181.午後五時三分前 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私とヘートヴィヒが生徒会室に戻ると、手ぶらの私たちを見たジェスは、うまくいったかどうかを聞くより先にこう言った。
「で、あの儀式感とかいうやつは、ちゃんと火葬場に送ってきたわけ?」
私はバインダーを彼女の額の辺りに向けて軽く振った。
「火葬はしてない」と、私は言った。「私たちはもっと文明的だからね。予算表から合法的に除籍してやっただけだ」
ジェスがその場で机を叩いた。
「見事! それでこそ生徒会だ! 国や民を救えなくても、誰かが無駄遣いしようとした時に、すかさずその手を切り落と――」
「言葉に気をつけて」真紀が顔も上げずに言った。
「……すかさずその手を、優しく机の上にお戻しする」
「そっちの方が怖いんですけど」と、蘭が淡々と補足した。
私は修正版の見積もりと新しい注記を一緒にロイの机に置いた。ロイは手を伸ばして受け取ると、素早くページをめくった。その速度は書類を読んでいるというより、脳死を宣告された患者がまさかまだ呼吸しているのではないかと確認しているかのようだった。
見ているうちに、彼の顔から死気がようやく少しだけ引いた。
ほんの少しだけ。
死体が「もう埋葬してもいい」から「もしかしたらまだ蘇生できるかもしれない」に変わった程度だ。ロイにとっては、これでも朗報に近い顔色と言える。
「メインスピーカーは元の基準に差し戻し」ロイは目を通しながら言った。「予備スピーカーの追加は取り消し。配線費用は事前調査の補足を要求。それから……」
彼は言葉を切り、私が赤ペンで丸をつけた項目に視線を落とした。
「『儀式感環境音響デザイン』、全額削除」
私は胸の前で腕を組んだ。
「お礼はいいよ」
ロイが顔を上げて私を見た。
「礼を言う気はない」
「あんたって奴は、本当に可愛げがないな」
「今私が君に払える最大の敬意は、昨夜の憲兵隊での滞在も公休の時数にカウントするつもりだったのかと、この場で問い詰めないことだ」
「あれは完全な事故だ」
「君の人生は、いくらなんでも事故の密度が高すぎる」
「二人とも喧嘩しないでよ」ジェスが楽しそうな顔で割って入ってきた。「先に一つ確認させて。あんたとヘートヴィヒが放送委員会に乗り込んだ時、『あ、今日は本当に死ぬんだ』みたいな顔した奴、いた?」
私は椅子を引き出して座った。
「いた」
ヘートヴィヒも私の隣に座り、記録を補足した書類の束を整理しながら、平坦な口調で付け足した。
「それも、一人ではありませんでした」
ジェスの顔がパッと明るくなった。
「最高。聞いただけで元が取れた気分。次行く時、ドアの外で隠れて聞いててもいい?」
「あんたは先に声を出して笑うだろ」と、私は言った。
「だったら、私が放送委員の良心だって言ってよ」
「あんたは放送委員の報いって感じだけどな」
ジェスがちっとも良心の咎めを感じさせない声で笑い、先ほどまでの行政機関特有の乾いて硬いオフィスの空気も、彼女の笑い声で少しだけひび割れた。
ヘートヴィヒは私の隣に座り、静かに先ほどの会談の補足事項を正式な注記としてまとめている。彼女の筆運びはとても安定していて、字も私を侮辱しているのかと思うほど綺麗だった。
一目見ただけで、幼い頃から完璧な教育を受け、ペン先の止めやはねにまで品格が漂っているとわかる字。それが、私の「読めれば文明に対する義務は果たした」という程度の筆跡と並ぶと、まるで別の生き物のようだった。
私は二度ほどそれを見て、たまらず口を開いた。
「ヘートヴィヒ」
「はい?」
「あんたの字、額縁に入れて飾ったら絶対誰か買うぞ」
彼女はペンを止めて私を見た。
「それは褒め言葉ではありませんね」
「今日すでに言ったはずだ。私は精神状態が良くないから、褒め言葉に一番近いものしか提供できないって」
ヘートヴィヒの目に、ごく薄い笑みが掠めた。
「では、やはり受け取っておきます」
……よし。
彼女は最近、本当に返しが上手くなってきた。このままいくと、生徒会の空気には人類の口答えスキルを促進する成分でも含まれているんじゃないかと疑いたくなってくる。
そんなことを話していると、ドアの外から足音が聞こえてきた。次の瞬間、ドアが押し開けられ、Dが先に入ってきた。
彼は手に保健委員からの書類を挟み、入室するついでにドアを半寸ほど横に避けさせた。自分の体格でドア枠にぶつかって労災を起こさないためだ。後ろに続くハーヴィーは相変わらず静かで、手に環境配置の確認表を数枚持っている。その表情は、生徒会のために外回りの仕事をしてきたというより、どこかの部品倉庫から散歩して帰ってきたかのように落ち着いていた。
ジェスは彼らが戻ってきたのを見るなり、即座に椅子を回転させた。
「おかえり。どうだった? ドアの板、外してきた?」
Dは彼女を見下ろした。
「外してない」
「残念」
「だが、保健委員が最初におれを見た時、外に重傷者がいると勘違いしたのは確かだ」
私はその場で声を立てて笑った。
「だから言っただろ」
Dは書類を真紀に渡し、至って平穏な口調で報告した。
「全体的には順調だ。向こうは大会のスケジュールに協力する意向で、救急箱、氷嚢、止血用の消耗品、それに会場の待機要員も手配できるとのことだ」
「悪くないわね」と、真紀。「問題は?」
Dは手を上げて首の後ろを掻いた。
「小さな問題が二つある。一つ目、ハイリスク種目の会場には折りたたみ式の担架をもう一台追加したいと譲らない。二つ目、旧版の応急処置説明パネルも一緒に使いたいそうだ。どうせ文字は間違ってないから、と」
蘭が即座に顔を上げた。
「あのパネルは去年刷り直すべきだったんです」
「ああ」Dは頷いた。「おれもそう言った」
「それで?」と、私は尋ねた。
「そしたら『文字は間違ってないし、色が少しダサくても人命救助には影響しない』と言われた」
私は〇・五秒沈黙した。
「……その言葉、論理的には少し筋が通ってるのが余計に腹立たしいな」
ロイが手元のペンをくるりと回した。
「折りたたみ担架は追加費用がかかるのか?」
Dが答える。
「かかるが、高くはない。生徒会が運搬と回収を担当するなら、倉庫から状態のいいものを借りてくる算段をつけるそうだ」
私は椅子の背もたれに寄りかかった。
「よし、それは許容範囲だ。いつか本当に会場の隅で人が倒れた時、私たちが『プロセスは完璧だ』という言葉でそいつを覆ってやるしかなくなるよりはマシだ」
真紀が一度頷いた。
「旧版の救急パネルは再印刷。担架は保留」
彼女は野菜を刻むように手早く言った。
真紀にとって、この規模の問題はおそらく書類の角がめくれた程度のことで、平らに押し付ければ済む話なのだ。
ハーヴィーもその時、手にしていた表を差し出した。
「おれの方も似たようなもんだ」と、彼は言った。
私は彼を振り返った。
「仮設トイレとゴミ箱?」
「話はついた」と、ハーヴィー。「環境委員は協力する気だ。仮設トイレの数は当初の配置通り、ゴミ箱はさらに二セット増やしてくれた」
「わお」ジェスが即座に眉をひそめた。「そんなに話がわかる相手だったっけ? 何を手札にして交渉したの?」
ハーヴィーは少し考えた。
「事実だ」
「……すごく抽象的。やり直し」
ハーヴィーは顔色一つ変えずに言った。
「もしゴミの回収頻度が足りなければ、大会当日は観客席が先に悪臭で死滅し、その後にようやく選手の試合の番が回ってくると伝えた」
ジェスがその場で拍手した。
「本日の外回り組MVPは副会長じゃなくてハーヴィーに決定」
私も頷いた。
「説得力がある。続けて」
ハーヴィーは配置表の一枚を抜き出し、真紀と蘭に指し示した。
「小さな問題が三つある」と、彼。「一つ目、環境委員は仮設ゴミ箱の一セットをメインスタンド後方の一番使いやすい場所に置きたがっていたが、そこはちょうど蘭が引いた観客の退避ラインに重なる」
蘭が受け取って一瞥し、即座に眉をひそめた。
「駄目です。そこは緊急避難の分岐点です」
「わかってる」と、ハーヴィー。「だから、生徒会の最終確認が出るまで動かさないように言っておいた」
蘭が頷く。
「正しい判断です」
ハーヴィーは次の欄を指した。
「二つ目、回収車の入場時間は本来午後三時半の予定だったが、その時間はまだ人気種目が終わっていない可能性が高い。環境委員曰く、無理に入場させれば観客の流れと衝突するかもしれないとのことだ」
ロイが低い声で言った。
「つまり、調整を間違えれば、観客は退場しながらゴミ回収車と合流することになるわけか」
「目に浮かぶな」と、私は言った。「しかも、翌日の学校のトップニュースを飾るような光景だ」
ヘートヴィヒが記録を取りながら、静かに尋ねた。
「三つ目は?」
ハーヴィーは少し間を置いた。
「三つ目が一番小さいが、一番厄介だ」と、彼。「仮設トイレの一セットを置く予定だった場所が、射撃場の予備機材の搬入ルートに近すぎる。普段は問題ないが、機材の搬入とトイレの列が重なれば、動線が完全に死ぬ」
私は聞き終えると、即座に蘭を振り返った。
「総務殿?」
蘭はすでに自分の動線のラフ図を取り出し、数秒見比べてから、先ほどよりもさらに深く眉をひそめた。
「これは小さな問題ではありません」と、彼女。「典型的な『トイレが一つ増えただけに見えて、実際には会場全体を大渋滞に陥れる』パターンです」
「ロマンの欠片もない言い方ね」と、ジェス。
「生徒会に元々ロマンなんてありません」蘭が返す。「あるのは流量制御だけです」
「いや、まだある」と、私は言った。
全員が私を見た。
私は大真面目な顔で、机の上の書類の山を指差した。
「私たちの進行表への愛は、死がふたりを分かつまで変わらない」
オフィスが一瞬静まり返った。
次の瞬間、ジェスが椅子から転げ落ちそうになるほど笑い出した。
Dでさえ低く笑い声を漏らした。ハーヴィーは口角を動かしただけだったが、彼にしては相当熱烈な感情表現だろう。ヘートヴィヒは顔を背け、堪えようとしたようだが、結局堪えきれず、肩を小さく震わせた。
真紀は笑わなかった。
だが、彼女はペン先で机を一度コツンと叩いた。
「シモ」
「なんだ?」
「さっきの言葉を外部に向けて言ったら、私はその場で生徒会とあなたとの一切の関係を否定するわ」
「ひどくないか。あれは組織の精神を高度に要約したものだぞ」
「それを精神異常と呼ぶのよ」
「真紀を支持する」ロイが冷ややかに言った。
「お前まで私を背後から刺すのか?」
「これは背後からの刺撃じゃない。財務上のリスク管理だ」
私は痛ましく胸を押さえた。
「お前らって奴は、負傷者がチームの空気を活性化させようと努力してる苦心がちっともわかってない」
「あんたが昨日の夜人を殴ってた時は、負傷者の製造元って感じだったけど」と、ジェス。
「それは別の議題だ」
「いや、同一人物でしょ」
「ジェス、最近いい度胸してるな」
「ありがとう。褒め言葉として受け取っとく」
……くそ。
なんでこいつまで私のやり方を真似し始めてるんだ。
真紀はDとハーヴィーが持ち帰った書類を分けて押さえ、視線を素早く各項目の補足注記に滑らせた。彼女が黙っていると、生徒会全体が自動的に「よし、これからは本当に仕事をする人間に生殺与奪を決められる時間だ」という空気に入る。誰かが要求したわけではなく、全員がそう訓練されてしまったのだ。
しばらくして、彼女は顔を上げた。
「整理するわ」と、真紀。「保健委員の方は、新規の担架を保留、救急パネルは再印刷。環境委員の方は、ゴミ箱の位置を引き直し、回収時間を後ろ倒し、仮設トイレは機材の動線から外す。蘭、あなたとハーヴィーはこの後、新しい配置の重ね図を作成して」
蘭が頷く。
「了解です」
ハーヴィーも応じた。
「おれは構わない」
「D」真紀が彼に向き直る。「あなたはこの後もう一度保健委員のところへ行って、担架とパネルの再印刷の件を確定させてきて」
「わかった」と、D。
真紀はまたジェスを見た。
「放送委員の方は十七時までに新版を出させる。もし暇なら、一度見張ってきて」
ジェスは即座に手を挙げた。
「暇。超暇。私の人生で今一番暇なのは、連中が自分たちの『儀式感』をどうやって自らの手で埋葬するのか鑑賞しに行くことだよ」
「刺激しすぎないように」と、真紀。
「合法的な鑑賞の範囲内に収めるから」
「あなたの口から出ると、ひどく説得力がないわね」
最後に、真紀の視線が私とヘートヴィヒに落ちた。
「あなたたち二人は」と、彼女。「さっきの会談記録を正式な文書にまとめ、修正提案を添付して。新版の見積もりが届き次第、直接併合するわよ」
私は彼女を睨みつけた。
「予算の戦争を一つ終えたんだから、少なくとも五分間の人道的な休憩がもらえると思ってたんだけど」
「さっき放送委員会から歩いて戻ってくる道中、すでに休憩したじゃない」
私は一瞬呆気に取られた。
ジェスの目が、とんでもないゴシップを掴んだように瞬間的に輝いた。
「へえ――」彼女は声を間延びさせた。「あんたとヘートヴィヒ、道中で休憩時間があったんだ?」
「あんたのその脳みそ、ちょっと止めろ」私は即座に振り返って彼女を睨んだ。「あれは戦後撤退であって、休憩とは呼ばない」
「でも私には、二人で仲良くお散歩して帰ってきたように聞こえるけど――」
私は机の上の紙くずを掴み、彼女に向かって投げつけた。
ジェスは身軽に首を傾けて躱し、顔全体で殴りたくなるような笑みを浮かべた。
ヘートヴィヒは私の隣に座り、耳の先をまた少し赤くしていた。彼女は何も言わず、ただ先ほどの記録用紙を私の方へ少し押しやった。まるで、副会長殿、ジェスから火力を収めた方がいいですよ、さもないと今日このオフィスは本当に茶番劇の現場になりますから、とでも注意しているように。
真紀は当然見ていた。
だが、彼女はそれを指摘せず、ただ極めて平然とこう付け足した。
「まだふざけ合う体力があるなら、進捗をもっと早められるということね」
「九島真紀」私は沈痛な面持ちで彼女を見た。「あんたって奴は、本当にリソースを少しも無駄にしないな」
「ありがとう」
「もう一度言うけど、褒めてないからな」
「わかってるわ」
私は深呼吸をし、彼女に言葉を詰まらせられて負った内傷をゆっくりと飲み込むと、ヘートヴィヒが押しやってきた記録用紙をうつむいて受け取った。
彼女は身を乗り出し、指先でその中の一行を軽く叩いた。
「ここは私が第一版を記しておきました」と、ヘートヴィヒ。「あなたが先ほど言った『必要と理想は分けるべき』という言葉を補足する必要があるか、確認してください」
私は視線を落とした。
字はとても整っており、筋道もはっきりしていて、焦点がぼやけやすい箇所まで私の代わりに抜き出してくれていた。正直なところ、こういう人間と一緒に仕事をしていると、ある種の危険な依存感を抱いてしまう。なぜなら、こちらが少し気を抜いただけで、彼女は私の手元で崩れそうになっている部分をごく自然に受け止めてくれるからだ。
これは良くないことだ。
少なくとも、理論上は適度な警戒を保ち、不用意に他人に慰められるべきではない私のようなタイプにとっては、良くない。
私は一つ咳払いをして、平静を装った。
「よく書けてる」と、私は言った。
ヘートヴィヒが私を見る。
「今回は褒め言葉に入りますか?」
「……〇・五回分だ」
彼女はとても軽く笑った。
「では、記録しておきます」
ジェスが横で、極めて軽く、極めてわざとらしい息を吸い込む音を立てた。まるで今にも結婚行進曲を歌い出しそうだった。私は顔も上げず、切り取った不要な紙を直接彼女の方へ弾き飛ばした。
「歌ってみろ、今日は本当に儀式的な火葬ってやつを教えてやるからな」
「副会長、怖ーい」ジェスは頭を抱え、反省の色など微塵もない顔で笑った。
「今頃知ったのか?」
「ううん、再確認」
私は白目を剥き、いっそ彼女を無視することにして、うつむきながらヘートヴィヒと一緒に先ほどの会談を正式な文書にまとめる作業に戻った。
向こうでは、蘭がすでにハーヴィーと新しい会場図を広げ、ゴミ箱、回収車、仮設トイレの位置を引き直し始めている。Dは真紀の机の横に立ち、担架と救急パネルの細部を確認している。ロイは、瀕死の淵からようやく人間界に引き戻された財務官のように、再び数字の山に埋もれていたが、今度は明らかにペンを持つ手が安定していた。
生徒会室は再び、あの極めて奇妙な稼働状態に戻った。
うるさくて、忙しくて、乱雑で、書類が至る所に散らばり、言葉には常に棘があり、完全な睡眠をとっている者は一人もおらず、自分が誰かを気にかけていると本当に認める者もいない。だが、よりにもよってこんな場所が、足を踏み入れた瞬間に拍手で迎えてくれるのだ。自分で自分を憲兵隊に放り込んだ翌日でも、相変わらず仕事を割り振り、ついでに元の居場所へと引き戻してくれる。
そう考えると、構造が深刻に歪んでいるくせに、なぜか妙に倒れにくい「家」のようなものに思えてくる。
……当然、こんな感想を私が口に出すはずがない。
そうでなければ、ジェスは十中八九、即座に生徒会のためにホームドラマのキャッチコピーを書き始めるだろうし、真紀は無表情のまま私を公文書の山に蹴り戻して頭を冷やさせるだろう。
だから私はただうつむき、ヘートヴィヒのあの過剰なまでに整った記録の横に自分の字を書き足し、そしてひどく不本意ながら認めた――
少なくとも今日は、このめちゃくちゃな場所も、そう悪くない具合で回っている、と。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




