172.皇女の手作り朝食 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
十二月末の首都星デュナンは、誰かが街全体を氷水に浸してから引き上げ、風の中に吊るして乾かしているような寒さだった。
あの朝、目を覚ました時の第一印象は「今日も頑張ろう」ではなく、「人類はなぜこんな気温の下で文明社会を維持し続けようとするのか」だった。
窓の外の空はまだ眠たそうな灰色で、ガラスには薄いシモが張っていた。布団の端を一角だけ捲った瞬間に、私は悟った。戦場における心理的準備とは突撃ではなく、布団から出た瞬間に確実に後悔するとわかっていながら、それでも出なければならないことを知っている、その覚悟のことだと。
しかも、あの日の私には、二度寝に戻る権利など最初からなかった。
理由は突然改心して、全校より二時間早く朝読書をしようと決意したからではない。そんなことは世界の終わりが来ても、私はおそらく終末の淵に立って本を読んでいる人間に拍手を送り、それから素早く物陰に隠れるだけだろう。
本当の理由は二つある。
一つ目は、学生会の諸々が一晩中私の眠気を細切れにし続けたこと。まるで誰かが穴あけパンチを持って私の脳内で事務作業をしているようだった。
二つ目は、朝一番にドアを開けたら九島真紀が部屋の入り口に立っていた場合、その日もう一度寝に戻ろうと考えることは、現実に対する最低限の理解力を欠いた行為として分類されるということだ。
彼女の手には、昨日私に押し付けてきたあの偽装本があった。正確に言えば、外側の殻の部分だ。本当に殺傷力があるのは本ではなく、中に収められた読み取りチップ——その内容はさらに致命的なもの、すなわち歴史だった。
昨夜ベッドに横たわり、感情も年表しか持っていないのではないかと疑いたくなるような一本調子の機械音声で、超光速エンジンから月面自重力都市コペルニクスまでを聞かされたことは、今でもはっきりと覚えている。
天野宗一郎、内太陽系封鎖時代の終焉、月面初の自重力都市の誕生、そしてその後、戦争と秩序の中でいかにして礼儀正しい緩衝地帯として整形されていったか——最初は早送りするつもりだったのに、聞けば聞くほど、あの場所が修学旅行の目的地というよりも、きれいに包装された病歴書のように思えてきた。
そして今朝、その病歴書を予習させた張本人が、私の部屋のドアの前に立ち、気遣いなのか監督なのかよくわからない表情で、ひと言こう言ったのだ。
「行くわよ」
私は抵抗するのも省略した。
ああいう状況での抵抗は、大抵二分間の無駄遣いに終わり、結局は一緒に出かけることになるのが常だからだ。
こうして、私たちはいつもより随分と早く学校に着いた。
バイクが夜明けの校道を切り進む時、風が襟元から流れ込んできて、私は歯が勝手にリズムを刻み始めそうなほど寒かった。道路の両脇に積もった雪がタイヤに踏まれ、灰色の二本の轍を残す。校門付近はまだひどく静かで、まるで学校がようやく良心に目覚め、一度だけ生徒を人間扱いすることにしたかのようだった。
そう思っていた。
校門の前に立っている、見た瞬間に引き返したくなるあの見慣れた人影を見るまでは。
「……あらまあ」
私は後ろの真紀の背中を叩き、顎で校門の方を示した。
真紀が私の仕草を追って視線を向け、眉をわずかに動かした。
校門の脇に、二階堂・フレイヤが真っ直ぐに立っていた。
「誰かを待っている」という立ち方ではない。
「早めに登校した」という立ち方でもない。
もし誰かが隣に小さな立て看板を置いて「校則違反者の末路」と書いても全く違和感がない、そういう立ち方だ。
一切動かず、肩には薄く雪が積もり、頭頂部まで白くなっている。校紀・校風の標本棚から引き出してきたばかりのように、全身が凍りついていた。
「こんなに早く校門に立っているの?」真紀の口調には、珍しく本物の驚きが混じっていた。
「彼女がかなり早く登校することは知ってたけど」私は前方の、積雪と同じ色系統に溶け込みかけているあの人影を見つめた。「これはさすがに早すぎでしょ。もしかして寮住まい?」
「上院の二年生だから、それはないと思う」私は自分でその推理を却下した。
「どうかしらね」真紀の声は前から聞こえてきた。淡々としている。「二階堂の志望進路、知ってる?」
「知らない」
「憲兵隊よ」
私は半秒固まり、それから笑いをこらえきれなかった。
「ははっ。完全にキャラ通りだ。憲兵隊と思想監察局以外に、歩くだけで規律違反の取り締まりみたいな人間を喜んで採用するところなんて、他に思いつかないよ」
真紀も少し笑いそうになったが堪えて、代わりに鼻からごく軽く息を漏らした。その反応の意味は熟知している。「そのセリフは悪趣味だけど、間違ってもいない」という意味だ。
話しているうちに、バイクは校門の近くまで滑り込んでいた。
二階堂はまだ元の位置に立ったまま、微動だにしない。
私は目を細めて二秒ほど見た。
「……もしかして、倒れてる?」
「ふざけないの」真紀が小声で言った。
「人道的な観点から確認しているだけよ」
速度が落ちた瞬間、私は前方の雪だるま版風紀委員長に向かって声を張り上げた。
「あっ、リンデ先輩!」
標本のように冷気の中で固まっていたあの人影が、瞬時に振り返った。
ああ、動く。生きていた。
しかも、かなり怒っている。
「星、野、シモ!!!」
二階堂・フレイヤの声が、もう一歩で校内暴力報告書に記載されかねないほどの怒気を帯びて、雪の中を真っ直ぐ飛んできた。
私はすぐに手を上げ、世界で最も誠意のない無実の表情を作った。
「死んでるかと思ったんだもん。こんなに寒いのに、頭に雪まで積もって、ピクリとも動かないから。善意で確認したんだよ」
「よく言うわ」
彼女は一歩横にずれた。顔色は相変わらず、新入生が見たら即座に人生の反省を始めるような冷たさだ。残念ながら、私はその顔を見慣れすぎて、ある種の耐性ができてしまっていた。
「二人してこんなに早く来て、何の用?」
「会いたかったから」
この一言が口から出て二秒も経たないうちに、太腿に軍規級の激痛が走った。
私は危うくその場でバイクから飛び上がりそうになった。
「……っ!」
真紀は片手でしっかりとハンドルを握ったまま、もう片方の手で正確かつ容赦なく、かつ極めて効率よく私の太腿の外側を抓んでいた。その横顔には、かすかな笑みすら浮かんでいた。
「今日は特別口が達者ね、星野さん」
その笑い方は、ひどく礼儀正しかった。
礼儀正しすぎて、私は自分の走馬灯が見えそうになった。
「すみませんでした、会長閣下、放してください、文明社会では同僚への私的制裁は禁止されています」
私は慌てて両手を上げて降参し、ついでに恥も外聞もなく舌を出し、可愛く見せることで難を逃れようとした。
二階堂は私たちを見て、その目に「いつかこの二人をまとめて校紀委員会の冷凍庫に送り込んでやる」という意志を明確に書いていた。
「恥知らずにもほどがある」
「まるで世の中が堕落していくのを目撃しているみたいに言うね」私は太腿を揉みながら、誠実に提案した。「いっそ校門前のポジションを風紀監督から『晨間道徳観測員』にアップグレードしてみたら? すごく向いてると思うよ」
「星野」
今度は真紀まで私の名前を呼んだ。
私はすぐに口を閉じた。
程を知ることは、生存の知恵だ。
特に、抓む人間と記過をつける人間が同時に隣にいる場合には。
真紀は教学棟の前でバイクを降りた。マフラーを少し引き上げ、白い息を吐いて、横目で私を一瞥した。
その目の意味は明快だった。
余計なことをするな。少なくとも、私の見える場所ではするな。
私は最大限に無実な表情を返しながら、内心では正直に思った。その要求は抽象的すぎる、善処します、と。
彼女は背を向けて教学棟へと歩き出した。足取りは速くないが、とても安定している。夜明け前の校舎、薄い雪、制服、吐く白い息、そしてまだ人が集まる前に一足先に学校へ入っていくその人影。
一瞬、私はこの学校全体の中で唯一まともに機能している部品を見ているような気がした。
すぐに自分を訂正した。
違う。
一番まともなのは彼女で間違いない。
ただ、天がまだ完全に明けない時間に人の部屋のドアの前に立ち、直接学校へ引きずり出してくる人間は、厳密に言えば完全に健全な社会人格の持ち主とは言い難い。
そう思ったら、急に気分が良くなった。
少なくとも、病んでいるのは私一人だけではない。
私はバイクを駐車場へ走らせた。
雪がアスファルトに積もり、薄い白の層を作っている。タイヤが踏むと、下の湿った黒い地面が露わになった。駐車場はがらんとして、世界が音を半分止めたかのように静かで、遠くの校舎から微かな風の音だけが届いていた。
バイクを停め、エンジンを切る。ハンドルから手を離した瞬間、冷たい空気が指先に噛みついた。
「……冬そのものを軍事法廷に送りたい」
私は小声でぼやきながら、上着をより強く引き寄せ、生徒会室の方向へと歩き出した。
そして今日の最初の正式な厄介事が、教学棟の側面の廊下の入り口で、合法的に投函された逮捕状のように私を待ち構えていた。
「あら、星野さんじゃないですか?」
私は足を止めた。心の中で即座に浮かんだのは——まさか、こんな早い時間に誰かに捕まるの? という一言だった。
振り返る。
声をかけてきたのは教職員だった。年齢はそれほど高くなく、身だしなみは整っており、手には封筒を持ち、笑顔には「ただ通りかかったついでに仕事を押し付けます」という典型的な温和さが漂っていた。
問題は、私がこの人を見たことがないことだ。
「……はい?」
「ちょうど生徒会の人を探していたんです。よかった」彼女はほっとしたように、封筒を私の手に押しつけた。「この資料、生徒会長に渡してもらえますか?」
「ちょっと待って、これは——」
だが彼女の効率は驚異的で、荷物を手放すことが今日唯一の人生の目標であるかのようだった。名前を聞く間もなく、彼女はすでに雪の上を素早く立ち去っており、その後ろ姿は周到に計画された行政的逃亡のように滑らかだった。
私は元の場所に立ち尽くし、封筒を抱えたまま二秒間沈黙した。
「……名前も残さないで。最近の公文引き渡しって、匿名犯行が流行ってるの?」
人はもう行ってしまったのだから、封筒を背中に向かって投げ返すわけにもいかない。仕方なく歩きながら開けてみた。
中には何枚かの書類が詰め込まれていた。
正式な書翰、コピー、添付ページ、活動説明らしいカラーのチラシ、そして一枚、朝の生徒会が目にするべきではないと思わせるほど鮮やかなビラ。
そのビラは異様に目立つ作りだった。地色は連邦軍校が好む、真面目さをほとんど誇示しているような青白の配色で、中央には大きな文字が印刷されていた。宇宙全体に自分の存在を知らせたいかのような大きさで。
連邦中央星際連合軍事学院 首都圏代表隊選抜
私は足を止めた。
夜明けの冷たい風が廊下の隙間から吹き込み、ビラの端をわずかに震わせた。紙が擦れる音は小さかったが、私の耳には、何か不吉な仕掛けが半分だけ解除されたような音として聞こえた。
私はその文字を見つめ、それまでまだ眠っていた脳内の一本の神経が、ひどく渋々と目を覚ました。
上下院対抗。
代表隊。
首都圏。
この先を読まなくても、校内の一試合で終わる話ではないことは見えていた。
封筒の中の他の書類も確認した。
案の定、活動概要、事前調整説明、学生自治部門の協力項目、会場使用申請、そして生徒会長の事前確認が必要な名簿の予備書式まで挟まれていた。その書式の形式を見れば即座にわかる。これは参加するかどうかを聞いているのではない。厄介事が自分の足で歩き始めたので受け取り準備をしてください、という礼儀正しい通告だ。
私は思わず小さく笑った。
ひどく乾いた笑いだった。
「最悪だ」
私はそのビラを引き抜き、まだ完全には明けていない廊下の光の下でもう一度読んだ。
「私、何かのパンドラの箱を開けてしまったんじゃないかな……」
学校で最も恐ろしいものは爆発でも銃声でもない。
カラーのビラだ。
なぜなら、人を深淵に引きずり込むものは、大抵きれいに印刷されており、タイトルはとりわけ堂々としているからだ。
「友好交流」、「事前調整」、「代表隊選抜」。
どの言葉も文明的に見える。組み合わさると、大抵一つのことしか意味しない——
お前はこれから、平穏な日々を諦めろ。
私はその資料を抱えながら、ひどく嫌な予感がした。
今日、生徒会に漬け込まれる時間は半分では済まないかもしれない。
日が沈むまで、ずっとここにいることになるかもしれない。
さらに悪いことに、これを真紀に渡した後の展開まで想像できてしまった。彼女が静かに一ページ目を読み終え、次をめくり、眉がだんだん寄っていき、最後に視線を上げて私を一瞥し、平坦な声でこう言うのだ。
「星野、今日は逃げようとしないで」
そして私はおそらく、口だけ強がってこう返す。
「こういう時は、まず被害者を慰めるべきじゃないの?」
そうしたら彼女は、一番分厚い資料を私の手に押しつけるだろう。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




