155.孤独の氾濫 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
深夜になっても、鉑橋街二十二番地には誰も帰ってこなかった。
この一文を広告のキャッチコピーにするなら、「日当たり良好、交通至便、単身者向け」と印刷された安アパートのチラシにぴったりだろう。そして一番下に、極小の文字でこう付け足すのだ。――無制限の空虚と反響音、無料サービス付き。
残念ながらこれは広告ではなく、私の家だ。
いや、厳密に言えば、この場所がまだ「家」と呼べるのかどうか、私自身も疑い始めている。
玄関の電気はつけたままにしておいた。リビングの電気もつけた。暗闇が怖いからではない。笑わせないでほしい。この一年余り、人に向かって火を吹く化け物すら見てきたというのに、今さら家の中が暗いのを怖がるなんて、低予算コメディの設定だ。
問題は、この場所は明かりをつけないと、遺産相続のトラブル現場に迷い込んだのではないかと疑いたくなるような抜け殻に即座に変わってしまうことだ。すべての隅々がこう言っているように見える。「ああ、帰ってきたの? 悪いけど、ここであなたを待っている人はいないよ」
私は靴を脇に蹴り飛ばし、リビングの中央に立って、だいたい三秒かけて、非常に現実的な一つのことを決めた。
まず、食べるものを探す。
人類とは本当に偉大だ。さっきまで敗戦国みたいに玄関で泣いていたくせに、次の瞬間には夕食のことを考えなければならないのだから。文明が続いてきたのは、たぶん、どれだけ死にたくなっても、腹が減ったら先に棚を漁りに行くからだろう。
キッチンは記憶よりも綺麗だった。誰かが丁寧に片付けた綺麗さではなく、あまりにも長く使われていないせいで、新しい汚れが発生しようがない綺麗さだ。
これは油汚れよりもよほど恐ろしい。油汚れは少なくとも、誰かがここで生きていた証だ。この整然さは、誰も触れない場所で時間だけがゆっくりと埃を積んでいることしか意味しない。
棚を開けると、いつ買ったのか分からない塩が半袋、空き缶が二つ、触りたくない調味料の粉末が一袋。最後に一番奥から、カップ麺を一個掘り出した。
蘭が置いていったものだ。
私はそのカップ麺を二秒ほど見つめた。おそらく、砂漠で文明の遺跡を掘り当てた考古学者みたいな顔をしていたと思う。パッケージは少し皺になっていたが、賞味期限はまだ切れていない。少なくとも印字された日付から判断すれば、これは今の私の学籍状態よりよほど安定している。
「……ありがと、蘭」
カップ麺に向かってお礼を言うのは恥ずかしい限りだが、どうせこの部屋には私を笑う人間もいない。
お湯が沸く音は、夜の中では異様に大きく響いた。まるでこの家がようやく、自分の中にまだ少し活気が残っていることを認めてくれたかのようだった。麺を作り、それをリビングに運び、ついでにテレビをつけた。画面が明るくなった瞬間、私は少し驚いた。この世界に、勝手に音を出すものがまだ存在したことを、うっかり忘れかけていたからだ。
ニュース番組では、男性キャスターと女性コメンテーターが互いの話を遮り合っていた。男は「私が理性の代表です」という顔で、連邦の秩序は現在安定しており、事態は完全にコントロール下にあると語った。女は「よく言うわ」という口調で、いわゆる秩序の安定というのは、たいてい自分の番がまだ回ってきていないだけだと視聴者に念押しした。私は麺を噛みながら、画面の中で互いに敬意を装う二人を眺め、これはなかなか教育的な光景だとふと思った。
少なくとも、一つのことを証明している。
世の中には、男女のやり取りが恋愛ではなく、公開処刑として成立する場合がある。
麺を一口すすった。スープは正直すぎるほど塩辛かった。その正直さは、メーカーが「消費者への配慮」という四文字を工程からまるごと省いたのではないかと疑いたくなるほどだった。それでも私は綺麗に食べ切った。今日一日で、私はすでに連邦、学校、交通システム、そして神様から順番に辱めを受けてきたのだ。カップ麺に最後に一発背後から刺されたところで、ちょうど数字の切りがよくなるだけだ。
テレビがCMに切り替わり、画面は三人家族が食卓を囲んで高級な冷凍食品を食べている映像になった。父親は頼もしそうに笑い、母親は優しそうに笑い、子供は自分の人生にこの先どんなろくでもないことが待っているかまったく知らない顔で笑っていた。
私はその画面を見つめながら、広告主に手紙を書いて聞きたくなった。キャストを選ぶとき、ついでに「家というものが本当に存在する」人間を探して撮ったんですか、と。
考え直して、やめた。
向こうは食品を売っているのであって、奇跡を売っているわけではない。
食べ終わった後、私は麺の容器を洗いに行った。水が容器の底を流れていくのを見ながら、手の甲に跳ねる水滴を見つめて、今日一日がひどく出来の悪いシナリオのように思えてきた。
あの無人バスから始まった。学生証はスキャンできず、ブレスレットが大声で私の階級を読み上げ、乗客たちが振り向く。そのまま鉑橋街二十二番地まで歩いて帰ってきて、まるで世界に返品されて、そのまま未開封で送り返されてきた欠陥商品みたいだった。
返品理由まで、丁寧に書かれている。
外観に損傷なし。ただし現行システムとの互換性なし。
洗い物を終え、浴室でしばらく立ち尽くしてから、服を脱いでシャワーを浴びた。お湯が落ちてきた瞬間、まず肩が痛んだ。体がこの時になってようやく、今日一日が疲れたことを思い出したみたいだった。
鏡が曇り、自分の顔がよく見えなくなった。正直、それでよかった。今日はあまり自分自身と目を合わせたくない。十六歳、連邦軍中尉、雪風号の生還者、学生証失効者、カップ麺の消滅者。肩書きが多すぎる。あまりにも多すぎて、一つ印字し忘れたのではないかと疑い始めたくらいだ。――臨時人類、と。
シャワーから出ると、体にはまだ少し熱気が残っていたが、廊下はやはり冷たかった。
温度の問題ではない。
この家に人がいないという問題だ。
髪を拭きながら自分の部屋のドアの前まで来て、ドアノブに手をかけたとき、一瞬動きを止めた。奇妙だった。明らかに自分の部屋のはずなのに、見知らぬ物置を開けるような感覚があった。ドアの向こうに詰まっているのは私のベッドや机ではなく、私が追いつけなかった時間の一区間であるかのように。
ドアを開けた瞬間、ある匂いがふわりと漂ってきた。
私はその場に立ち尽くした。最初の反応は悲しみではなく、「ああ、部屋というのは本当に『長く放置された』匂いがするんだな」という感心だった。
形容しがたい。臭いわけでも、カビ臭いわけでもない。長いこと閉じられたままの本に似ている。中の文字はすべて静かにそこにいて、誰もページをめくらず、誰も触れない。だから時間そのものがゆっくりと紙の中に沈み込んでいく。空気全体が、放置されていた匂いをしていた。誰かがずっと前に一時停止ボタンを押して、そのまま再生ボタンを押しに戻ってくるのを忘れたかのようだった。
私はドア口に立ち、先に中へ入るべきか、それともこの匂いに先に謝るべきか、分からなくなった。
そして、机の上の写真が目に入った。
その写真はとても真っ直ぐに置かれていた。誰かが去る前に、わざわざ位置を直していったかのように。背景は家の裏手で、光の入り方がよく、雪風号が出発する前日は、風もそれほど強くなかった。
写真の中の私は特別に姿勢が良いわけでもなく、表情も可愛いとは言えない。せいぜい「写真を撮られているが、まだ逃げ切れていない」という顔だ。真紀は隣に立っていて、距離は遠くもなく、わざとらしくもなく、ただ自然に近かった。その自然さは、どんな作り込まれた写真よりも残酷だった。なぜなら一目見れば分かってしまうからだ。あの頃の私たちは、この先もまだたくさんの普通の日々が続くと、本気で思っていたのだと。
私は本当に、玄関でもう十分に泣いたつもりだった。
理論的には、人間には多少の効率というものがあるはずで、同じ一日に、同じくだらない出来事のために何度も繰り返し大泣きするわけがない。だが明らかに私は自分を過大評価していたし、写真というものの殺傷力を過小評価していた。
歩み寄り、指先が写真立ての縁に触れた瞬間、視界が一気に滲んだ。
前触れもなく、前置きもなく、まともな尊厳のかけらもなく。
涙が、そのまま決壊した。
「……反則でしょ、これ」
自分でも誰を罵っているのか分からなかった。写真か? 真紀か? この家か? それとも、人を一年以上も外へ送り出しておきながら、帰ってきたら自分でドアを開けて空気に向き合わせるこの世界か?
私はベッドの端に座り、タオルを握りしめたまま、とても静かに泣いた。誰かを起こしてしまうのを恐れるような静かさだった。だがこの家には、私の泣き声で目を覚ます人間なんて誰もいない。蘭はいない。
真紀もいない。ドアをノックして「どうしたの」と聞いてくれる人もいない。床を濡らすなと文句を言う人もいない。こういうときに、あの憎たらしいのに妙に効き目のある口調で「泣くのはそこまで」と言ってくれる人もいない。
私は顔を両手のひらに埋めて、突然、自分がひどく滑稽に思えてきた。
昼間、外にいたときは、あの壊れたブレスレットに大声で階級を読み上げられても平気だった。システムに異常値として扱われても平気だった。神はまったく理不尽だと思いながらも、「まあいい、生きているならそれでいい」という顔を装うことができた。
それなのに、私を本当に打ちのめしたのは、軍でも、学校でも、あのバスでも、「ご乗車ありがとうございます、星野中尉」というあの忌々しい一言でもなかった。
部屋のドアを開けて、机の上にまだ、私たちが出発前に撮った写真が置かれているのを見たことだった。
本当に、情けない負け方だ。
私は鼻をすすり、写真を手に取ってしばらく見つめた。写真の中の真紀は大袈裟に笑っているわけではなく、ただ口元をごくわずかに緩めているだけだ。その程度の表情なら、他人が見たら「九島真紀は今日、機嫌が普通なんだな」くらいにしか思わないかもしれない。
でも私には分かる。あれは彼女にしては非常に珍しい、優しさに極めて近いバージョンなのだ。分かっているからこそ、余計に腹が立つ。
「……あの日、撮らなきゃよかった」
口ではそう言いながら、親指はそれでも写真の縁をそっと撫でていた。
嘘だ。
たとえ本当にあの日に戻れたとしても、私はやっぱり撮る。
人間なんてそんなものだ。未来で思い出に刺されると分かっていても、その瞬間は笑いながら、自分の手でそのナイフをせっせと磨いてしまうのだ。
泣き続けているうちに、涙はようやく、また少しずつ止まっていった。私が突然強くなったからではない。人間の涙腺にも物理的な限界があり、一晩中無限に供給できるわけではないからだ。
その点については感謝している。そうでなければ、明日の私は脱水状態のまま、相変わらず私に容赦する気のないこの世界に向き合わなければならなかった。
私は写真を机の上に戻した。今度は元の位置よりも、少しだけ真っ直ぐに置いた。それから電気を消し、ベッドサイドの小さな夜間灯だけを残した。部屋は一気に静まり、静かすぎて、自分自身の呼吸音すら借り物のように聞こえた。
私は布団に潜り込み、横を向いて、その小さな灯りをしばらく見つめた。
どうせ、どれだけひどくても一日は一日だ。
今日はもう、十分にひどく終わった。
明日も続けてひどい日になるとしても、せめて私が眠って目を覚ますまでは、待ってもらわなければならない。
私は手を布団の中に引き込み、目を閉じた。「長く放置された」匂いと、カップ麺の残り香の塩気と、シャンプーの過剰に清潔な香りに包まれながら、ゆっくりと自分を夜の中に埋めていった。
今夜は、私一人で眠りにつく。
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