161.火中の栗 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
その時、実験室の扉が再び開いた。
扉がスライドすると、冷たい気流が外の廊下の白い光と一緒に流れ込んできた。顔を出したのは、長身で痩せ型の男性将校だった。年齢は四十前後。制服は極めて清潔に着こなされ、肩のラインも襟元も、規範図鑑から抜け出てきたように整っていた。
こういう人間が現れると、空気は自然と「研究室で変人たちが変なことをしている」から「さて、これから誰かが変なことを制度の中に組み込み直す時間だ」へと変わる。
「おお、よかった。揃っているな」
やって来た男の視線が、素早く実験室を掃いた。
まずシュタイナー。
次に私。
そしてヘートヴィヒ。
最後に、その目は現在の配置の上にほんの一瞬だけ止まった。この組み合わせがどこに置かれようと、十分以上平穏に機能するとは思えないと、彼も理解しているかのようだった。
「君たち二人」と彼は言った。「今から私と一緒にオフィスへ来たまえ」
私はその場に立ち尽くし、彼を一秒見つめた。
上等だ。
メンバーが揃った。
来るべき者、来てはいけない者、永遠に同じ空間に存在しない方がいい者たちが、今すべてここにいる。
私は突然、非常に明確な予感を覚えた。
今日のこの後の内容は、おそらく「シュタイナーが私の異常を分析する」という単純なものでは済まないだろう。
そして一番恐ろしいのは――
私がそれに、少しも驚いていないということだ。
「久しぶりだな」
ヴィスラン大佐の第一声は、これだった。
しかも、旧友を懐かしむような「久しぶり」ではない。
ドアを開けたら、かつて自分を挽肉機に放り込んだ人間が座っていて、相手が何事もなかったかのように挨拶してきた時の、あの「久しぶり」だ。
「君を学院に入れたのは、正解だったようだな、星野」
誓って言うが、その時の私の表情は、そのまま化学兵器として使えるほど険悪だったはずだ。
もし連邦が今、密閉空間で役人の幸福度を急速に低下させる装備を必要としているなら、私の顔は国防の空白を埋めるのにぴったりだろう。
なぜなら、私は今、本気で彼を殴りたかったからだ。
「私は便利なマスターキーじゃありませんよ」
私は無表情で答えた。冷凍庫からこじ開けてきたような硬い声で。
マスターキー?
冗談じゃない。マスターキーをまず高強度の疲労テストにかけ、学院に放り込み、次にシュタイナー博士に引き渡して吐きそうになるまで薬を注射させ、ついでにその鍵が勝手に歪まないか観察する人間がどこにいる?
それはマスターキーとは呼ばない。
耐久消耗品と呼ぶのだ。
しかも、公的機関が一番好きなタイプだ。壊れなければ使い続け、壊れたら報告書を書く。
私は忘れていない。危うくその場で昇天しそうになった、あの過酷な訓練を。
博士のあの忌々しい薬物実験を、さらに忘れていない。
あの感覚は言葉にするのが難しい。
強いて言えば、「これは科学のためだ」と言いながら、私の身体を未承認の危険な草案扱いし、空白があれば手当たり次第に何かを書き込んでいくようなものだ。
だがヴィスラン大佐は、私の顔に浮かぶ殺意などまったく見えなかったかのように、軽く手を挙げただけだった。
「順を追って話そう」
彼の口調は腹立たしいほど平穏だった。他人の人生を左右しているのではなく、机の上の書類を整理しているかのように。
そして、彼は別の方向へ向き直った。
「まず、連邦政府を代表して、あなたを歓迎いたします、第三皇女殿下」
ヘートヴィヒは軽く「ええ」とだけ応えた。
その声は極めて短く、返事と呼べるかどうかも怪しいほどだった。
だがなぜか、私にはその半分くらいが「人間の言葉が話せるのね」という意味に聞こえた。
さすがは皇女だ。
鼻音一つで、応接室の空気に階級の差を切り取ることができる人間もいるのだ。
「入学手続きにつきましては、すでに完了しております。制服は後ほど一階で――」
ヴィスラン大佐は言いかけて、ヘートヴィヒを一瞥した。目の前の人物が普通の転校生ではなく、ビル一棟分の行政プロセスを自動的に直立不動させる第三皇女であることを、ようやく思い出したかのように。
「……やはり、こちらへお持ちさせましょう」
「ちょっと待って」
私はほとんど反射的に口を開いていた。
「彼女が士官学校に通う? 何ですかそれ。何かの体制ジョークですか?」
本当に我慢できなかった。
皇女を差別しているわけでも、帝国にステレオタイプな偏見を抱いているわけでもない――
いや、抱いている。かなりたくさん。
だが、この事態そのものが、連邦の上層部が会議で酸欠になり、突然机を叩いて「いっそ帝国の皇女を士官学校に放り込んで、奇跡が起きるか見てみよう」と言い出したかのように聞こえたからだ。
もちろん、奇跡が起きる可能性はある。
例えば、私がショックのあまりその場で呼吸を停止するとか。
「銀河帝国には士官学校がないんですか?」私は尋ねた。
「あるわよ」
ヘートヴィヒはあっさりと答えた。相変わらず、歯痒くなるほど泰然自若とした態度で。
「でも、私は数年間士官学校に通って、ナイフとフォークの使い方のマナーしか学べないような真似はしたくないのよ」
私は危うく吹き出しそうになった。
いや、今の台詞は本当にえげつない。
私でさえ帝国軍のために半秒間黙祷を捧げたくなるほどに。
帝国軍の資質に問題があることは私たちだけでなく、帝国の皇女本人も知っていたらしい。
しかも、開口一番の挨拶に使えるほどはっきりと。
以前シュタイナー博士が言っていたように、銀河帝国のテクノロジーは確かに世界一だ。
そうでなければ、ホーエンツォレルンのような、狂気じみた規模の超巨大人工天体要塞など造れるはずがない。
問題は、テクノロジーはテクノロジーであり、軍事的素養は軍事的素養だということだ。
前者は資源、工業、学術、そして何百年、何千年という技術の蓄積でどうにかなる。
後者はそうはいかない。
後者が体制と衝突すると、非常に高価で、非常に華麗で、そして非常に肝心な時に味方ごと吹き飛ばしやすい代物に育ちがちなのだ。
なぜなら、連邦にはなく、帝国にはあるもの。
貴族だ。
軍権と貴族制が衝突すれば、多くのことが歪み始める。
命令は不純になり、服従には血統が混ざり、責任は家柄に負け、戦場での生死は一族の面子のための供物となる。
それはさておき。
目の前の第三皇女殿下を見て、私の心には非常に素朴で、非常に正直で、ちっとも優雅ではない感想が一つだけ浮かんでいた。
――この女、本当に恐ろしい。
恐ろしいのは彼女の身分ではない。
恐ろしいのは、ここがどういう場所か分かっていながら、自ら飛び込んできたことだ。
これは強がりではない。
高度な自己投擲に近い。
狼の巣がどこにあるか知っていながら、自らドアを開けて中に入り、ついでに内側から鍵をかけるようなものだ。
「連邦は本気なんですか?」
私はヴィスラン大佐を見た。その口調に混じる疑念を隠す気すらなかった。
「私たちは花柄のハンカチを持って公園にピクニックに行くわけじゃないんですよ。いつか本当に帝国軍と正面からぶつかる時が来たとして、味方に背後から刺されるのだけはごめんです」
ヘートヴィヒが私の方を向いた。
彼女の視線は真っ直ぐで、怒っておらず、私に反論する気もないようだった。それは反論されるより厄介だ。なぜなら、彼女は私と意地を張り合っているのではなく、本気で答えようとしているからだ。
「星野中尉」
彼女は過剰なほど端正な口調で私を呼んだ。一瞬、この部屋にもう一人星野がいるんじゃないかと振り返りたくなったほどだ。
「覚悟はできているわ」
……終わった。
こういう人間が一番厄介だ。
ただのワガママで、幼稚で、威張り散らすだけの皇族なら、安心して嘲笑できる。
だが彼女は違う。
自らを火の海に投じる前に、燃焼曲線を真面目に確認するタイプの人間だ。
私は未来に不安を感じた。
非常に不安だ。
これからの数ヶ月、私の寿命がこの皇女殿下によって極めて優雅な方法でじわじわと削られていくのが目に見えるほどに。
ヴィスラン大佐がその時、言葉を継いだ。
「ただ、あなたが上院に入るか下院に入るかについては……」
彼は少し言葉を切り、水温を確かめるような平穏な口調で言った。
「政府はまだ最終決定を下しておりません」
私の頭の中で即座に警報が鳴った。
不味い。
非常に不味い。
こういう質問は地雷と同じだ。一番危険なのは音が鳴るかどうかではなく、踏んだ後に初めて、自分が何を踏んだかに気づくことだ。
案の定、ヴィスランの次の言葉が飛んできた。
「星野君は上院だったかな、それとも下院?」
「下院です」
言った瞬間、後悔した。
普通の「後悔」ではない。
言葉が口から出た瞬間、魂が横でしゃがみ込んで頭を抱え、自分の遺書を書き始めるような後悔だ。
ヘートヴィヒはほとんど間を置かなかった。
「ヴィスラン大佐、では私は下院へ行くわ」
私はその場で自分の頬を二発張り飛ばしたくなった。
いや、星野シモ、あんた一体何やってるの?
口が早いのか、脳が死んでるのか?
向こうがどこかと聞くから、馬鹿正直に答えて、結果がこれだ。未来に第三皇女というお荷物が一つ追加された。自分の人生が平穏すぎるからって、自ら高出力の不安定要素を追加したいのか?
ヴィスラン大佐が私に向けてこんな視線を投げかけるのさえ見えた。
――君には心から同情するが、私は君を救うつもりはない。
そして彼は、極めて自然に頷いた。
「では、そのように手配しましょう」
私は危うく立ち上がって抗議しそうになった。
だがその暇もなく、私の今後の学園エコシステムに影響を与える重大事故が、「じゃあ今日のランチはあそこにしよう」くらいの軽い口調で決定されるのを、ただ見ていることしかできなかった。
続いて彼は、ヘートヴィヒに外で待つように頼んだ。
皇女殿下は特に何も聞かず、立ち上がり、振り返り、部屋を出た。
ドアが閉まった時、部屋の中から目に見えない圧力が一層消えたような気がしたが、奇妙なことに、私は少しも楽にならなかった。
なぜなら、ついに私の番が回ってきたと分かっていたからだ。
ヴィスラン大佐が視線を戻した。
「さて、君の問題について話そう」
おめでとう。
統合作戦司令部に入って一時間二十五分後、国家機関はようやく私という当事者を処理することに決めたらしい。
私は心からこの国の行政効率に拍手を送りたかった。
ただ、今は両手とも誰かの首を絞めるのに使いたかったので、心の中で象徴的に二回手を叩くに留めた。
ヴィスラン大佐は私の不機嫌な顔など意に介さず、単刀直入に切り出した。
「君の身体の問題は、自然現象だ。死にかけているわけでも、遺伝子変異でもない」
私は眉をひそめて彼を見た。
自然現象。
よくもまあ言えたものだ。
もし連邦政府がいつか、市街地に隕石が落ちることを自然現象と呼んだとしても、私はたぶん驚かないだろう。
「ただ、この件は二つの学問分野が絡んでいる」
「物理学と医学だ」
彼は報告書の要約を読み上げるように淡々と言った。
「医学的な観点から言えば、比較的単純だ。以前博士が君に投与した実験薬の残留効果と副作用が消えつつあるということ。これが一つ目だ」
私の顔色はさらに悪くなった。
なるほど。
つまり、以前私の身体を滅茶苦茶にしたあれこれが、ようやく乱暴を働くのをやめたということだ。
家を半分爆破しておいて、肩を叩きながら「心配するな、爆発はもう止まった」と言われているようなものだ。
なんて安心できる言葉だろう。
机の上のペンを誰かの頭に突き刺したくなるくらい安心した。
「二つ目は」ヴィスラン大佐は続けた。「雪風がうしかい座ボイドから連続超光速航行を行って帰還した際、君にもたらした物理的変化の一部だ」
私は二秒沈黙した。
……よし、今度は物理学が私を殴りに来たか。
今の時代、生きるのも本当に大変だ。
士官学校に気をつけ、博士に気をつけ、帝国に気をつけ、自分の減らず口に気をつけ、その上、宇宙そのものがついでに何かしてこないかまで気をつけなければならないなんて。
「これには一般相対性理論的重力生体効果が関係している」
ヴィスラン大佐はそこまで言って、ご丁寧に一言付け加えた。
「疑問があるなら、関連文献や事例を閲覧するといい」
「あるいはアインシュタインを呪うか、ですね」
私は力なく言った。
その言葉を口にした後、私は自分が本当に進歩したと実感した。
以前は生きている人間しか罵れなかったが、今では死人と物理学者までまとめて処理できるようになった。
文明は確かに人類を成長させるらしい。
とにかく、公式見解はこうだ――
健康的な発育。
本当に恐れ入る。
薬物残留、副作用の消退、連続超光速航行、生物学的効果、重力の影響といった一連の事象を、最終的にたった四文字に濃縮したのだ。健康的な発育、と。
艦砲射撃で半日爆撃しておいて、報告書にはこう書くようなものだ。
――局地的にやや大きな環境音が発生した模様。
「博士にさらに詳しい検査を依頼したいのなら、反対はしないが」
「いえ、結構です」
私は考える間も与えず、即座に断った。
冗談じゃない。
シュタイナー博士に検査させる?
あんな人間に検査させても、最後には私が安心するのではなく、彼が喜んで終わるのがオチだ。
私はもう、はっきりと分かっていることがある。
この世界には、「緊張しなくていい」と言う人間が二種類いる。
一つは、あなたを落ち着かせるために言う人間。
もう一つは、この後もっと恐ろしいことをするために言う人間だ。
シュタイナー博士が後者であることは、疑いようがない。
「最後に一つ、君の身分についてだ」
ヴィスラン大佐は引き出しから新しい学生証と、ボタンのような形をした二つの物を取り出した。
その二つを見た瞬間、私は嫌な予感を覚えた。
これまでの人生で十分すぎるほど経験してきた。小さくて、たいしたことなさそうで、しかも上官が直接手渡してくるものには、たいてい遅延発動型の人生的副作用が付いている。
「まず、冬休みの間、君の学籍は保留と再審査の状態のままだ」
「新学期が始まれば、他の学生と同様に二年生として編入される」
彼は少し言葉を切り、入り口の方をちらりと見た。
「それと、皇女殿下も」
くそっ。
私は本当に、クソ馬鹿だ。
なんで「下院です」なんて口が滑ったんだ。
一体誰を陥れようとしたんだ。
ヘートヴィヒを? 下院を? 連邦を?
いや、結局、陥れたのは自分自身らしい。
ヴィスラン大佐はまるで今日の書類仕事を全部片付けたかのように、さらりとお引き取りを告げた。
「もう戻っていいぞ」
私は学生証を手に立ち上がり、行政手続きという名の丁寧な生き埋めを一通り済まされた上に、穴を掘った相手にお礼まで言わなければならない気分になった。
私は背を向け、ドアへと歩いた。
ドアノブに手が触れようとした瞬間、ヴィスラン大佐がふと思い出したように、さらりと付け加えた。
「ああ、そうだ、星野」
私の背中が、その場で固まった。
この口調が一番怖い。
たいていこういう時に続くのは、本題ではなく、その場で壁に頭を叩きつけたくなるような話だからだ。
「九島とは、うまくいってるか?」
私は危うく、壁に頭から突っ込むところだった。
誇張ではない。
本当に、あと少しのところで。
私は勢いよく振り返った。
「誰から聞いたんですか?」
ヴィスラン大佐は当然のような顔をしていた。むしろ少し無邪気にすら見えた。
「いやあ、マッカロウ君がとても熱心でね。毎日SNSで進捗報告してくれるんだよ」
ジェス。
本当に埋めてやる。
殴るのではない。
埋めるのだ。
土を用意して、風水のいい場所を選んで、石碑まで立てて、こう刻む。
――ここに眠るのは、過剰に世話焼きで、ゴシップを愛し、ルームメイトのプライバシーに対して凄まじい破壊力を持つ女。
「あなたまで、私たちのことを笑うつもりですか」
私はほぼ歯を噛みしめながら訊いた。
ヴィスラン大佐は首を振った。
「いや。むしろ、両手を挙げて賛成だ」
私は一瞬、言葉に詰まった。
あまりにも予想外の答えで、すぐに返せなかった。
それから彼は、あの忌々しいほど平静な口調で続けた。
「男女でも、女同士でも、男同士でも、私は気にしない。重要なのは、相手が九島家の人間だということだ」
私は眉をひそめた。
その一言が、さっきまで穴に潜り込みたかった羞恥心を、強引に現実へと引き戻した。
そうだ。
この男は、ただ噂話をしているわけではない。
この男は、いつだってただの噂話をしているわけではない。
この男の目には、関係は関係ではなく、感情は感情ではない。
そういうものは、こういう人間の手に落ちた途端、解体され、分類され、値札を付けられ、最後には権力と家系の引き出しに放り込まれる。
胸の奥が、急に鬱陶しくなった。
何かを言い当てられたからではない。
むしろ逆だ。
言い当てられなかったからこそ、余計に鬱陶しかった。
「私は彼女が九島家の人間だから、抱いたわけじゃない」
私はその言葉を叩きつけるように置いて、すぐに背を向けた。
これ以上この手の人間と一緒にいたら、寿命が確実に縮む。
ドアが、私の後ろで閉まった。
廊下の空気は、執務室よりも少し冷たく、少し澄んでいた。
私は手元を見下ろした。学生証、そしてあの、公式に宣告されたのかどうかも定かではない未来。
学籍保留。
冬休み明けに二年生として編入。
ヘートヴィヒが下院へ。
身体の異常は健康的な発育。
九島真紀。
そして、他人のプライバシーを朝のニュース速報のように流し続ける、あのクソ女、ジェス。
ふと、こう思った。連邦がこれだけ広大な世界を統治できているのは、本当に効率がいいからではないのかもしれない。
みんな、死ぬ暇もないほど忙しいからかもしれない。
そして私、星野シモは、明らかに非常に計画的に、この高効率な拷問システムの中に組み込まれてしまったらしい。
……くそ。
薬物実験だけだった頃が、本当に恋しくなってきた。
少なくとも、あの頃の苦痛は、もっと一途だった。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




