルな学校行事の接待に向かうような姿だ。だからこそ、この場面と同じフレームに収まると、荒唐無稽さが二段階ほど跳ね上がる。
最後の外壁を曲がって、最初に見えたのは制服の色だった。
青。
白。
よし。
また上院と下院の潰し合いか。
この手の事件は毎学期少なくとも百回は起きる。もちろん、公式記録に百回とは書かれない。「生徒間の意見の対立」や「競技種目の調整過程における身体的接触」と美化される。
でも、はっきり言えばただの喧嘩だ。上院は下院を見下し、下院は上院が気に入らない。普段は風紀や教師、スケジュールの圧力で文明人のふりをしているが、定員や名誉、メンツに直結する予選名簿が出た途端、文明という安っぽい塗料はすぐに剥がれ落ちる。
さらに二歩進んで、状況を確認した。
そして、顔が半分引きつった。
黒髪で、寝不足の顔をしているのにやたらと喧嘩慣れしている奴が、片手で上院の男子の肩を固め、もう片方の手を容赦なく相手の腹に叩き込んでいた。その横には金髪が一人、群衆の中で異彩を放ちながら、喧嘩というより「礼儀正しく人を床に押さえつける」ような鮮やかな動きを見せていた。
「嘘でしょ……アカリ? ハーヴィー?」
声が口から飛び出していた。
その二つの名前が出た瞬間、私の嫌な予感は完全に的中した。通りすがりの人間でも、知らない補欠選手でも、制服の色だけで「自業自得」と切り捨てられる雑魚でもない。鉑橋街二十二番地の身内だ。
新年の仕事量は、誰に対しても手加減をしてくれないらしい。
「感心してる場合じゃないわ、星野」真紀の声はすでに氷点下だった。「引き離して」
「了解」
肩を回し、指の関節を一本ずつ鳴らして、非常に楽しげな声で言った。
「正月でいいもの食べすぎたから、ちょうどいい運動になる」
真紀は私がどのスタイルの「仲裁」をする気か察したらしく、足を止めて私を見た。
「……星野」
その声にはすでに警告が含まれていた。
残念ながら、遅い。
私は口の端を上げ、サービス精神旺盛だと自負する笑顔を向けた。
「仲裁でしょ」
手首を振りながら、前へ出る。
「物理的な」
上院のクソ野郎どもは、四人で二人を相手にしていた。しかも一人は女子だ。少しでも恥を知っている人間なら、こんな算数で手は出さない。もちろん、恥を知っていれば、こんな寒い日に第三射撃場で拳を使って理屈をこねようとは思わないだろう。
近づくと、ちょうど上院の男子が一人、アカリがいるフェンス側に馬乗りになり、拳を高く振り上げて殴りかかろうとしていた。アカリは劣勢ではないが、位置が悪く、一時的に手が塞がっている。私はその後ろに回り込み、まずとても丁寧に彼の肩を叩いた。
そいつが振り返ったとき、顔には「誰だこんなときに」という苛立ちが張り付いていた。
次の瞬間、私のアッパーカットが顎を捉えていた。
パーン、と乾いた音がした。
そいつは後ろに吹っ飛び、横のプラスチック製パーティションに激突して、教務主任が即座に脳溢血を起こしそうな爆音を立てた。
手を振り、気分が一気によくなった。
「よう、ハーヴィー」反対側に顎をしゃくり、愛想よく笑いかけた。「水臭いじゃないか。こんな面白いこと、なんで呼んでくれないのさ」
ハーヴィーは絡みついてきた白制服のパンチをかわし、顔は相変わらずいつでも寝落ちしそうな死に顔だったが、口から出る言葉は殴りたくなるものだった。
「お前が来たら、俺の殴る分が減るだろ」
「クソガキ、口だけは達者だな」
横から突っ込んできた奴に蹴りを入れてやろうとしたが、足が出る前に、ハーヴィーがズボンのサイドポケットからレンチを取り出すのが見えた。
一秒、沈黙した。
「お前、喧嘩にレンチ持ってくるの?」
ハーヴィーはまぶたを上げるのも面倒くさそうに、作業マニュアルでも暗唱するように堂々と言った。
「一人前のメカニックとして、レンチの一本や二本持ち歩くのは常識だ」
「常識なわけあるか!」
怒鳴りながら、振り下ろされてきた別の拳を払い除け、そのまま相手を横にねじ伏せ、膝裏を蹴り上げて強制的に跪かせた。隣でアカリがようやくフェンスから抜け出した。髪は少し乱れ、呼吸も少し荒いが、顔の横に灰がつき、制服の袖口が歪んでいるにもかかわらず、表情は静かだった。乱闘現場というより、不良品のパーツを処理しているような静けさだ。
この子も、だんだんおかしくなってきている。
「ハーヴィー、本気で道具で殴るなよ!」隙を見てまた叫んだ。
「手加減はする」
「前にお前みたいに言った奴は、実験室の天井を吹き飛ばしたぞ」
「あれはDだ。俺じゃない」
……そんな区別までしっかりしているとは。
場が乱れると、第三射撃場周辺のパーティションや標的の仕切り壁が、かえって最高の乱闘地形になった。最初は数の暴力で押していた上院の連中も、私とハーヴィーにリズムを完全に崩され、勢いが半分に落ちた。
真紀は乱闘の中心には飛び込まず、少し外れた位置から冷たい声で場を制圧していた。誰かが列を離れようとしたり、回り込もうとしたりすると、彼女の「止まりなさい」という一言と視線だけで、まだ半分の理性が残っている一、二人を本当に釘付けにしていた。
これが九島真紀が普段から積み上げてきた信用の力だ。
面倒だが。
非常に役に立つ。
ヘートヴィヒは真紀の斜め前、半歩の位置にいた。
最初は少し気が散っていた。皇女殿下を乱闘のど真ん中近くに置いておくこと自体、外交問題を引き起こしそうでヒヤヒヤした。しかし、本当に保護されるべきなのは、一番か弱そうに見える人間とは限らないと、事実はすぐに教えてくれた。
上院の男子の一人が、私とハーヴィーに陣形を崩され、突然フェイントをかけて身を沈め、真紀の方から突破口を開こうとした。
心臓が沈んだ。
真紀が弱いからではない。真紀が戦えることはよく知っている。問題は、ヘートヴィヒが彼女の少し前に立っていたことだ。もしあいつが本当に突っ込んだら、先に怪我をするのは真紀ではなく、ヘートヴィヒかもしれない。
次の瞬間、驚愕したのは私の方だった。
ヘートヴィヒが半歩横に避け、相手の重心を完全に見切ったような鮮やかな動きを見せた。片手でその男子の手首を掴み、もう片方の手を肩甲骨の間に滑り込ませ、腰を捻る――
バン。
校庭の群架には似つかわしくない、見事な一本背負い。
男は完全に宙を舞い、背中から床に叩きつけられた。その音の大きさに、彼の肺の中の空気が心配になるほどだった。
ヘートヴィヒが立ち上がったとき、髪は一房乱れただけだった。
彼女は床でまだ意識が戻らない男を見下ろし、自分でもこういう「突然突っ込んでくる」粗暴な行為に少し驚いたように、真面目な顔で息を吐いた。
「ふう」ヘートヴィヒは言った。「急にこんな風に突っ込んでくるなんて、とても危険です」
その言葉で、その場で噎せそうになった。
いや、殿下、本当に危険なのはあなたの方でしょう。
こっちが心臓止まるかと思った。
その瞬間、さっきの上院の勇者に起立して黙祷を捧げたくなった。人生最後の判断ミスは、喧嘩の強い相手を怒らせたことではなく、一番喧嘩ができなさそうな相手を飾り物だと勘違いしたことだ。
残っていた上院の生徒たちも、この光景に明らかに震え上がっていた。
中には半歩後ずさりし、「お前らの家には一体どんな化け物が住んでるんだ」と顔に書いてある奴もいた。
私はこの機に乗じて、ハーヴィーに向かっていた別の奴を肘で弾き飛ばした。ハーヴィーもレンチの背で相手の手首を叩いた――よかった、少なくとも彼が道具で頭を割れと言われたわけではないと覚えていたようだ。
遠くから鋭いホイッスルの音が聞こえてきた。
長音一回、短音一回、そしてまた長音。
二階堂と彼女の……いや、風紀委員たちが、ようやく到着した。
白いブーツが雪を踏む音、整然とした駆け足、ホイッスルと指示。そのオーラは非常に風紀らしく、非常に二階堂らしかった。視界に飛び込んできた彼女は、まず床に倒れている数人を見て、次に息を切らして立っているハーヴィー、袖口の歪んだアカリ、手首を回している私、そして――
横に立ち、顔色一つ変えず、姿勢まで端正なままのヘートヴィヒを見た。
二階堂の動きが、明らかに一瞬止まった。
「星野シモ……なんで皇女殿下まで……」
その一瞬の表情は、今日の私にとって最大の精神的補償だった。
残念ながら、いい気分は半秒しか続かなかった。
次は私の仕事の番だからだ。
ことわざにもあるように、群架というものは、まず水を濁らせてしまえば、後で全員をすくい上げるのが楽になる。
だから私はすぐに手を挙げ、誰かが正直に状況を説明し始める前に口を開いた。
「二階堂、いいところに来た! 上院の四人が一人半を相手にして、さらに会長と殿下にまで突っ込もうとしたから、こっちは正当防衛と校内秩序維持の協力をしてただけだ!」
「一人半ってどういう意味だ?」ハーヴィーが横で非常に場違いな質問をした。
「お前が半人分しか寝てない顔をしてるって意味だよ。こんなときに言葉尻を捕らえるな」
「星野」真紀がついに声を上げた。恐ろしいほど平坦な声だった。「あなたは黙って」
即座に口を閉じた。
こういうとき、九島真紀がこういう声で私を呼ぶときは、大抵、彼女の脳内で秒単位の計算が始まっていることを意味する。どう場を制圧し、誰を引き離し、誰を守り、どの名前を事件が大きくなる前にコントロール可能な範囲に押し込むか。
そして今私がすべきことは、これ以上冗談を言うことではなく、彼女が計算した秩序のライン内に立ち、残りの混乱を片付けることだ。
二階堂もこのタイミングで我に返り、連れてきた風紀委員たちに指示を出し、引き離し、押さえつけ、名前を控え、怪我の確認をさせた。雪の上の荒い息遣い、怒声、そして喧嘩直後特有の互いを睨みつける視線はまだ残っていたが、事態はついに書類で処理できる範囲に戻り始めた。
私は第三射撃場の端に立ち、さっきのパンチで少し赤くなった自分の手の甲を見下ろし、ふとため息をつきたくなった。
代表戦の予選はまだ正式に始まっていない。
だが、開会式は、どうやら誰かが先に済ませてくれたようだ。
よし。
新年も、やはりこの世界は順序よく進むということを知らない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




