184.二人きりのクリスマス・ディナー 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
冷たい風が道沿いに吹き抜けていく。
ハンドルを握りしめ、ナビが前方に映し出す青いラインを睨みつける。さっきの失言は、過労のあまり脳の言語システムがついに私を公然と裏切ることを選んだ結果なのだと、そう思うしかなかった。
後部座席の真紀は、道中ずっと黙ったままだ。
この静けさ自体は珍しくもない。彼女はもともと、バイクの後ろに乗って自分から話題を振るようなタイプじゃない。ましてや今日は、二人とも夜明け前から働き詰めだ。自分たちの身を無事に校門から連れ出した時点で、文明社会に対する義務は果たしたと言っていい状態だった。
だが問題は――。
彼女がさっき口にした、あの言葉だ。
『そう。よかった』
言葉そのものに罪はない。むしろ安全だ。定型文の返答のように、あまりにも安全すぎる。
だが、安全すぎるからこそ、怪しい。
もし本当に何も考えていないなら、「ふうん」とか、あるいは完全に無視するはずだ。なのに彼女はわざわざ『そう。よかった』と言った。この返答の恐ろしいところは、私が口にすべきではなかった前提を彼女が黙って受け入れ、その上で一見普通に見えてまったく普通ではない言葉を返してきたように聞こえる点だ。
考えれば考えるほど、おかしい。
そして、おかしいと思えば思うほど、聞けなくなる。
人間の本能とはそういうものだ。本当に危険なのは爆破そのものではなく、何かが爆破するかもしれないと怯えながら、それがただの街頭設備であるかのように振る舞わなければならない時間なのだ。
前で運転する私と、後ろに乗る真紀。
二人の間には冬の夜、コート、ヘルメット、街灯、冷たい空気、開け放たれた夜空、そして私自身が首を絞めたくなるような『私たちには関係ないものだ』という一言が挟まっている。
よし。
クリスマスイブの軍学校外周道路で、私はついに自分自身を、極めて高度な気まずさのどん底へと叩き込むことに成功した。
私が沈黙しすぎたせいか、後ろの彼女がついに口を開いた。
「遅いわよ」
肩がわずかにこわばる。
「道に薄雪が積もってるから」
私は顔色一つ変えずに答えた。
「安全第一」
「そう?」
「……その反問にはどういう意図があるの?」
「なんでもないわ」
真紀の声はヘルメットと風の向こうから届き、相変わらず平坦で、尻尾を掴ませない。
「ただ、何かを後悔している時は、アクセルが不安定になるものかと思っていただけ」
危うく手が滑り、バイクを隣の左折レーンに突っ込ませそうになった。
「真紀」
私は歯を食いしばってハンドルを修正する。
「私が後悔してるってわかるなら、さっきあんたも考えてたってことでしょ」
「私が何を考えていたなんて、一言も言っていないわ」
「そこが一番恐ろしいところなのよ」
真紀は私の背後で二秒ほど黙った。
それから、驚くほど軽く笑ったのだ。
はっきりと聞こえるような笑いじゃない。冷たい空気の中で呼吸がわずかに震え、すぐに収まったような気配。今日一日、私の精神が過敏になっていなければ、十中八九気づかなかっただろう。
だが、気づいてしまった。
これがまずい。
九島真紀は笑わないわけじゃない。笑う。ただ、彼女の笑いの大半はあまりにも淡く、短く、文末にピリオドを打つように添えられるため、「今わざと笑ったでろ」と突っ込むのが難しい。だがそれゆえに、彼女が本当に人間味のある緩みを見せたときの殺傷力は、普段の比ではないのだ。
さっきまで死んだふりを貫かなかったことを、激しく後悔し始める。
「シモ」
「……何?」
「さっきの言葉、確かにとても自然だったわ」
冷たい空気を大きく吸い込んだ。
「真紀、あんた今、海に飛び込みたがってる奴を、海水の温度を確認しに突き飛ばしてるのと同じよ?」
「事実を述べただけよ」
「事実の陳述は、時として侮辱より人を傷つけるの」
「それは、あなた自身もわかっているという証拠ね」
「わかってるわよ!」
私は声を潜め、ほとんど歯の隙間から絞り出した。
「今私が一番必要としてないのは、あんたによる再確認」
真紀はすぐには返さなかった。
交差点の赤信号が点灯し、ゆっくりとバイクを止める。前方の信号の光が積雪の縁に反射し、ひどく鮮やかな赤色を見せている。その鮮やかさは、自分が今、何らかの公開裁判を受けているのではないかという錯覺を抱かせるほどだった。
バイクが完全に止ると、世界が急に静かになった。
先ほどまで続いていた風の音もなく、エンジンを吹かすという、考える暇がないふりをするための言い訳もない。遠くを通り過ぎる数台の車の音と、赤信号の下の、理不尽なほど短い空白だけがある。
振り返りはしなかった。
彼女も私に触れなかった。
だが、真紀が背後にいることは嫌というほどわかる。その距離感は明確で、触れる必要も、話す必要もない。ただそこにいるとわかるだけで、さっきの『私たちには関係ないものだ』という一言が、故障したアナウンスのように脳内でリピート再生され続けるのには十分だった。
数秒経ってから、真紀は極めて平静に口を開いた。
「さっきのは、他意はないわ」
……ほう。
この言葉は本来、救済であるべきだ。
問題は、九島真紀の口から出ると、それが単なる救済には全く聞こえないことだ。むしろ、私が脳内妄想で自滅しそうになっているのを冷徹に観察し、効率と公共の秩序を考慮して、一時的に精神的内乱から引きずり戻すことに決めた――という感じだ。
だが、そう言われれば言われるほど、この件が本当に何の意味もないなんてあり得ないと思えてくる。
二秒耐え、最後にはやはり耐えきれなかった。
「……じゃあ、あんたの『そう。よかった』はどういう意味?」
青信号はまだ点かない。
こんな時にこんな質問をするのは、人生がまだ十分に複雑でないからと、自らサブクエストを追加するようなものだ。
だが、真紀は本当に答えた。
「文字通りの意味よ」
「信じない」
「それはあなたの問題ね」
「真紀、そういう答え方は、部下が組織に対する基本的な信頼を失う原因になるわよ」
「ならないわ」
と、彼女。
「あなたはもともと、組織に対する基本的な信頼なんて持っていないもの」
……よし、反論できない。
赤信号が青に変わり、私は即座にアクセルをふかし、バイクを再び滑り出させた。ある意味で、移動というのは本当に偉大な発明だ。車が前に進んでさえいれば、この会話も道中の一部に過ぎず、後日何度も再生される社会的な擦り傷ではないと、自分をごまかすことができる。
真紀もそれ以上は追及してこなかった。
彼女は引き際をわきまえている。これがおそらく彼女の最も危険なところだ。人を完全に崩壊するまで追い詰めることはしないが、こちらが持ちこたえたと思った瞬間に、一番触れられたくない場所を正確に突いて、そして止める。
あとは自分で勝手に混乱しろ、というわけだ。
そして私は今、完璧に混乱していた。
ナビは私たちを商業エリアへと導いた。この時間、ほとんどの普通のレストランはとっくに閉店準備に入っており、明かりが点いているのはチェーン店か二十四時間営業の店くらいだ。通り沿いのクリスマスの飾りはまだ撤去されておらず、ガラス窓の奥で輪になったイルミネーションが夜の闇に映え、昼間よりもずっと優しく見えた。こんな時、十二時間の労働現場から抜け出してきたばかりでなければ、普通の人間なら本当に少しは祝日気分を味わえたかもしれない。
残念ながら、今の私の脳内で最も鮮明な祝日の記憶は、蘭が顔を赤くして差し出した極薄の箱だ。
そして、自分が言った『私たちには関係ないものだ』という一言。
……駄目だ、考えれば考えるほど恥ずかしい。
「着いたわよ」
後ろで真紀が注意を促した。
我に返ると、バイクはすでに目的地の前に滑り込んでいた。店舗はそれほど大きくないが、看板は綺麗に磨かれ、外には少しレトロな雰囲気の看板灯がぶら下がっており、こう書かれていた――。
『鮨 浪速丸』
その下には、あの勇敢な宣伝文句がぶら下がっていた。
【首都星デュナン第一級水産養殖業者、地球時代の魚類を完璧に再現】
バイクを止め、その文字の並びを二秒ほど見つめる。
「この広告文句、何度見ても恐喝みたいね」
真紀はヘルメットを脱ぎ、白い息を吐き出した。
「少なくとも正直よ」
「どうやって再現したのか、怖くて聞けないくらい正直だけど」
「今日は制度の暗部に触れすぎたのだから、当分は食材の出所に対する探求心は持たない方がいいわ」
「真紀、その言葉、少しも安心できないんだけど」
一緒に店の入り口まで歩いていくと、自動ドアが開いた。酢飯の香り、熱いお茶、清水、そして焼き物の匂いが混ざった暖かい空気が顔に吹き付けてくる。その場で人類の飲食文明に敬礼したくなった。
中はやはりチェーン店風だった。照明は明るく、座席は整然とし、壁には電子メニューが掛かり、その上ではいくつかの半透明の立体投影が今日のおすすめをゆっくりとループ再生している。配膳ロボットが通路の隅を滑り抜け、その胸にはいかにもそれらしくサンタクロースのマグネットが貼られていた。空間全体が「祝日と家庭」の雰囲気を一生懸命作ろうとしているが、本質的には精密な商業システムであるという匂いが漂っていた。
正直なところ、これは今日という日にとても合っている。
表面は祝祭、内部は稼働、すべては労働によって支えられている。
「いらっしゃいませ――二名様ですか?」
フロントの店員が顔を上げた。
真紀が頷く。
私は横に立ち、さっきの高度な気まずさから自分を引き剥がそうと努力しながら、自分がまだ正常な人間として振る舞えるかを確認していた。答えは「かろうじて可能」といったところだが、精度は普段より少し落ちていた。
店員は私たちを奥の二人席に案内してくれた。個室ではなく、半分仕切られたボックス席だ。静かさもちょうどよく、今日一日、夜明けから今まで、私と真紀がほとんど一度も腰を下ろして休んでいなかったことを実感するのにもちょうどよかった。
座ってみて初めて、自分の肩がずっと強張っていたことに気づく。
力を抜くと、骨の髄から支持力を二割ほど抜き取られたような気分になった。
真紀はメニューを引き寄せ、まず熱いお茶を注ぎ、そのうちの一つを私の前に押しやった。
「先に飲んで」
湯飲みを受け取った。熱気が指に当たり、今日が本当に終わりかけているという実感がようやく湧いてくる。
「なんだか、すごく複雑な感慨が湧いてきた」
と、私は言った。
「どんな感慨?」
「朝の六時過ぎからさっきまで立ちっぱなしで、今日一番恐ろしいのは保護者と業者と年末年始の當直制度だと思ってたんだけど」私は湯飲みを両手で包み込み、彼女を見た。「今になってみると、どうやら違うみたい」
真紀は顔を上げた。
「じゃあ何?」
一秒黙った。
それから、非常に誠実に答えた。
「自分の口」
真紀は半秒静止した。
それから、彼女はまた笑った。
今度はさっきよりも少しはっきりしていた。それでも短く、淡いものだったが、この人が今日、表面上ほど平穏な気分ではないことを確認するには十分だった。
私は即座に目を細めた。
「真紀、あんた今日、実はすごく楽しいでしょ?」
「いいえ」
「否定が早すぎる」
「あなたの質問が遅すぎるからよ」
「どういう意味?」
「つまり」
彼女はうつむいてメニューを開き、口調はまたあの人を苛立たせるほど平静なものに戻った。
「もしあなたがさっきの言葉を本当にそんなに気にしていたのなら、交差点の赤信号の時にもう一度聞くべきだったということ」
熱いお茶を気管に詰まらせそうになった。
「……九島真紀」
「何?」
「あんたって奴は、静かにやり過ごせたはずの事を、絶対に静かに終わらせないようにするのが本当に上手いわね」
「あなたが先に口を開いたのよ」
「今夜本当にリスク評価が必要なのは夜番じゃなくて、この夕食なんじゃないかって気がしてきたわ」
「それでも寿司は食べるの?」
彼女を見た。
彼女はメニューを見ていた。
最初から最後まで、すべてが正常だった。さっきの一撃を彼女が刺したわけでもなく、道中で私を一人で脳内スリップさせたのも彼女ではないかのように。
だが私は痛いほどわかっている。彼女はすべて知っているのだ。
長く息を吐き出し、ついに観念してメニューを引き寄せた。
「食べる」
私は言った。
「ここまで追い詰められておいて、食べないなんて、負け犬の遠吠えみたいで栄養がないから」
真紀は頷いた。
「一理あるわね」
「会議記録で提案を承認するみたいな口調で同意しないで」
「じゃあ、変えるわ」
彼女は目を上げて私を見、湯飲みを持ち上げ、私の湯飲みの縁に極めて軽く当てた。
「お疲れ様、私」
一瞬、呆気にとられた。
ほんの一瞬だ。
だがその一瞬で、今日早朝から今まで積み重なってきた疲労、怨念、おかしさ、荒唐無稽さ、そして校門口で深く考えるべきではないあの雑多なものたちが、突然少しだけ静かになった。
湯飲みの中で微かに揺れるお茶の水面を見つめ、しばらくしてようやく咳払いをした。
「……そういうのは反則」
「どこが?」
「人が干上がりかけてる時に、急にまともな上司みたいな振る舞いをするのが」
「あなた、普段私をどう認識しているの?」
「制度がコートを着て自ら巡回に出ているような感じ」
真紀は意外にも頷いた。
「悪くない響きね」
「どこが悪くないのよ」
そうやって注文を始めた。
窓の外は冷たく、雪の光がまだ残っている。窓の内側は暖かく、お茶も熱い。今日は本来、当直、引き継ぎ、帰宅、臨機応変に何か食べて終わるだけの一日のはずだった。それが、極薄の箱、失言、正直とは言えないが間違いなく意図的な会話のせいで、少しばかり落ち着かない余韻を引きずることになってしまった。
よりにもよって、そういう余韻が嫌いになれない。
本当に、どうしようもない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




