156.成長期 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
真紀が入ってきて、最初の一言はこれだった。
「ごめん、昨日、帰らないって先に連絡しなかった」
私は一瞬固まった。
正確には固まったのではない。昨夜からずっと胸の奥に詰まっていた何かを、誰かの爪先でかすかに引っ掻かれたような感覚だった。
とても軽い。
でも、ひどく痛い。
私は顔を少し逸らし、世界平和について考えているふりをしながら、語調を「大したことじゃない」の方向へ努力して寄せた。
「ああ……別にいいよ」私は言った。「気にしてないから」
嘘だ。
星野霜、あなたは死ぬほど気にしている。
昨夜の「ただいま」に誰も応えなかったこと、リビングに残された蘭のカップ麺、机の上の写真、壊れた蛇口みたいに泣きじゃくった自分のみっともなさ――どれ一つとして、気にしていない証拠にはならない。
なのに今、私は平然とした顔でここに立って、気にしていないと言っている。
どうやら人間の嘘をつく潜在能力は、連邦軍校が私に下した評価よりずっと高いらしい。
「霜……」
真紀が一歩、前へ出た。
いや――「シモ……」
私はまだ強がろうとしていたが、次の瞬間、真紀はすでに両手を上げて、私の顔を両側から包み込んでいた。力は強くないが、逃げる余地はまったくなかった。
「泣いた?」
「……泣いてない」
嘘だ。
泣いただけではない。
二回も泣いた。
しかも二回目は一枚の写真に負けた。非常に品のない負け方だった。
「嘘つき」
真紀は私の顔を少し自分の方へ傾けて、目を合わせさせた。私の視線が無意識に逃げようとしたが、また引き戻された。その瞬間、九島真紀がいつか失業したら、尋問官に転職しても間違いなく成功するだろうと確信した。
拷問器具など不要だ。ただ見つめられるだけで、自分から先に自白した方が楽かもしれないと思い始めてしまうのだから。
「ほら」私は最後の抵抗を試みた。「今の私、ちゃんと平気で――」
ああもう。この女は本当に厄介だ。
真紀はどんどん近づいてきた。近すぎて、外から持ち込んだ冷たい空気の匂いまで感じられるほどだった。声を限界まで低く抑え、問いかけているというより、すでに答えを知っている事実を確認しているような声で言った。
「嘘をついているのは、この口?」
そして、そのままキスをしてきた。
私の脳は、その場で一秒間真っ白になった。
キスされたことがないからではない。
まったく逆だ。あまりにもよく知っているからこそ、この女が今、慰めているのではなく、彼女なりのやり方で私に降伏を迫っているのだと、はっきり分かった。
くそ。
私は片手を真紀の肩に当てた。
なに、本当に私が反撃しないと思ってるの?
次の瞬間、私はこの奇襲をそっくりそのまま返してやろうとした――
玄関のドアが「ガチャッ」と音を立てて開いた。
私と真紀は同時に動きを止め、一緒に振り向いた。
ドア口に、ジェス・マッカロウが立っていた。
ジェスは片手をドアノブにかけたまま、その場で固まっていた。表情は、大型貨物船に正面から衝突された頭脳の持ち主のものだった。視線がまず真紀に落ち、次に私に落ち、それから私と真紀の間を何度も往復した。
その表情が語っていたのは、要するにこの一言だった。
――私、秘密保持契約が必要な現場に踏み込んでしまった?
三秒後、ジェスは非常に生存本能に満ちた動作で、ゆっくりとドアを閉め直した。
バタン。
家の中が静まった。
私はまだ片手を真紀の肩に置いた姿勢のままで、真紀の手はまだ私の顔を包んでいた。
私たちは一秒、見つめ合った。
それから、私の個人端末が鳴った。
私は真紀の手から片手を抜いて、下を向いて見た。
案の定、ジェスだった。
メッセージを開く。
ジェス:霜!!!大変!!!九島さんが見知らぬ男とあなたの家の玄関でキスしてた!!!
その一文を二秒ほど見つめ、こめかみの血管が直接飛び出して彼女と決闘を申し込みそうになった。
霜:さっさとドア開けろ。もう一回ちゃんと見ろ、ジェス・マッカロウ。
送信して一秒も経たないうちに、ドアの外から非常に怪しく、非常に後ろめたく、隠れる技術が皆無な足音が聞こえてきた。
私は深く息を吸い、真紀の腕の中から離れ、玄関まで直行して、ドアを勢いよく開けた。
ジェスは案の定、まだ外にしゃがみ込んでいた。
しかも非常に手慣れたしゃがみ方で、壁際に身を縮め、敵軍の通信を盗み聞きしているのに靴底のランプを消し忘れた小型哺乳類みたいだった。
「悪い男!」ジェスの第一反応は、なんと私を指差すことだった。
「ジェス」私は無表情のまま手を伸ばし、彼女を家の中へ引っ張り込んだ。「本当に眼科に行った方がいい」
ジェスは引きずり込まれながら少し抵抗しようとしたが、やがて何かがおかしいと気づいたのか、急に静かになった。彼女は顔を上げて私をじっと見つめ、目をどんどん見開き、丸くしていき、最後には連邦議会の十大家族が実は集団でペンギンを密飼いしていたと発見したような顔になった。
「ちょっと待って」ジェスが言った。「この声……あなた、本当に霜?」
「本物だよ」
「いや」ジェスはもう一度私を見た。視線が顔から肩へ、そして全身へと流れ、その声に初めて本物の衝撃が混じった。「どうしてそんなに――」
彼女は少し詰まった。形容詞を探しているようだった。
「そんなにかっこいい……いや」ジェスは自己修正した。「なんて言うか、凛々しい?」
私はドアに寄りかかって、腕を組んだ。
「私にも分からない」私は正直に言った。「成長期が遅れてやって来たのかもしれないし、昨夜の号泣で旧バージョンの自分が洗い流されたのかもしれない」
「その言い方、低予算SF映画みたい」ジェスが呟いた。
「私たちの人生自体がもともと低予算SF映画みたいなものでしょ」私は返した。「ただ、予算を全部人権のところで削ってるだけで」
ジェスはなんと、真面目に頷いた。
それから彼女は私を見て、真紀を見た。
私は次にもっと過激な暴言が飛んでくるかと思ったが、そうはならなかった。ジェスはただ目を細めて、「なるほど、分かったわ。でも今は言わない」という顔をした。
純粋なゴシップ好きでも、純粋な野次馬根性でもない。彼女は非常に短い時間の中で、以下の事柄を全部計算し終えたようだった。
一、私の今日の体型は確かに問題を起こしている。
二、真紀がこんなに早く鉑橋街二十二番地に乗り込んできたのは、朝のジョギングのついでであるはずがない。
三、さっきのあの場面を目撃されたにもかかわらず、真紀が彼女をその場で口封じしなかったということは、今日の機嫌は悪くないということだ。
四、服が弾け飛んだなら、次のステップはたぶん――
ジェスは肘で真紀を突いた。
「九島さん」彼女は言った。すでに招かれざる客特有の馴れ馴れしさがあった。「私の予想が正しければ、これから服を買いに行くつもりでしょ?」
「そう」
真紀は半秒も迷わず答えた。
ジェスはすぐに手を挙げた。
「やった、じゃあ私も行く」
私は彼女を見た。
「その『やった』は何」
「理由は二つある」ジェスは至極真剣に指を二本立てた。「一つ目、あなたが本当に試着室まで爆破するかどうか、この目で確かめたい。二つ目――」
彼女はわざと間を置き、私にウインクした。
「こういう歴史的瞬間に、目撃者がいないなんてもったいないでしょ」
「あなたがなりたいのは目撃者じゃなくて、現場の実況アナウンサーでしょ」
「どっちでもいいわ」ジェスはあっけらかんとしていた。「人間、生きているうちに自分に合った社会的ポジションを見つけなきゃ」
私が言い返そうとした瞬間、真紀がすでに口を開いていた。
「いいわよ」と彼女は言った。
私とジェスは同時に振り向いて彼女を見た。
真紀はそこに立って、上着はもうドア脇のフックに掛けてあり、表情は相変わらず法案にサインできそうなほど落ち着いていた。
「一緒に行った方が早い」真紀は言った。「あなたのサイズは今不安定だから、一人で選ぶと時間がかかりすぎる」
私のこめかみがぴくりと引きつった。
「……どうしてそんなに冷静な口調で、そんなに残酷なことが言えるの」
「事実だから」
「ほら」ジェスがすぐに私の方へ身を寄せ、小声で追い打ちをかけた。「だから今日来た甲斐があったって言ったでしょ」
私はジェスを睨み、真紀を睨んだ。
一人は煙幕型のトラブルメーカー。
もう一人は支配型の強制執行官。
そして私、星野霜は、たった今自分の古い服が体に合わなくなったことに気づいたばかりなのに、朝の五時前に、この二人の女を連れて、服のサイズと自己認識の二重崩壊に向き合わなければならない。
人生がゲームだとしたら、このシナリオを設計した人間はプレイヤーに個人的な恨みを持っているに違いない。
私はこめかみを押さえ、長く息を吐いた。
「先に言っておくけど」私は二人に言った。「後で店の中で誰かが声を出して笑ったら、その場で既製品コーナーに埋めるから」
「じゃあ今日は二人埋めることになるかもね」ジェスが言った。
「ジェス」
「分かった、なるべく我慢する」ジェスは両手を挙げて降参のポーズをとったが、口の端はすでに上がり始めていた。「でも、あなたが本当にかっこよすぎて店員さんの顔を赤くしたら、拍手しない保証はないわよ」
「絶対やめて」
「じゃあ、真紀が赤くなったら?」
「ジェス・マッカロウ」
「黙る、本当に黙る」
ジェスはそう言った。
彼女がどれくらい黙っていられるかは、正直、連邦中央気象局でも保証できないだろう。
私は真紀の方を向いた。
真紀も私を見ていた。
昨夜のことはもう持ち出さなかった。何回泣いたかも追及しなかった。ただそうして見ていた。入ってきたときより少し静かな目で、少し近い目で。まるで私がまだここにいることを確認し、残りの言えなかったことは道すがらゆっくり片付ければいいと、そう決めているかのように。
私は突然、悪態をつきたくなった。
なぜなら気づいてしまったからだ。昨夜はまだ、鉑橋街二十二番地には空気と反響音しか残っていないと感じていた。それが今、たった二人増えただけで、家全体に重力が戻ってきたみたいだ。
面倒くさい。
本当に面倒くさい。
……でも、まあ、受け入れられないわけでもない。
「行こう」私は言った。
「服買いに?」ジェスが目を輝かせた。
「他に何があるの」
「生まれ変わりに?」彼女は提案した。
私はドアを開けて、振り返って白い目で見た。
「それは午後にしよう」
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




