144.思いがけない者 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
結局、私たちはヘートヴィヒをどこか立派な場所へ案内したわけではなかった。
艦長室でも、士官用の会客室でも、少なくとも造花の一鉢でも置いて「連邦軍はまだ倉庫を外交の場に使うほど落ちぶれていない」という錯覚を維持できる正規の応接室でもなかった。
私たち三人――ジェス、私、そして真紀――は、ヘートヴィヒと、その背後でずっと撤退経路を目で測っているような随行者たちを連れて、中上層のどこかにある半分空になった倉庫へ入った。
中には折り畳み椅子が数脚あった。
普段は隅に積まれていて、臨時集会や緊急ブリーフィング、あるいは学院の「今日は全員残って上官の話を聞け」という場面になって初めて引っ張り出される、あの種類の椅子だ。
構造は単純で、長く座ると尻が痛くなり、気分が悪ければそのまま殴り合いの道具にもなる。
雪風らしかった。
そして今の「まず排場は後回し、先にあなたを信用するかどうかを決める」という空気にも、よく合っていた。
ヘートヴィヒは入口で部屋を一度見渡した。
環境を確認しているのではなかった。もしここで話が決裂した場合、この場所で事態を処理するのに十分かどうかを確認しているように見えた。
それから彼女は淡々と言った。
「あなたたちは外で待っていなさい」
私たちに言ったのではなかった。後ろにいる護衛たちへ言ったのだ。
その数名はほとんど躊躇なく、即座に足を止めた。
ただ一人だけ、ヘートヴィヒの後について入ってきた。
貼身女僕だった。
私はその女僕を一瞥して、心の中で警報が鳴った。
これは普通ではない。
アニメに出てくる、紅茶を運んで顔を赤らめながら「坊ちゃん、下着を覗かないでください」と言うような萌え系女僕では、まったくない。
この女僕が私に与えた感触は、訓練キャンプで出会ったあの数名の変態教官に近かった。「怖い」という種類の怖さではない。「今あなたが一言でも間違えたら、先に遺言を整理してから、あなたをこれらの折り畳み椅子より整然と折り畳んでくれる」という種類の怖さだった。
私は心の中でひどく意地悪に補足した。
……なるほど、皇女の貼身女僕だけある。この職の採用条件は、お茶の淹れ方ではなく、遺体の処理方法だろう。
真紀は前置きをしなかった。
一切の助走もなかった。
扉が閉まった瞬間、真紀はまっすぐ切り込んだ。
「あなたは第三皇女だと言った」
真紀は立ったまま、座らなかった。
賭けてもいいが、気に入った椅子がないからではない。今ここで真紀が座ってしまえば、気迫が半分削がれてしまうからだ。
真紀は少し間を置いてから、後半の言葉を投げつけた。
「帝国の皇女がこんなところまで、一体何の御用で?」
ヘートヴィヒはそれを聞いて、笑みを浮かべた。
親しげな笑みではない。
職業的な微笑みだった。幼い頃から訓練され、必要な時に本心の上へ被せるためだけに磨かれた、標準規格の表情のようだった。
「私は特別調停大使です」
真紀は眉一つ動かさなかった。
「何を調停するのですか」
「申し訳ありませんが」
ヘートヴィヒの口調は平静だった。
「それを知る資格は、あなたにはありません」
部屋が、一瞬静まり返った。
隣でジェスが小さく息を吸う音がした。
驚きではない。
「おお、これは鋭い一言、好きだわ」という種類の吸い方だった。
真紀の表情は変わらなかった。
だが、私には見えた。
真紀の目尻が、ごくわずかに跳ねた。
これは珍しい。
珍しすぎて、隣に立て看板を立てて記念したいくらいだった。
――九島真紀大尉、本日初めて、たった一言で真正面から頬を打たれ、それでも相手をその場で絞め殺さなかった記念。
真紀は質問を続けた。
「あなたの調停の相手は連邦ですか、それとも帝国の内部ですか」
ヘートヴィヒは間も置かずに返した。
「それを知る資格は、あなたにはありません」
真紀はまた聞いた。
「富士丸で移送されていたのは、あなた本人ですか、それともあなたが携えていた情報か、物品ですか」
ヘートヴィヒはやはり同じ言葉を返した。
「それを知る資格は、あなたにはありません」
三度目。
「富士丸を追っていた帝国駆逐艦三隻は、誰の命令で動いていたのですか」
ヘートヴィヒは、そこで初めてほんの一拍だけ言葉を切った。
錯覚と言えるほど短い間だった。
それから彼女は真紀を見つめ、再び平然と言った。
「それを知る資格は、あなたにはありません」
……なるほど。
これはもはや、質問に答えているのではない。
外交辞令を鈍器として使い、真紀の額をコツン、コツンと叩いているのだ。しかも一撃ごとに、「あなたはまだその器ではない」というメッセージを添えて。
私は真紀の方へ視線を向けた。
真紀は何も言わなかった。
だが、また目尻が一度だけ動いた。
二度目だ。
妙な感覚がじわじわと湧き上がってきた。
この二人……よく似ている。
どちらも声量で勝負するタイプではない。
どちらも感情を顔に書き出すタイプでもない。
だが、問題はそこから先だ。
似ているだけなら、まだ怖くはない。
本当に厄介なのは――この二人の背後に立っているものが、まったく異なる、時には正面から衝突する体系だという点だ。
真紀は財閥、軍隊、責任、実務を物差しにしている。
ヘートヴィヒは皇室、外交、秩序、国家を物差しにしている。
一つは連邦の定規。
一つは帝国の定規。
今、その二本の定規が無理やり同じ部屋に押し込まれ、今にも崩れそうな倉庫のテーブルを挟んで、向かい合っている。
これから互いをどう測ろうとするのかを想像するだけで、頭皮が痺れる。
だから私は、非常に合理的で、非常に成熟した、非常に生存本能に忠実な決断を下した。
テーブルの上にある、存在すらしていないお茶がそろそろ冷めた、という演技をしながら立ち上がり、「失礼、皆様のお茶を新しくしてきますね、そのまま永遠に戻らなくても構いません」という一人芝居を完成させようとした。
折り畳み椅子から尻がほんの少し浮いた瞬間――
「シモ」
真紀は顔も向けなかった。
「座りなさい」
「……」
逃げ道が消えた。
私はおとなしく座り直すしかなかった。
折り畳み椅子が、ごく軽く、だがこの瞬間にはひどく場違いな金属の呻き声を立てた。
向かいで、ヘートヴィヒの目が少し細くなった。
まずい。
この表情の意味が、分かり始めている。
また値踏みだ。
見ているのではない、値踏みしているのだ。
私と真紀の話し方、距離感、割り込むタイミング、私が逃げようとして引き戻された、あの間抜けな様子までを、すべて頭の中に放り込んで計算しているような目だった。
彼女は私を見て、真紀を見た。
それから、その、認めたくなるほど整った顔に、ごく浅い笑みが浮かんだ。
「あなたたち二人のやり取り、なかなか興味深いですね」
背筋に冷たいものが走った。
この言葉そのものが怖いのではない。
こういう人間が「やり取りが興味深い」と口にした時、それはもはや表面だけを見ているのではない、という証拠だからだ。
そして私は、非常に強く、非常に嫌で、非常に正確な予感を覚えた――
ヘートヴィヒが次に言うことは、間違いなく私の気分を良くしない。
私は心の中で、自分のために見えない蝋燭を一本灯した。
そして、心の底からこう思った。
……アッシュ、今から零式に戻って帝国軍と撃ち合いを続ける申請、まだ間に合いますか。
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