153.全船が迷おうと、席は譲らない 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
その場で脱水症状を起こされても困るからだ。
ジェスが小声で言った。
「気づいたことがある?」
「何?」
「私たちが帰ってきて、一番喜んでいるのは家族でも軍でもなくて、連邦中央研究院だ」
「喜んでいるんじゃない」と私は言った。「発狂しかけてる」
「違いがある?」
「大きい。喜んでいる人は笑う。発狂しかけている人は追加予算の申請を始める」
ジェスはその場で腰が折れそうになった。
真紀がようやく横目で私を見た。その目には、ごく薄い呆れが浮かんでいた。
「こんなときにそんなことが言えるということは、精神状態はまだ保てているわね」
「ありがとう」
「褒めていない」
「じゃあ何?」
彼女は少し間を置いた。
「観察報告」
……よし。
実に九島真紀らしい。
実に腹立たしい。
でも、なぜか悪い気はしない。
四、最後の一刀は科研でなく憲兵だった
今日の重要なことはだいたい出揃ったと思い始めたころ、本当に刃のような質問が、ようやく来た。
軍の上位将官からではない。研究院からでもない。評議会からでさえない。
連邦憲兵からだった。
連邦憲兵の大尉で、肩のラインは定規で引いたように真っ直ぐ、帽章は磨き上げられ、表情は私が子供の頃から見てきた「理解しに来たのではなく、どこに記録をつけるか確認しに来た」というタイプそのものだった。
彼はここまでずっと口を開かなかった。
今になって、初めて口を開いた。
こういう人間が一番厄介だ。
口を開いたときは、たいてい無駄なことを言わないからだ。
彼は雪風号の艦務と補給の異動から引き出した摘要を手に持ち、目を上げてアッシュを見た。
そして、非常に丁寧で、非常に人を困らせる準備ができた声で聞いた。
「ヘリウム・水素駆動炉を一台、取得したそうですが、どう説明しますか?」
現場が瞬時に静まった。
美しいほどの静けさだった。
この憲兵大尉のタイミングの選び方を、思わず称賛したくなるほどだ。
さっきの戦績、航跡、交戦、生還、科学的な奇跡は、どれも報告書の表紙や表彰状に書くのに適している。しかし彼の一言は、「英雄の帰還」という絵全体を一気に「待ってください、あなたたちは何か余計なことも手に入れていませんか」という現実的な場所へ引き戻した。
実に連邦らしい。
そして実に憲兵らしい。
私はほとんど反射的にアッシュを見た。
次に蘭を見た。
それから真紀を見た。
最後に、顔を埋めたくなった。
なぜなら、あのヘリウム・水素駆動炉は本当に存在するだけでなく、非常に存在感があるからだ。
しかも私たちはそれを取得しただけじゃない。
それで生き延びた。
私は心の中で静かに思った。
よし。来た。功績表が終わった。次は前科表の番だ。
アッシュはすぐには答えなかった。
彼の「すぐに答えない」という間は、動揺でも焦りでもない。言える内容、言えない内容、半分言ったら誰かが爆発する内容、全部言ったら誰かが始末書を書く羽目になる内容、その十数パターンの中から、今この場で首都圏を吹き飛ばさずに済む言い方を一つ選んでいるような間だ。
そして、彼は口を開いた。
「取得したのではありません」
口調は平坦だった。
「拝借したのです」
現場が半秒、静まった。
私は危うく声を上げて笑うところだった。
この一言は見事すぎる。
本当に合法的に聞こえるわけじゃない。でも、相手が絶対に受け入れないと分かっていながら、顔色ひとつ変えずに言い切るあの冷たい硬さが、実に雪風号らしかった。
憲兵大尉の目が動いた。
「拝借?」
「拝借です」アッシュは言った。
「誰から拝借したのですか?」
「海賊からです」
……よし。
今度は本当に堪えるのが辛かった。
この会話を普通の人間の耳で聞けば、「車を盗んだのではなく、強盗から短期間賃借しただけです」と言っているのと大差ない離れ業だ。
現場の誰かが、咳をしようとして無理やり飲み込んだ。
憲兵大尉はまだ専門家の顔を保っていた。
「冗談ではないことを願います」
「連邦の辺境の海賊が自発的に寄付証明書を書いてくれることも願っています」アッシュは平坦に返した。「残念ながら、どちらもありませんでした」
ああ。
これは毒がある。
しかも礼儀正しい毒だ。
私は横で補いたくなった。
申し訳ありませんが、私たちはあのとき生き延びることで精いっぱいで、海賊に印鑑を押してもらう余裕がありませんでした。
蘭がそのタイミングで記録を投影した。
「ヘリウム・水素駆動炉の取得時刻は、本艦の生命維持と主動力が二重に衰竭していた区間に当たります」蘭の話し方はいつも手術刀のようだ。大きくはないが、正確に切る。「取得源は、連邦航行識別コードを持たない、武装記録のある略奪船体の残骸です。当時、相手はすでに完全な動力、防衛能力、通信能力を失っていました」
憲兵大尉はすぐに続けた。
「つまり、相手が抵抗能力を失った後に、核心動力設備を解体して持ち去ったということですね」
「つまり」と私はとうとう口を挟んだ。「私たちは死にかけていたとき、海賊から、彼らがもう人を殺すために使えなくなっていた装置を取り上げて、自分たちが死なないようにしたということです」
真紀がごく軽く私を横目で見た。
その目を翻訳すれば、こうなる。
――いい、でも少し収めなさい。
私はそれなりに収めた。
憲兵大尉が私を見た。
「星野さん、これは――」
「生存の話です」と私は言った。
「連邦の財産管理と戦時処置規範に関わります」
「そうです。それと生存の話でもあります」
彼は少し黙って、私が単純に口の軽い一年生なのか、それともここで話を最も不都合な形に持っていこうとしているのか、判断しているようだった。
答えはもちろん後者だ。
こういうことが一度「規範の問題」として語られ始めると、後が非常に面倒になる。
そして雪風号のこの一年で最大の強みは、自分たちが何をしたかを、他の誰かに先に定義させなかったことだ。
アッシュが軽く手を上げ、私に少し引くよう示した。
分かった。
艦長代理が言うなら、引こう。
彼は憲兵大尉を見て、さっきよりさらに平坦な声で言った。
「当時の状況は以下の通りです。第一、本艦の主動力は帰投を維持できない状態にあった。第二、生命維持は衰竭のカウントダウンに入っていた。第三、連邦の救援は望めなかった。第四、取得源は敵対的な略奪船体であり、合法的な権利主張者は存在しなかった。第五、本艦はその設備を最小限の解体で取得し、自力帰投を完了した」
彼は一拍置いた。
「平時の条例に照らせば、見栄えが悪いことは認めます。必要だったかどうかを問うなら、雪風号が今あなたの頭上に停まっているという事実が、十分な答えになります」
……よし。
これはいい。非常にいい。
否定もしていない、動揺もしていない、しかも問い自体を結果論の中に引き込んでいる。
あなたが今ここで質問できているのは、私たちがあのときそうしたからだ、と。
憲兵大尉はすぐには引かなかった。
こんなに簡単に引く人間なら、最初から憲兵には向いていない。
彼は記録を一度見た。
「敵対的略奪船体というのは、海賊として正式に確認されていますか?」
蘭が素早く返した。
「船体の外部標識は複数回上書きされており、連邦または帝国の合法的な登録コードはありません。内部装備には略奪改造区画、非制式の拘束スペース、混在した武器取付点、脱着式の貨物仕切りが含まれています。交戦前に相手から先制追跡を受け、本艦の物資の奪取を試みられています」
ジェスがごく軽く付け足した。
「私たちの命まで一緒に奪おうとしていました」
憲兵大尉は彼女を無視して、蘭だけを見た。
「その駆動炉は今、どこにありますか?」
今度答えたのは蘭でも、アッシュでもなかった。
エヴリンだった。
彼女はまだ脚を引きずりながら手すりに寄りかかっていたが、声は空気を凍らせるほど冷たかった。
「雪風号の中で、まだ熱を出しています。鑑賞のために拝借してきたわけじゃないので」
会場の誰かが笑いそうになって、無理やり飲み込んだ。
私の気分は一気に良くなった。
そうだ。
全員で一緒に不快になればいい。
雪風号だけが遺書の補足説明を書かされているようでは困る。
憲兵大尉はようやく眉をひそめた。
「連邦は当該設備を証拠として封存する必要があります。これは――」
「駄目よ」と真紀が口を開いた。
短かった。無駄がなかった。刃のように無駄がなかった。
全員が彼女を見た。
真紀は半歩前に出て、アッシュと憲兵大尉の間のまだ礼儀を保っている距離に、ちょうど入り込んだ。彼女は回りくどい話し方が好きではない。今はなおさらだ。
「雪風号は帰投したばかりで艦体の状態は安定していません。代替動力の評価も終わっていない。今あの駆動炉を封存するのは証拠保全ではなく、二度目の殺人です」
……真紀はときどき、本当に愛おしい言い方をする。
愛おしすぎて、代わりに始末書を書いてやりたくなるくらいに。
憲兵大尉が真紀を見た。
「こちらは?」
亜紀が後ろから静かに補った。
「九島真紀。雪風号の帰投期間中、臨時副長職務の承継者の一人です」
私は思わず口笛を吹きたくなった。
見たか。
これが会長のお姉さんのありがたさだ。
あなたが言い終わる前に、後ろの人間があなたの身分を一番重みのある形で補完してくれる。
真紀は相手が消化できたかどうかに構わず、続けた。
「記録しても構いません。写真を撮っても構いません。封印テープを貼っても、遠隔監視をしても、技術班を張り付けても構いません。ただし、連邦が代替エネルギーの配置を完了するまで、あのヘリウム・水素駆動炉に手を触れた者は、自分で『帰投艦の二次的不安定化を引き起こした責任書』を準備しておいてください」
憲兵大尉は沈黙した。
説得されたわけではない。
詰まったのだ。
この詰まり方は面白い。
彼は真紀の言っていることが正論だと分かっている。自分が強行すれば、本当に責任が自分にかかってくる可能性があると分かっているのだ。
連邦の大人が最も恐れるものは二つある。
カメラと、署名だ。
今、その両方が揃っている。
校長がここでまた口を開いた。
「結果から見れば、雪風号が極限状態において敵対設備を回収し、自力帰投を完了したことは、本学学員の応変能力と資源統合能力の――」
私は本当に遮りたかった。
この人はどこまで、すべてのことを自分の学院の実績に結びつけるつもりなのか。
ジェスが私の耳元で小声で言った。
「海賊まで教材にしようとしてるんじゃないかしら」
「それは控えめすぎる」と私は返した。「ヘリウム・水素駆動炉まで来年の招生パンフレットに書くつもりだと思う」
ジェスの肩が激しく震えた。
バイヤー・ヴァンダー提督がようやく口を開き、校務成果発表会に変わりかけていたこの議論を引き戻した。
「設備の取得経緯に関する争議は、非公開審査に延後する」提督は言った。「現段階では実体の解体、移動、封存は行わない。軍の技術班と学院が共同で監視する」
この一言で、先に裁示が下された。
憲兵大尉はもう実体を追い詰めることができない。
それでも彼はまだ諦めていなかった。
「取得の性質については――」
今度口を開いたのは、カランド・ローゼンだった。
彼は少し後ろに立っていて、声は、ある予算案に一行の注釈を加えているかのように穏やかだった。
「戦時緊急徴用による敵性無主設備として、暫定処理することができるでしょう」
現場が半秒、静まった。
私は心の中で「おっ」と声を上げた。
これは容赦がない。
この一言で、議論の重心そのものが変わった。
海賊から拝借したもの?
連邦中央レベルの美しい人間の言葉に翻訳すれば、こうなる。
――戦時緊急徴用による敵性無主設備。
同じことだ。
まったく違う味がする。
前者は強奪に聞こえる。
後者は法理に聞こえる。
これがローゼン家の恐ろしさだ。
彼らは黒を白と言うのではない。
「あなたは終わりです」を「これには議論の余地があります」に包み直すのだ。
アイダもここで戻ってきて、最後の一刀を加えた。
「憲兵体系が『緊急徴用』という四文字にまだ疑義があるなら」アイダは憲兵大尉を見て、目は冷たく澄んでいた。「連邦法典の中に、生還者が深宇宙の辺境で海賊のためにエネルギー資産の完全性を保全する義務があるかどうか、先に確認してから来ることをお勧めします」
……終わった。
これはさらに毒がある。
しかも汚い言葉を一つも使わず、三時間後に考えれば考えるほど不快になる類の毒だ。
私は横で、表情を崩さないよう全力で堪えた。
憲兵大尉の口の端が動いた。
少し同情した。
彼が惨めだからではない。
今、彼は口と法理と実際の生還事実で「取得してきた駆動炉」を「拝借せざるを得なかった生存の核心」に変えてしまった人間たちの前に立っていて、しかも負けすぎてもいけないという状況に置かれているからだ。
この種の戦いは難しい。
特に相手にカランドとアイダのような発言者がいる場合は。
彼は最終的に半歩引いた。
「記録に異議を留保します」
アッシュは頷いた。
「構いません。取得の背景も完全に保留してください」
この一言が重要だった。
「異議」は怖くない。
怖いのは、背景を切り取って結論だけ残されることだ。
そして雪風号が今最も切り取られてはならないのは、背景だ。
私たちはヘリウム・水素駆動炉を盗むために海賊を解体したのではない。
解体しなければ死んでいたから、そうしたのだ。
大きな違いだ。
表彰状に書けるものと、供述書に書かれるものの違いくらい大きい。
私は長く息を吐いて、少し可笑しくなった。
連邦はやはり大したものだ。
普通の家の歓迎の儀式は、花束か、拍手か、挨拶の言葉だろう。
私たちの雪風号は違う。
追悼式の上空に現れ、家族が一回り泣いて、生徒会長が軍を止めて、研究院が記録を見て倒れかけて、校長が手柄を横取りしようとして、最後に憲兵が「海賊から拝借した」ヘリウム・水素駆動炉の合法性を追及してくる。
……なんというか。
忙しい。
そして、この艦の運命によく似合っている。
真紀が横でごく軽く私に触れた。
「また何を考えてるの」
「飛田艦長が今目を覚まして、自分の歓迎帰還現場がこんな様子だったと知ったら、また横になりたくなるんじゃないかと思って」
ジェスが今度こそ声を出して笑った。
真紀は目を閉じた。非常に不必要だが、すでに存在に慣れてしまった何かを忍耐している顔だった。
「霜」
「何?」
「その考え方は不健全よ」
「知ってる」私は前方で、まだ記録を取り、眉をひそめ、私たちのこの一年を人間が理解できる範囲に分類しようとしている大人たちを見渡して、口の端を引いた。「でも、役に立つ」
そして、正直なところ――
海賊のヘリウム・水素駆動炉まで拝借して生きて帰ってこられたのなら、この後、連邦がどんな調書を書こうと、私はそんなに遠慮するつもりはない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




