152.政治なんて安いコンドームだ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
九島亜紀が私たちのために奪い取ったあの三分間は、あっという間に尽きた。
当然のことだ。 三分間というのは、感動に浸るためにあるのではない。手続きを盗み、口を塞ぎ、人を動かし、荷物を運び、立ち位置を組み替え、連邦の上層部が「死者名簿から這い上がってきたばかりの連中をまた公文書の束に押し込む」暇を与えないためにある。
だから、艾許の「次の段階に移る準備をしろ」という声がヘッドホンから聞こえた瞬間、私には分かった。
よし、本当の骨が落ちてくる。
私は顔を上げ、まだ上空に浮かんでいる雪風号を見た。
あの艦はさっきからずっと追悼式の上に停まり続けていた。連邦の顔の前に差し出された平手打ちのように、引き戻すこともなく、二発目を打つこともなく、ただ静かに浮いている。静かすぎて、誰もが分かる。あれは幻覚でも、事故でも、編集ミスでも、防衛システムのエンジニアが昨晩飲みすぎてボタンを押し間違えたものでもない。
本物だ。
そして今、あの艦を一路ここまで引っ張ってきた人間が、ようやく降りてくる。
「来た」真紀が私の横で、低く言った。
私は彼女の視線を追った。
五番目の小艇が、雪風号の腹部から切り離されていく。
前の数陣とは違う。この小艇の降下は安定していて、しかも遅かった。故障でも迷いでもない。意図的な遅さだ。乗っているのが一艦分の人間ではなく、雪風号が最後に押し出す重みそのものであるかのように。
会場の騒めきも変わった。
さっきまでの感情は、「死者が生き返った」という集団的な混乱に近かった。今はもっと細く、鋭いものに変化しつつある。事情を知っている者はすでに、この小艇に誰が乗っているかを推測し始めている。事情を知らない者も、周囲で急に静まった軍官や学院幹部の顔を見れば、次に降りてくるのが普通の人間ではないことは分かる。
ジェスが私の横に来て、声を落とした。
「なんか、重みが違うわね」
「中に入っているのが見栄えじゃなくて、麻煩の本体だから」
「アッシュのことを言ってるの? それとも雪風号ごと?」
「違いがある?」
ジェスは少し考えた。
「……ないわね」
小艇が最終減速に入った。
降下区画の警告灯が一マスずつ点灯し、地上の誘導光条が外に向かって伸びていく。まるで首都圏そのものが、この一艘が着地した後、現場の重心がまた別の方向へ傾くことを知っているみたいに。
バイヤー・ヴァンダー提督が少し離れた場所に立っていた。
さっき家族の対応をし、警戒を処理し、首都圏防衛司令部の連中を片付けていたとき、彼はずっと「軍人として先に動く、私的な感情は後で」という状態だった。だが小艇が着地した瞬間から、彼の視線は動かなくなった。
あからさまではない。
でも、十分にあからさまだった。
父親というのは、時に本当に厄介だ。肩章をどれだけ高く掲げても、命令をどれだけ安定して下しても、星系の防務をどれだけ背負っていても、息子が一年行方不明だった戦艦から歩いて帰ってきたとき、目の中には戦術教範には絶対に載らないものが浮かんでしまう。
私は見た。
でも、見なかったふりをした。
大人物に対する最低限の礼儀は、時に目を閉じることだ。
ハッチが開いた。
最初に出てきたのは蘭・ヴァイスだった。
片手でハッチの縁を押さえ、もう片方の手は通信端末を押さえたまま、小艇が着地したことが彼の仕事の邪魔をしていないとでも言うように。その顔は相変わらず、精確で、無駄がなく、感情を省いていた。人類が進化の果てに不要な表情をすべて削除した結果みたいな顔だ。
だが降りてくる一瞬、私には分かった。彼が疲れていることが。
ふらつくような疲れではない。
目が澄みすぎていて、本当に長い間まともに眠れていない者の澄み方をしていた。
蘭は先に降りて、左右を一度確認した。後ろに続く者のために地上の秩序を確かめてから、ようやく脇に退いた。
二番目はアカリ・フラックだった。
動きは相変わらず無駄がなく、辺境の迷航戦艦から降りてきたというより、隣の射撃場から一回りして戻ってきたみたいな顔だった。だが右手の防具には新しい磨耗痕があり、制服の腰の側面には補修跡があり、歩くときに重心をわずかに左に逃がしてから戻す癖が以前より目立っていた。
こういう人間は困る。
痛みを訴えないほど、周囲には見えてしまうからだ。
三番目はエヴリン・サドだった。
より正確に言えば、松葉杖をつきながら、しかし自分では支えを借りないと頑張っているエヴリン・サドだった。
私は危うく白目を剥くところだった。
左脚には明らかにまだ問題があり、降りてくる一歩一歩が意地の張り合いで、顔だけは「私は負傷しているのではなく、重力が少し失礼なだけ」という冷たさを保っていた。
アカリが手を伸ばしかけた。エヴリンは見もせずに言った。
「五体満足よ」
「そうは言ってない」アカリは平坦に返した。
「でも、その手つきがそう言ってた」
「今にも自分で転びそうだから」
私は笑いそうになった。
よし。
負傷者同士がまだ口喧嘩できるなら、最悪の状態ではない。
四番目に出てきたのは、やはりドワイト・"D"・バークリーだった。
見た瞬間の第一印象は「あ、Dだ」ではなく、「この人間はどうしていつ、どんな画面の中でも、今しがた押し込まれてきた壁みたいに見えるのか」だった。
たぶん彼は本当に、途中で誰かに拾われてこのグループに加わったのだろう。前の三人はどう見ても艦橋の残存当直組で、Dだけ「俺はここにいる予定じゃなかったけど、重いものを運ぶ人間が必要だったから来た」という気配をしていた。
合理的だ。
そして、非常に役に立つ。
なぜなら彼の後ろから押し出されてきたのは、人間ではなかったからだ。
医療艙だった。
会場全体が、一瞬で音量を半分落としたみたいになった。
その医療艙の外殻は軍用の強化透明カバーで、底部の安定器はまだ薄い青色の生命維持灯を点けていて、外付けのモニタリングケーブルが槽体の両側に沿って貼りつき、酸素飽和度と生命兆候が側面スクリーンに安定して表示されていた。
つまり、見た目からして、周囲の人間が自動的に最悪の事態を想像し始めるあの装置だ。
中に横たわっているのは、元艦長、飛田瞬だった。
医療艙が見えた瞬間、前列の家族エリアの一角が炸裂した。
さっきの「喜びで泣き崩れる」炸裂ではない。
一年間積み重ねてきた恐怖が、「少なくとも姿が現れた」という綱でかろうじて持ちこたえていたのに、医療艙を目にした瞬間に一気に決壊する、そういう炸裂だった。
「瞬――!」
誰かが泣きながら名前を叫んだ。
続いて、母親らしい声、兄妹らしい声、家族の誰かの声が重なって、中の人間が次の瞬間にでも棺に入れられるかのように泣いた。
私はその場に立って、泣き崩れる人々を見て、それから医療艙側面の生命モニタを一度見た。
数値はまだ動いている。
人はまだ死んでいない。
心の中で、非常に不健全で、非常に不謹慎で、罰として廊下に立たされるのが妥当なあの考えが、即座に浮かんだ。
――まだ死んでないのに、泣き声で先に殺しそうだ。
私は表情を必死で保った。
ジェスは私の顔から何かを読み取ったらしく、すぐに肘で突いた。
「今、良心のないことを考えてるでしょ」
「考えてない」
「その『考えてない』が一番怪しい」
「私はただ、連邦市民の感情表現の豊かさについて考えていた」
「翻訳して」
「モニターの数値が現場の官員の何人かより安定してるのに、先に泣き切らないでほしいと考えていた」
ジェスはすぐに顔を逸らし、肩が震え始めた。
「本当に性格が悪い」
「ありがとう、そのおかげで精神的に健康でいられる」
そのとき、医療艙の後ろからようやく、最後の人影が完全に姿を現した。
アッシュ・ヴァンダーだ。
彼は最後に降りた。
見栄えのためではない。医療艙の底部にある安定グリップをずっと後ろから支えていて、前輪が完全に接地して、ロックされて、外の担当者が引き継ぐまで、一度も手を放さなかったからだ。
その光景は少し奇妙だった。
アッシュが普段与える印象は、こういう画面には似合わない。彼はあまりにも安定していて、艦橋の中央に座って、スクリーン越しに全員を死ぬべき位置か生きるべき位置に配置するような人間に見える。自分で何かを押したりするタイプではない。
だが彼は本当にそこに立っていた。
まだ完全には整えられていない艦長代理の制服、袖口に折り目があり、肩の固定帯に微かな圧痕が残っていて、長時間の高圧と睡眠不足で顔色が少し白すぎる。顎のラインもいつもより少し鋭い。それでも手は安定していて、歩調も安定していた。
何一つ彼を崩せなかったかのような安定さだった。
そして、雪風号がここまで帰ってこられたのは、こういう死んでも揺れない安定さのおかげだと、見た瞬間に分かる安定さだった。
現場の空気が変わった。
本当に変わった。
蘭、アカリ、エヴリン、D、そして医療艙が降りてきたとき、皆が感じたのは「雪風号の艦橋の残存者が来た」だった。
だがアッシュが歩み出た瞬間、感覚が違った。
単純に誰の階級が高いか、誰が話し上手か、誰の父親が偉いか、という話ではない。
あの人間が一歩踏み出した瞬間、誰もが自動的に理解する。――雪風号は運で生き残ったのではない。
骨がある。
そして彼は、その中で最も硬い骨の一本だ。
バイヤー・ヴァンダー提督が一歩前に出た。
たった一歩。
でもその一歩で、さっきまで前に出ようとしていた軍官が何人か、自動的に少し引いた。
私は横から見ていて、心の中に一つの感想しかなかった。
連邦の父子関係というのは面白い。
普通の家族なら、久しぶりの再会で名前を呼んだり、抱き合ったり、痩せていないか確認したりするだろう。ヴァンダー家は違う。ヴァンダー家は、どちらがより真っ直ぐに立てるか、大勢の前でどちらが先に「私的な感情」を公務らしく隠せるかを先に比べる。
相当に病んでいる。
そして、非常にヴァンダー家らしい。
アッシュはすぐには父親の方へは向かわなかった。
まず医療艙の引き継ぎ状況を一度確認し、現場の警戒と人員の配置とメディアの距離を流し見て、最後にようやく視線をバイヤー提督に向けた。
そして、立ち止まった。
敬礼した。
きれいで、無駄がなく、ここまでの砲火も、無重力も、疲労も、迷航も、死者名簿も、全部自分とは無関係だったかのように標準的な敬礼だった。
「提督に申告します」アッシュが口を開いた。声は少しかすれていたが、安定していた。「雪風号、連邦管轄領域への帰投完了。艦上生還者の第一段階収容を終了しました。元艦長飛田瞬は依然として重度の医療監視下にあります。優先的な医療転送を要請します」
会場が静まり返った。
この男、船を降りた第一声が「帰ってきた」じゃない。
報告だ。
軍校の教範を彼の頭の中に額縁に入れて飾りたくなるほど標準的だ。
バイヤー・ヴァンダー提督は彼を見て、すぐには答えなかった。
その二秒は短くない。
父親と提督という二つの身分を宙吊りにして、どちらを先に使うか自分で選ばせるくらいには長かった。
最後に、提督は答礼した。
「許可する」バイヤー・ヴァンダー提督が言った。
たった一言。
だがその一言が落ちた瞬間、後方の医療チームが全員、ようやく呼吸を許されたように動き出し、医療艙を引き継いだ。
飛田家の泣き声がさらに大きくなった。
私は本当に言いたかった。まだ死んでいません、本当に、少なくとも医療チームが艙を押していくまで待ってからでも遅くないですよ、と。でも今日はすでに全連邦の生中継の前で普通の人間がやらないことをやりすぎているので、この善意は心の中にしまっておくことにした。
アッシュは手を下ろしたが、退かなかった。
バイヤー・ヴァンダー提督も動かなかった。
父子は、引き継がれていった医療艙の通り道を挟んで、互いを見ていた。その光景は少し、同型の艦が狭い航路で行き合っているみたいだった。ぶつかりもせず、雑談をしに来たわけでもないと、お互いが知っている。
先に口を開いたのは、バイヤー・ヴァンダー提督だった。
「よくやった」
短かった。
息子が一年ぶりに帰ってきた父親の第一声としては、短すぎるくらいだった。
でも私は、アッシュの目が極めて軽く動いたのを見た。
「職務を果たしたまでです」アッシュが返した。
……よし、これはいかにも彼らしい。
私は心の中で、この父子に一枚のメモを渡したくなった。
内容はこうだ。 ――お二人とも、もし本当にまだ生きているなら、もう少し人間らしい言葉を使っていただけますか。
ジェスが私の横で「あら」と短く声を漏らした。
「何?」私は聞いた。
「今のあなたの台詞を、ヴァンダー父子に贈りたくなった」
「どれ?」
「『連邦市民の感情表現の豊かさについて』って部分」
「あの二人のはそれじゃない。感情の圧縮ファイルよ」
ジェスはその場で腰が折れるほど笑った。
一方、エヴリンはとうとう限界が来たらしく、その脚を引きずりながらDの横に寄りかかった。口調は相変わらず感じが悪い。
「ヴァンダー家が父子の軍紀模範を披露するつもりなら、先に私を座らせてほしい。立ったまま鑑賞する気力はない」
Dは彼女を見下ろした。
「立てないって先に言えばいい」
「立てる」
「今の君は、折れかけのアンテナみたいだ」
「機能は正常なアンテナ」
「……」
私は笑いそうになった。
この面々は本当に、どんな厳粛な場面にも雪風号特有の歪んだ空気を無理やり滑り込ませる才能がある。
アカリと蘭はすでに自然と両側に散って、補位に入っていた。蘭は地上の連絡端末を引き取り、直接亜紀の手続きラインに繋いだ。アカリは医療艙の動線の脇に立って、飛田家の家族と医療チームの間に、互いが衝突しない空間を作っていた。
誰に言われるでもなく、それぞれが自分の立つべき場所を知っていた。
これが艦橋要員だ。
だから彼らが揃って小艇から降りてきて、飛田瞬の医療艙を一緒に押してきたとき、あの光景があれほど重かったのだ。
ただの生還者が何人か来たのではない。
一艘の艦の残存指揮中枢が、元の艦長とともに、地上に降り立ったのだ。
言い換えれば――
雪風号は自分の心臓を、首都圏の地面に直接置いた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




