159.ひび割れ 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
どちらかというと、テーブルの上に置かれた逃げ道のようなものだ。今すぐ話せとは言わない。でも本当に放っておくわけでもない。ただ、いかにも真紀らしく、境界線を引いた。今は言わなくていい。でも、それでこの件がなかったことになるわけでもない。
この処理の仕方が嫌いだ。
あまりにも品があるから。
品がありすぎて、怒鳴り返す場所が見つからない。
私は皿の中の、綺麗に切り分けられた何かを見つめ、ふと喉が少し乾くのを感じた。
「……分かった」
声は小さかった。
うっかり零れ落ちたみたいな声だった。
向かいのジェスがぱちりと瞬きをして、珍しく何も続けなかった。
真紀もそれ以上追わなかった。
テーブルは再び静かになり、食器の微かな音と、私たちとは無関係な、だからこそやけに安全に聞こえる店内の日常的な雑音だけが残った。
でも私にははっきり分かっていた。
この食事はまだ続いているが、味は変わった。
料理のせいではない。
明日の午前十時、統合作戦司令部、シュタイナーの「身体、成長したな」という冷たい一言が、この昼の時間の中に細い針のように刺さったからだ。
大きくはない。
でも、この平穏が借り物だということを知らしめるには十分だ。
一番鬱陶しいのは――
分かっていても、それでも一瞬、この食事をちゃんと食べ終えたいと思ってしまったことだ。
食べ終えれば、明日が少し遅れて来るような気がして。
現実はそんなに礼儀正しくない。
たいてい、新しい靴を履いたばかりで、新しい服を提げて、ようやく誰かに整えてもらって普通の人間に見えて、昼食のテーブルで短い間「今日はまあ普通かもしれない」と思いかけた、ちょうどその時に電話をかけてきて、こう告げる。
浮かれるのはまだ早い、と。
店員が遠ざかってから、テーブルはようやく食べ物と人間の間にあるべき関係に、一時的に戻った。
私はうつむいて食事を切りながら、全部の注意が皿の上にあるふりをした。実際は半分以上、さっきの電話の中に残ったままだ。
身体、成長したな?
うるさい。
あの言葉がシュタイナーの口から出てくる時の殺傷力は、曖昧さにあるのではなく、客観性にある。感情もなく、羞恥もなく、ただあるデータがようやく予測範囲に収まったのを確認するような客観性が、一番腹立たしい。
なぜなら、怒鳴り返しても温度計に向かって怒鳴っているようなものだからだ。
「星野」
真紀が突然口を開いた。
私は顔を上げた。
「食べて」
「……食べてる」
「同じところを一分近く切り続けてる」
うつむいて見ると、確かにその肉が戦場の地図になりかけていた。
ジェスがすぐに笑い出した。
「うわ、それだけプレッシャーかかってるんだ。その健康診断、心理カウンセリングもついてるか聞いてあげようか?」
「健康診断ともう一回言ったら、その場で身体検査させるから」
「何科?」
「外傷科」
ジェスはさらに楽しそうに笑い、殴られかけることが今日限定の収集体験であるかのような顔をした。
相手にするのをやめて、私は食べ物を口に押し込んだ。料理は温かく、味も普通で、それがかえって腹立たしかった。普通であればあるほど、頭の中の普通じゃないものが、どれだけ場違いかを際立たせる。
連邦規模の厄災がこっそりファミリーレストランに座り込んで、水を一杯だけ頼んで、テーブル全体の空気を飲み干したような感じだ。
ジェスはようやく良心が戻ってきたのか――あるいはもっと可能性が高いのは、これ以上突いたら本当にテーブルが引っくり返ると察したのか――自分から話題を変えた。
「そういえば、言い忘れてた」ジェスは揚げ物を一つつまみ、口調はのんびりとしていたが、それはまるで誰かが遅れた私の鈍い頭を指先でコンコンと叩いたような言葉だった。「私、新学期が始まる前まで鉑橋街には戻らないと思う」
私は少し止まった。
「……なんで?」
ジェスと真紀が同時に私を見た。
その瞬間、ひどく嫌な予感がした。
ジェスがぱちりと瞬きをした。
「だって今、冬休みだし」
テーブルの上が半秒静かになった。
それから私は、誰かに本の角で頭を叩かれたような感覚を、非常に正直に受け取った。
冬休み。
そうだ。
今は冬休みだ。
忘れていた。
いや、「忘れていた」ではなく「やはり忘れていた」だ。雪風から降りたばかりで、時間感覚が古雑巾のように絞られている人間が、学校がちょうど冬休み中だということを忘れるのは、ある意味で失敗ではなく、宇宙による私への合法的かつ継続的な侮辱の一つだ。
私は皿を見下ろし、さっきまで抱えていた学籍、帰校、学生証、バス、明日以降すぐに学校という制度の中に引き戻されるかもしれないという焦りの半分が、空振りだったことに気づいた。
あの問題が消えたわけではない。
ただ今は、日付を間違えた取り立て屋みたいなもので、もうすぐ来るのは確かだが、今日ではない。
「知らなかったの?」ジェスの顔が「新しいおもちゃを見つけた」モードに移行するのが見えた。
「今知った」
「星野、その反応、別の星から帰ってきたみたいだよ」
「ありがとう、かなり正確」
真紀が横でごく静かに一言添えた。
「星野は最近、時間感覚が元々安定してないから」
この言葉は平坦で、フォローというよりも、ただ事実をテーブルに置いただけのようだった。
だからこそ、強がる場所が見つからなかった。
ジェスはそれ以上追い打ちをかけず、フォークで私を指した。
「とにかく、あんまり考えすぎないで。今から学校に怒鳴り込みに行っても、校門には風と警備員しかいないし。私が鉑橋街に戻るのも、新学期前になる」
「まるで鉑橋街が集結拠点みたいな言い方」
「違うの?」ジェスは眉を上げた。「あそこ、変な人いて、面倒くさいことあって、あんたたち二人もいるじゃん。文学的に豊かだよ」
「文学に対する理解が安すぎる」
「でも当たってる」
残念ながら、反論できなかった。
後半の食事は、ジェスが確かに空気を少し引き戻してくれた。道で見かけた変な店の話、二足目の靴を試した時に店員のプロとしての微笑みの奥で起きていたはずの精神的な揺れ、もし真紀がいつかリストラされたら危険版スタイリストになれるという話。頭から整えて、最後に自尊心まで綺麗に折り畳んでくれそうだと。
私は罵りながら、気づいたら本当に食べ終えていた。
これが一番怖かった。
人間は本当に、明日どこか学校の記録には書けない場所に連れて行かれるかもしれないと思いながら、普通に昼食を食べて、水を飲んで、ジェスの話を聞いていられるらしい。
生きるとはそういうことだ。荒唐無稽だが、珍しくはない。
昼食が終わり、私たちは袋を提げて店を出た。
外の光はすっかり安定していて、容赦なく照らし出す真昼の白さだった。通りは人が増え、風は少し冷たいが刺さるほどではない。店の看板、交差点で信号を待つ人たち、路地から出てきた配達バイク。すべてが腹立たしいほど普通だった。
世界が普通であればあるほど、私だけがずれているような気がする。
ジェスは交差点で立ち止まり、荷物を持ったまま私たちに手を振った。
「はい、私の護衛兼かき回し任務はここで終了」
「最初から後者しかやってなかったと思うけど」
「傷つくな。途中で文化的な伏線も張ったじゃん」
「あの怪しい店に連れ込んだことを文化と呼ぶの?」
「そう。あれがないと、後の救済感が出ないでしょ」
私の人生にそんな安っぽいドラマ構造は必要ないと言おうとした。だがジェスはすでに真紀の方に視線を向け、知りすぎていてしかも知らないふりをしているような笑みを浮かべていた。
「とにかく、冬休みが終わるまで鉑橋街には戻らない。二人で自分たちの空気を処理して、新学期前に街を燃やさないようにね」
私は睨んだ。
「信頼度が低すぎる」
「いや、二人の破壊力の見積もりが正確なだけ」
真紀はジェスと言い合うこともなく、ただ軽く頷いた。
「連絡して」
「了解」
ジェスは二歩下がり、また私に手を振った。
「星野、明日のやつが健康診断じゃなかったとしても、生きて帰ってきてよ。新学期の初日に、あんたが学生証システムにどう怒鳴り込むか、まだ見たいから」
「あんたの応援の仕方、本当に独特だね」
「どういたしまして。精神的ノイズは天職だから」
そう言って、ジェスはさっさと歩き去った。
あの背中はいつも通り、ゆるくて、少し斜めで、投げる前から笑い出している煙幕みたいだ。正直、ジェスという人間は鬱陶しい。でも彼女が角を曲がって見えなくなると、通りに急に一つ穴が空いたような気がした。
あの食事も、あの買い物も、この一日の中で無理やり日常に引き戻されたあれこれも、一層の緩衝材が剥がれた感じがした。
今は私と真紀だけだ。
この組み合わせは、平常時でも気楽なふりをするのには向いていない。
ましてや頭の中にシュタイナーがいる今は。
「行こう」
真紀が口を開いた。
私は反対しなかった。
帰り道、私たちはあまり話さなかった。気まずいわけではなく、単純に今日は十分すぎるほど詰まっていた。一箱の荷物を無理やり棚に押し込んだみたいに、扉は閉まったが、中でまだ何かが外に押し出そうとしているのが分かる。
真紀は私を鉑橋街二十二番地の玄関まで送ってきて、手にはまだ袋を半分提げていた。
私が受け取ろうとすると、真紀は渡さなかった。
「中まで持っていく」
「腕が折れてるわけじゃない」
「シモ、今日はもう十分疲れた」
この言葉はひどく普通だった。
普通すぎて、反論する気力も湧かなかった。
結果として真紀が先に入り、私がその後ろについていき、彼女が今日買ったものを一袋ずつ置いていくのを眺めた。動作は慣れていて、まるで私を送り届けたのではなく、新しいバージョンの生活をあらかじめ私の代わりに整えているようだった。
この光景は危険だ。
あまりにも日常に似ているから。
今の私が一番怖いのは、日常に似たものだ。
真紀は長居しなかった。私がまだ少し張り詰めているのを見て取ったのか、あるいは自分にも別の用事があるのか。帰り際にごく普通に一言だけ言った。
「夜、ちゃんと髪を乾かして」
「……分かってる」
「分かってても、やらないでしょ」
「今日は本当によく管理してくれるね」
真紀は私を一瞥した。
「今日のあんたは、本当に管理が必要だった」
それだけ言って、彼女は行った。
シャワーを浴びながら、ようやく自分一人になれた。
一人になっても、楽にはならなかった。
熱いお湯が落ちてきて、今日のあれこれが濡れた紙のように一枚ずつ体に貼りついてくる。怪しい店、本命の店、鏡、パンツ、靴、昼食、ジェスの冬休み発言、シュタイナーの「身体、成長したな」、明日の午前十時、統合作戦司令部。
私はお湯の中に立ち、自分が検査結果を待っているサンプルのような気分になった。
この考えは不吉すぎる。すぐに流した。
出てきてから、今日買ったルームウェアのパンツに着替えた。真紀が昼間に袋に押し込んだあれだ。
……着心地がいい。
それがまた別の嫌さだ。
真紀が「帰ったら何を着るか、どうせ自分では選ばない」まで読んでいたことを意味するから。
髪を拭きながら、心の中で彼女の余計なお世話を呪った。二言も呪わないうちに、インターホンが鳴った。
私はその場で二秒止まった。
この時間帯、考えなくても分かる。
ドアを開けた時、私はすでに「何か忘れ物でもしたの?」とか「ちゃんと髪乾かしてるか確認しに来た」とか、いかにも真紀らしい台詞を想定していた。
だがドアを開けると、真紀は外に立っていて、手には小さな袋一つだけ持ち、表情は昼間より少し静かで、少し柔らかかった。
柔らかいというのは、ふわっとした意味ではない。
昼間の、外に向けていた角が少し収まって、私の前でだけ見せる真紀に近い、という意味だ。
このバージョンは危険だ。
「何?」
「星野がお湯に溶けてないか確認しに来た」
「それは関心なの、呪いなの?」
「確認」
私は体を引いて真紀を通した。
真紀は袋をテーブルに置いた。中には飲み物が二本と、小さなスイーツの箱。持ってこなくてもよかったのに、わざわざ持ってきた。だからこそどんな率直な気遣いよりも、始末に負えない。
「今日は暇なの?」
「今日は少し暇」
「連邦が傾いてるんじゃない」
真紀は私を一瞥し、怒りもせず、ただ静かに返した。
「シモ、あんた時々、本当に口が悪い」
……この言葉、別の時だったら、もっと強く言い返していた。
でも今はできない。
真紀がこれを言う声は低くて、全体的に昼間のまだ私を弄んでいた状態とは明らかに違う。少し疲れているのに、それでも来て、ものまで持ってきて、私の部屋の居間に立ち、かなりリラックスした空気で私を見ている。
こういう時、人は防衛をうっかり下ろしたくなる。
あるいは、少しの間だけ下ろしてもいいと思いたくなる。
そう思った瞬間、真紀が一歩近づいた。
その一歩は早くも、強引でもなく、ずっと前から知っている何かの呼吸みたいだった。
次に何が起きるか、私には分かっていた。
真紀は感情をいつも口に乗せるような人間ではない。近づく時も、たいてい事前に申告しない。どちらかというと、私が気づく前に、もう十分近い位置に立っていて、それからごく自然な方法で私を自分の体温の圏内に収めてしまう。
以前はそれを何とも思っていなかった。
今も、何とも思っていないわけではない。
問題は――
明日。シュタイナー。身体検査。
頭の中に、ひどく不吉な光景が浮かんだ。あの老人が学術的な熱意を全開にして、私の首か鎖骨あたりの、彼に見られるべきでない何かを凝視して、新大陸を発見したような口調で、私がその場で壁に頭を叩きつけたくなるような分析を始める。
想像しただけで、先に壁を叩きたくなった。
だから真紀が手を伸ばしてきた時、私はほぼ反射的に、少しだけ後ろに引いた。
その幅は小さかった。
でも真紀には、十分だった。
真紀の手が宙で止まった。
居間が、急に沈黙した。
自分でも分かっていた。終わった。
こういうことは「幅が小さかった」では済まされない。真紀はどんな時も硬いが、私に近づく時のその近づき方は、命令ではなく、了解だ。私がたった今それを打ち切った。
「今日は、やめて」
私が先に言った。
言った瞬間、しまったと思った。
硬すぎる。直接すぎる。拒絶に聞こえる。
真紀は私を見て、すぐには何も言わなかった。
その顔の変化はわずかだったが、私には見えた。怒りではなく、ごく短く、ごく薄く、でも確かにある傷つきの色。
刃が振り下ろされたのではなく、誰かの指先でほんの少し押しやられたような。
そのほんの少しが、一番致命的だ。
「なんで?」
真紀が訊いた。
声はまだ安定していた。
安定しているほど悪かった。
真紀が駄々をこねているのではなく、本当に訊いているということだから。
この瞬間、頭の中にある一番正直な答えは――
明日シュタイナーのあの老科学者に、研究材料になりそうな新大陸が体のどこかにあるのを見られたくない。
この答えは荒唐無稽すぎて、真紀に向かって言えるものではない。
かといって私は十分賢くなかった。最初の一秒で、もっとましな言い方を見つけられなかった。
だから口から出てきたのは、本当のことと失言の間の、空気を完全に殺せるバージョンになった。
「明日、司令部に行くんでしょ」私は視線を逸らし、自分の棺桶に蓋をするような硬い声で言った。「体に痕跡が残ると困る。あの老人に見られたら、また新大陸を発見したみたいに言いそうで」
言い終えた後、私は自分の首を絞めたくなった。
本当に。
この言葉の重点は、シュタイナーが鬱陶しいということのはずだった。
でも真紀の耳には、こう聞こえる。触らないで、面倒なことになるから。
最悪だ。
災難に近いくらい最悪だ。
真紀は二秒沈黙した。
その二秒の間に、私は初めてはっきりと感じた。説明できれば何事もなかったことになるものではない、ということを。傷つけることに長い前置きは要らない。言葉の切り口が一つ間違えば、それだけで全部が歪む。
「そうか」
真紀は最後にその四文字だけ言った。
平坦だった。
氷の面みたいに。
これは怒鳴られるより悪かった。
真紀に眉をひそめてほしかった。怒鳴ってほしかった。「あんたの言い方は最悪だ」と直接言ってほしかった。それなら、まだ補う場所があった。でもこの四文字は、彼女がすでに感情を全部引き上げたことを示していた。綺麗さっぱり。私が補う余地まで一緒に。
私はそこで初めて、本当に慌てた。
「違う、そういう意味じゃなくて――」
「いい」
真紀が遮った。
この「いい」も最悪だった。
本当に「いい」わけではない時に、人は一番「いい」と言う。
私はその場に立ち尽くし、髪はまだ半乾きで、手にタオルを持ったまま、シャワーを浴び終わったばかりで言語能力が不合格と宣告されたような状態だった。頭の中ではよく分かっていた。私は真紀を拒絶したのではない。ただ、シュタイナーというあの老科学者の怪人が明日また研究材料を増やさないようにしたかっただけだ。
でも私が口にしたバージョンは、まるで真紀を「検査の邪魔になる外部要因」として分類したみたいに聞こえた。
誰が聞いても傷つく。
私が聞いても殴りたくなる。
真紀はそれ以上近づかず、テーブルの上の袋を少し私の方へ押した。
「スイーツ、食べてね」
……ほら。
これが一番たちが悪い。
翻さない。ドアを叩きつけない。それ以上追わない。ただ引き上げて、非常に礼儀正しく、非常に分をわきまえて、元々伸ばしていた体温を折り畳んでポケットにしまうように収めた。
どんな言い合いよりも、ずっと辛い。
「真紀」
私は呼んだ。
真紀は少し止まったが、振り返らなかった。
頭の中に一瞬、言葉が溢れた。拒絶じゃない、嫌いじゃない、触れてほしくないんじゃない、そういう意味じゃない、ただシュタイナーの口が悪すぎるのが怖いだけ、また標本扱いされたくないだけ――
でもその言葉は全部、喉の入り口で渋滞して、最後に出てきたのはひどく役に立たない一言だけだった。
「本当にそういう意味じゃなかった」
真紀は今度は振り返って、私を一瞥した。
その目は冷たくも、鋭くもなかった。
冷たくも鋭くもないからこそ、私が何かを間違えたことを、より確実に示していた。
「分かってる」と真紀は言った。
……いや。今のあんたの様子は、分かってるように見えない。
あるいは分かっていたとしても、もう遅い。
言ったのは私で、止めたのも私で、引いたのも私が先だ。
こういうことはそういうものだ。頭の中の理由がどれだけ正当でも、やり方が悪ければ、相手が受け取るのは傷だけだ。
私のやり方は悪かった。しかも、徹底的に悪かった。
真紀は結局、行った。
ドアが閉まる音は大きくなかった。でも居間の中で、長く残った。
私はその場に立ち尽くし、せっかく浴びたシャワーが全部無駄になったような気がした。体は清潔で、頭は混乱していて、気持ちは自分の足で自分を踏んだみたいだった。
テーブルの上には、飲み物とスイーツの袋がまだあった。
今日買ってきた新しい服もまだあった。
真紀が選んだルームウェアのパンツを穿いていて、着心地が良くて、殴りたくなった。
部屋全体が、誰かに丁寧に世話をされた後みたいだった。
ちょうどそういう時に、私は世話をしてくれた人を傷つけたと気づいた。
大した理由もなく。原則の衝突でもなく。本当に近づきたくなかったわけでもなく。
ただ、言い方が最悪だっただけで。
この種の失敗が一番みっともない。
世界のせいにできないから。
私はベッドの端に座り、テーブルのスイーツの箱を見つめた。頭に最初に浮かんだのは――
明日シュタイナーが本当に何かを見抜いたら、その場で司令部にあの老人を埋めてやる。
二番目の考えは、もう少し正直だった。
明日出かける前に、真紀を先にどうにかしないといけない。
でもその考えが浮かんだ瞬間、さっきの真紀の「そうか」という平坦な四文字と、さらに平坦な「分かってる」が思い出された。
……終わった。
スイーツ一箱で解決できるレベルじゃない。
私は横になり、腕で目を覆った。
今日は本当に長かった。
朝はパンツと格闘していて、昼は食卓でマッドサイエンティストの電話を受けて、午後になって学校がまだ冬休みだと知って、シャワーを浴び終わったら本来ごく自然にそこにあったはずの距離を、自分の手で事故現場にした。
一日の中でこれだけ生活を崩壊させられるなら、ある意味それも才能だ。
ただしその才能を正常な競技に持ち込んだら、おそらく資格剥奪になる。
私は寝返りを打ち、壁を見た。
部屋は静かだった。
静かすぎた。
静かすぎて、真紀が手を伸ばしてきたあの瞬間の、もともと当たり前にあったはずの、でも私が強引に断ち切ってしまった距離感が、はっきりと思い出せた。
私はただ、シュタイナーに明日また研究材料を増やされたくなかっただけだ。
でも最後に残った痕跡は、体の上ではなかった。
別のところに。
しかも、ずっとやっかいな。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




