172.皇女の手作り朝食 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
生徒会室のドアを押し開けた時、最初にぶつかってきたのは公文でも地獄でもなく、ひどく場違いなコーヒーの香りだった。
その香りは熱くて上品で、苦くて品があり、この部屋に積み上がった書類の山とは全く異なる文明の層に属していた。私は入り口で半秒ほど立ち止まり、鼻で吸い込みながら、一つの結論を出した——
人類は追い詰められた時、本当にまずコーヒーを淹れるのだ。
「あ、シモ、来たのね」
書類の山の向こうから、見慣れた顔が覗いた。真紀は片手で資料を押さえ、もう片方の手にまだペンを持っていた。目の下の薄い疲労感が、昨夜まともに眠れなかったのは私だけではないことを証明していた。
彼女は私を一瞥した。
「ずいぶん遅かったわね」
「途中で捕まったの」
私は手の中の封筒を振ってみせた。
「名前も教えてくれない先生に、これを生徒会長に渡してくれって押しつけられた。爆弾かと思ったけど、ここはそもそも爆弾よりも危険な場所だから、そのまま持ってきたよ」
真紀は封筒を受け取り、開ける動作は公文式地雷を解体するように手際よかった。一番上の数枚を引き抜いてざっと目を通した時、それまで比較的平坦だった表情がわずかに止まった。
ほんの一瞬だ。
他の人が見ていれば、ただ瞬きをしただけだと思うだろう。だが、私は彼女と長く一緒にいすぎた。あの程度の停止は、私の目には学内の警報装置と同等の意味を持つ。
「……今年、これを復活させるの?」
私は上着を脱いで椅子の背にかけながら、何気なく聞いた。
「何が?」
「選抜大会よ」
彼女はカラーのビラを一枚引き抜き、机の上に置いた。さっき廊下で一度読んだあの大きな文字が、もう一度目に入る。今見ても、やはり不吉な鮮やかさがある。
連邦中央星際連合軍事学院 首都圏代表隊選抜
私はビラを見て、それから彼女を見た。
彼女はすぐに説明するつもりはないようだった。
私も追及するのは面倒だった。
この人の理解でいけば、今すぐ話さないのは話したくないからではなく、脳内で三つの流れを同時に走らせているからだ。誰が巻き込まれるか、生徒会はどこまで動く必要があるか、そして今日の元々の仕事量が何をどう犠牲にして死ぬか。
だから私も無駄に突っ込まず、ただ隣の書類の束を抱えて椅子を引き、座った。
「わかった、じゃあまずこの山を少し削っておく。今日本当に大きな厄介事が始まるなら、少なくとも着地する場所くらいは作っておかないと」
真紀は低く相槌を打った。笑ったのか、ただの鼻音なのか判断しかねる音だった。
それから一時間ほど、私たちは非常に青春らしくない状態に置かれていた。
同居……ではなく、同僚状態とでも言うべきか。
彼女は照合、署名、ページの抜き取り、マーキングを担当し、私は分類、整理、順番の確認、そして時々、ある文章を「公文的な表現」から人間が理解できる言葉に翻訳する作業を担当した。窓の外の空が少しずつ明るくなっていく中、部屋には紙をめくる音、ペン先が机を叩く音、コーヒーカップがコースターに触れる軽い音だけが残った。
この静けさが別の場所にあれば、穏やかな朝の一コマと呼ばれるかもしれない。
残念ながら、生徒会室にある場合、地獄が正常に稼働しているとしか呼べない。
七時近くになった頃、ドアの外から規則的なノックが聞こえた。
篤、篤、篤。
私は顔を上げずに、まず一人を除外した。
ジェスではない。
彼女なら今頃ドアは祭囃子のリズムで叩かれているはずで、「中の人、生きてますか?」という一言がおまけについているはずだ。
真紀がペンを置いた。
「どうぞ」
ドアが一筋だけ開いた。
「失礼します」
私は顔を上げた。
ヘートヴィヒ・フォン・ヴィッテルスバッハが入り口に立っていた。制服は一分の乱れもなく、朝の冷気と細かい雪に触れた髪が、かすかに光っている。彼女は室内を一瞥し、正式な会談の開幕のような平坦な口調で言った。
「お二人ともいらっしゃったんですね」
この言葉自体には何の問題もない。
問題は、彼女の手に提げられているものだった。
公文袋でも資料フォルダーでもなく、非常に生活感があり、彼女の普段の印象には全く合わない保温バッグだった。
私はそのバッグを見て、頭の中で警鐘が三回鳴った。
ヘートヴィヒは中へ入り、迷いなく私の前で立ち止まった。
「ほ、星野さん」
私は危うく手の書類を落とすところだった。
……誰?
いや、名前は合ってる。問題はその声の調子だ。
あの間、あの柔らかさ、何かを驚かせないようにしているかのような、あの抑えた柔らかさ。それが彼女の口から出てくると、風紀委員長がウサギのマグカップを持って「みんな仲良くしましょう」と言っているのを見るのと同じくらいの衝撃があった。
私は彼女を見つめた。
彼女も私を見ており、表情は至って真剣で、自分がたった今私に内傷を負わせかけたことに全く気づいていないようだった。
「よろしければ、召し上がってみてください」
彼女はバッグを開け、中から弁当箱を取り出し、私の前に差し出した。
お礼を言うべきか疑うべきか決める間もなく、彼女はその箱を私の手に押し込み、続けてもう一つを取り出して真紀の机の前に置いた。
「お味噌汁もあります」
「……ヘートヴィヒ」
「はい?」
「熱でも出てる?」
「いいえ」
「じゃあ、なんで朝一番に生徒会室にお弁当を持ってくるの?」
彼女はしばらく黙った。その間は短かったが、本来は説明するつもりのなかった行動に、その場で体裁のいい理由を組み立てているような間だった。
最後に、彼女はただ淡々と言った。
「そんなに聞かないで、まず口に合うかどうか確かめてから」
おかしい。
非常におかしい。
私は手の中の弁当箱を見下ろし、心の中には最も素朴な疑念だけが残った。
中に何か入ってるんじゃないだろうか。
例えば食べると帝国のために働くと言ってしまうとか、月面中立都市に対して間違った期待を持つようになるとか、そういう類のものが。
「大丈夫よ、シモ」
振り返ると、真紀はすでにごく自然に自分の分を開けて、食べ始めていた。
彼女は卵焼きを一切れ箸で挟み、危険物質の安全鑑定でもするような平坦な口調で言った。
「おいしいわよ」
私は彼女を見て、それからヘートヴィヒを見た。
「先に食べたの?」
「他にどうするの?」
「もし帝国の新型外交兵器だったらどうするの?」
「そうだとしたら、戦略の方向性は正しいと言わざるを得ないわね」
真紀は顔色一つ変えずにもう一口、味噌汁を飲んだ。
私はその言葉に詰まり、仕方なく自分の弁当を開けた。
次の瞬間、新しい言葉が出てきた。
「……ちょっと待って」
私は箱の中に整然と並んだ中身を見て、短い文化的衝撃に陥った。
一体誰が朝ごはんに九マス弁当を持ってくるのか。
白飯、焼き鯖、卵焼き、漬物、筑前煮、おひたし。配色は清潔で、仕切りは明確で、まるで閲兵を受けているかのように整っている。これは朝食ではない。「帝国貴族の家政教育が、夜明けに連邦の平民階級に向けて放つ精密打撃」とでも呼ぶべきものだ。
もう一度顔を上げると、ヘートヴィヒの手にはお椀まであった。
この人、一体何をしたいのか。
「毒が入っていたとしても、それに値するかどうかだけは確かめてから死のう」という気持ちで、筑前煮を一口箸でつまんで口に入れた。
次の瞬間、用意していたすべての皮肉が、その場で蒸発した。
「……マジか」
私は思わず箸を宙で止めた。
「うまい」
お世辞ではない。一時的な油断でもない。
本当においしいのだ。
食堂の「とりあえず食べられる」レベルでも、雪風号での「限られた物資の中では傑出している」レベルでもない。一口食べれば即座にわかる。この料理を作った人間は、空腹を満たすために台所に立ったのではなく、厳しすぎるほど厳格な基準によって培われた技術を持っているのだ。
もう一口食べながら、私は複雑な気持ちになった。
「このレベル、ちょっと反則じゃない……」
ヘートヴィヒはほっとしたように、目の奥でわずかに何かが動いた。
「口に合ったなら、よかったです」
「待って、まだ喜ぶのは早い」私は顔を上げ、疑い深い目で彼女を見た。「こういう人が突然朝ごはんを作ってくるのは、常識的に考えて、私たちを懐柔しようとしているか、後で何か頼みごとがあるかのどちらかだよ」
真紀が横から淡々と補足した。
「両方かもしれないわね」
「会長、いつから尋問に加わったの?」
「私も知りたいから」
ヘートヴィヒは机の前に立ち、私たち二人を見た。一瞬、彼女はいつもの端正で隙のない外殻を保とうとしているように見えた。しかし、弁当と味噌汁がすでに先行して登場してしまった状況では、その外殻にはどうしても生活感の亀裂が入っていた。
彼女は視線を逸らし、口調はまだ平坦だったが、いつもよりも少し鋼の硬さが抜けていた。
「ただ……お二人が今日は忙しいだろうと思って」
私は鯖を挟んでいた箸を止めた。
真紀も目を上げて彼女を一瞥した。
ヘートヴィヒは素早く後半を続けた。
「昨日のことがあって、生徒会はそんなに暇じゃないはずだと。ちょうど早起きしたから、ついでに用意しました」
この説明は体裁が良く、彼女らしかった。
だが問題は——体裁が良すぎることだ。
良すぎて、かえって笑いたくなる。
「あなたの『ついでに』の基準、贅沢すぎない?」私は九マスの仕切りを見下ろした。「連邦の家庭によっては、お正月でもここまで丁寧にやらないよ」
「食べないなら、返してもらっても構いません」
「ダメ」私は即座に弁当箱を自分の方へ引き寄せた。「食べ物は無実だから」
真紀がついに本当に笑った。
礼儀的な口角の動きではなく、少し笑わされてしまった、淡い笑みだった。笑う時、彼女の目尻がわずかに柔らかくなる。その変化は小さいが、私にはちゃんと見える。
ヘートヴィヒにも、見えた。
その瞬間、空気の中に何か非常に軽い、敵意とも言えず、明確な感情とも言えないものが生まれた。どちらも鞘に収めた細い剣のように、一枚の机を挟んで互いの存在を知っている、そういう空気だ。
私はうつむいてもう一口飯をかき込み、心の中で正直な結論を出した。
——終わった。
弁当はおいしい。
人間関係が面倒になり始めた。
この嫌な予感を味噌汁と一緒に飲み込もうかと考えていた時、ドアがまたノックされた。
今度は普通のノックだ。
最初に入ってきたのは会計のロイだった。一歩踏み込んだ時はまだ「今日もまた投胎ではなく帳簿合わせに来た」という諦めの顔をしていたが、鼻が動いた瞬間、その場で固まった。
「……何の匂いだ?」
彼の視線は真紀の机の前の弁当から私の手元へ、それからそばに立つヘートヴィヒへ、最後に机の上でまだ湯気を立てている汁物の椀へと滑った。
ロイの目が、瞬時に極めて複雑な会計士的驚愕の色に染まった。
「俺、部屋を間違えたか? ここは生徒会室じゃなくて、高級家庭料理店のバックヤードか?」
彼の言葉が終わる前に、総務のランも入ってきた。
彼女の反応はロイより実際的だった。まず食べ物を見て、次に人を見て、次に机の上の書類を見て、最後に非常に正確な総括を出した。
「今日の仕事量は、先に朝食で慰める必要があるほど多いんですね」
「生徒会の福利厚生じゃないよ」私は言った。「帝国式の戦略的懐柔」
ヘートヴィヒは顔色一つ変えなかった。
「そういう理解でも、構いませんよ」
「認めるのが早すぎない?」
オフィスの中が一気に賑やかになった。一朝中冷えていた空気が、コーヒー、味噌汁、人の声でゆっくりと解けていく。ロイはすでに自分からビラの方へ近づいて見始め、ランは机の上の首都圏代表隊選抜の資料を一瞥して、眉をわずかに上げた。
「今年、本当にやるんですか?」
「そのようね」真紀は箸を置き、指先でその書類の束を叩いた。「単なる通知じゃなくて、生徒会がまず動かないといけないみたい」
「本当に素晴らしいね」私は無表情で飯を飲み込んだ。「今日、人生が半日だけでも平穏でいられるかと思っていたのに。学校が実際の行動で教えてくれた。無理だって」
ロイは数ページめくりながら、見るほどに月末の帳簿が突然自分で増殖し始めたのを発見した時のような顔になっていった。
「上下院対抗、代表隊選抜、学生自治協力、会場調整……」
彼は顔を上げた。
「これ、活動じゃなくて、生徒会の労働時間が爆発する予告でしょ」
私が同意しようとした瞬間、ドアが外から非常に品のない、しかし非常に聞き覚えのある方法で叩かれた。
ドンドンドンドンドン——
誰かがドアで太鼓の練習をしているようなリズムだ。
顔を上げるまでもなく、誰かわかった。
「入っていいよ、ジェス」私は言った。
ドアが即座に開いた。
ジェスが頭を突き込んできた。マフラーはまだ半分首に巻いたままで、入ってきた直後から三言は無駄話を言う準備ができているような勢いを全身から漂わせていた。
「わかってた、みんないると思ってた——」
後半が喉に詰まった。
なぜなら、彼女も匂いを嗅いだからだ。
次の瞬間、彼女は見た。
私の手の弁当、真紀の机の前の汁物、脇に立つヘートヴィヒ、そして生徒会室全体に漂う、朝の公務現場には似つかわしくない家庭の温かさ。
ジェスは二秒間沈黙し、目を丸くした。その表情は「乱しに来た」から「学校の歴史に残るものを目撃したかもしれない」へと素早く切り替わった。
「……ちょっと待って」
彼女はゆっくりとドアを閉め、もう一度開けた。世界がこの三秒で壊れていないか確認するかのように。
「私、来るタイミング間違えた?」
私が答える前に、彼女は自分で続けた。
「それとも、ちょうどいいタイミングで来た?」
私は額に手を当てた。
来た。
この人は、場面をより面倒な方向へ押し込む一手を絶対に外さない。
「黙って入ってきて」私は言った。
「いや、これは私のせいじゃないでしょ」ジェスは傷ついた顔で机の方を指差した。「朝一番に、生徒会室で、会長と、シモと、帝国の皇女と、湯気の立つ弁当と、味噌汁——どうやって普通の人間の思考回路でこれを理解しろと?」
「あなたが持っていない普通の人間の思考回路で理解して」真紀が静かに返した。
ロイはすでに笑いで肩を震わせており、ランはうつむいて書類を整理しながら、何も聞こえていないふりをしていたが、耳は明らかに稼働中だった。
ヘートヴィヒは私の想像よりも落ち着いていた。ジェスを一瞥し、礼儀正しく冷静な口調で言った。
「朝食をお持ちしただけです」
「ただ?」ジェスは信じられないものを聞いたような顔をした。「殿下、その『ただ』の基準が、普通の人をたくさん傷つけますよ」
私がこれ以上火に油を注がせまいとしたが、ジェスはすでに一歩で机のそばに飛んでいき、弁当の中身を覗き込んで、その場で息を呑んだ。
「待って、しかも九マス?」
彼女は顔を上げ、私を見た。その口調には信じられないという気持ちと、羨ましいという気持ちと、腹が立つという気持ちが混じり合っていた。
「星野シモ、あんた何の功徳を積んだの?」
「顔が良いから?」私は思わず答えた。
次の瞬間、横から視線がひとつ、斜めに流れてきた。
……わかった、撤回する。
「普段から徳を積んでいるから」私は即座に言い直した。
ジェスは鼻を鳴らした。
「そのセリフ、代表隊選抜よりも嘘くさいわ」
この一言で、オフィスはようやく本来あるべき軌道に戻った。
代表隊選抜。
机の上のあの書類の束は、場の読み方をよく心得ているかのように、朝食の香りの中で静かに横たわっていたが、味噌汁よりも早く人の目を覚まさせていた。
真紀は手を伸ばして一番上のビラを表に戻し、指先で叩いた。
「さあ、人数も揃ったことだし、弁当は後回しにして」
彼女は一拍置き、全員を見回した。
「本題に入りましょう」
私は最後の卵焼きを一口でかじりながら、机の上のあの鮮やかすぎる文字を見て、今朝という朝の構成が、実はひどく学校らしいことに気づいた。
表面上は、コーヒーがあり、熱い汁物があり、弁当があり、早く来た人がいて、朝食を持ってきた人がいて、軽口を叩く人がいる。
一見、青春の一コマにすら見える。
ただ視線を少し下に動かすだけで、公文、名簿、選抜、対抗、そして一度動き始めたら全員を一緒に巻き込んでいく制度の歯車が見えてくる。
私はため息をついて、弁当箱を机の端に置いた。
「わかってたよ」
ジェスが眉を上げた。
「何が?」
「今日は朝ごはんがおいしかっただけでは終わらないって」
私はあの書類の束を見て、気分が正直に半寸沈み、それから理由もなく少し笑いたくなった。
「おいしい朝ごはんの後には、大抵大きな厄介事が続くものだよ」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




