166.二学期始業 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
学校の大講堂に座って開学式に参加する。本来なら、ごく普通のことのはずだ。
式典が終わる前に、下級生の集団から校内限定の観光スポットとして鑑賞されず、式典が終わった後に、歩く景品陳列棚として退場ルートで待ち伏せされていなければ、の話だが。
残念ながら。
私は今日、両方とも当てはまった。
生徒会の司会者が締めの言葉を終えると、拍手が規格の揃った人工降雨のように、大講堂全体にパラパラと降り注いだ。続いて椅子の脚が床を擦る音が、一列、また一列と響き、大型の金属昆虫の群れが目を覚ましたようだった。
誰もが立ち上がり、向きを変え、パンフレットをしまい、襟を正す。秩序立って見えるが、実際には数百人の学生が学校の許容範囲内で、最も失態とならない退場の慌ただしさを絞り出しているだけだ。
私は立ち上がった瞬間、何かが起きると直感した。
さっきまで私をネタにコソコソ話していた後ろの後輩たちの呼吸音が、明らかに速くなったからだ。
誇張ではない。
本当に速くなったのだ。
振り向かなくても、その集団で息を吸い込む小さな気配だけで判別できた。ああ、終わった。こいつら、退場したいんじゃない。狩りをしたいんだ。
ヘートヴィヒが前列から一足先に立ち上がった。
彼女の立ち上がる動作は相変わらず規律正しく、「全員が見ていると分かっている」という事実を、いかに失礼なく処理するかを幼い頃から専門に教え込まれてきたかのようだった。
その姿が立ち上がると、周囲で元々彼女を見ていた人々の注意が、再びそちらへ引き寄せられた。理屈から言えば、これは良いことだ。
スポットライトが皇女殿下に戻れば、私は人混みに紛れてどさくさに紛れて蒸発できるからだ。
理屈から言えば。
だが現実は、私にそんな人道的な扱いを許すつもりはなかったらしい。
私がタイミングを見計らって座席エリアから撤退しようとした次の瞬間、右後ろから誰かが小さく、しかし切羽詰まった声で叫んだ。
「早く早く、今しかない――」
頭皮が粟立った。
今しかないって何がだ?
在庫の補充にでも走るつもりか?
振り向く暇もなかった。二人、三人、四人と、下級生たちが後列の座席の隙間からすばしっこく抜け出し、目標をロックオンした小型猟犬の群れのように、肘掛けを迂回して私の列へと迫ってきた。
「せ、先輩!」
先頭に突っ込んできた女子は、口を開くや否や言葉を噛み、その場で昇天しそうなほど顔を真っ赤にしていた。
彼女の声が出た途端、横の数人も一緒になって押し寄せてきて、結果としてそこそこ通れたはずの通路が瞬時に半分塞がった。左に人、右に人。前にはヘートヴィヒの列から立ち上がった人流、後ろには次々と押し寄せる新入生。
私はその真ん中に立ち、自分が学生ではなく、物流倉庫の動線に挟まれた割れ物になったような気分だった。
「何」私は無表情で彼女たちを見下ろした。
わざと冷たくしているわけではない。
これが現在私が尊厳を保てる唯一の表情管理だからだ。
その女子は私に見つめられると、逆に息を呑んだ。
「ち、近くで見るともっとヤバい……」
「ちょっと、先にそれ言わないでよ!」
隣の別の女子が慌てて彼女の腕をつつき、それから私を見上げた時、彼女も明らかに一拍フリーズした。
上等だ。
今の私には、人を驚かせてフリーズさせる機能まで備わっているらしい。
連邦の人材育成は実に成果を上げている。
「先輩」三人目の比較的度胸のある女子が身を乗り出して尋ねた。「あの、本当に、えっと、本当に女子なんですか?」
私は彼女を見た。
彼女は私を見た。
周囲が一秒静まり返った。
それから私は言った。「もしその場で現物確認したいなら、まずあんたを風紀に突き出すけど」
その女子の顔が一気に朱に染まり、後ろから必死に押し殺したような笑い声が爆発した。
「違います! そういう意味じゃなくて!」彼女は慌てて手を振った。「その、みんなさっきまでずっと……」
「私が男だと思ってた?」
彼女はとても小さな声で言った。「……少し」
「少し?」
「かなり」
私は目を閉じた。
結構だ。腹立たしいほど正直だ。
別の後輩がすかさず二刀目を突き立てた。「でも先輩、普通の男っぽい感じとは違うんですよね」
私は目を開けた。「何だその謎の分類は」
彼女は真面目に考え込んだ。
「えっと……ゴツゴツした感じじゃなくて、その、すごく清潔で、冷たくて、それでいてかっこいい、みたいな」
「その言い方、ナイフを品評してるみたいに聞こえるけど」
「ナイフだってかっこいいじゃないですか」彼女は無意識に言い返した。
横の誰かが息を呑んだ。「なんで言い返してんのよ!」
私は危うく笑いそうになり、強引に堪えた。
笑ってはいけない。
今ここで私が笑えば、この連中は私を神棚にでも飾りかねない。
さらに悪いことに、周囲から他の視線がこちらに集まり始めていた。
さっき近くに座っていた男子たちは、ただ「どういうつもりだ」という顔で私を盗み見ていたが、実際に新入生が私のところへ殺到しているのを見て、その目はある種の思春期版・国土防衛危機へと進化していた。
そのうちの一人はわざと肩を寄せてきて、ひどく苛立ったふりをした。
「どけよ。通路塞いでて邪魔だ」
その言葉は集団全体に向けられていたが、目は私を見ていた。
ああ。
来たな。
こういう手合いは何度も見てきた。本当は「お前、何様のつもりだ」と言いたいのに、口から出てくるのはいつも一番安全で、一番創意工夫がなく、道端の立て札みたいな台詞だ。
本来なら相手にする気もなかった。
だが、後輩たちは彼の体当たりでさらに混乱し、誰かが椅子の脚を踏みそうになっていた。仕方なく私は体を斜めにし、一番近くにいて弾き飛ばされそうになっていた後輩を自分の方へ引き寄せ、ついでにその男子をその場で足止めした。
「見えてるよ」私は言った。「目が機能してるなら、自分で迂回しな」
彼の表情が強張った。
私が直接言い返してくるとは思わなかったのだろう。
「お前――」
「それと」私は彼を見て、それから彼の後ろにいる同じように不機嫌そうな顔をした男子たちを見た。「通路は人が歩くためのものであって、傷ついたプライドの展示場じゃない」
横で誰かが「ぷっ」と吹き出した。
後輩ではない。もっと後ろの列でそれを聞いた誰かが、堪えきれなかったのだ。
その男子の顔色は一気に見事なものになった。赤の中に青が混ざり、絵の具箱を制服の裏地にひっくり返したかのようだった。もう二、三言言い返してくるかと思ったが、おそらくこの場がまだ講堂内であることと体面を気にして、最後は歯を食いしばり、その取り巻きを連れて反対側から押し退けていった。
去り際に、私を鋭く睨みつけることも忘れずに。
私は心の中でため息をついた。
ほら見ろ。
私は今日、開学式に参加しに来たのではない。連邦軍校における性別認識、審美傾向、そして脆弱な男性の自尊心に関する総合的なストレステストを実施しに来たのだ。
そして、この後輩たちは全く教訓を学んでいなかった。
あの男子が去ると、彼女たちの度胸はかえって増した。
「先輩、さっきの超かっこよかった……」
「あの『自分で迂回しな』ってマジで……」
「だから言ったじゃん!」
「あんたたち、学校に何しに来たの。男前のファンミーティング?」私は声を落とした。
「先輩のファンミーティングです」誰かが即座に訂正した。
「そんなものはない」
「今からでも作れます」
「連邦軍校の学費はすでに十分に無駄遣いされてる。こんな企画にこれ以上浪費する必要はない」
パンフレットを持っていた後輩が、しばらくためらった後、勇気を振り絞ってそれを差し出してきた。
「先輩、サインもらえませんか?」
私はそのパンフレットを見つめた。
それから彼女を見つめた。
そのパンフレットを、もう一度見つめる。
「……あんたたち、頭おかしいんじゃないの?」
「少し」彼女はひどく正直だった。
「少なくとも、自覚はあるようね」前方から、ふと平静な声が聞こえた。
ヘートヴィヒはいつの間にか足を止め、わずかに振り返っていた。人波が彼女の横をすり抜けていく。冷静で高貴な暗礁を避けて流れるように。
彼女は、私が後輩の群れに座席の真ん中で包囲されている光景を見下ろしていた。その瞳の奥にあるごく浅い笑みは、ほぼ「だから言ったじゃない」という言葉そのものだった。
私は歯を食いしばった。
「そこで見世物みたいに眺めてないで」
「残念だけれど」ヘートヴィヒは言った。「今の私にできることは見物だけよ。囲まれているのは私じゃないもの」
後ろの後輩たちが、またしても集団で息を呑んだ。
上等だ。今度は皇女殿下まで目撃者の列に加わったか。
「先輩」さっきのパンフレットを持った子が、また小声で口を開いた。「一つだけでいいんです、名前だけでも……」
「駄目」私は言った。
「どうしてですか?」
「明日、校内掲示板に『銀髪イケメン先輩の直筆サイン転売』なんてスレッドが立つのを見たくないから」
数人の後輩が同時に「やば、見透かされてる」という顔をした。
私は深く息を吸い込んだ。
連邦の未来は、やはり期待するに値しない。
座席の間から強引に突破して血路を開こうとしたその時、通路の反対側の人だかりが、不自然なほど自然に割れた。
誰かが大声を上げたわけでも、意図的に人払いをしたわけでもない。
それは……校内で元々「道を譲らせる資格」を持っている人間が歩いてきた時、周囲の人間が無意識に半歩下がる、あの現象だった。
私は顔を上げた。
九島真紀が降りてきた。
演壇脇の幹部用動線からまっすぐ歩いてくる。制服に一糸の乱れもなく、表情は平穏で、胸の生徒会識別章が照明の下で一度光った。特別歩くのが速いわけではないのに、「この動線は最初から彼女のものだ」という錯覚を強烈に抱かせる。
彼女を見た瞬間、私の頭に最初に浮かんだのは「助かった」ではなかった。
「終わった」だ。
なぜなら、今の彼女は会長だからだ。
そして私は、新学期最初の公式式典が散会した直後、後輩の群れに座席でサインをねだられて立ち往生している問題児だ。
この光景、どう見ても生徒会が出馬して処理すべき事案にしか見えない。
「会長!」後輩たちも明らかに気づき、教師に見つかった小学生のように一瞬で直立不動になった。
真紀は私の横で立ち止まり、まず状況全体を一瞥した。
後輩たちを見て、パンフレットを見て、私を見て、最後に私の手元に押し付けられそうになっていたパンフレットに視線を留めた。
その間はごく短かった。
だが、私は見慣れすぎている。
一目見ただけで分かった――彼女は今、笑いをこらえている。
この女は本当に意地が悪い。
「退場動線を塞がないように」真紀が口を開いた。生徒会の啓発ビデオにそのまま使えそうなほど、模範的で平穏な声だった。「質問があるなら、講堂を出てからにして」
後輩たちは即座に、餅つき機のように何度も頷いた。
「すみません、会長!」
「ごめんなさい!」
「私たちはただ、ただ……」
「ただ、私の顔の被害に遭っただけ」私は冷たい声で補足した。
真紀がようやく私を見た。
「星野」
「何」
「自分の問題を、他人の視力に外注しない」
後ろの後輩たちは明らかに笑いたがっていたが、必死にこらえていた。
私のこめかみがピクリと跳ねた。
ほら見ろ。
これが恋人の一番厄介なところだ。
他人が助け舟を出してくれたなら、まだ体裁を取り繕うこともできる。真紀が助けに来ると、人助けのついでに刺してくる。しかも絶妙な角度で刺してくるから、その場でキレることもできず、その一撃を飲み込んで自分で内傷として消化するしかない。
真紀は手を伸ばし、私の目の前に突き出されていたパンフレットを受け取った。
「サインは駄目」彼女はその下級生に向かって言った。
下級生はあからさまにがっかりした顔をした。
だが、真紀は次の言葉を続けた。
「でも、名前を知りたいだけなら、学生名簿に載っているわ」
「九島!」私は即座に振り向いた。
私を売る気か?
真紀は私の抗議など見えなかったかのように、平然とパンフレットを返した。
「それから」真紀は付け加えた。「次、人を囲む時は、動線に影響しない場所を選んで。講堂の中は駄目よ」
……ちょっと待て。
その言葉、黙認ってこと?
後輩たちも明らかにその言葉に衝撃を受け、一瞬呆然とした後、誰が最初に息を呑んだのか、集団全員の目が一気に輝いた。
「はい!」
「覚えておきます!」
「ありがとうございます、会長!」
私はその場で柱を探して頭を打ち付けたくなった。
これは包囲を解いたことにならない。次回の犯行手順をコーディネートしてやってるだけじゃないか。
「行くよ」真紀はごく自然に私の手首を掴み、外へ引っ張った。
動作は大きくなく、目立つこともなかった。傍から見れば、会長が動線を塞いでいた問題児を現場から連れ出しているようにしか見えないだろう。だが私だけが知っている。彼女の指が押さえてきたその位置が、どれほど馴染んだものかを。
見なくても彼女がどれくらいの力を入れているか分かるほどに。頭より先に身体が反応し、その力に従って歩き出してしまうほどに。
こういうのが一番嫌いだ。
私たちの間にある多くの動作が、とうの昔に言葉を必要としないほど馴染みきっているから。
彼女に連れられてその小さな混乱エリアを抜け、ヘートヴィヒの横を通り過ぎる時、ヘートヴィヒがごく軽く私を一瞥した。
「賑やかだったわね」ヘートヴィヒは言った。
「黙って」
「本当に同情してるのよ」
「あんたの口から出ると、他人の不幸は蜜の味って顔にしか見えない」
ヘートヴィヒの口角がわずかに動いたが、結局何も言わず、向きを変えて別の人の流れに合流していった。
私たちは講堂の側扉付近まで歩いた。周囲の人が少し減り、喧騒も壁と扉に切り刻まれて、散場特有の雑然とした残響だけが残っていた。真紀がようやく私の手首を放した。
私はすぐに彼女を睨んだ。
「さっきのはどういう意味?」
「どれ?」
「『次は動線に影響しない場所を選べ』って言ったやつ」
「字義通り」
「よくも言えたね」
「じゃあどうすればよかった?」真紀はわずかに首を傾け、目の奥にようやく隠しきれない笑みが浮かんだ。「新入生の前で『私の彼女に近づくな』って言えばよかった?」
私は完全に止まった。
……なるほど。
それは確かに勝ちだ。
しかも、ひどく卑怯な勝ち方だ。
喉が一瞬詰まり、用意していたすべての言い返しが一斉に隊形を崩し、空襲で吹き飛ばされた雑兵のようにばらばらになって、頭の中で散乱した。
「し、喋る前に予告くらいできないの?」
「これより事前の通知がないことだって、もうしてるでしょ」真紀は殴りたくなるほど平然と答えた。
私は危うく自分の唾を飲み込んで気管に詰まらせるところだった。
「ここは講堂の側扉!」
「だから私は話しているだけ」真紀は私を見て、口調はほとんど無実を訴えているかのようだった。「星野、あんた一体何を想像したの?」
私は彼女を睨んだ。
彼女は私を見返した。
そして私は、また負けたと分かった。
この女は完全に故意だ。表向きは校内の模範標本のように立っているくせに、裏ではどの一言が私の神経を丸ごと乱せるかを一番よく知っている。さらに腹立たしいのは、いつも「ただ事実を述べているだけ」という顔をしていることだ。
私は顔を背け、小声で一言呟いた。
「会長、大したものね」
「まあね」真紀は言った。「少なくとも今日は、講堂の秩序を保てた」
「私を下級生に売ったのも秩序の一部?」
「売ってない」彼女は私の顔をさっと見た。視線は薄かったが、正確だった。「あんたが目立ちすぎるだけ」
「それは私のせいじゃない」
「そうね」彼女は言った。「でも、あの顔と、あの髪と、あの制服があんたの上にある以上、何かが起きるのは最初から決まってた」
私はそれに言い返そうとした。
だが彼女がこれをあまりにも当然のことのように言うから、私は半拍固まってしまった。
褒められて固まったわけではない。
ただ、事実を言われているのに、自分の恋人にこんなに平静な口調で言われると、先に怒るべきか、それとも先に心拍が乱れるべきか、一瞬判断がつかなくなる。
真紀は手を伸ばし、少し歪んでいた私の立て衿の白い縁を整えた。
二本の指が、衿の縁を沿って軽く通り過ぎるだけ。触れた時間はごく短かったが、精確だった。
私の背筋が瞬時に張り詰めた。
「何してるの」
「整えてる」真紀の表情は変わらなかった。「このままだと、また場刊を持ってくる人が出てくる」
「その二つに因果関係はない」
「ある」真紀は手を引き、目の奥にまだ消えていない笑みを残したまま言った。「せめて理由を、私が見えるところに収めておきたいから」
私は固まった。
この言葉は表面上は制服の話をしているようで、実際にはそれだけではなかった。
鬱陶しい。
本当に鬱陶しい。
なぜなら彼女は「やきもち」という言葉を直接言う人ではないからだ。別の言い方をする。管理であり、整理であり、ついでにやったことのように聞こえる言い方で。なのに、直接言われるより余程たちが悪い。
私は壁に寄りかかり、声を落とした。
「つまり、さっきは不機嫌だった?」
「不機嫌じゃない」
「嘘つき」
「ただ」真紀はゆっくりと言った。「新学期初日に、後輩の一群に囲まれてかっこいいと言われてたのが、うるさかっただけ」
私は彼女を見つめた。
彼女も私を見つめた。
二秒後、私はたまらず笑った。
おかしいからではない。
この女がずいぶんと遠回りして、結局あの小さな感情を漏らしたからだ。ほんの少し、ほんの薄く。でも、だからこそ、かえって際立って見えた。
「あんたって本当に厄介だよね」私は言った。
「今更?」
「ずっとそう思ってた」
「それならいい」
講堂の外ではまだ人の波が流れ続けていた。遠くから他の学生の話し声、足音、誰かが仲間の名前を呼ぶ声の残響、そして反対側で生徒会幹部が動線を誘導する号令が聞こえてきた。
学校全体が、起動ボタンを押されたばかりの大型機械のように、歯車が噛み合い、うるさく、秩序があり、うんざりするほど、でも確かに動いていた。
真紀は時間を確認し、また私を見た。
「この後もまだ流れがある」
「分かってる」私は背筋を伸ばした。「会長様は連邦の青少年を救いに行かなきゃね」
「星野」
「何」
「もしまた囲まれたら」真紀は淡々と言った。「少なくとも、ベルトに触らせないように」
私はその場で固まった。
……これは、さすがにやりすぎだ。
やりすぎなのは、彼女が何も余分に言っていないのに、その一言の中に私たちが互いに知っていて、でも今の講堂の側扉では絶対に広げるべきではない何かが詰まりすぎているからだ。
私の耳の根が一瞬で熱くなり、彼女を思い切り睨んだ。
「今日、全部わざとでしょ?」
「そこまでわざとじゃない」真紀は言った。「ただの念押し」
「その念押しはいつか事故を起こす」
「あんたが本当に人に囲まれて立ってるよりはマシ」
私は歯を噛み、最後に一言だけ絞り出した。
「……行ってきなよ」
真紀は私を見て、私が本当に爆発していないことを確認してから、ごく軽く応じた。
「うん」
彼女は背を向けて歩き出し、二歩進んでから振り返った。
「もう一つ」
私はすぐに警戒した。
「今度は何?」
「もし誰かにまた男かどうか聞かれたら」真紀は言った。「私の名前を出していい」
私は一瞬、固まった。
「どういう意味?」
真紀の表情は落ち着いていたが、口調はほとんど理当然という感じで淡かった。
「もう相手がいるって知らせれば」彼女は言った。「順番待ちをしなくて済む」
それだけ言って、彼女は行った。
きれいに、まるで生徒会の小さな詰まりを処理しに来て、ついでに私ごと片付けて去っただけのように。
私はその場に立ち尽くし、自分の魂を引き戻すのに丸三秒かかった。
くそ。
この女、今、生徒会長の顔で、非常に個人的なことを言ったんじゃないか?
しかも私はその一言で心拍が少し乱れた。
本当に恥ずかしい。
私は顔を手で拭い、深く息を吸い込み、外へ向かおうとした。
その時、背後からかすかな声が聞こえた。
「あの……先輩」
全身が一瞬こわばった。ゆっくりと振り返る。
さっきの後輩の一人が、いつの間にか側扉のところに回り込んでいた。手にはまだ場刊を抱え、覚悟を決めた顔をしていた。
「また何」
「サインをもらいに来たんじゃないです」彼女は素早く言った。
「じゃあ命を取りに来た?」
「違います!」彼女の顔が赤くなり、もう少しで煙が出そうだった。「一つだけ確認したいことがあって」
私は目を細めた。
彼女は唾を飲み込んでから、小声で尋ねた。
「あの……会長さっきのって、縄張り宣言ですか?」
私は彼女を見た。
彼女は私を見た。
廊下の向こうを学生が通り過ぎ、空気には講堂の散場後の熱気と布地が擦れる匂いが残っていた。私は「どこにそう見えたの」とか「変なものを見すぎると人生に良くない」とか言おうとした。
だが結局私は手を伸ばし、彼女が抱えていた場刊をひっくり返して、胸に押し返しただけだった。
「授業に戻りなさい」私は言った。
「じゃあ、あるんですか?」
「質問が多い」
「ちょっとだけ、ある感じですか?」
私はその過剰に輝いている目を見つめ、下級生というものが、ある意味では戦術訓練より難しい相手だと実感した。
最後に私はただ一言だけ投げた。
「これ以上うろうろしてたら、『ちょっとだけ』も聞けなくなるよ」
その後輩はまず呆然とし、それから耳まで真っ赤になり、場刊を抱えたまま背を向けて走り出した。二歩で扉の枠に当たりそうになり、最後は驚いて荷物を抱えたまま満足げな小動物のように、側扉の外の人の流れに消えていった。
私はその場に立ち、彼女が逃げた方向を二秒見送った。
それから小さく呟いた。
「……頭おかしい」
誰に向けて言ったのか、自分でも分からない。
彼女に向けて言ったのか。
それとも真紀に向けて。
あるいは両方まとめて。
ともあれ、新学期初日の開学式は、これで正式に終わった。生徒会長は壇上で完璧に挨拶を済ませ、皇女殿下は前列で注目を一身に受け、私は散場の動線の中で下級生に囲まれ、男子に睨まれ、恋人に現場で片付けられ、ついでに縄張り宣言めいた一言で心拍を乱された。
結構だ。
これが連邦軍校らしい。
最も普通の開学式でさえ、人格の尊厳、性別認識、そして恋愛耐性への合同実動テスト(ごうどうじつどうテスト)として仕上げてくる。
私は衿を整え、側扉の外へと歩き出した。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




