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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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147.悪い子の計画 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

アッシュがひとたびそれを決裁した瞬間、話の性質が根本から変わった。


一秒前まで、それは私とジェスという、睡眠も道徳観も半分ほど欠けた二人間が、連邦の公開追悼ニュースを見ながら思いついた邪悪な思いつきに過ぎなかった。次の瞬間には、雪風の艦橋で正式に議題に乗っていた。しかも航路、時間窓、識別チェーン、メディアノード、安保の分流、政治的後始末と、一項目ずつ作戦板に書き込まれていくタイプの正式さで。


この船には毎回感心させられる。


雪風号では、悪ふざけと作戦計画の間にあるのは、たいていアッシュの「続けろ」の一言だけだ。


主制御パネルはすぐに複数のブロックに切り替わった。


左上は首都圏航路とデュナン星近傍軌道図。


右上は追悼式の公開スケジュール、降下場周辺空域、軍の礼式機隊の窓口。


下方には、まったく異なる二色の流れ図が並んでいる。


一本は雪風号の派手な帰還ライン。


もう一本は、ヘートヴィヒの静かな移送ライン。


その画面は、どこか病的なほど美しい二重奏の楽譜みたいだった。


一本が連邦全体の目を引きつける。


もう一本が、全員が顔を向けたその隙に、表に出せないものを送り出す。


アッシュは主座に座り、清艙作業の割り振りでも告げるような調子で口を開いた。


「大項目から整理する。第一、雪風号はいつ首都圏に入るか。第二、追悼式当日の進入方法。第三、小艇で降下する人員編成。第四、ヘートヴィヒと随行の移送。第五、対外的な第一声は誰が担当するか」


「第六は」ジェスがだるそうに手を上げた。「もし本当にこれをやったとき、学院は一四四班に表彰状を出すか、それとも集団退学処分にするか」


アッシュはジェスを見もしなかった。


「それは第七項だ」


「なんで第六じゃないの?」


「第六はあなたが黙ること」


……いいな。


実にアッシュらしい。


ロイが先に航路を引き受けた。


主幕上にいくつかの光線が引かれ、現在地からデュナン星外縁まで伸びて、首都圏防衛網の手前でいくつかの角度の進入モデルに分岐した。


「目標が『全員に雪風号を見せること』なら、こっそり入港するわけにはいかない」ロイが言う。「十分に美しく、正確で、しかも会場のメインカメラに自然に収まる軸線を通る必要がある」


「その言い方、なんか結婚式の入場みたいだね」私は思わず言った。


ロイは顔も上げない。


「結婚式には対空網が睨んでない」


……それもそうか。


蘭はすでに追悼式の中継チェーンを切り始めていた。


「首都星デュナン当日は、公共記念チャンネル、軍の礼式専用回線、それから少なくとも五社の大手メディアが共用するメイン信号ノードが開く」蘭は話しながら、いくつかの発光ノードを丸で囲んでいく。「雪風号が現れた瞬間に、素性不明の大型艦影じゃなく雪風号として認識させたいなら、少なくとも十秒前にこの三本のチェーンへ識別を流し込む必要がある」


ジェスが横から引き取る。


「十秒あれば十分。最初の一人が『あれって雪風号じゃないの』と叫んだ瞬間、残りの人間が勝手に宣伝を完成させてくれる」


「それ、テロの予告みたいな言い方ね」真紀が冷たく言った。


「違う」私は訂正した。「これは公共感情の管理と呼ぶ」


アイダが、意外なほど平然と頷いた。


「ある意味では、そうね」


私はしばらく、自分が認められたことを喜ぶべきか、アイダ先輩の政治語彙が私のこんな悪だくみを洗浄できるほど発達していることを恐れるべきか、判断できなかった。


そのとき、真紀が何かを思い出したように眉をひそめて口を開いた。


「もう一つ、問題がある」


この一言が出た瞬間、私は本能的に嫌な予感を覚えた。


九島真紀が問題を指摘するのは、たいてい全員が集団で興奮して物理法則と軍法条例を忘れかけているちょうどそのタイミングで、最後の石をきっちり車輪の下に戻すときだからだ。


真紀は主幕のデュナン星防衛図を見ながら、ゆっくりと続けた。


「首都圏。デュナン星の『あれ』、どうするつもり?」


艦橋が一瞬静まった。


それから、私たち全員がほぼ同時に、真紀の言う「あれ」が何を指すのかを理解した。


惑星デュナンの近傍軌道に浮かぶ、環状に配置された十二基の巨大要塞群。


連邦首都圏の、最も硬い一層の牙。


銀河連邦最強の防衛網と称される――


十二基の「天幕(てんまく)」軌道要塞。


私はその十二個のマーカーを二秒ほど見つめてから、第一案を非常に真剣な顔で提示した。


「十二個の隕石で叩き壊す――」


「却下」


言い終わる前に、艦橋全員が声を揃えて弾き返してきた。


その揃い方は、まるで事前にリハーサルでもしたみたいだった。


私は不満顔になった。


「ちょっと、せめて最後まで言わせてよ」


真紀がまっすぐこちらを見た。


「星野、私たちは帰投するんであって、反乱軍を鎮圧しに行くんじゃない」


「じゃあ」私は諦めずに第二案を出した。「零式で張り付いて、直接メインコンピューターを落としに――」


「却下」真紀が即答した。


「なんで!」私は抗議した。


アイダは端末を下ろしもしない。


「速度が足りないから」


私は一瞬固まった。


ジェスがすぐに笑いながら追い打ちをかける。


「それに、機体が赤くないし」


「何の理屈だよ」私は思わず振り向いて睨んだ。


ロイが、なぜか大真面目に補足した。


「伝説では、赤は三倍速だからな」


私は黙った。


蘭が顔をそらした。


ジェスはコンソールに突っ伏して笑っている。


真紀は「私はいったいどこで服役しているんだ」という顔をしていた。


私は深く息を吸って、精神状態が心配なこの面々と今は張り合わないことにした。さっき自分で「十二個の隕石で首都圏防衛網を解体する」という偉大な構想を提案した以上、非常識さで言えば私にも人のことを言える立場はない。


でも笑い話はさておき、真紀が提起した問題は正しい。


天幕は背景じゃない。


あの十二基の軌道要塞がデュナンの近傍軌道に浮かんでいるのは、首都星を能動的に砲火を開く王冠の中に収めているようなものだ。雪風号が追悼式当日にデュナン上空に入りたいなら、しかも美しく、ちょうどよく、戦史教材の悪例として記録されずに済む入り方をしたいなら――天幕は「ついでに片付ける」ものじゃない。最初の、本物の関門だ。


アッシュが肘掛けを一度叩いた。


全員が静まった。


「よし、冗談はここまで」アッシュが言った。「実行できる話をする」


そのとき――


艦橋のハッチが開いた。


全員がほぼ同時に振り向いた。


エヴリン・サドが、松葉杖をついて入ってきた。


正直なところ、寝不足で見間違えたのかと思った一瞬があった。エヴリンはここのところほとんど療養を命じられていて、「負傷していても、今すぐ人を地図に押し込んで解説しそうな」あの気配は変わっていないが、今は松葉杖が加わって、礼儀正しいが怒らせると危険な病人、という印象になっていた。


「失礼」エヴリンが言った。「今、外で聞いていた」


ジェスが真っ先に眉を上げた。


「先輩、盗み聞きは――」


「戦時の情報収集」エヴリンは顔色ひとつ変えない。「盗み聞きではない」


……なるほど。


この返し方は、いかにも上院だ。


エヴリンは松葉杖をつきながら一歩ずつ主幕の前まで進み、デュナン近傍軌道防衛図を見上げた。


「これは、私が引き受ける」


艦橋全体が一瞬沈黙した。


それから、予想通り、全員がほぼ揃って懐疑的な目を向けた。


エヴリンを侮っているわけじゃない。


問題の規格が大きすぎるのだ。


十二基天幕。


首都圏。


追悼式当日。


しかも一年間死んでいたことになっていて、突然自分の追悼式に参列しに来る駆逐艦まで込みで。


これだけのものが重なれば、「度胸で押し切る」で解決できるレベルじゃない。


エヴリンも、皆が何を疑っているかは分かっているようだった。


だから松葉杖を支え直して、真顔で言った。


「私は上院の電子戦主任よ」


……ああ。


その一言で、空気が変わった。


「主任と首都圏防衛網は別物でしょ」と突っ込もうとしたが、考え直して飲み込んだ。この船に乗っている人間の中で、「天幕の目の下を優雅にくぐり抜けて自分の追悼式に出席できるか」という荒唐無稽な命題を実行可能な方向に半歩でも押し進められるとしたら、エヴリンは確かにその数少ない候補の一人だ。


私は眉をひそめて、艦橋後方の戦闘情報区画を指さした。


「前提として……あそこを先に直せる人間がいれば、の話だけど」


指しているのは、雪風号の電子戦設備とCIC補助チェーンだ。迷航、超光速跳躍、前段の交戦、後段の強行帰投と、三ヶ月眠れなかった人間みたいにぼろぼろになっている。


設備がなければ、どんな優秀な電子戦士も、バッテリーのないハッカーも同然だ。


そのとき、後方でずっと黙って聞いていたハーヴィーが手を上げた。


機関室のハーヴィーだ。顔には「あなたたちがまた艦体を爆発させようとしていないか確認しに来ただけ」という無実の表情が貼り付いていた。


「俺がやりましょうか」


ハーヴィーは頭をかいた。


「最近、機関室は安定してきてるんで、時間を出せます」


ロイがすぐに振り向いた。


「本当に大丈夫か?」


「大丈夫かどうかは分からない」ハーヴィーは正直に答えた。「でも、直せなくても今より悪くはならない」


……この人の話し方には、工学部門特有の素朴な美学がある。


アッシュはあまり迷わなかった。


「ハーヴィー、今この瞬間から、電子戦設備と識別チェーン補助系の復旧を最優先にしろ。機関室は最低限の監視要員だけ残して、必要な人手はそちらに回す」


「了解」


「エヴリン」アッシュが彼女を見た。「天幕に『撃墜すべき異常』ではなく『通過させるべき異常』として認識させる方法を考えろ」


エヴリンの唇の端がわずかに上がった。


「要求がなかなか挑戦的ね」


「承諾と受け取る」


「断る機会はあった?」


「今ある」


エヴリンは一拍置いて、それから迷いなく言った。


「では、承諾する」


真紀がようやくゆっくりと息を吐いた。頭の中の最大の不確定項が、赤からオレンジに書き換えられたような顔だった。


アイダはすでに新しいノードを書き加え始めていた。


「エヴリンが天幕の識別チェーンを処理できれば、進入方案を『低確率の賭け』から『高リスクだが制御可能』に調整できる」


「だいぶ聞こえがいい」ジェスが言った。


「聞こえがいいだけで、安全という意味じゃない」アイダが返した。


「先輩って、一言で安心させながら脅かす才能があるよね」


「安心させてない」


「だから怖いんです」


蘭もここで一言加えた。


「電子戦設備が七割以上回復すれば、進入十秒前に雪風号の識別を会場の公開チェーンに流せる。現場に先に認識させることができる」


「十秒では足りない」エヴリンが言った。


蘭が顔を上げた。


「では何秒必要?」


「七秒」エヴリンが言った。「十秒では予告になりすぎる。七秒のほうが奇跡に近い」


……この一言、気に入った。


しかも相当に病んでいる。


だからよけいに気に入った。


ロイはすぐに進入軌跡を引き直した。


「天幕が処理できるなら、デュナン外環の記念航路から入って、核心防衛回廊には踏み込まず、追悼式の礼式空域の縁ぎりぎりを圧して進む。そうすれば最初に見えるのは艦の側面シルエットで、艦首じゃない」


その弧線を見て、私は思わず口笛を吹いた。


「かっこいい」


「かっこいいかどうかは重要じゃない」ロイが言う。


「でもかっこよくできるならかっこよくしたほうがいいでしょ」


「……それは否定しない」


ジェスがすぐに笑った。


「ほら、ロイも分かってる」


真紀は眉間を押さえた。おそらく私たちの根深い価値観を矯正するのは諦めた顔だった。


アッシュは、荒唐無稽な部分がひとつひとつ分担可能な作業に変わっていくのを確認してから、ようやく締めにかかった。


「整理する」


アッシュが口を開いた瞬間、艦橋が再び静まった。


「ロイは首都圏進入ラインと離脱ライン担当。蘭は公開識別、メディア信号、会場放送への割り込み担当。エヴリンは天幕識別への対応と電子戦シナリオ担当。ハーヴィーは関連設備の復旧を最優先。アイダは皇女の移送ラインと上層部への限定報告担当。九島は艦内秩序、知情者リスト、小艇編成担当。ジェスは――」


ジェスがすぐに少し背筋を伸ばした。


「また書類仕事を押しつけられそうで怖い」


「戦術欺瞞と現場の臨機応変予案担当」


ジェスの目が輝いた。


「それは好き」


「それと、書類仕事もある」


「……副長、心理相談の申請をしたい」


「却下」真紀が言った。


私は笑いそうになって、危うくむせた。


最後に、アッシュの視線がこちらに来た。


その瞬間、いい予感は一切しなかった。


「星野」


「……今度は何?」


「第一陣の降下小艇の公開露出は、あなたが先頭を切る」


私は目の端がぴくりとした。


「本当に私が最初に降りるの?」


「そうだ」


「なんで?」


アッシュは私を見て、当然すぎて腹立たしい口調で言った。


「この案を出したのがあなただから。それに、あなたは追悼会場で全員を叩き起こせる人間でありながら、場を完全に崩壊させない、その両方をぎりぎりできる数少ない人材だ」


私は黙った。


これは褒め言葉なのか、業務上の負傷指定なのか。


ジェスは笑いで立っていられなくなりそうだった。


「シモ、おめでとう。マスコットから活動のメインビジュアルに昇格したね」


「うるさい」


口では言い返しながら、心の中ではもう否定しきれなくなっていた。


もし本当にその日が来て、雪風号が本当にデュナンの上空から切り込んで、追悼式の会場にいる全員が頭上に事故報告書の中で沈んでいるはずの艦を見上げて、私が本当に小艇で降下したなら――


その光景を想像するだけで、心臓が非常に不健全な速さで跳ね始めた。


悪ふざけじゃない。


いや、厳密に言えば悪ふざけだ。


ただ、規格が少し高すぎる。


首都圏全体がしばらく忘れられないくらいには。


アッシュはそこで、指先で肘掛けを軽く叩いた。最後の印を押すように。


「よし」


彼女は言った。


「連邦がすでに雪風号の葬式を一度挙げてくれたというなら――」


アッシュは顔を上げ、主幕の首都圏航路を、私たちの一周忌ニュースを流し続けている公共波を、そして、さっきまで揃って死んだような顔をしていたくせに、今はどこかおかしくなり始めている私たちを、順に見渡した。


そして、あの冷たさが妙に筋の通った、だからこそ腹立たしい声で、後半を落とした。


「雪風号自身で、その葬式を終わらせに行く」


艦橋が一秒、静まり返った。


次の瞬間、誰が最初に笑い出したのかは分からない。


ジェスかもしれない。


私かもしれない。


全員一緒だったのかもしれない。


でも、その瞬間、私は一つのことを確信していた。


――この帰還は、間違いなく騒がしくなる。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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