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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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151.秒読みの戦場 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

そして、すごいとも思った。


さらに恐ろしいことに――


ヘッドホンの中で、またアッシュの声がした。


「地上区、報告しろ」


私は通信を押した。


「報告します」私は、涙を拭い終えてから誰が誰に触れていいか触れていけないかを決め始めた生徒会会長を眺めながら、馬鹿正直に言った。「九島会長は泣き終わりました」


ヘッドホンの向こうが半秒静まった。


それからアッシュが聞いた。


「それで?」


私はさっき九島亜紀とカランドに連携して手続きの中に押し戻された大佐の背中を眺め、口の端を引いた。


「それで、軍は今、私たちに触れられません」


今度はヘッドホンがさらに長く静まった。


最後に、はっきりと誰かが笑ったのが聞こえた。


ジェスのような、全世界に聞かせたいタイプの笑い方ではない。


非常に短く、非常に淡く、一瞬で消えるような笑い声だった。


アッシュだ。


空耳かと思った。


「よし」彼女は言った。「ついでに目を開けておけ。この三分間は、見物のためにあるわけじゃない」


「分かってる」


「学院側の名義手続きが走っている。アイダがメディアの口を塞いでいる。亜紀が軍を止めている。あなたは地上にいる。飾りじゃない」


「あなたの話し方は、時々本当に感じが悪い」


「好かれに来ているわけじゃない」


……まあ、それは否定できない。


私は息を吐いて、注意を現場に戻した。


すると最初の変化が見えた。


前方で、学院の事務制服を着た行政スタッフが一列、九島亜紀の合図でようやく緩衝区内に入れてもらえた。端末、身元スキャナー、携帯記録モジュールを抱えて走っている。走り方はまったくかっこよくなくて、一人は電線に足を引っかけそうになっていたが、私の目にはどんな戦術部隊よりも頼もしく見えた。


なぜなら、彼女たちが入った瞬間、意味は明確だからだ。


人員を、先に学院の名義に掛ける。


一度手続きが掛かれば、私たちをまとめて連れ去ろうとする者は、その前にいくつもの扉を通らなければならなくなる。


連邦の制度は、時に本当に嫌になる。


でも時々、制度で制度を押さえるのは、なかなか気持ちがいい。


「九島会長、学籍生還名簿の本人確認が必要です――」


「確認できる者から始めて、班別、艦上編制の二重掛けで進める」亜紀は止まりもしない。「失連期間中の責任帰属、任務封存レベル、帰還後審査手順は全部後回し。今の第一優先は人が生きていることの確認であって、誰が始末書を書くかの確認ではない」


……いい。


この一言は本当にいい。


いつか誰かが書類で私を追い詰めてきたとき、この精神で返してやろうと心に刻んだ。


一方、アイダのほうも動いていた。


彼女が立っている位置は亜紀より少し外側で、ちょうどメディアエリアと行政警戒帯の間だった。カランド・ローゼンが半歩後ろに立っていて、その光景はある種の連邦権力の教育的展示みたいだった。娘が刃を出し、父親がその刃には権限があると周囲に知らしめる。


女性記者が一人、最前列まで押し込んできて、集音モジュールをほとんど人群れに突き刺しそうな勢いだった。


「現在、雪風号の一年前の失連原因と首都圏防衛システムの責任について確認できますか――」


「できません」アイダが言った。


記者は一瞬固まった。前置きも省略されるとは思っていなかったらしい。


「では現在、軍は――」


「できません」


「学院は事前に――」


「できません」


……私は笑いをこらえそうになった。


容赦がない。


これはもう太極拳ですらない。太極図を丸ごと巻いて相手の口に詰め込んでいる。


しかしアイダは次の一言で、すぐに水準を元に戻した。


「現時点で確認できる、かつ優先して報道すべき事実は、雪風号の生還者が連邦の管轄領域に帰還し、必要な保護と医療検査を受けているということです」彼女はカメラを見て、背後でたった今あの追悼式の爆発事故があったとは思えないほど安定した声で言った。「軍事行動、辺境任務、防衛手順に関するその他の質問については、正式な統一説明をお待ちください」


カランドが後ろから、非常に短く付け足した。


「今は責任を取り合う時間ではない」


記者エリアが急に静かになった。


この一言が重すぎたからだ。


重すぎて、今「では誰が責任を取るのか」と追いかけて聞いた者は、生還者の屍を踏み台にして政治討論番組の素材を作ろうとしているように見えることになる。もっとも私たちは屍としてまったく協力的ではなく、自分で歩いて帰ってきたわけだが。


ジェスが私の横に来て、低く口笛を吹いた。


「ローゼン家の人間って、みんなこんなに怖い話し方をするの?」


「知らない」私は言った。「でも、なぜ名字だけで人を圧し潰せる人たちがいるのか、少し分かってきた」


「気づいたことがある?」


「何?」


「私たちの艦、普段は問題児を収容している流浪バスみたいに見えるけど、本当に大きな場面になると、後ろから出てくる保護者が一人一人えげつない」


私は二秒黙った。


「その比喩は失礼だ」


「でも当たってる」


……そうだ。恐ろしいほど当たっている。


そのとき、真紀が反対側から来た。


簡単な医療確認を終えたばかりらしく、上着はまだ直し切れていなくて、袖口に少し折り目がついていた。でもそれは彼女の「今は忙しい、くだらない質問で私に話しかけるな」という気配を少しも弱めていなかった。


彼女は私の横に来て、前方を一度見た。


「学院の行政は繋がったの?」


「繋がった」私は言った。「会長がさっき二言で軍を手続きの中に押し込んだ」


真紀は淡く「ん」と返した。


私は振り向いた。


「反応が薄すぎない? あれ、あなたの姉よ」


「知ってる」


「さっきあんなに泣いて、振り返ったら現場の指揮系統を解体してる」


「それも知ってる」


「九島家って、小さい頃から『感情管理』を朝食に食べてるの?」


真紀はようやく私を見た。


「違う」


「じゃあ何?」


彼女は少し間を置いた。口調は平坦だった。


「いつ泣いていいか、いつ泣いた後で先に物事を片付けるかを、知っているだけ」


……くそ。


それはかっこいい。


しかも理不尽なほどかっこいい。


突っ込もうとしたとき、真紀の視線がすでに亜紀の上に長く止まっていないことに気づいた。彼女はさらに外側を一度流し見て、目がある目立たない医療後方支援通路の上で短く止まった。


そこでは白い支援車が二台、低速で動いていた。メディアのカメラはない。家族が集まってもいない。護送要員も、わざと普通の人選がされていた。普通すぎて、存在を忘れるように設計されているみたいに。


でも真紀は見た。


私もつられて見た。


そして、分かった。


アイダが勝ち取った二つ目の成果は、口を塞ぐことだけではなかった。


もう一本の線のために、場を清めてもいたのだ。


私は何も言わず、ただ非常に小さな声で聞いた。


「順調?」


真紀も私を見ず、一言だけ返した。


「今、あなたの目に映っていないなら、順調ということ」


……よし、その答えは実に標準的だ。


連邦の政治面を半分吹き飛ばせる高危険人物を、会場で最も退屈で、最も撮影する価値のない医療後方支援の動線に包んで送り出す。全員が死者の復活を見ている間に、本当に表に出せないものが、水の一滴のように滑り出ていった。


ロマンチックではない。


でも、ロマンチックより役に立つ。


そんな感慨が浮かんだとき、前方でまた動きがあった。


さっき亜紀に押し戻された大佐が、まだ完全に諦めていなかった。表情を少し柔らかくして、医官を二人連れて生還者区の縁に近づいてきた。「ただの健康確認」という、あまり文句をつけにくい角度から切り込もうとしているのが分かった。


手口は自然で、しかも汚い。


亜紀はもう一方で名簿の掛け替えを処理していて、すぐに振り向けない。


真紀の眉がわずかに動いた。


私も動いた。


特別に手続きが好きだからではない。


今日は本当に疲れていて、タイミングを読んでいると思い込んでいる大人がまた邪魔しに来るのを見たくなかっただけだ。


だから私は二歩前に出て、その線の前に立った。


大佐が止まって、私を見た。


私も見た。


ああ、女性だった。


だから、さっきのバージョンより少し手口が細かいわけだ。


「候補生」彼女の口調は丁寧だった。「ただの例行医療確認です」


「今日のここで、例行なことが一つでもありましたか?」


彼女は私がそう返すとは思っていなかったらしく、目が一拍止まった。


私は後ろの、まだ抱き合い、泣き、記者に撮られ、行政スタッフに身元スキャンを追いかけられている混乱した会場全体を指した。


「これが例行に見えますか?」


ジェスが後ろで笑いを咳に変えようとしていた。


大佐も今は強引に動けないと分かっているらしく、辛抱強く説明しようとした。


「皆さんの体調を確認するためで、他意はありません」


「そうですか」私は頷いた。「では九島会長の許可を取ってください」


「会長は軍の管轄では――」


「でも今、会長は私たちに触れさせないことができる」


私は非常に誠実に言った。


誠実すぎて、自分の態度の良さを褒めたくなるくらいに。


大佐は私を見て、目の色が少し変わった。その変化は見慣れている。「全連邦の生中継の前で一年生の新兵に説教することは私にはできないが、あなたのことは記録に残したい」というものだ。


結構だ。受け入れよう。


どうせ今日の帰還は、後で精算するべきものが出ないはずがない。


しかも正直に言えば、記録に残されそうな人間は私だけじゃない。雪風号の乗員を誰でも一人捕まえれば、一冊か二冊分の記録は簡単に揃う。


雰囲気がさらに硬くなりかけたとき、九島亜紀が戻ってきた。


彼女は私の前に出て、立ち位置は大きくなかったが、その大佐の動線をちょうど塞いだ。


まるで千回やってきたみたいに、綺麗に。


「大佐閣下」亜紀の口調は穏やかだった。「医療確認は行います。ただし今ではなく、権責の協調が完了していない部隊が独断で介入する形でもありません」


大佐が唇を引き結んだ。


「会長、あなたは軍の――」


「軍が失敗するのを防いでいるのです」


わあ。


私は横で堪えきれなくなりそうだった。


これはもう刃を抜いている。外側に非常に高価な礼儀の包み紙が残っているだけで。


亜紀は彼女を見て、声のトーンを一段も上げなかった。


「ここは最前線の接艦港でも、事故残骸の引き揚げ現場でもありません。全連邦が共に立ち会った生還現場です。先に分を失った者が、翌日の責任の核心になります。大佐閣下が今ここで動くとお決めになるなら、委員長と提督に、カメラの前で、あなたがその判断を引き受ける意思があるかどうかを確認していただくよう、すぐに手配できますが」


……容赦がない。


本当に容赦がない。


これはもう軍を止めているのではなく、軍の今後三ヶ月分の始末書の厚みを交渉の切り札にしている。


大佐の顔色が変わった。


半歩、後退した。


「了解しました」


ようやく退いた。


私はその背中を見て、非常に爽快だった。


喧嘩に勝った爽快感ではない。


誰かが高度な方法で、元々そうされるべきだった人間を、いるべき場所に戻すのを見た爽快感だ。


亜紀はその人が退いてから、ごく短く息を吐いた。


非常に短かった。


私がすぐ横にいなければ、ほとんど気づかないくらい。


私はふと理解した。


この三分間はただではなかった。


会長だから現場が従うのではない。九島家だから軍が引くのでもない。この三分間は、彼女がさっきの号泣と、生徒会長の名義と、学院の規則と、カランド・ローゼンの後ろ盾と、今日のカメラが向いている方向のすべてを使って、力ずくで奪い取ったものだ。


私たちが息をつくために奪った。


学院が先に名義を掛けるために奪った。


メディアが「生還」を先に定義するために奪った。


そして、ある目立たない後方支援の線が、静かに滑り出るために奪った。


私はふと、彼女に何か言いたくなった。


でも、考えてみると、真剣な言葉が私の口から出るとどうも変になる。


だから最終的に言ったのはこれだけだった。


「九島会長」


亜紀が振り向いた。


私はさっきの大佐が退いていった方向を指した。


「今の、かっこよかったです」


真紀が横で、非常に軽く目を閉じた。


私が次の瞬間に何かを言い出すと、すでに予感しているみたいに。


亜紀は私を見た。目はまだ泣いた後の赤みを残していて、口の端がごく薄く動いた。


「褒めてくれてありがとう、星野さん」


「どういたしまして。私は滅多に人を褒めないので、高級な認定だと思っていい」


ジェスがすぐ後ろから追い打ちをかけた。


「彼女の言う意味は、普段は罵るだけということです」


「黙って」


亜紀は今度は本当に笑った。


非常に短く、非常に薄かったが、さっきあれほど立っていられないくらい泣いていた姉のバージョンとはまったく違う笑いだった。これは生徒会長の笑いだ。自分がまだ立てていて、場面はまだ押さえられていると知っているから、ほんの少しだけ緩んでいいと分かっている笑いだ。


それから彼女は真紀を見た。


その一瞥は静かだった。


真紀は何も言わず、ほとんど気づかないくらいわずかに頷いた。


ああ。


分かった。


ここは私が口を挟む場面ではない。


普段から空気を読まないのは分かっているけれど。


ヘッドホンの中でまたアッシュの声がした。


「地上区」


私は通信を押した。


「何?」


「三分、そろそろ終わりだ」


私は顔を上げて現場を見渡した。


学院行政が名簿に繋がり、メディアの口は一時的に塞がれ、軍の第一波の直接接管は押さえ込まれ、家族エリアは秩序だった分流が始まっていて、あの目立たない医療後方支援の線は、もう何も運んでいないかのように静かだった。


私は口の端を引いた。


「十分です」


アッシュは向こうで半秒静まった。


「なら次の段階に移る準備をしろ」


何を言っているか、分かっている。


三分間で人員を確保し、名義を掛け、口を塞いで、暗線を送り出した。それだけの価値はあった。


これからは「生きて帰ってきた」では済まなくなる。


雪風号を誰が引き継ぐか、誰が最初に語りの主導権を握るか、この一年に何が起きたのかについて誰が代償を払うか。


つまり――


本当に厄介で、本当に大人の、本当に私たち一年生を巻き込んで磨り潰しにくる部分が、今から始まる。


私は息を吸い込んで、今しがた自分たちの手で叩き起こしたこの追悼式の現場を眺め、思わず笑いそうになった。


結局のところ、私たちのこの艦が迷航から帰って、連邦に最初に持ち帰ったのは、栄光ではなかった。


麻煩事だった。


しかも規模が大きく、レベルが高く、誰が触っても損をする類の麻煩事だ。


さすが雪風号だ。


生きて帰ってきても、まず天を半分ひっくり返すことを忘れない。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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