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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
435/582

145.折りたたみ椅子の会議 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

真紀は立ったまま、座らなかった。


賭けてもいいが、気に入った椅子がないからではない。今ここで真紀が座ってしまえば、気迫が半分削がれてしまうからだ。


真紀は少し間を置いてから、後半の言葉を投げつけた。


「帝国の皇女がこんなところまで、一体何の御用で?」


ヘートヴィヒはそれを聞いて、笑みを浮かべた。


親しげな笑みではない。


職業的な微笑みだった。幼い頃から訓練され、必要な時に本心の上へ被せるためだけに磨かれた、標準規格の表情のようだった。


「私は特別調停大使です」


真紀は眉一つ動かさなかった。


「何を調停するのですか」


「申し訳ありませんが」


ヘートヴィヒの口調は平静だった。


「それを知る資格は、あなたにはありません」


部屋が、一瞬静まり返った。


隣でジェスが小さく息を吸う音がした。


驚きではない。


「おお、これは鋭い一言、好きだわ」という種類の吸い方だった。


真紀の表情は変わらなかった。


だが、私には見えた。


真紀の目尻が、ごくわずかに跳ねた。


これは珍しい。


珍しすぎて、隣に立て看板を立てて記念したいくらいだった。


――九島真紀大尉、本日初めて、たった一言で真正面から頬を打たれ、それでも相手をその場で絞め殺さなかった記念。


真紀は質問を続けた。


「あなたの調停の相手は連邦ですか、それとも帝国の内部ですか」


ヘートヴィヒは間も置かずに返した。


「それを知る資格は、あなたにはありません」


真紀はまた聞いた。


「富士丸で移送されていたのは、あなた本人ですか、それともあなたが携えていた情報か、物品ですか」


ヘートヴィヒはやはり同じ言葉を返した。


「それを知る資格は、あなたにはありません」


三度目。


「富士丸を追っていた帝国駆逐艦三隻は、誰の命令で動いていたのですか」


ヘートヴィヒは、そこで初めてほんの一拍だけ言葉を切った。


錯覚と言えるほど短い間だった。


それから彼女は真紀を見つめ、再び平然と言った。


「それを知る資格は、あなたにはありません」


……なるほど。


これはもはや、質問に答えているのではない。


外交辞令を鈍器として使い、真紀の額をコツン、コツンと叩いているのだ。しかも一撃ごとに、「あなたはまだその器ではない」というメッセージを添えて。


私は真紀の方へ視線を向けた。


真紀は何も言わなかった。


だが、また目尻が一度だけ動いた。


二度目だ。


妙な感覚がじわじわと湧き上がってきた。


この二人……よく似ている。


どちらも声量で勝負するタイプではない。


どちらも感情を顔に書き出すタイプでもない。


だが、問題はそこから先だ。


似ているだけなら、まだ怖くはない。


本当に厄介なのは――この二人の背後に立っているものが、まったく異なる、時には正面から衝突する体系だという点だ。


真紀は財閥、軍隊、責任、実務を物差しにしている。


ヘートヴィヒは皇室、外交、秩序、国家を物差しにしている。


一つは連邦の定規。


一つは帝国の定規。


今、その二本の定規が無理やり同じ部屋に押し込まれ、今にも崩れそうな倉庫のテーブルを挟んで、向かい合っている。


これから互いをどう測ろうとするのかを想像するだけで、頭皮が痺れる。


だから私は、非常に合理的で、非常に成熟した、非常に生存本能に忠実な決断を下した。


テーブルの上にある、存在すらしていないお茶がそろそろ冷めた、という演技をしながら立ち上がり、「失礼、皆様のお茶を新しくしてきますね、そのまま永遠に戻らなくても構いません」という一人芝居を完成させようとした。


折り畳み椅子から尻がほんの少し浮いた瞬間――


「シモ」


真紀は顔も向けなかった。


「座りなさい」


「……」


逃げ道が消えた。


私はおとなしく座り直すしかなかった。


折り畳み椅子が、ごく軽く、だがこの瞬間にはひどく場違いな金属の呻き声を立てた。


向かいで、ヘートヴィヒの目が少し細くなった。


まずい。


この表情の意味が、分かり始めている。


また値踏みだ。


見ているのではない、値踏みしているのだ。


私と真紀の話し方、距離感、割り込むタイミング、私が逃げようとして引き戻された、あの間抜けな様子までを、すべて頭の中に放り込んで計算しているような目だった。


彼女は私を見て、真紀を見た。


それから、その、認めたくなるほど整った顔に、ごく浅い笑みが浮かんだ。


「あなたたち二人のやり取り、なかなか興味深いですね」


背筋に冷たいものが走った。


来た。


こういう人間が「やり取りが興味深い」と口にした時、それはもはや表面だけを見ているのではない、という証拠だからだ。


真紀はその一言には乗らなかった。


ただ折り畳み椅子の背もたれに、指先をそっと置いただけだった。その関節は、そこに釘で打ち込まれているかのように安定していた。


「殿下」


真紀が言った。


「もし今日は雪風の人間関係を鑑賞しにいらしたのなら、場所を変えることをお勧めします。こちらは入場料こそ取りませんが、収容にはかなり手間がかかります」


隣でジェスが低く「ぷっ」と吹き出した。


今、彼女の心の中で、ポップコーン片手にこの交渉を観戦している姿がありありと浮かんだ。


ヘートヴィヒは怒らなかった。


むしろ面白がっているように、視線を真紀から私へ、そしてまた真紀へとゆっくり移した。


「副長殿は、ずいぶん彼女をお守りになるのですね」


「守っているのは艦の資産です」


真紀は瞬きもせずに返した。


「勝手に銃口の前へ出て、他人の戦術ミスを訂正する未成年の資産も含めて」


「ちょっと」


私は即座に抗議した。


「座って」


真紀が言った。


「ほら」


ヘートヴィヒは淡々と言った。


「やはり興味深い」


あまりにも平坦な口調だったので、私は本気でこの折り畳み椅子を畳んで盾代わりにしたくなった。


なぜなら、彼女が今しているのは雑談ではないと分かったからだ。


確認している。


雪風で誰が決定を下すのか。


誰が表の秩序なのか。


誰が横で突然転がり出て足の指を折るが、結果的に役に立つ小石なのか。


残念ながら、その小石はほぼ間違いなく私だ。


ヘートヴィヒがついに一歩、前に出た。


軽い一歩だったが、倉庫の中の空気全体が、その一歩に合わせて再配置された気がした。


「副長殿がそこまで率直でいらっしゃるなら、こちらも時間を節約しましょう」


彼女は真紀を見据え、その冷静すぎて腹立たしい口調のまま言った。


「この艦で、本当に決定権を持っているのは誰ですか」


一本目の刃だ。


思わず口笛を吹きそうになった。


鋭いからではない。見事だからだ。余計なことは一切問わず、いきなり中枢を突いてきた。


真紀も引かなかった。


「殿下、今いるのは雪風の中です」


彼女は言った。


「帝国外交部でも、皇室の謁見室でもない。ここの最初のルールは一つ――質問をするのは、あなた一人ではないということです」


ヘートヴィヒの唇の端が、ごくわずかに動いた。


笑いというより、心の中に一本、印をつけたような動きだった。


「つまり、お答えになるおつもりはないと」


「つまり」


真紀は、彼女の文型をそのまま推し返した。


「あなたが雪風にリスクを負わせるだけの価値を示すまでは、知る資格はないということです」


私は思わず拍手したくなった。


見事だ。


しかも真紀式の見事さだ――声を張り上げるわけでも、きつい言葉を吐くわけでも、机を叩くわけでもない。ただ、相手がさっき使った刃物を拾い上げて、刃を拭き、今度はこちらの肋骨の隙間に差し込んだだけだ。


ヘートヴィヒの瞳の奥にある静けさが、わずかに揺れた。


乱れではない。


認めたのだ。


目の前のこの連邦の副長が、ただの手続き担当ではないと。


彼女は二本目を投げてきた。


「では、艦長代理は、直接話す価値がありますか」


真紀は一拍の間も置かなかった。


「それは、あなたに彼の時間を費やす価値があるかどうかによります」


ジェスがとうとうこらえきれず、明らかに怪しい動きで肩を震わせた。真紀にこの場から放り出されたくないという本能がなければ、もう声を上げて笑っていただろう。


ヘートヴィヒはジェスへは目も向けなかった。


三本目はさらに速かった。


「連邦は、本当に理解しているのでしょうか。富士丸から受け取ったのが何であるかを」


今度、彼女は「誰」とは言わなかった。


「何」と言った。


好い、この女はやはりどこかおかしい。


だが政治的価値が高く、周囲の血圧を着実に上げる類のおかしさだ。


倉庫が一瞬、静まった。


胸の中の糸が、きゅっと張り詰めた。


彼女は謎めかそうとしているのではない。


こう言っているのだ。雪風が船に上げたのは人だけではない、と。


肩書き。


リスク。


情報。


一つ間違えれば、連邦と帝国と辺境艦隊と、この不運な駆逐艦全体を徹夜させるような何かだと。


真紀はすぐには答えなかった。


ヘートヴィヒを見つめ、その視線は揺れなかった。


「理解していません」


真紀は言った。


「だから今、ここに座ってあなたに聞いている」


ヘートヴィヒは顎を少しだけ上げた。


「先程、すでに回答しましたが」


「いいえ、殿下」


真紀の声は、彼女よりさらに平坦だった。


「今のお答えは回答ではなく、ポーズです」


……おっと。


これも十分鋭い。


聞いているこちらまで頭皮がじりじり熱くなる。


この二人は、本当に会話をしているのではない。国家機構と職業軍人の倫理が、倉庫のテーブルを挟んで互いの顔を測っている。


ヘートヴィヒの傍らの女中は、最初から最後まで一言も発していなかった。


だが、ずっと全員の手を見ている気配があった。顔でもなく、表情でもなく、手だ。


誰が先に動くか。


誰が銃を抜くか。


誰が堪えているか。


誰が震えているか。


こういう人間が一番厄介だ。彼女は傍聴しているのではなく、「最初に折るべき手」を選んでいる。


私は視線を逸らした。


正直なところ、あまり目を合わせたくない。


怖いからではない。


ただ、面倒だからだ。


訓練キャンプの変態教官たちでさえ、人を半殺しにしてから「どうやって生き残るか」を教えてくれた。この女中は、その中間工程を丸ごと省略しそうに見えた。


真紀は椅子の背から手を離し、ようやく座った。


それは退いたというより、「さて、本番だ」という合図に見えた。


「殿下、今度はこちらから質問します」


ヘートヴィヒも腰を下ろした。ここが倉庫ではなく、艦板で組み立てた皇室会談室であるかのような優雅さで。


「どうぞ」


「一つ目。あなたは任務内容の説明を拒否した。二つ目。帝国駆逐艦の指揮系統の説明も拒否した。三つ目。雪風に対して、収容と保護と秘匿を求めた」


真紀は一拍置いた。


「あなたは何を根拠に、私たちにその負担を引き受ける資格があるとお考えですか」


ヘートヴィヒはすぐには答えなかった。


まず手袋の縁を整えた。その仕草は小さかったが、妙に腹が立った。追い詰められている時でさえ、自分の身だしなみを整える余力があるという意味だからだ。


「すでにそうなさったからです」


彼女は言った。


私は一瞬、呆然とした。


真紀は表情を変えなかった。


ヘートヴィヒの声は変わらず安定していた。


「雪風が交戦に介入し、帝国駆逐艦を撃破し、富士丸の乗員を受け入れ、棄船処置を施し、私を艦に上げた時点で、あなた方はもはや傍観者ではありません」


彼女は真紀を見つめ、ごく平静に続けた。


「副長殿、これは『負担するかどうか』の話ではありません。すでにどこまで負担してしまったか、という話です」


……悔しいが、この一言は認めざるを得なかった。


しかも、認めたくないほど正確だった。


私たちが砲を撃ち、船を受け入れ、富士丸を処理した瞬間から、雪風は「通りがかった連邦艦」から、「この事件の生存証拠であり、同時に消される候補」へとクラスチェンジしていた。


真紀もそれを分かっている。


だからただ、淡々と言った。


「だからこそ、私たちが誰のためにこの厄介ごとを背負っているのか、知る必要がある」


ヘートヴィヒは引かなかった。


「一人の外交特使のためです」


「足りません」


「一人の帝国皇女のためです」


「まだ足りません」


「私がここで消えれば、辺境情勢が即座に悪化する、そのためです」


「だいぶ近づいてきましたね」


真紀が言った。


再び、空気が静まった。


私は隣で座りながら、ひどくおかしな感覚に襲われた。


本当に、この二人はよく似ている。


感情的な答えを受け付けない。


見栄えを信じない。


表面的な言葉を信じない。


一つ一つの文を骨だけになるまで削ぎ落とし、「では、実際に使える部分はどこですか」と問い続ける。


もしこの二人が同じ艦に生まれていたら、その艦はおそらくとんでもなく強かっただろう。


同時に、おそらく毎日誰かが脱艦願いを書いていただろう。


私が雪風の医療区に追加ベッドの確保を脳内で申請し始めた時、ヘートヴィヒの視線が突然、こちらへ向いた。


何の前触れもなく。


「星野 シモ」


背筋が強張った。


「……何」


真紀が横目で私を見た。その視線は、「その返事は少しは軍人らしくならないのか」と言っていた。


ならない。


少なくとも今は。


ヘートヴィヒは私を見つめ、瞳が、重さを量る刃物のように細くなった。


「停機坪で、最初にあの一言を口にしたのはあなたですね」


「どの一言のこと?」


「『もし彼らが奇襲を仕掛けるつもりなら、あなたたちは今頃とっくに死んでいる』という一言です」


……あれか。


「それがどうしたの」


「一つ、確認したいことがあります」


ヘートヴィヒは言った。


「この艦でのあなたの位置は――ただ口の早い未成年乗客なのか。それとも、現場の戦術判断に口を挟む資格のある人間なのか」


私は椅子から飛び上がりそうになった。


なんて質問だ。


表向きは私への問いかけだが、実際には真紀への問いだった。「彼女をここに座らせているのは、有用だからか。それともあなたの私情か」と。


鋭い。


あまりにも鋭い。


彼女がさっきから私と真紀のやり取りを観察していた理由がようやく分かった。面白がっているだけではない。


「この子は雪風で、九島真紀に庇護された問題児なのか。それとも、意思決定の鎖に割り込んでくるイレギュラーなのか」を見極めていたのだ。


真紀が口を開こうとした瞬間、私が先に言った。


「乗客じゃない。パイロットだ」


真紀が眉をひそめた。


「シモ――」


「分かってる」


私は手を上げて彼女を遮り、ヘートヴィヒを見据えた。


「未成年、口が軽い、時々感じ悪い。その辺は全部認める。でも停機坪で言ったことは、その場しのぎじゃない。竹中曹長より半拍遅れて現場に着いて、半拍早く、あなたたちに戦う意図がなかったと気づいただけ」


ヘートヴィヒは何も言わなかった。


私のどの神経がどう接続を間違えたのかは知らない。ただ、一度火がつくと、口が勝手に走り続けた。


「それに、さっきあなたは『連邦軍が全員頭を使わないわけではない』と言った」


私は椅子の背にもたれ、無理やり気圧を上げた。


「奇遇ね。私も今まで、帝国の皇女なんて、肖像画の中で高そうに見えるだけで、実用性はだいたいゼロだと思ってたところよ」


ジェスは本当に噎せた。


彼女は顔を背け、肺を吐き出しそうな勢いで咳き込みながら笑いをこらえた。


真紀の眉間がぴくりと動いた。


女中が初めて、真正面から私を見た。


その瞬間、ここが雪風でなければ、私はすでに彼女に椅子ごと折り畳まれて倉庫の隅にしまわれていただろう、という確信があった。


だが、ヘートヴィヒはただ私を見つめていた。


数秒間。


それから、彼女は本当に笑った。


さっきまでの職業的な仄かな笑みではない。本物の笑みだった。


短く。


薄かった。


だが、その一度の笑いは、彼女がこれまで見せてきたどんな辛辣な言葉よりも、よほど怖かった。


「結構」


彼女は言った。


私は呆然とした。


「何が結構なのよ」


「少なくともこの艦には、私が何者か知った後でも、普通の人間のやり方で話を続けられる人間がいる、ということです」


私は口を開いたが、どちらを先に返すべきか分からなかった。「普通の人間はそんな誉め方をされない」とか、「あなたの普通の基準はどこかおかしいのでは」だとか。


真紀が先に主導権を取り返した。


「殿下、もし雪風の人格テストをされたいだけなら、いずれアンケート用紙を送ってください」


「いいえ」


ヘートヴィヒは一瞬の笑みを消し、再び冷静さを纏った。


「これから話すことを理解できる相手がいるかどうか、確認していただけです」


部屋が、再び静まった。


ジェスも笑わなくなった。


胸の中の嫌な予感が、小雨から暴風警報レベルに格上げされた。


真紀は彼女を見つめた。


「ようやく話をする気になったと?」


「一部だけ」


ヘートヴィヒは言った。


「どの部分です」


ヘートヴィヒの視線が、真紀、私、ジェスをゆっくりなぞり、最後に何か決心したようだった。


「あの三隻の帝国駆逐艦は、辺境の臨検を行っていたのでも、通常の保護移送案件を追っていたのでもありません」


声には一切の揺れがなかった。


だが、私の呼吸はそこで一度止まった。


来た。


ようやく来た。


ヘートヴィヒは後半を静かに落とした。


「彼らが確認していたのは、私が途中で死ぬかどうかです」


誰も口を開かなかった。


折り畳み椅子も、倉庫の壁も、上を走る配管も、白々とした照明も、その一言を部屋の真ん中に釘で打ちつけた。


真紀は驚いた顔をしなかった。


ただ、さらに静かになった。


「あなたが死ぬことを望んでいたのかどうかと」


真紀はゆっくりと言った。


「あなたが死ぬかどうかを確認したかったのかどうかは、別の話です」


「ええ」


ヘートヴィヒは彼女を見つめ、淡々と返した。


「だからこそ、まだここに座っている」


……これがヘートヴィヒだ。


自分が殺されかけた話をしているにもかかわらず、彼女の口調は、本人のチェックを終えた外交ブリーフィングを読み上げているようだった。


私は隣の折り畳み椅子に頭を打ちつけて、物理的な記憶喪失でこれからの会話から逃げられないか真剣に検討した。


だが真紀は、私の頭の中にあるその情けない脱出ルートを最初から知っていたかのように、私を見ずに一言を放った。


「シモ、ちゃんと座って。これからの話は、あなたも聞く必要がある」


……副長という役職は時に、残酷だ。


考えていることを読まれるだけではない。


逃げ出そうとする前に、出口を先に施錠される。


ヘートヴィヒは私たち二人を見渡し、目を再び平坦に戻した。


「よろしい」


彼女は言った。


「それでは、ここからは私が問い、あなた方が答える番です」


心の中で、私は一言だけ呟いた。


――終わった。

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