164.コミュニティ(クラブ)バス 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
ジェスはすでに先手を打ってドアを大きく開け、顔には非常に腹立たしく、非常に期待に満ちた、今すぐこの一件を全部ゴシップ年鑑に書き留めようとしているような笑みを浮かべていた。
「どうぞどうぞ、二十二番地は貧乏ですが、しばらくの間は皇女殿下と……」
ジェスはヒルダを見た。
「……近衛隊長さんをお迎えできないほどではありませんので」
「感謝いたします」ヒルダは言った。
それだけだ。
一言も余分には言わない。
「夜分に突然お邪魔して申し訳ございません」もなければ、「急なことで大変恐縮です」もない。この近衛隊長に、「実は人間的な温かみもあります」と誤解させるような言葉は、一つも出てこなかった。
少し分かった気がした。
ヘートヴィヒがああいう人間に育ったのは、こういう人間が傍にいたからこそ、ある意味では当然なのかもしれない。
真紀が二人を迎え入れ、いつものように席を作り、温かい飲み物を用意し、場を落ち着かせた。その一連の動作は、二十二番地がすでに小規模な外交応接業務を受け付けられるようになったかのような手際の良さだった。
二人が腰を落ち着けてから、ヒルダは直接用件を話した。
「学校側の規則により、わたくしどものような武装した護衛員は校内への立ち入りが認められておりません。また、校内の生活区域への車での送迎も許可されておりません」
ヒルダの話し方は独特だった。
冷たいわけでも、硬いわけでもない。
刃を磨きすぎて、切る時に余分な摩擦音すら立てなくなった刀のようなものだ。
「つきましては、明日の開学にあたり、二十二番地の皆様の中に自家用車をお持ちの方がいらっしゃれば、殿下の送迎をお願いできればと思いまして」
話し終わると、場が約〇・五秒静まった。
それから、全員の視線が同時に私へと集まった。
あ、くそ。
お前ら全員、事前に打ち合わせたんじゃないのか。
私はソファの端に座り、手にはまだ飲み終えていないカップを持ったまま、この一列の視線に照らされ、自分が住人ではなく、最初から内定していた不運な抽選結果であるような気分になった。
ジェスが一番ひどかった。取り繕うことすら面倒くさそうに、顔全体でこう言っていた。
ほらね、運命がまたあなたに皇女を載せろと言ってるよ。
私がちょうど口を開こうとした時。
「あの……俺、手伝えます」
声は、一番奥の角から聞こえた。
全員が同時に振り返った。
Dはそこに座っていた。少し縮んで、少し遅れ気味で、でも口を開く時だけは異様に真剣な、いつものあの様子だ。ドワイト・"D"・バークリーが話に割り込むことは滅多にない。まして、聞いただけで面倒くさいと分かる仕事を自分から引き受けることなど、なおさらだ。だからDが声を上げた瞬間、私でさえ固まった。
「皇女だけじゃなくて」Dは頭をかき、座席表を計算しているような顔で続けた。「ハーヴィー、蘭、ロイ、アカリ、ジェスも、全員乗せられます」
客廳が二秒静まった。
それからジェスが一番最初に爆発した。
「D——!!宝くじでも当たったの!?」
これは非常にいい質問だった。
なぜなら、それが私のその瞬間の正直な気持ちでもあったからだ。
金銭・機械・部品・実際の積載量に関して、独自の厳格な節約哲学を持つDが突然「全員乗せられます」と言い出した時の衝撃は、ハーヴィーが突然宿舎の交流会を開くと宣言するのに近い。不可能ではないが、まず世界のどこかが壊れているのではないかと疑う。
真紀がDを見た。
「どういうこと?」
Dは説明するのが面倒くさいのか、言語のコスパが低いと判断したのか、ただ「見れば分かります」とだけ言って、裏口の方へ歩き始めた。
私たちは仕方なく後についていった。
夜の裏庭は少し冷えていた。
私のバイクはいつもの小さなスペースに静かに停まっていた。「最近おかしな人間を乗せることが多いが、少なくとも自分はまともな乗り物だ」とでも言いたげな、落ち着いた様子で。
問題は、その隣だった。
元々空いていた二区画が、体積が大きく、塗装が派手で、存在感がほぼ違反レベルの大型改造バスに丸ごと占拠されていた。
普通のバスではない。
あの代物が裏庭に停まっているだけで、誰かが間違った美的感覚と過剰な重低音文化と夜の世界のどこかの平行宇宙から持ち込んだ豪華な遺物を、二十二番地の裏庭に一気に詰め込んだかのようだった。
全員:「……」
私はその車を見て、二秒黙り、最後に正直な感想を述べた。
「これ、サイバー霊柩車みたいだ」
ジェスが即座に吹き出した。
「最高に正確すぎる!」
確かに。
外観は霊柩車で、体積は移動要塞で、配色はナイトクラブの看板と闇市の改造カタログと路上パフォーマンスの精神を一緒に煮詰めて直接かけたようだ。
一晩ここに停めておいたら、近所の住民が翌朝起きた時、「昨夜この通りで、ずいぶん格のある組の親分が亡くなったのだろうか」と考えるかもしれない。
真紀はまず実務的な視点から入った。
「D、この車は学生用駐車スペースには停められない」真紀はその怪物の周りを半周歩き、口調は穏やかだが、内容は現実の鉄拳だった。「開学後は、教棟の裏の空き地に停めて。あそこなら苦情が来にくい」
Dは頷いた。
「了解」
ヒルダは別の観点から確認した。
「殿下がご乗車の際、音響はお控えいただけますか?」
この一言が強すぎて、私は危うく笑い出すところだった。
おかしいからではない。
あまりにも的確だからだ。
この近衛隊長がこの怪物を初めて見た瞬間に、頭の中で三つのことを自動的に完了させたのが分かった。
一、これは人を乗せることができると判断した。
二、これは危険だと判断した。
三、最も危険なのは車体ではなく、車内から突然流れ出して皇女殿下の魂を揺さぶりかねない重低音である可能性が高いと判断した。
Dは少し面食らった顔をしたが、素直に答えた。
「はい」
「よろしい」ヒルダは頷いた。
この二人の一問一答は、なぜか極小規模の軍事審査のように見えた。
違いは、審査対象が兵器システムではなく、校門前でネオンモードを起動しかねない大型改造バスだというだけで。
「中に踊り場があるんだけど!?」
ジェスはいつの間にか完全に車内に乗り込んでおり、ドアの向こうから新世界を発見した興奮で叫んでいた。
「D、ナイトクラブを丸ごと詰め込んだの!?」
「違う。俺が改造したんじゃない」Dは立ったまま、少し無実を訴えるような顔で言った。「いとこにもらった」
……ああ。
あの人たちか。
頭の中に、あの日見た光景が浮かんだ。通りごと自分たちのものにしそうな雰囲気で、街区のパーティーをまるごと仕切れそうな気場を持った、あのヒップホップ兄貴たちだ。
そのうちの何人かがこの車の隣に立っていたとしても、私は違和感を覚えないだろう。むしろ、この代物は最初からそういう世界に属していたと思うだけだ。
なるほど。
だからこの車は、交通手段というより、車輪のついた価値観のように見えるわけだ。
ハーヴィーは車体に近づき、外板を指で軽く叩き、内装を覗き込み、最後にハーヴィーらしい結論を出した。
「人も乗せられるし、面倒も乗せられる」
「それって、この家の理想的な乗り物じゃないの」ロイが後ろから付け加えた。
蘭は軽く「ん」と言った。この結論には反論の余地がないという意味だろう。
私はその場に立ち、バスを見て、乗り込んで降りてこないジェスを見て、音響のリスクを真剣に評価しているヒルダを見て、傍らに立ちながら「この平民世界の奇景に驚いています」という表情を一切見せないヘートヴィヒを見て、明日の開学への期待値が、もう一段階下方修正されたと感じた。
元々、第二学期の開学で最悪の出だしは、少尉・中尉・大尉の階級を持つ私たちが校門を通る時、全校から怪物を見るような目で迎えられることだと思っていた。
だが今、自分が甘かったと分かった。
本当の最悪の出だしは、おそらくこうだ。
私たちがサイバー霊柩車に乗り込んで、踊り場付きで、音響だけは事前に禁止されたその車で、学校に乗り込む。
……くそ。
連邦が滅びないのなら、天理が滅びる。
第二学期の開学当日、早朝から、鉑橋街二十二番地の裏庭はもう普通のコミュニティには似つかわしくない様子になっていた。
もっと正確に言えば、Dの大型改造バスがそこに停まっている瞬間から、この場所は「普通」と完全に縁を切っていた。
空はまだ完全には明けておらず、裏庭の空気は冷たく湿っていて、地面には薄い夜露が積もっていた。私のバイクはいつもの小さなスペースに停まったまま、清潔で、普通で、控えめで、体裁を保とうとしている文明人のようだった。隣のあの代物は――
違う。
あれは、ナイトクラブと霊柩車と地下改造文化と、現実を受け入れることを拒んだ青春の衝動を、全部同じシャーシに溶接して、車輪まで取り付けたような存在だ。
そして今、九島真紀がその怪物の前に立ち、両手に大きな塊を抱えていた。
次の瞬間、真紀は手を振り上げ、その塊を車の屋根に叩きつけた。
バサッ。
塊が広がり、車体の半分を覆った。金属の野獣に、無理やり樹皮を被せたように。
Dは横に立ち、顔を上げてそれを見ながら、ゆっくりと眉をひそめた。
「これ、何?」
真紀はDをろくに見もしなかった。
「偽装網」
「分かってる」Dが珍しく即座に追いかけた。「なぜ、って聞いてる」
真紀はようやく振り返り、ごく当たり前の生活常識を訂正するような顔をした。
「あなたは授業に行くのよ」真紀は言った。「朝から走るナイトクラブを街区に繰り出すんじゃなくて」
ジェスは昨日発見した車内の踊り場をしゃがみこんで点検していたが、この一言を聞いて、そのままドアに倒れ込みそうになるほど笑った。
「走るナイトクラブ、ははは——」
「ナイトクラブじゃない」Dはあの重みのある顔で、自分の車のために最後の弁護をした。「バスだ」
私は横に立ち、ヘルメットを抱えながら、偽装網を半分かぶせられてかえって何か大型の非合法物件のように見えるその怪物を眺め、思わず一言添えた。
「今は、森から逃げてきたサイバー霊柩車に見える」
Dは二秒沈黙した。
「……それでもバスだ」
「そうね」真紀はさっぱりと締めた。「バスでも霊柩車でも踊り場付き集団社会的死をもたらす装置でも、今日これを学校に乗り込ませるなら、教職員の大半が来る前に車を隠しておかないといけない」
「隠す?」ジェスが車のドアから頭を出した。「つまり今日、私たちは登校するんじゃなくて、敵地に潜入するの?」
「だいたいそんなもの」ハーヴィーが後ろから冷静に補足した。「ただし敵は風紀委員会と全教職員の審美眼だ」
これが正確すぎて、誰も反論しなかった。
真紀は偽装網を引き続き広げながら、指示を出し続けた。
「D、もう一度言う。入校したら学生用スペースには停めないで」
「じゃあ、どこに?」
「教棟の裏の空き地」真紀は言った。「あそこは死角が多くて、先生はたいてい歩いて来ないし、事務員もわざわざ巡回しない」
ジェスがすかさず手を挙げた。
「質問があります」
「ない方がいい」
「見つかったら?」
真紀は偽装網の最後の角を固定し、顔を上げてジェスを一瞥した。
「学校が新しく導入した機動型災害避難車両だと言う」
「その理由、ひどすぎない?」
「連邦はずっとひどい理由で行政手続きを乗り切ってきた。入学してからまだ慣れてないの?」
……それもそうだ。
二十二番地の朝は、時々本当に野戦指揮所に近い。
専門性があるからではない。人が多くて、問題が密集していて、予算が少ないと、多くのことが自然と「今日を乗り切ってから考えよう」という戦地感を持ち始めるからだ。
真紀とDが偽装網を処理している間に、向かいのドアも開いた。
ヘートヴィヒが出てきた。後ろにはヒルダが続いていた。
ヘートヴィヒは今日、正式な連邦軍校制服に着替えていた。深色の立て衿、ぴしりと押さえられた肩のライン、過剰なほど清潔に収まったウエスト、そして礼節のある冷たさを持つあの顔。全体として、授業に行くというより、どこかの不運な部署を接収しに来るように見えた。
ヒルダについては――
ヒルダは相変わらず、ヒルダだった。
静かで、直立していて、無駄口がない。規格化された後、人型に押し込まれた一丁の銃のようだった。
ヒルダがあの車を見た瞬間、足が明らかに半秒だけ止まった。
ほんの半秒だ。
だが、それで十分だった。
この近衛隊長でさえ、目の前の代物が常識の範囲を超えていると認識した証拠だからだ。
「これが、本日の送迎車両ですか?」ヒルダが尋ねた。
Dは頷いた。
「はい」
ヒルダは偽装網を一度見上げ、それから半分むき出しになった金属の塗装に目をやった。まるで、この外交的事故にまだ救済の余地があるかどうかを見極めているようだった。
最後に、ヒルダは極めて実務的に、こう一言だけ告げた。
「重ねて申し上げます。殿下がご乗車の際、音響は使用禁止です」
私は危うく笑い出しそうになった。
Dは素直だった。
「分かりました」
「よろしい」
ヒルダのその頷き方を見て、私は一瞬、これが登校前の見送りではなく、何かの装備検収ではないかと思った。
ヘートヴィヒは傍らに立ち、あのバスと偽装網にしばらく視線を留めていたが、表情にはほとんど動きがなかった。
これが恐ろしい。
普通の人間なら、この光景を見れば、少なくとも「これから私はこれに乗るのか」という動揺くらいは見せるはずだ。
ヘートヴィヒは見せなかった。
彼女はただ、ひどく平然と現実を受け入れていた。帝国第三皇女が偽装網を被せられ、踊り場を内蔵し、おそらく重低音スピーカーまで潜んでいるかもしれない大型改造バスに乗って連邦士官学校へ通うことが、文明社会が正常に発展した結果であるかのように。
この女は本当に強い。
感心すべきか、恐れるべきか、分からなくなるほどに。
ロイは車の横に立ち、両手をポケットに突っ込んで、非常に誠実な口調で評した。
「これ、学校に乗り込んだら、犯行予告だと思われるんじゃないか」
「思われない」蘭が横で、ひどく冷静に訂正した。「まず宣伝カーだと思われて、それから犯行予告だと思われる」
この二人が掛け合いをする時は、いつも過剰なほど息が合っている。
私はロイと蘭から視線を引き剥がし、ひたすらバイクのハンドル周りを点検しているふりをした。
生きていれば、こういうこともある。
すべての問題を解決する必要はない。
同じ朝に、あまりに多くの秘密を同時に処理しようとしないことだけ覚えればいい。
真紀はその間に車両の隠蔽作業を仕上げ、振り返って全員を一度見渡した。
「そろそろね。Dが先にみんなを乗せて、予定通りのルートで入って」
「了解」Dは頷いた。
「入校したらまず車を隠して、それから分散して降車して。一気に全員湧いて出てこないで。サーカスみたいになるから」
「今の一言、サーカスへの侮辱じゃない?」ジェスが言った。
「私はサーカスの名誉を守ってるの」真紀が答えた。
私はたまらず、小さく笑った。
本当に一瞬だけ。
ごく短く。
でも、笑った。
この光景があまりにも荒唐無稽だったからだ。
荒唐無稽すぎて、開学前の苛立ちが半層ほど薄まった。
Dが座席の割り振りを始めた。ハーヴィー、蘭、ロイ、アカリ、ジェス、それにヘートヴィヒを加えても、この巨大な怪物には余裕で収まる。ヒルダは傍らに立ち、武装護送品の引き渡しに近い眼差しで、ヘートヴィヒが無事に乗車するのを確認した。
ヘートヴィヒは乗り込む前に、振り返って私を見た。
「星野中尉は一緒に行かないの?」
私がまだ答えないうちに、真紀はすでに私の横まで来ていた。
私はちょうどヘルメットを頭に被せようとしていたが、視界の端に、真紀が私のバイクの横で立ち止まっているのが見えた。
私は少し戸惑った。
「乗らないの?」
真紀はごく小さく息を吐いた。
その短く抑えられたため息には、内容が豊富に詰まっていた。
翻訳すれば、たぶんこうだ。
――この世界にはまだ、私たちにケチをつけることを専門にしている人間が一人いるって、忘れてない?
「誰かが二階堂・フレイヤの相手をしないといけないから」真紀は言った。
ヘルメットのバックルを留める手が止まった。
ああ、そうだ。
風紀委員長がまだいることを、危うく忘れていた。
しかも生きているだけでなく、おそらく非常に元気で、開学初日から校門の前に立ち、校則という皮を被った低気圧災害のように、目に付くものを一つずつ記録する準備を整えているに違いない。
例えば、偽装網。
例えば、走るナイトクラブ。
例えば、私たち。
私は真紀を見た。
今日の真紀は、非常に整っていた。意図的なほどに。襟元、肩のライン、袖のボタン、そして新しく受け継いだ生徒会の重み。すべてが清潔に収まっていた。それは身だしなみではなく、備戦だった。
Dの車は、みんなを密輸する担当。
私は、自分の足で生還する担当。
そして真紀は、一足先に校門へ行き、噛みついてくるものを受け止める担当だ。
……くそ。
第二学期がまだ始まってもいないのに、私たちの役割分担が、なぜ敵地潜入作戦みたいに聞こえるんだ。
私はヘルメットをしっかり被り、エンジンをかけた。
バスの方もゆっくりとエンジンランプを灯した。ようやく起き上がる決心をして、ついでに教職員を何人か驚かせに行く巨大な怪物のようだった。
早朝の風はまだ冷たかった。
空はようやく灰白色から明るみへと変わり始めたところだった。
バイクの横に立つ真紀を見ながら、今日の開学は、どの部分をとっても常識通りに進んでくれる気がしないと、私はただ確信していた。
バスが先に出発した。
私と真紀は、後に残った。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




