157.三人組 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
試着室は思ったより広く、鏡は必要以上に残酷だった。
カーテンを引くと、世界が瞬時に静かになった。外の人声と自分の呼吸の音だけが残る。
よし。
ようやく私と私だけになれた。
……この言葉がなぜ拷問の前置きみたいに聞こえるのか。
手の中の服を見下ろし、まず一番無難そうなグレーのトップスを選んだ。
グレーは人類の友だ。グレーは裏切らない。グレーは少なくとも、ワインレッドのレースみたいに私を今すぐ転生させたくならせない。
着ていたものを脱ぐとき、やはり一瞬止まった。
恥ずかしいわけではない。少なくとも、それだけではない。
どちらかというと、煩わしい種類の違和感だ。
鏡の中の人間は確かに私なのに、最近ますます、取扱説明書を読み終えていない新しい機器を使っているような感覚がある。大まかな機能は分かる、動くことは分かる、壊れていないことも分かる。でもまだ本当に慣れていない部分が多い。特にこういう、布地を体に合わせて「どこを緩めて、どこを沿わせて、どこが引っかかるか」を確認するとき、その違和感は特に大きくなる。
トップスを頭から被り、動作の途中で肘が引っかかった。
「……」
よし。
第一波の災難が来た。
深く息を吸い、袖を引っ張る。
引っかかる。
もう一度引っ張る。
まだ引っかかる。
これは服なのか、それとも私の自尊心を絞殺するために設計された何かなのか。
さっきジェスに呪われたのかもしれない。あの烏口には実際の効果があるに違いない。
「星野?」
外から真紀の声が聞こえた。
非常に平坦な声だった。
恐ろしいほど平坦だった。
「何」
「まだ生きてる?」
「とりあえず」
「なぜ三十秒、物音がしないの?」
私は歯を食いしばり、布地を少し下に引いて、ようやくもう片方の手を通した。
「文明と格闘中だから」
カーテンの外が半秒沈黙した。
ジェスが先に笑い出した。
「だから言ったじゃない、試着室は全員に正直に向き合うって」
「黙って」
「手伝おうか?」真紀が聞いた。
「いい」
答えるのが早すぎた。まるで反射だった。
次の瞬間、後悔した。
なぜなら下を見ると、裾はなんとか下りてきたが、肩の辺りが少し窮屈で、胸元は――胸元も着られないことはないが、その「着られる」は「法律上は成立する」に近く、「実際に快適」には程遠かった。
私は鏡の前に立ち、二秒黙った。
鏡の中の私も二秒黙った。
こういうとき、人間は簡単に第二人格を分裂させる。第一人格が何でもないふりをする担当で、第二人格が頭の中で叫ぶ担当だ。
私のせいじゃない。
じゃあ誰のせい、布地のせい?
少なくとも全部私のせいじゃない。
でも確かに大きくなった。
黙れ。
心の中で自分と喧嘩しながら、私は一つのことを正直に認めた。真紀がさっき「サイズは大きめに取って」と言ったのは、完全に正しかった。
これがさらに腹立たしかった。
自分が変わったことを受け入れるだけでなく、真紀が私よりも先にそれを受け入れていたことまで受け入れなければならないということだから。
そう思うと、顔が少し熱くなった。
くそ。
私は鏡の中の自分に眉をひそめた。
「何が赤くなってるの」
鏡の中のその人間も、答えを知りたそうにしていた。
外からまたジェスの声が聞こえた。
「星野、もし泣いてたら声出して。聞こえなかったふりするから」
「泣いてない」
「じゃあ服が引っかかってる」
「ジェス」
「分かった、もう茶化さない。本当に手伝わなくていい?」
私は鏡を見て、服の裾を指で引っ張った。
いらないと言うのは嘘だ。
でも真紀を呼んだら……その光景を想像するだけで、魂が耳から先に逃げ出しそうだ。
しかも今日の真紀の状態では、入ってきてから先に服を直してくれるのか、先に私を笑いのネタにするのか、答えを確かめるのが怖すぎる。
「いい」私は歯を食いしばってもう一度言った。「ただ、この一枚は駄目」
真紀が外からごく淡々と返した。
「分かってた」
私は勢いよくカーテンに向かって振り向いたが、もちろん人は見えない。
「なら何で持ってきたの」
「星野は自分で一度試してみないと、納得しないから」
「……」
くそ。
この人は私を理解しているのではない。
私の性格の弱点を使って圧力テストをしている。
しかも間違っていない。
私はまさに、壁に当たらないと壁の存在を認めないタイプだ。しかも先に三回壁を罵倒して、それから頭でどれだけ硬いか試して、最後にようやく「ああ、本当に痛いんだ」と認める。
力を入れてトップスを脱いだ。今度は着るときよりは多少スムーズだったが、それでも野生動物と綱引きをしているような狼狽え方だった。
二枚目は白いシャツだ。
私はもともと白が得意ではない。白は、自分のものではない普通の生活を送っているみたいに見えすぎる。でも手に取ると、シルエットが確かに良く、布地は張りがあるが硬くはなく、衿元も清潔だと認めざるを得なかった。
着て、二番目のボタンを留めようとしたとき、ふと止まった。
……ちょっと待って。
この光景は、少し「人間みたい」ではないか。
子供でも、旧制服の中の「なんとか着られるかどうか」のぎりぎりの状態でも、何かの模倣でもない。
ごく普通で、ごく普通で、そのまま外を歩き出せる見た目だ。
私はゆっくりと顔を上げた。
鏡の中の人間も、顔を上げた。
肩のラインが持ち上がっていた。けど、無理に張っているわけじゃない。胸のふくらみでシャツの形が定まり、腰のあたりもすっきりと落ちていく。全体のシルエットは、思ったよりずっと綺麗にまとまっていた。
女らしい、とかいう私の嫌う言い方でもないし、柔らかくなったわけでもない。どちらかと言えば――今までどこか噛み合っていなかった部分が、ようやく静かに埋まった、そんな感じだった。
その場に立ち尽くしたまま、私は一瞬、先に不機嫌になるべきか、先に見慣れない自分に戸惑うべきかで迷った。
結局、先に人に噛みついた。
「……これ、誰が選んだの」
すぐに外から真紀の声が返ってきた。
「私」
「そっ」
二秒黙って、私は付け加えた。
「うざい」
ジェスがまた笑い転げた。
「うわ、翻訳すると『似合ってるけど絶対認めない』ってことね」
「誰も頼んでない」
「星野、出てきてよ」ジェスが言った。「じゃないと、あんたが一人でこっそり成長儀式を済ませちゃって、私たちが参加できないじゃん」
「誰がそんなもんに参加させるか」
口ではそう言いながら、手はカーテンの端で止まっていた。
外に出るということは、この姿を鏡の中の自分だけでなく、実際に彼女たちの目に晒すということだと、ふと気づいたからだ。
さっきの怪しい店とは違う。
あそこはただの悪ふざけで、笑い話にして、お互い皮肉を刺し合って逃げられるものだった。
でも、ここは違う。
ここはまともな店で、まともな照明で、まともな服がある。ここで「似合う」と言われたら、それは冗談では済まされない。
なぜか、それがさっきよりもずっと恐ろしく感じられた。
「星野?」
真紀がもう一度、私を呼んだ。
急かす響きはなかった。
カーテンを見つめていると、胸の奥でまた、色々なことを問い詰めたくなる感覚が浮き上がってくるのを感じた。小さな棘のように、消えたわけではなく、ただ一時的に沈んでいただけだ。でも、今は――今はまだだめだ。
この午前中は、まだ壊れていない。
私が最初にそれを壊すのは、嫌だった。
だから一つ息を吸って、カーテンを引いた。
外の光が一気に差し込む。
ジェスが先に口笛を吹いた。表情は、思ったよりも少しだけ――ほんの少しだけ、真面目だった。
「おっ」
その短い声は、珍しく人をからかうためのものではなかった。
真紀が私の前に立ち、一度だけこちらを見た。
頭から爪先まで値踏みするような、腹の立つ視線でもなく、さっきの怪しい店でやっていたような、わざと人を困らせる弄り方でもない。
彼女はただ一瞥し、それからごく普通に言った。
「これでいい」
なぜか、それをあまりにも普通に言われたせいで、耳の裏が一気に熱くなった。
「……まるで備品みたいな言い方だね」
「星野は備品じゃない」真紀が言った。「ただ、前のが合わなくなっただけ」
ジェスが横から口を挟んだ。
「翻訳:古い皮は脱ぐ時期ってこと」
「ジェス、あんた本当に空気をぶち壊す才能あるよね」
「あんたを守ってあげてるんだけど。じゃないと、今にも『それ似合ってるよ』の一言で撃沈しそうな顔してるし」
私は即座に顔を背けた。
「してない」
「してる」
「してない」
「はいはい、してない、してない。耳が勝手に赤くなってるだけだもんね」
ちょうどそのとき、別サイズを手にした男性店員が通りかかり、私に視線を走らせてから、プロらしい抑えた賛意の表情を浮かべた。
「こちら、確かにとてもお似合いです。肩のラインも全体のバランスもよく出ています。もう少しゆとりをお好みでしたら、ハーフサイズ上のものもご用意できますが」
……バランス、ね。
ありがとう、見知らぬ人。あなたは実に穏やかな言い方で、私の人生に対して、いちばん残酷な確認を入れてくれた。
私は無表情のまま頷いた。
「お願い」
店員が離れると、ジェスが寄ってきて、声を落とした。
「星野、さっきのあんた、悪くなかったよ」
私は横目で睨んだ。
「今日、ついに良心を取り戻したの?」
「まさか。これ以上笑ったら、本気で噛まれそうだと思っただけ」
「わかってるならいい」
真紀が手を伸ばし、私のシャツの袖口を少し外側に折った。あまりにも自然な動きで、まるで何度もやってきたみたいだった。あるいは、私を整えるという行為に、もう慣れすぎているだけか。
その指先が手首に触れた瞬間、私は反射的に身をすくめた。
避けたわけじゃない。
どちらかというと――ああ、この人、こんなに近くにいたんだっけ、と今さら思い出した、そんな感じだった。
真紀は、私のそんな情けない反応など見なかったことにするみたいに、ただ低い声で言った。
「これは残しておく。次、パンツ試して」
私は顔を上げ、彼女を見た。
「真紀」
「うん?」
「今日、けっこう楽しんでるでしょ」
真紀は一秒だけ私を見て、唇の端をかすかに動かした。
「まあ」
嘘つき。
この人、絶対に楽しくて仕方ない。
そして何より怖いのは――私が、本当に怒れていないことだ。
ただひたすら恥ずかしくて、穴があったら入りたいし、できればジェスも一緒に引きずり込んで下敷きにしたい。
でも、その恥ずかしさの底に、言葉にしたくない緩みが、ほんの少しあった。
誰かが先に見てくれて、先に判定してくれて、そのうえで、いかにも真紀らしいやり方で教えてくれた気がした――大丈夫、問題ない、これで生きていける、外にも出られる、あんたがちょっと変わったくらいで、世界はすぐには終わらない、と。
ほんとに、下手くそな慰め方だ。
なのに、私はこの手のやつに限って、きれいに引っかかる。
だから、もう――やってられない。
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