162.星野式ナンパ術 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
外から軽いノック。あの女性職員が、遠慮がちに声をかけてきた。
ヘートヴィヒは私を一瞥してから、口を開いた。
「もう大丈夫よ」
私はようやく整った彼女の連邦下院制服を見て、ひどく奇妙な感覚を覚えた。
制度と外交文書の中にしか存在しなかったものが、突然現実に引き込まれたような感じだ。
「帝国第三皇女が連邦士官学校に入学する」という報告書の一文ではなく、もっと具体的な何かとして。
彼女は本当に来る。
本当に下院に入る。
本当にこの制服を着て、あの胃が痛くなるような学院の中を歩く。
そして私はたった今、その襟を自分の手で直した。
そう思った瞬間、私の今後の平穏な人生は、正式に不治と宣告されたと確信した。
ヘートヴィヒは識別帯を留め、普通の授業に出かける前のような落ち着いた口調で言った。
「行きましょう、星野中尉」
私は目を閉じた。
「先に言っておく。学院に着いたら、他の人の前でこのことは言わないで」
「どのことを?」
「更衣室でのこと」
「分かった」
彼女は少し間を置いて、最後の一刺しを入れた。
「では、これは星野中尉と私だけの秘密にする」
私はその場で二秒、黙った。
そして、その瞬間の自分の表情が、きっと相当なものだったと確信した。
ジェスがここにいたら、今夜の宿舎全体が、私が司令部でどう一度死んだかを知ることになっただろう。
「……黙って」
ヘートヴィヒは黙らなかった。
だが彼女は珍しく、わずかに笑った。
はっきりとした笑みではない。
口角がほんのわずかに動いただけ。氷の表面にようやく細い光の筋が入ったような、そういうものだった。
それから彼女は先に更衣室を出た。
私はその背中を見送り、自分の前に待ち受ける厄介事が増えただけではないと思った。
制服を着て、きちんと整えて、自分の足で私の方へ歩いてきた厄介事だ。
……くそ。
連邦、帝国、ヴィスラン、シュタイナー、九島、ジェス、健康的な発育、そして今度は、至って真剣な口調で人を追い詰めることを専門とする第三皇女まで。
一階の売店に着いた時、私の最初の感想は「ここは便利だな」ではなかった。
――連邦はよくこういう場所を「サービス施設」と呼べるものだ。
売店のガラスケースの左側は、連邦公式ライセンスのグッズという名のゴミで埋まっていた。
本当に、ゴミだ。
軍章入りマグカップ、艦影入りクリアファイル、校章入りアクリルキーホルダー、挙げ句には某連邦名将のミニスタンドまである。
その顔の印刷が不自然に若く、私は合理的にこう疑った。これは軍事プロパガンダではなく、財務部門が年間赤字を埋めるために歴史上の人物を掘り起こして再販しているのではないか、と。
右側は官給品の受け取りカウンターだ。
その列を一目見た瞬間、胃が何かを思い出した。
官給ベルト、官給靴下、官給インナー、官給作業手袋、官給文具セット、官給端末保護ケース――すべてが整然と並び、国家公認の低品質な罠のように、次の新入生が踏み込むのを静かに待っていた。
ヘートヴィヒは私の横に立っていた。着替えたばかりの連邦制服は、びしりと決まっていた。
帝国のあれを着ていた時は、観閲台で誰を明日銃殺するか決めそうな人間に見えた。
連邦のこれに換えると、会議の場で制度全体の欠陥を冷静に指摘した上で、報告書を突き返して書き直させるような人間に見えた。
どちらにせよ、関わりたくない。
前者は死ぬのが怖く、後者は死にたくなる。
私は受け取ったばかりの書籍リストを彼女に渡した。
「これが書籍リスト。時間を見て購入するか、端末にダウンロードして」
ヘートヴィヒはうつむいて一瞥した。表情に変化はなかった。
そのリストには科目名がびっしりと並んでいた。戦術理論、近代星域史、連邦軍制概論、戦闘艦基礎構造、超光速航行安全規範――見るだけで、学校の教育方針が連邦の体質とまったく同じだと分かる。
まず書類と制度の海で溺れさせ、生き残った者が授業を受ける。
私は少し身を寄せ、声を落とした。
「ここで官給品を受け取るのはお勧めしない」
ヘートヴィヒが書籍リストから目を上げた。
「なぜ?」
「二級品だから」私は言った。
その口調は、天気の話をするように平坦だった。
これは愚痴ではない。下院での生活における基礎常識だ。
ここの官給品を正規の補給品として使い続けた者は、一週間以内に、国家機器が個人の生命に向ける最も素朴な悪意というものを理解することになる。
ヘートヴィヒはわずかに意外そうだった。
「二級品?」
「そう。名目上は官給品だが、実態は『しばらく使い潰されなければそれでいい』という規格」私は無表情に続けた。「もし官給品に興味があるなら、学校の向かいの通りで受け取ることをお勧めする。あそこも官給品だが、品質がここよりずっとマシ。少なくとも靴下は三回洗っても自分の意志を持ち始めないし、ベルトのバックルも走ってる途中で連邦からの離脱を宣言しない」
ヘートヴィヒは静かに私を見てから、ごく小さく言った。
「詳しいのね、中尉」
「詳しくない」私は言った。「痛い目を見ただけ」
もっと正確に言えば、何度も騙されて、縫い目と素材と包装の匂いだけで、この荷物が「一学期持つ」のか「一週間後に街の軍用品店の前で涙を流しながら私財を投じることになる」のかを判断できるようになっただけだ。
連邦でものを教えてくれるのは、先生ではない。
ダメな装備だ。
カウンターの後ろにいた男性職員は、書類を整理していたが、私の「二級品」という言葉を聞いた瞬間、手が明らかに震えた。
上等だ。基本的な良識は持っているらしい。
彼は顔を上げて私たちを一瞥し、ヘートヴィヒの顔と制服の上で視線が半秒止まり、それから非常に空気を読んで目を伏せ、自分はただ呼吸する配給機械に過ぎないというふりを再開した。
これが連邦の公務体制の優れたところだ。
いいものを渡してもらえるとは限らないが、生き残ろうとする意志だけは、たいてい強い。
私は時間を確認した。
そろそろだ。
「どうやって帰る?」私はヘートヴィヒに向いた。
彼女は書籍リストを折り畳んでしまいながら、自分には関係のないことを答えるような口調で言った。
「迎えが来る」
私は心の中で、非常に幸福なため息をついた。
よかった。
ようやく。
ようやく一つ、成人した人間の論理で動く話が出てきた。
連邦がどれだけ人の命と感情で遊ぶのが好きでも、帝国第三皇女に新しい制服を着させて古い制服の入ったビニール袋を抱えさせ、統合作戦司令部の前でタクシーを拾わせるほど非常識ではないはずだ。
もしそれが本当に起きたら、私はこの文明がどうやって今の技術水準にまで達したのか、本気で疑い始めるだろう。
私は頷いた。
「それならよかった」
ヘートヴィヒも軽く頷いた。
「今日はお手数をおかけしたわ、星野中尉」
……この女は、こういう真剣な口調で礼を言うたびに、私がちょっとした手伝いをしたのではなく、何か奇妙な外交儀式に強制参加させられたような気分にさせるのを、分かっているんだろうか。
「大したことじゃない」私は視線を逸らした。「これからの方が大変でしょ」
彼女は私を見て、何か言いかけて、最後には小さく「ええ」とだけ言った。
なぜかその一言が、少し引っかかった。
腹が立つわけではない。
ただ、彼女がたった一音節を返しただけなのに、私がその半秒後もそれを考えているような、余計な引っかかり方だった。
鬱陶しい。
別れを告げてから、私は地下駐車場へと向かった。
理屈の上では、ここで話は終わりのはずだった。
皇女殿下には連邦が手配した住居があり、迎えが来て、制服があり、書籍リストがあり、未来があり、私には関係のない厄介事の一式がある。私はさっさとバイクで帰り、今日のこの常識の限界を超えた情報量を全部夜風に放り投げ、「普通の士官学校生活」という言葉で自分の人生を要約できるふりを続けるべきだ。
理屈の上では。
問題は、バイクを走らせながら、何かが引っかかり始めたことだ。
おかしい。
何かがまずいという意味ではない。
心の中に、ごく細い魚の骨が刺さったような感じだ。痛くはないが、飲み込めない。
もう引き渡しは終わった。迎えが来ると言っていた。連邦がどれだけ人の感情を玩具にするのが好きでも、さすがに最低限の一線はあるはずで――
……そうだ、分かってる。
今の最後の前提、自分でも全然説得力がないと思ってる。
私は地下駐車場の出口で止まり、前方の道路を見つめた。
「……くそ」
小声で呟いてから、私はひどく意気地なく、ハンドルを切って、統合作戦司令部の正面へと引き返した。
案の定だった。
というより、こういう時に予想が外れたら、私はむしろ怖い。
ヘートヴィヒはまだそこにいた。
司令部正面の灰白色の階段の端で、帝国の制服が入ったビニール袋を抱え、着替えたばかりの連邦制服を着て、まっすぐに立っていた。
その姿勢があまりにも端正で、横の旗竿を抜いて儀仗隊と入れ替えても、まったく違和感がないだろうと思えるほどだった。
そして最も荒唐無稽なのは――彼女は全然、放置されているようには見えないことだ。
焦っておらず、不機嫌でもなく、何かを特別待っているわけでもない。
ただそこに立っていて、世界が二十分遅れて迎えに来ることが、この世界の当然の恥であるかのように、平然としていた。
私はバイクを彼女の横に停め、ヘルメットを外し、わざとひどく軽薄な口調で声をかけた。
「よう、お嬢さん。一人? ちょっとドライブでもどう?」
その台詞を言い終えた瞬間、私は心の中で自分に平手打ちを一発入れた。
星野シモ、あんたいくつだ。
司令部で頭でも打ったか。三流の路上ナンパ師の真似をして、今何をやってるつもりだ。
はい、来い。
ここからの展開は、かなり明確だ。
高貴な皇女殿下はあの青い目で私を冷たく見つめ、「あなたを見損なった」という表情を浮かべ、高らかに頭を背けて、この低俗な誘いを断る。
これが筋だ。
階級と礼儀と、まともな人間の社交的論理に則った展開だ。
ヘートヴィヒは私を一瞥した。
そして言った。
「お願いするわ」
次の瞬間、彼女はあの袋を抱えたまま、さっと後ろに乗ってきた。
私は固まった。
……待って。
このシナリオは、そういう書き方じゃないはずだ。
まず少し不機嫌になるんじゃないのか。
眉の一本でも動かして、場を冷やして、私に自分が今どれだけ低俗だったかを反省させるんじゃないのか。
なんで何もなく乗ってきたんだ。
これじゃあ、私が本当に路上でナンパに成功したみたいじゃないか。
これの方がずっとまずくないか。
「……これを被って」
私は咳払いをし、フロントポーチから予備のヘルメットを取り出して渡した。
手を伸ばした瞬間、何かが胸を刺した。
くそ。
これは、真紀のために買ったやつだ。
ロマンチックな理由ではない。
少なくとも、最初はそう自分に言い聞かせていた。
二人で乗る時のために予備があれば便利だし、鉑橋街のあの辺りは路面が悪くて、急に誰かを乗せる時にヘルメットがないと面倒で――
そう、もちろん。
全部、実用的な判断だ。
実用的すぎて、今自分の手でそれを他の女に渡しながら、一瞬それを引っ込めたくなっていることも、今日の午後ごと統合作戦司令部ごと全部爆破したくなっていることも、全部なかったことにしなければならない。
ヘートヴィヒはごく自然にそれを受け取り、動作は迷いなく、余計なことも聞かず、「あなた、こういうものまで用意してたの」という、人を殺しにくるような表情も見せなかった。
ただ被った。
それだけで、さっき正面玄関に立っていた時より、もう少し荒唐無稽になった。
帝国第三皇女。連邦士官学校の新入生。下院の予備役。連邦の制服を着て。帝国の旧軍服が入ったビニール袋を抱えて。私のバイクの後ろに座って。頭には、本来九島真紀のために買ったヘルメットを被って。
これが運命でないなら、運命はもう失業していい。
エンジンをかけ、少し我慢してから、口を開いた。
「どのホテル?」
「ホテルじゃないわ」ヘートヴィヒは後ろから答えた。「貴国の政府が住居を用意してくれたの」
「そう」私はナビを起動した。「住所は?」
彼女は平然と答えた。
「鉑橋街二十六番地」
私は危うく、統合作戦司令部の正面玄関の花壇に人ごと突っ込むところだった。
「……え?」
風が耳を過ぎていったが、今のはおそらく風ではなく、私の脳内で何かの弦が一本切れた音だった。
鉑橋街二十六番地?
私はハンドルを握ったまま、二秒間黙った。
それからゆっくりと少し首を傾け、聞き間違えていないか確認するように言った。
「もう一度言って」
「鉑橋街二十六番地」ヘートヴィヒは非常に協力的に繰り返した。声は、感情のないナビシステムが住所を読み上げているのと同じくらい安定していた。「何か問題があるの?」
問題があるかって。
大ありだ。
鉑橋街二十六番地。
ホテルではない。
連邦が手配した高級外賓用マンションでもない。
それは――
私の家の向かいだ。
くそ。
やっぱりそうか。
この女が私の人生を短期間だけ通り過ぎるはずがないと、最初から分かっていた。
連邦がこんな優しい配置をするはずがないと、最初から分かっていた。
今日のこのすべて、ヴィスランのオフィスから始まり、書籍リスト、帝国の旧軍服の入ったビニール袋、真紀のために買った予備のヘルメットに至るまで、全部が終わりではなかった。
これは前奏だった。
私は深く息を吸い込み、それから観念してハンドルを鉑橋街の方向へと向けた。
後ろのヘートヴィヒは安定して座っていた。初めてバイクの後ろに乗ったのではなく、最初からそこに座ることになっていたと知っていたかのように。
私は前方の道路を見つめ、今日の夕日が連邦政府式の悪意を帯びているように見えると思った。
これからは、向かいも陥落した。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




