177.多忙な一日 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
生徒会室のドアを押した瞬間、最初に飛び込んできたのは暖房ではなく、紙とコーヒーと、絶賛稼働中の生徒会地獄、あの馴染み深い匂いだった。外はすっかり暗くなっており、窓ガラスは室内の光を映して、オフィス全体を「まだ沈んでいないが、船上の人間全員が残業中だと自覚している古い船」のように見せていた。
ロイはまだ窓際の椅子に座り、予算表と格闘していた。表情はすでに、「文明社会への信頼を完全に失う一歩手前の男性財務」という最終形に近づいていた。ランは新しい動線図を机に広げ、最後の分流線を定規で引き直していた。眉間の薄い皺は、定規と同じくらい真っ直ぐだった。ヘートヴィヒは真紀の隣で、「一度直したら二度と直さない」と決まった新しい流れを正式文書にまとめていた。文字は整然としており、「他人を脅す文書ですら宮廷公文のように書ける」気配があった。
そして真紀——
彼女は中央の机の後ろに座り、手にはまだ赤いペンを持っていた。まるで一群の死刑を言い渡した後、次の案件を待っている裁判官のようだった。
私が入ると、四人全員がこちらを見た。
一瞬、自分が外回りではなく前線偵察に出され、「敵は馬鹿ではないが、讃えるほどでもない」という報告を持ち帰ったような、妙な感覚に襲われた。
真紀が最初に口を開いた。
「戻ったのね」
「うん」私は外套を半分脱ぎ、机の前まで歩いて、遠慮なく口火を切った。「的に当てられない人間じゃない。ただ、子供の頃からずっと、他人が描いた十点圏の中で生きてきただけ」
オフィスが一秒静まり返った。
ロイの手が止まり、
ランが顔を上げ、
ヘートヴィヒのペン先も動きを止めた。
真紀はすぐには何も言わなかった。
ただ私を見ていた。この一言が、ただの愚痴なのか、それともすでに分類とラベリングと性質評価まで済ませた上で、あとは彼女が判を押すだけの結論なのか、見極めている目だった。
残念ながら、答えは後者だ。
私は真面目にやりすぎた。それは、夕飯前の人間が持つべき態度ではない。
「詳しく」真紀はようやく口にした。
私は彼女の机の前の椅子を引き寄せて座り、手袋を机の隅に放り出した。背中が背もたれに触れた瞬間、今日は本当にあちこち走り回ったのだと実感した。
生徒会室から風紀委員会へ、風紀から器材室へ、器材から射撃場当番台へ、下院の靶場から上院の射撃館へ、そこからまた生徒会へ。
普通の学園ものなら、この時間の女の子はコンビニでデザートを選んでいるか、下校途中に誰かと口喧嘩でもしているのだろう。私はというと、生徒会室で、どの種類の権力と資源が育てた候補が、本番で一番早く足を滑らせそうかを報告しようとしていた。
連邦の教育は実に有望だ。
「彼はポンコツじゃない」私は言った。「姿勢、呼吸、銃の保持、射撃、全部に基礎はある。成績も悪くない。むしろ見栄えがいい。問題は、彼が『できない』ことじゃなくて、『全部が自分用に調整されているのに慣れきっている』こと」
ロイは椅子の背もたれに寄りかかり、予算と現場の秩序の両方にあまり優しくなさそうな匂いを嗅ぎ取ったようだった。
「つまり」彼は言った。「撃てるけど、自分の快適圏の中でしか撃てない?」
「大体そんなところ」私は頷いた。「しかも単純な『調子が良ければ出るタイプ』じゃない。もっと厄介な方。周りを見れば、一式全てがスムーズだとわかる——使い慣れた器材、慣れた靶道、資料を受け取る人間、盛り上げる人間、称賛の量に至るまで、全部が『ちょうどいい』ように揃っている」
ランは机の上の動線図を見下ろしながら、静かに一言添えた。
「つまり、一人で十点圏に立っているんじゃなくて、一式全部が彼を十点圏に送り込んでいる」
「そう」私は言った。「だから、この種の人間が一番厄介。『資格がない』とは言えない。実力はある。『中身がない』とも言えない。中身もある。でも、一度その事前に校正された環境から引き剥がした時、どれだけ残るかは、もう一度見直さないとわからない」
ヘートヴィヒはペンを置いて顔を上げた。
「本人は自覚していると思う?」
これは正確な問いだった。
少し考えてから、私は首を振った。
「多分、自覚していない。あるいは、自分が常に甘やかされていることをわかっていても、『甘やかされている』とは思っていない。自分の身分や訓練やポジションに見合った標準的な扱いだと、本気で思っているはず」
ロイは鼻で小さく笑った。
それは「裕福で恵まれた連中は、優遇を標準待遇だと信じ込むのが得意だ」という一文を、喉元で必死に飲み込んだ男性財務の音だった。
「厄介な相手だな」彼は言った。
「かなり厄介」私は真紀を見た。「こういう人間ほど、表向きの看板にしやすい。上院側は彼を前に出しておけば、誰もが第一印象で『うん、体裁がいい。代表隊らしい』と納得する」
真紀がようやく動いた。
彼女は赤いペンをそっと机の上に置き、背もたれに身を預けた。目は、正しい欄に正しい数字がやっと入った報告書を見ているように静かだった。
「使える」彼女は言った。
ロイが眉を上げた。
ランが顔を上げた。
ヘートヴィヒですら、一瞬動きを止めた。
私はそのまま彼女を見た。「使える?」
「使える。ただし、保護層を剥がしてから」真紀の声にはほとんど抑揚がなかった。日常会話の一つとして話しているような調子だった。「そういう人間は名簿に入れられないわけじゃない。ただ、元の快適な条件をそのまま携えて名簿に入れるわけにはいかない。統一された校正、統一された順番、統一された器材規則、統一された観客条件の下に一度放り込んで、もう一度見るべきね」
「それで、成績が大幅に落ちたら?」ランが問うた。
「最初に撃っていたのは実力じゃなくて、環境だったってことよ」真紀は即座に答えた。
「落ちなかったら?」ヘートヴィヒが続けた。
「本当に使える。ただ、今までが甘やかされすぎていただけ」
私は彼女を見て、思わず笑いそうになった。
これだから真紀と話すのが好きなのだ。
もちろん、今日一日、私を器材の消耗品のように扱っていなければ、という前提付きで。彼女は言葉を無駄にしない。いかにもややこしそうな話でも、本当に必要な層は一枚だけで、それ以外は構造と規則に投げ返して検証させてしまう。
彼女は説教が好きなタイプではない。
規則に人間を暴かせるのが好きなタイプだ。
残酷だが、極めて効く。
「で、彼はどの欄?」私は聞いた。
真紀は、さっき私が持ち帰った名簿の空白欄を引き寄せ、候補枠の後ろに新しい註釈を一行書き足した。
『上院候補——高適合環境型。既存の配置を外して再検証要』
私はその行を見下ろし、その冷たさに見合うだけの美しさを感じていた。
ロイは首を伸ばしてちらりと見て、小声で言った。
「会長、その分類の仕方、本当に生徒会の裏マニュアルに載せるべきですよ」
「提案してもいいわよ」真紀は言った。
「提案しても、印刷予算は下りませんよね」
「わかっているなら十分」
ランは下を向いて笑った。短いが、本物の笑いだった。ヘートヴィヒも視線をその行から離し、口元がごく僅かに動いた。他人なら単なる社交的な微笑で済むレベルだが、彼女の顔に乗ると、ほとんど宮廷級の緩みだった。
そして私は、その場で、非常に明確な感覚を得ていた。
——今日はここまででいい。
仕事が終わったからではない。
生徒会の仕事は基本的に終わることはない。せいぜい一時的に分類され、ラベルを貼られ、優先順位をつけられるだけで、こちらがようやく息ができると思った頃に、少し人間らしい形に姿を変えて再び這い上がってくる。
でも少なくとも今日は、アカリがどういう人間かを掴み、上院の彼がどういう人間かも掴んだ。
前者は流れの止血に使える本物。
後者は保護層を剥がしてから、どれだけ色が残るかを見なければならないサンプルだ。
それで十分だ。
一日の締めとしては十分に教育的だ。これ以上続ければ、文科省あたりから残業代が出てきそうだ。
私は椅子の背もたれに寄りかかり、長く息を吐いた。
「じゃあ、今日はここまで?」
真紀は顔を上げ、私を見た。
「下校したいの?」
「生きて下校したいだけ」私は言った。「この二つは本校では必ずしも同じ意味じゃないからね」
「表はまだ最終版が残っているわ」
「それはあなたたちの最終版でしょ」私は顔色一つ変えずに入口の方を指差した。「私は今日一日で、生徒会のために人間観察サンプルを一通り集めてきた。これ以上無理をすると、その場で候補を『食用』と『非食用』に分類し始めるわよ」
ロイはペンを置き、眉間を揉んだ。
「その分類なら、上院の彼はまず『生食非推奨』だな」
「今日はずいぶん元気ね」私は言った。
「腹が減りすぎているだけだ」ロイは極めて正直な男らしい理由を述べた。「人間は腹が減ると、社交辞令を整える体力から先に失う」
「その点については、一貫性があるわね」ランが淡々と言った。
ロイは彼女を見て、明らかに反論したそうだったが、結局その気力を夕食に回すことを選んだ。賢明な判断だ。生きていく上で最も重要な能力の一つは、「どの戦争は食べてからでも遅くないか」を見極めることだから。
ヘートヴィヒは仕上げた文案を揃え、紙の角を指で整えた。
「今夜、追加の条件がなければ、明日の朝までに出せます」
「追加はなし」真紀は言った。「今日はここまで」
その一言で、オフィス全体の空気圧が少しだけ下がった。
弛緩ではなく、解放だった。
私はほぼロイの理性という名の細い糸が、その場でちぎれずに済んだ小さな安堵の声を聞き取れた気がした。
ランは定規を片づけ、図紙をまとめながら聞いた。
「じゃあ、みんなで食べに行く?」
その問いかけはひどく自然だった。それなのに、私は一瞬固まった。
「みんなで」という主語がついていたからだ。
生徒会では、これが全く前例がないわけではない。だがそのたびに、どうしても妙な違和感が伴う。普段ここに集まるのは、青春だの友情だのを育てるためではなく、災害と表と流れと責任の所在に追い立てられて集められているからだ。さっきまで「上院候補の保護層をどう剥がすか」を議論していたメンバーを、そのまま「一緒にご飯を食べる」というカテゴリーに入れ替えるのは、軍用ライフルを家庭用食器棚に片付けるようなもので、論理的には間違っていなくても、心理的には妙だった。
ロイが最初に頷いた。
「飯なら賛成だな」
「返事が早いわね」私は言った。
「さっき予算を見ていたら、数字がカツ丼に見えてきたんだ」
「それは、過労財務の一歩手前よ」
「もう一歩はとっくに踏み越えてる」
ランは資料をファイルにしまいながら、相変わらず平然と言った。
「この時間にまともに座って食べられる店なんて、後門通りの二軒くらいしか開いてないわね」
「一つはラーメン、一つは定食屋」私は補足した。
「よく覚えてるわね」ランがこちらを見た。
「私だって飯は食べる」私は外套の襟を直した。「ただ、生徒会に搾り取られすぎて、普段はコーヒーと怒りだけで生きているように見えるだけよ」
ヘートヴィヒは黙って聞いていた。何か考えているようで、数秒後に口を開いた。
「もしよければ、私もご一緒しても?」
私は横を向いた。
「そういう店、食べ慣れてる?」
「十分に温かければ、大抵の食べ物は問題ありません」彼女は本気で言った。
一瞬、それが非常に行儀の良い返答なのか、それとも非常に攻撃的な返答なのか、判断がつかなかった。平たく言えば、「今日はお腹が空いているので、条件を下げても構わない」という意味にも聞こえたからだ。
真紀は最後の書類を片づけ、立ち上がった。
「じゃあ行きましょう」
あまりに自然な言い方で、逆に私が彼女を見た。
「あなたも来るの?」
「他に誰が?」彼女は椅子の背から外套を取った。口調は、「さっき今日の分はここまでと言ったでしょう」というような、ごく当然の響きだった。「さっき、今日で終わりにできるかって聞いてたじゃない」
「終わりにできるかどうかを聞いたのであって、生徒会長が先頭に立って夜食に行くかどうかを聞いたわけじゃない」
「矛盾する?」
「理屈ではしないけど、感覚的には圧がすごい」
真紀は私を一瞥しただけで、答えは返さなかった。ただ外套を羽織った。その動きは簡単だが、彼女がやると、それ自体が一つの宣告に見えた。派手な宣言ではなく、「ここまでやったなら、あとはあなたも一緒に来なさい」という種類の宣告だ。
彼女は、何かを言葉にしなくても、行動だけで命令文のような効果を持たせるのが異様に上手い。
厄介なことに、私はそれに弱い。
生徒会副会長の信用度からすれば、あまり大きな声で言えない事実だが、残念ながら信用は夕食にはならない。
私たちは資料を片付け、照明を落とし、ロッカーに鍵をかけ、翌日に使う版を別にして置いた。この一連の動作は皆よく手に馴染んでいる。「今日はここまで生き延びて、明日また互いを搾る」という軍隊式の終業ルーチンを、何度も繰り返してきたからだ。
生徒会棟を出ると、夜風が一気に襲ってきた。
反射的に肩が上がった。
校内の街灯はすでに灯っており、冬の夜は学園全体を、真っ直ぐで静かな枠の中に押し込めていた。遠目には、青春を規格品として訓練する金属製の檻のようにも見えた。
それでも、こういう時に一緒に校門の外へ進んでいく足音は、妙にくっきり響いてくる。
ロイは前で、どの定食屋の方が早いか、どのラーメン屋の方が量が多いかをランと話していた。腹の虫に苛まれながら、ようやく人間性を取り戻した財務担当の声だった。ヘートヴィヒはもう少し後ろを、マフラーをきちんと整え、一定の歩調で歩いていた。場末の定食屋への道と並べると、妙な非現実感があった。
私は真紀の隣を歩いた。
それ自体は別に大したことではない。
問題は、「大したことではない」ことがあまりに自然に起きると、かえってそれを意識してしまうということだ。
私は手をポケットに突っ込み、白い息を吐きながら歩いた。
「ねえ、真紀」
「なに?」
「今日のこれは、残業後の精神的慰謝料ってことでいい?」
「違うわ」
「容赦ないなあ」
「集団で生き延びるための措置よ」
「聞こえはいいわね。翻訳すると、『副会長はまだ死なせられないから、とりあえず何か食わせておけ』ってことでしょ?」
真紀は私を見もしないで、いつもの平坦な声で返した。
「そう解釈しても構わないわ」
私は横目で睨んだ。
彼女は相変わらず、その冷静で、平坦で、理不尽なまでに整っていて、同時に理不尽なまでに頼りになる顔をしていた。
街灯が彼女の横顔をかすめて、その輪郭をさらに淡く、さらに清潔に見せていた。生徒会の机の向こうに座っている時は制度そのもののように見える人間が、夜道を歩いている時には、私と同じようにまだ夕飯も食べていないただの学生に見えたりする。
本当に腹が立つ。
こういう時に限って、気持ちがぶれやすいから。
私は視線を前に戻した。
「じゃあ、少し高いもの頼んでもいい?」
「ダメ」
「現実に夢を見る余地くらい残してくれても」
「そんな余地を与えたら、あなたはすぐ図に乗るでしょ」
「本当に私のことわかってるんだね」
「理解じゃないわ」真紀は前を向いたまま言った。「経験よ」
「……その言い方、地味に傷つくんだけど」
「事実だから」
私は詰まり、一瞬返事が出てこなかった。
星野シモとしてのプライドに多少の擦り傷がついた気がしたが、残念ながら真紀は今、「流れを切った後で、少し気分が軽くなっているので、ついでにツッコミの精度も上がっている」状態だった。こういう時に正面からぶつかっても、自分から刃に突っ込んでいくのと大差ない。
採算が合わない。
だから私は、一時的に尊厳をポケットに預けておいて、食べ終わってから引き出すことにした。
前の方でロイが振り返った。
「で、どっちにする?」
ランがすぐに答えた。
「定食。今日はもう十分疲れたから、麺をすすりながら次の会議を始めたくない」
「賛成」私はすかさず手を上げた。「ラーメンは熱いと本音が出る。今日はこれ以上本音はいらない」
ロイは頷いた。
「確かに。これ以上喋ると、上院の彼を『高級ケースに入った汎用パーツ』って分類し始めそうだ」
「それ、もう言ってるようなものじゃない」私は言った。
「だから熱いものは控えめにしないと」
ランは眉尻をわずかに動かした。総務流の「今のは少し面白かった」のサインだ。ヘートヴィヒは黙って聞いていたが、校門を出たあたりで、静かに一言添えた。
「では、今日は定食を試してみます」
私は彼女に視線を向けた。
「それ、皇族の重大な外交的譲歩みたいに聞こえるんだけど」
ヘートヴィヒは瞬きをした。
「そうかしら?」
「そうよ」
「なら、感謝すべきね」
「……最近、本当に言葉の切れ味が上がってきてない?」
彼女は直接答えず、マフラーを少し引き上げた。その動きは小さかったが、目の中に、ごくかすかに愉快さのようなものがよぎった気がした。
いいことだ。書記まで生徒会の夜間残業で反撃機構を進化させ始めた。ここは本当に人材育成機関なのか、それともよく喋る危険人物の集団飼育施設なのか、だんだん怪しくなってきた。
後門通りは賑やかとは言い難いが、この時間でもまだ灯りはついていた。店先の暖簾が風に揺れ、ガラスにうっすらと曇りがつき、中から立ちのぼる熱気が通り越しに見えた。その瞬間、私はふと、「今日はここまででいい」という実感を得た。
世界が良くなったわけではない。
代表隊選抜が突然簡単になったわけでもない。
上院の候補が明日目を覚ましていきなり「他人が描いた十点圏を離れるべきだ」と悟るわけでもない。
ただ、今日見るべきものは見た。
分けるべきものは分けた。
流れも一度切り、名簿も一巡した。
残りは、明日に回していい。
それで十分だ。
店先で白い息を吐き、真紀を見た。
「会長」
「なに?」
「本当に、今日はここまで?」
彼女は私を一瞥し、暖簾を持ち上げた。
「まずは食べましょう、シモ」
口調は相変わらず平坦だった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




