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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
士官学校編
48/62

13. 高負荷限定演習 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

ミラがあの高周波熱熔銃を俺の手に押しつけてきた瞬間、一つはっきりした。


こいつは銃じゃない。


これは聯邦軍工企業が「人体肩関節の最大耐荷重」に向けて投げかけた、悪意ある問いかけだ。


両手で抱え込んだ途端、前腕がその場でずしりと沈み、手首まで一緒に人生を諦めかけた。銃身の内部で何らかの高周波振動モジュールが低く唸りを上げていて、掌に細かい震えが伝わってくる。鉄の箱に閉じ込められた、いつでも噛みついてくる気満々の小獣みたいな感触だ。


「姿勢」


ミラが俺の斜め前に立つ。葉巻をくわえたまま、目つきは裁判所の判決文みたいに冷たい。


「布団抱いてんじゃない。銃床を肩に食わせて、肘は落として、重心前に」


「これ、俺の将来の人生ぐらい重いんだけど」


「だったら、今の人生で担げ」


……上等だ。


この女は、カールとは違う。


カールは、まず壁に叩きつけてから「どこがダメか」を教える暴力派だ。


ミラは、一言で正確にこう言ってくるタイプ――お前は姿勢だけじゃなくて、生き方そのものが怪しい、と。


彼女は操作卓の横まで歩いていき、手を上げて光幕を数回なぞった。


射撃場の奥の灯りが、一気に落ちる。


次の瞬間、両側の風洞が同時に起動した。


ゴウッ――


強風は「吹いてくる」んじゃない。


「ぶつかってくる」。


その瞬間の風圧で、俺は危うく半歩下がりかけた。ブーツの底を床にきしませて、なんとか踏みとどまる。前方奥の軌道投射器が赤く点灯し、天井の上から磁軌のチャージ音が低く響いてきた。高価で、人を殺したくてたまらない大型楽器が、今まさにチューニングしているみたいな音だ。


ミラは振り向きもせずに言う。


「モード一。低密度碎片暴風。時速百二十。まず、生きたままトリガー引けるかどうか見せな」


俺は銃床を肩窩に押し込み、歯を食いしばって耐える。


「あんた、教え方いつもこんな感じで嫌われてんの?」


「いいや」彼女は言う。「今日は新入生サービスデーだ」


風場の奥で、最初の金属の反射がふっと光った。


静止標的じゃない。


標準のクレーでもない。


爪ほどの大きさで、縁がギザギザの黒い金属片だ。乱流に放り込まれ、酔っ払いみたいな弾道でこっちへ飛んでくる。


「撃て」


ミラは、その一言だけ言った。


俺は引き金を引く。


ドォン!


「パン」じゃない。


ドォン、だ。


銃口が閃き、高周波熱熔銃がまるで俺の肩の上で局地戦争を始めたみたいに暴れる。反動が肩から鎖骨まで一気に叩き込まれ、視界が揺れる。銃口が一気に跳ね上がり、初弾は金属片のすぐ上をかすめて飛び、後方の防爆板に当たって、刺すような火花を派手に咲かせた。


外れた。


先に壊れかけたのは、俺の肩だ。


「……くそっ」


「見てた」ミラは冷ややかに言う。「銃のほうが、あんたより自我が強い」


二枚目の金属片は、さらに速く入ってきた。


俺がまだ銃口を押し下げているあいだに、そいつは右側の乱流から斜めに切り込んでくる。反射は一瞬だけ。反射的に銃を追いかけ、その光点にやっと追いついた瞬間、隣でミラが毒づいた。


「追うな、先回りしろ。蝶々とデートしてんじゃないんだぞ」


ドォン!


二発目が出る。


また外れた。


今度は惜しくもなんともない。


綺麗に、外れた。


俺の尊厳が、あの金属片たちと一緒に、暴風の中を高速で飛んでいる気がした。


三発目。四発目。五発目。


五発撃って、命中ゼロ。


肩はもう痺れ始めていて、手首は振動でじんじんする。耳の中は高周波の爆音と風切り音でいっぱいだ。射撃場全体が、「新兵の限界テスト用」と書かれた工業用シュレッダーみたいに思えてくる。


ミラが近づいてきて、俺の銃口を無言で押し下げた。


「ストップ」


俺は息が上がって、バイザーの内側が曇りかけていた。


「これ、人間用じゃないだろ」


「おめでと」彼女は言う。「やっと一つ正しいこと言ったな」


彼女は俺の隣に立ち、左目で前方の風場を見すえながら、右目の義眼の内部に光の流れを走らせる。


「そもそも、一般人用じゃない」


冷たくて、安定した指先が、俺の握っている手の甲を軽く叩いた。その指は恐ろしいほど冷たく、そして全く揺れていなかった。


「今、あんたは二つ間違えてる。一つ、金属片そのものを見てる。二つ、反動を怖がってる」


「怖がってない」


反射的に言い返す。


ミラが横を向いた。


目つきは、ひたすらフラットだ。


「あんたは怖がってる」彼女は言う。「二発目から、来る前に揺れを避け始めてる」


俺は、半秒だけ黙った。


……はい出ました。


この女も、めんどくさい。


そして、そのめんどくささはレオとよく似ている。


どなり合いはしないくせに、どこが図星かだけはきっちり突いてくるタイプだ。


ミラは俺の手から銃をするっと抜き取った。テーブルに食器を戻すみたいな、無駄のない動きで。片手で銃を支え、射撃ラインの前まで出る。


「よく見てな」


構えのために余計な予備動作はほとんどしない。ただ、ごく自然に銃床を肩口にはめ込む。その姿は、最初から武器と一体で生まれてきた生き物みたいだ。操作卓が再び光り、次の金属片ストームが立ち上がる。


三枚。


五枚。


七枚。


乱流、屈折、反射、漂い。


ミラが撃ったのは、四発だけだ。


ドォン。


ドォン。


ドォン。


ドォン。


どの弾も、金属片を追いかけてはいない。半歩だけ先に出て、これから金属片が通過する位置に撃ち込んでいる。風場の中で次々と白く眩しい熱熔の光が弾け、金属片が、見えない指で順番につまんで潰されたみたいに砕けて、燃える粒子となって落ちていく。


腹立つくらい、綺麗だ。


見せびらかすための綺麗さじゃない。


本気でこれを「仕事」にしてきた奴の、殺しの綺麗さだ。


彼女は銃を、また俺の胸に放り返してきた。


「分かったか」


二秒だけ黙ってから、口が勝手に動いた。


「分かった」俺は言う。「あんたが人間じゃないってこと」


ミラの口元が、ほんの少しだけ動いた。


「よろしい。じゃあ、覚えろ」


彼女は再び俺の隣に立つ。ほとんど肩線が触れそうな距離で、二ラウンド目を始めた。


今度は金属片の速度が、時速百五十まで上がる。


俺は風場を見据え、もはや一つ一つの金属片だけを追わず、まず乱流の共通した流れを見る。どこで風圧が高く、どこで浮き上がるか。どこで巻き返しが起き、どこでいきなり加速するか。めちゃくちゃに飛んでいるわけじゃない。さっきまで、俺がその言語を読めなかっただけだ。


一枚目が来る。


焦って引かない。


右側の、少し明るい乱流帯に切り込むタイミングまで待って、そこから半コマ先を狙う。


ドォン!


金属片が砕けた。


かすめたんじゃない。


ちゃんと、爆ぜた。


自分でも、コンマ何秒か虚を突かれた。


「次」ミラが間髪入れずに言う。


二枚目が飛び込んでくる。


今度は、さっきよりわずかに早く撃った。結果、早すぎた。熱熔ビームは金属片のわずか手前を空振りし、後方の防爆板にまた一つ、工業デザインっぽい焦げ跡の穴を開ける。


「せっかち」ミラが言う。


「これは勢いってやつ」


「あれは勢いじゃない。弾の無駄遣い」


三枚目。


今度は抑える。左側の乱流の切れ目に入り込むまで待ってから、撃つ。


ドォン。


命中。


四枚目。


外れ。


五枚目。


命中。


六枚目。


惜しくも外し。


七枚目。


命中。


リズムが、だんだん入ってくる。


いや、「だんだん」じゃない。


ある瞬間、唐突に「つながった」。


目の前の風、金属片、ノイズ、銃身の震え、肩の痛み、指がトリガーを引き込む圧力。それら全部が、頭の中で一列に並んだ感覚。あれにちょっと似ている。第一特別運用科で戦術判読をやっていたとき、世界全体のコントラストが一段階だけ上がる、あの感じに。ただ、今回は薬じゃなく、前にカールにぶん殴られながら理解させられたものと、ミラのこの、鬱陶しいほど正確な矯正でたどり着いた。


彼女の言うとおりだ。


追うんじゃない。


待ち伏せる。


金属片の後ろを走るんじゃない。


行き先で、先に待っている。


三枚続けて粉砕したあたりで、さすがに自分でも、これはおかしいと思い始めた。


……嘘だろ。


俺、本当に当て始めてる?


本来なら普通の学校で制服の洗い方でも悩んでるはずの年頃の可愛い少女が、今は高重力特戦キャンプの模擬暴風区に立って、呪いみたいに重い高周波熱熔銃を構えて、時速百五十以上の金属片に向けて撃ちまくって、しかも本当に命中し始めている。


聯邦って、本当に青春の無駄遣いがうまい。


そのとき、ミラがさらに速度を上げた。


180 km/h


光幕の右上にその数字が跳ね上がった瞬間、思わず悪態をつきそうになった。


「ちょっと待って、こっそり上げた——」


「こっそりじゃない」彼女は静かに言う。「あんたの目の前で、堂々と上げた」


……はいはい。


この女は、難易度を上げるのにも品がある。


暴風がさらに凶暴になった。


金属片の反射はより短く、軌跡はさらに不安定になり、風場には細かい干渉片まで混じり始めた。誰かが目の前に剃刀の刃をひとつかみ撒き散らして、「どれが本当に命取りか、ちゃんと見分けろ」と言ってるみたいだ。


一発目、空振り。


二発目も外れた。


三発目はもっと悲惨だった。ちゃんと狙ったはずなのに、反動で銃口が跳ね上がり、熱熔ビームは二枚の金属片のちょうど真ん中を、非常に礼儀正しく死神に挨拶するみたいに通り抜けた。


ミラが手を上げ、俺の肩の後ろを一発叩いた。


強くはない。


でも、正確だった。


「肩を前に押せ!」彼女が怒鳴る。「銃はあやすもんじゃない、押さえ込むもんだ!」


歯を食いしばって、肩を改めて銃床に押しつける。


四発目。


ドォン!


命中。


五発目。


六発目。


外す弾も出てきたが、本当に「喰いついて」いる弾も出てきた。百発百中なんて笑わせるレベルじゃないし、伝説の狙撃手様には程遠い。だが少なくとも、さっきみたいに武器に引きずり回されているだけの状態ではなくなった。


そして、ひときわ速くて薄い金属片が右上から切り込んできたとき、俺はほとんど考える前に、体が先に動いていた。


銃口を上げる。


前に送る。


引き金を引く。


ドォン——!


その金属片が、俺のバイザーから二メートルもない位置で、燃える細雨となって爆ぜた。


視界全体が一瞬、真っ白になる。


俺も、その場で止まった。


心拍が速い。


肩が痛い。


指先が痺れている。


でもその一瞬、俺にははっきり分かった——


今のは運じゃない。


本当に、掴んだ。


ミラが隣で、約一秒だけ黙った。


彼女にしては、それはかなり長い沈黙だった。


それから彼女は手を伸ばして、俺の銃口を押し下げた。


「以上」


俺は息を切らしながら、まだ前方のゆっくり収まっていく風場を見ていた。


「これで終わり?」


「違う」彼女は言う。「これ以上やったら、明日あんた、パーキンソン患者がネイルアートするみたいにトリガー引くことになる」


……すごい。


この女の毒舌、本当に容赦ない。


でも今は反論する気力もない。右肩がもう俺のものじゃない気がしている。銃を下ろした途端、腕全体が小型揚陸艇でも運んできたみたいに重く沈んだ。


ミラが俺をちらりと見た。


「今日は、良くはない」


「どうも」


「でも、想定より早かった」


俺は顔を上げて彼女を見た。


この一言が彼女の口から出ると、カールの「少しはマシになった」より、なぜかずっと面倒くさい。ミラはカールと違って、先に暴力で叩いてから教えるタイプじゃない。どちらかといえば狙撃スコープみたいな人間で——一度「想定より早い」と言ったなら、本当に何かを見抜いているということだ。


……面倒くさい。


専門家に不意打ちで認められる瞬間が、一番嫌いだ。妙に、調子に乗りそうになる。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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