177.多忙な一日 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
アカリ・フラック。
その名前が紙の上にあるだけで、流れ全体よりも安心できた。
悲しいことだが、これが現実でもある。
生徒会は一日かけて規則、動線、器材、校正時間、試合停止権限を調整し、最後に本当に人を安心させるのは、結局一つの名前だった。制度が彼女を支えると保証したのではない。彼女自身にそれだけの重みがあって、制度をあまりみっともなくさせないだけだったのだ。
言い換えれば——
本物の実力者は、流れの止血に使われる。
そして今から私が見に行く相手は、おそらく流れから輸血される側だ。
そう思ったら、思わずうつむいて笑ってしまった。
笑ってから、自分のこの分類の手慣れ具合が、生徒会副会長としてはともかく、普通の青春学園小説の登場人物としてはかなり終わっている精神状態だとも思った。だが残念ながら、この学校は元々、普通の青春を育てるための場所ではない。むしろ十六歳の段階で「行政的な苦痛」「階級の気持ち悪さ」「集団行動における責任の切り分け」を全部まとめてカリキュラムに突っ込み、「成長」と「栄誉」という注釈を付けて売りつけてくる、軍事学院仕様の豪華精神療養院に近い。
そして私は星野シモ、本日は、豪華個室に住みながら自分は健康だと思っている患者の様子を見に行く役目を拝命した。
上院の訓練棟は別エリアにある。
毎日誰かが過労で潰れそうになっているのに、外見だけは意地で「ここはまだ生きている」と主張している下院エリアとは違い、上院エリアは建物から照明まで、理不尽なほど整頓されていた。廊下は長く、真っ直ぐで、明るく、床は入試パンフレットの撮影にそのまま使えそうなほど磨き上げられている。壁に掛かった歴代の成績表、隊旗、記念写真は、どれも「私たちは元々前列にいるべき人間です」という顔をしていた。
本音を言えば、この場所の凄さは、決して「良すぎる」ことではない。
「これが当然だ」と思わせることの方だ。
ここで暮らす人間が、世界の大半の事柄はそんなに都合よくいかないものだという事実を、少しずつ忘れていくような作りになっている。
射撃訓練区の表示に従って奥に進む。場地そのものに着く前に、すでに二人の上院生が入り口のそばでもたれ合って話しているのが見えた。
制服は紙が切れそうなほどパリッとしていて、ブーツは磨き立て、声には私がよく知っていて、そしてスパナで粉砕してやりたくなるあの響きがあった——正式な試合が始まる前から、自分の体面の退路だけは抜かりなく準備しているタイプの人間が持つ、余裕の響きだ。
「……今年は向こうも、下院を何人か無理やり上げるらしいわよ」
「形だけでもやっておかないとね」
「そうね、外聞が悪いもの」
私は足を止めず、その横を通り過ぎた。
一人が私を見て、生徒会の人間だと気づいたのか、口角を丁寧に上げた。
実に上品な笑い方だ。
そして、実に殴りたくなる笑い方だ。
彼女に悪意があるからではない。悪意など必要ないのだ。彼女は最初から、世界が自分にとって有利な側にある場所に立っているだけで、それを隠す必要性すら感じていない。「下院を『入れてあげる』のは、弱者に対する制度の慈悲であって、実力で殴り倒された結果ではない」と、本気で思っていそうな笑いだった。
私はふと、アカリの、永遠に寝不足そうな死んだ魚のような目が恋しくなった。
少なくともああいう人間は、あなたを気に入らなければ、糖衣をかけたりはしない。
私は射撃館の内部へ入った。
中にはすでに何人かいた。
多くはない。三人か四人といったところだ。上院側に先に情報が回っていて、すでに何人かがウォームアップを始めているのだろう。電子靶道が前方に列をなして並び、照明は少し冷たい。天井は高く、音がやけに響く。火薬の匂いよりは、器材油と金属と空調と、「ちゃんと訓練された綺麗な競争」の匂いが強かった。
そして私はほとんど一目で、その候補を見分けた。
見間違えようがなかった。
顔立ちが特別だったからではない。一部の人間は、立っているだけで「私は多くの人の手で丁寧に育てられてきました」と全身で書いてしまうのだ。
彼は背が高く、肩のラインが美しく、制服は教範の挿絵のように完璧で、袖口からプロテクターへの繋がりまでが教科書的に整っていた。射撃ジャケットは高級なオーダーメイドで、余計な皺一つないほど身体に沿っており、傍らのガンケースも、金属のバックルから革のベルトに至るまで、一切の妥協なく手入れされていた。最初に抱いた印象は、射手というより「すでに審査員用の前書きが添えられている報告書の表紙」に近かった。
要するに、「勝ちそう」に見えるタイプだ。
だが、その「勝ちそう」は、たいていろくな意味を持たない。
本当に勝てる人間は、たいていそんな顔をしない。
私は入り口付近に立ち、彼が銃を構え、狙い、撃つのを見ていた。
動作は、きれいだった。
本当にきれいだった。
力のない人間が繕ったきれいさではない。明らかに完璧な指導を受け、層を重ねて磨き上げられた末に手に入れたきれいさだ。呼吸の制御、銃の保持、肩への乗せ方、視線の切り替え——どれも正しかった。少なくとも、見た目にはそう見えた。傍らの後輩らしき二人は、一人が成績表を手に読み上げ、もう一人が電子的なフィードバックを確認し、「さすが先輩」とでも言いたげな敬意の表情をきちんと浮かべていた。
——ああ、そういうことか。
私はその場に立ちながら、妙に落ち着いた、少しおかしくなるくらいの理解を得ていた。
弱いわけではない。
むしろその真逆で、弱くはない。
だからこそ、問題になる。
もし本当にただのポンコツなら、そもそも問題にはならない。ポンコツの一番の長所は、出場した瞬間にセルフ爆発してくれることで、後処理まで省ける点だ。本当に面倒なのは、こういうタイプ——基礎は悪くない、環境は良すぎる、その結果として、「自分の安定したパフォーマンス」と「世界が自分に合わせて調整すること」を、いつの間にか同じものだと思い込んでしまった人間。
彼はもう一発撃った。
電子標的の成績が返ってきて、周りの二人が小声で「綺麗ですね」と言った。
私はその数字を見て、黙った。
普通の学生なら、「すごい」としか思わないだろう。
だが今日、生徒会副会長として、風紀・器材・射撃場当番台三か所の地獄窓口をすでに回ってきた身として、この光景を見れば、頭に浮かぶのは「わあ、すごい」ではなく、別のいくつかの問いだ。
彼が慣れている銃はどのセットか?
慣れている靶道はどのレーンか?
風速シミュレーションは、いつも彼にとって一番心地よいレンジに収まっているのではないか?
校正時間が削られたことは一度でもあるのか?
横に立っている二人は、その場限りのヘルプなのか、それともいつも誰かが彼の周りの準備を「だいたい整えて」くれているのか?
もっとも重要なことは——
その「だいたい」を全部取り上げて、真紀がさっき整えたばかりの「全員が規則通り歩かなければならない」新しい流れの中に放り込んだ時、彼にどれだけ残るのか。
私は少し近づいた。
靴底が床を打つ音は小さかったが、この館内の静けさの中では十分だった。成績表を持っていた後輩が先に振り返り、彼も銃を下ろしてこちらを見た。
視線がこちらに向いた最初の一秒、彼の表情には苛立ちも警戒もなかった。
彼はまず、誰なのかを確認していた。
その後で、表情を選んでいた。
こういう人種は見慣れている。
虚飾から来るものじゃない。幼い頃から、まず目の前の人間がどの程度の礼儀に値するかを判断し、それに応じた態度を選ぶことを要求され続けてきた結果だ。だから彼の反応は成熟していて、そして正しかった。教本に載せられるレベルで、正しかった。
「星野副会長?」
彼は口を開いた。その声色も耳に心地よく、適度な丁寧さを含んでいた。
「珍しいですね。生徒会が、射撃科にまで関心を持つなんて」
私は近づいて一礼した。
「関心があるのは代表隊選抜であって、あなたたち射撃科のプライドじゃないわ」
隣の後輩の顔が、その場で固まった。
当人は怒ることもなく、ただ薄く笑った。
教科書的な笑い方だった。
ここまで教科書通りだと、この人は毎朝鏡の前で三回ずつ、「刺されたのを聞き取ったけれど、同じレベルまで落ちていく気はありません」という意味合いの笑い方を練習しているのではないかと疑いたくなる。
「なるほど」彼は保護眼鏡を外し、隣に差し出した。その一連の動きは「誰かが受け取ってくれる」のが世界の前提条件であるかのように、滑らかだった。「それで、副会長がわざわざいらしたのは、何を確認するためですか?」
私は彼を見つめた。
近づいてみると、なおさらはっきりわかる。
この人間は、決してポンコツではない。
問題は「ポンコツであること」ではなく、「順調すぎること」だ。
彼が「確認する」という言葉を口にした時ですら、「規則がどうせ来るなら、こちらの望む条件を確認してから来てくれた方が、これからの正式な登場にとって都合がいい」という含意が透けて見える。
私はふと、さっき真紀が言っていた「使える面倒と、隔離するしかない面倒」の話を思い出した。
この種の人間が全くの無能であれば、生徒会はただ事務的に処理するだけで済む。ややこしいのは、彼がきちんとした実力を持ち、それに加えて十分な背景、十分な教養、十分な外見、十分に正しい所作を備えている点だ。その全てが、「その位置に立っていて当然」という印象を周囲に与えてしまう。
そこが厄介なのだ。
彼は十点圏に届かないから問題なのではない。
生まれてからずっと、誰かが先に十点圏を描いてくれる世界で生きてきたから問題なのだ。
コーチが姿勢を直し、
先輩がポジションを譲り、
後輩が成績表を持って傍に立ち、
取り巻きが適切な量の喝采を用意し、
制度が「もっともらしい理由」の揃った、見栄えのいい枠を最後に残す。
周りの称賛ですら調整済みだ。自信を維持しつつ、天狗にならないよう、ちょうどいいゾーンに落ちるように。
そうして長年かけて、「ラインに立つたび、自分の前にある標的は、元々そこにあるべきものだ」と、本気で信じるようになる。
私は彼の、どこも傷のない顔を眺めて、思わず笑いそうになった。
彼が可笑しいからではない。
今日の代表隊選抜で、本当に扱いにくい相手が誰なのか、ひどくはっきり見えたからだ。
それは、明らかな馬鹿でも、場を荒らす問題児でも、災害シミュレーションのように書かれた流れ表でもない。
こういう、一見何も間違っていないのに、骨の髄から世界が自分に合わせて校正されるのが当然だと思っている人間だ。
彼は、私がすぐに答えないのを見て、もう一度、礼儀正しく声をかけてきた。
「副会長?」
「……何でもない」私は我に返り、同じく礼儀正しく、しかし決して友好的とは言えない笑みを返した。「ただ、少し確認しに来ただけよ」
「結果は?」
私は彼を見つめ、心の中では既にその一文が形になっていた。
——的に当たらない人間がいるわけじゃない。
——子供の頃から、他人が描いた十点圏の中で生きてきただけの人間がいるだけだ。
厄介な話だ。
「外せない」とはとても言えない程度には実力があるし、「見掛け倒しだ」とも言えない程度には内容がある。だが、本当の問題は、他人が描いた十点圏を全部消した後、その人間にどれだけ残るかを、必ずやり直してみなければわからないことだ。
そう思うと、不思議と肩に当たる冷気が、さっきより刺さらなくなった。
少なくとも今、これをどう真紀のところに持って帰ればいいかはっきりしたからだ。
「強い」とも、
「駄目だ」とも、
ただ言いに行くのではない。
——この人間は、十点圏を先に消してからでないと判断できないタイプの面倒だと、報告しに行く。
私は彼を見据え、口元の笑みを消した。
「結果は」私は言った。「生徒会はこれから、だいぶ忙しくなりそうだってこと」
彼は一瞬きょとんとした。
横の二人も、明らかに意味がわかっていなかった。
それでいい。
ここで全部言うつもりなど、元々なかった。
当人に言っても仕方ない。真紀に言って初めて、仕事になる。
私は彼に軽く会釈して、それ以上は何も言わず、背を向けた。
背中に視線が数秒当たっていた。私が単なる挨拶に来たのか、それとも何か含みがあるのか、測ろうとしている視線だろう。残念ながら、それはもう彼の領分ではない。少なくとも名簿が正式にテーブルに並ぶまでは、彼の整った態度も、きれいな所作も、完璧なフォームも、すべて「検証待ちのサンプル」に過ぎない。
射撃館のドアを押し開けると、外の冷たい風が顔面に当たった。
ちょうどいい。
ちょうど目を覚ましてくれる。さっきの顔にあった「当然」という要素の一つ一つを、少し鮮明に記憶させてくれるのにも、ちょうどいい。そして、この辺りで一旦終わりにしておくのが一番だという確信も、ちょうど強めてくれた。
これ以上踏み込めば、それは観察ではなく、開戦になる。
今日は、弾を無駄遣いする気分ではなかった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




