142.完全撃破 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
普段どぶの中に潜んで人を盗み噛みするだけの帝国潜航艦が、三次元側へ強引に震い出され、本来見せたくなかった骨格を一截だけ晒していた。艦体のラインは一方では内側へ縮もうとし、もう一方では位相震動弾が残した乱気流に噛みつかれて動けない。全体の様子は、狼狽えた様子がひどく因果応報らしかった。
私はすでに真紀の命令通り、零式を右上方へ離脱させていた。
普通なら、今すべきことはただ打撃軸から離れ、艦橋の後続火力の邪魔をせず、初めての実戦投弾を終えた未成年の操縦士として、これ以上突発的なことをしない、それだけだった。
問題は――
海狼がまだ動いていることだった。
「痛い、少し震える」という動き方ではなかった。
明らかに、奴はまだ自分を折り畳んで戻ろうとしていた。艦体後半部の不自然な暗面が内側へ収まりかけていた。頭を棍棒で叩かれながら、それでも穴の中へ潜り込もうとしている狼のように。
私はそれを見て、頭皮がわずかに粟立った。
怖いからではない。
もちろん怖くもあった。だが今回、怖さに混じっているのは別の、もっと厄介なものだった。非常に嫌な、非常に中途半端な戦術的直感だった。
今逃がしたら、また来る。
しかも次は、こんなに馬鹿ではない。
「……まだ反撃しようとしてる」
自分が低く言うのを聞いた。
ジェスがすぐに返した。
「そう、あいつはクソビッチよ。どうする、戦闘日誌にそのまま記録しておこうか?」
「いい、戦闘日誌はもう十分汚れてる」
言いながら、手は先に動いていた。
零式が外切線の上で短い弧を描き、私は機首を押し下げ、機体全体を海狼の翻った艦影へ向けて再び切り込ませた。
次の瞬間、通信が半拍静まった。
最初に声を出したのはロイだった。
「……星野、何をしている?」
音量は上がっていなかった。むしろ落ち着いていた。だが落ち着いているからこそ、「三秒以内に自分で説明しなければ、コクピットに浸水したと疑うぞ」という圧力があった。
「尻尾を噛みに行く」
私は言った。
「それは標準的な戦術用語ではない」
アイダが冷たく補足した。
「でも意味は明確でしょ」
私は前方で痙攣するように面を変え続ける海狼を見つめた。
「今、奴は衝撃で耳鳴りがしていて、注意は雪風の方に向いてる。私が邪魔しに行って、残っている『まだ反殺できる』という気持ちも吐き出させる。奴がこっちに向いてくれれば、艦腹がもっと露出する」
真紀はすぐには否定しなかった。
それが何より怖かった。
「この子は狂っている」ではなく、「この子の狂い方に価値があるかどうか」を考えているということだからだ。
艦長代理は直接聞いた。
「理由は」
「パルスレーザーでは奴を壊せない」
私は早口で言った。一拍遅れたら自分でもこの計画が狂気だと思いそうだったから。
「でも煩わせることはできる。煩わせて、分散させて、防空を開かせて、こっちを追わせて、自分で収束姿勢を崩させる。奴が私の方に偏れば、艦腹がもっと見える。そうしたら下から散熱溝と推進口を打てる」
通信の向こうが一瞬、沈黙した。
それからジェスが低く口笛を吹いた。
「へえ。初めての実機で回し蹴りを覚えるとは、シモ、随分と不良少女ね」
「ただ、隠れたまま格好つけてる奴が嫌いなだけ」
アカリが素早く続いた。
「可能です。海狼の重力紋が再集中中。零式が下方から切り込めば、奴は追うために二次収束を遅らせなければならない」
「リスクは」
艦長代理の二言だった。
アイダが即座に答えた。
「高い。特に初めての実機では」
「ありがとう。冬の鉄柵みたいに冷たい信頼ね」
「でも不可能ではない」
アイダが後半を補った。
「前提として、一人で英雄を演じようとしないこと」
私は奥歯を噛んだ。
これは正確に刺さった。なぜなら一瞬、確かにこんな馬鹿な考えが頭をよぎったからだ。もし今奴をぼろぼろにできたら、艦橋に戻った後、生徒会の連中でさえ私を見る目が変わるかもしれない、と。
……よろしい。青春期の自尊心は戦場のゴミだ。
真紀の声が個人回線に入ってきた。
「シモ」
「いる」
「行っていい」
彼女は言った。
「でも、自分を証明しに行くんじゃない。雪風のために奴を押さえに行くのよ」
喉が少し締まった。
「……分かった」
「それと」
「うん?」
「初めての実機任務で死んだら、困る」
「それはどんな優しさよ」
「私にとっては、十分な優しさ」
……まったく。体温を手術刀の中に隠すようなこの言い方が、なぜか私に効くのだから、本当に腹立たしい。
艦長代理が最後に決定を下した。
「許可する。零式一号機、自主的な牽制攻撃を許可。攻撃の優先順位は牽制、撹乱、より多くの実体面を露出させること。戦闘に没頭するな」
「了解」
「それと」
艦長代理は一拍置いた。
「生きて帰れ」
私は危うく返事に詰まりそうになった。
この艦は今日、一体どうなっているんだ。一人また一人と、肝心な場面で急に人間らしいことを言う。集団で私を心律失調にさせるつもりか。
私は胸の奥のその一瞬の、戦闘員らしくない震えを強引に押さえ込み、注意力を全部前方へ引き戻した。
海狼はそこにいた。
普通の艦艇が持つ「私は完全に存在している」という存在感がなかった。今こうして一部を引き出されても、まだ間違った答えを無理に維持しようとしているように見えた。
艦首は細長く陰鬱で、艦腹は互いにずれた甲殻が何層も重なっているようだった。いくつかの縁が点滅していた。損傷なのか、収束の不均衡なのか、それとも一部がまだ私たちの三次元という牢獄に閉じ込められることを拒んでいるのか、分からなかった。
だが、痛みを感じることは分かった。
今の私には、それが確信できた。
痛みがあるなら、また叩ける。
私は零式を押し下げ、海狼の側下方を斜めに切り込んでいった。
「シモ、角度がいい」
ロイが言った。その声はあの、冷静を通り越した刻薄さに戻っていた。
「維持。急ぐな。奴はまだあんたを主な脅威と見ていない。その軽視を、しばらく大切にしておけ」
「了解。航海長殿の励まし、呪いみたいに聞こえます」
「どういたしまして」
私は危うく笑いそうになった。
いい。笑えるなら、まだ大丈夫だ。ロイの話し方が凍りついた定規みたいだと文句を言える間は、初めての実戦で空っぽになってはいない。
HUDの敵影輪郭が徐々に大きくなっていった。
距離が縮まると、海狼はさらに嫌な見た目になった。遠くから見ると幽霊のようで、近くから見ると「陰険」を空気力学の言語に変換した設計作品のようだった。
艦体表面は平整な装甲ではなく、収束フィン、散熱溝、不規則な凹槽のような構造が多かった。普通の軍艦にもそういう部品はある。だが高次元潜航艦の上に置かれると、すべてが「どこからでも突然口を開けて噛みつくかもしれない」という疑念に変わった。
「パルスレーザーの有効射程に入りました」
アカリが読み上げた。
「シモ、まず爪楊枝で突いてやって」
ジェスが言った。
「世界に自分より鬱陶しいものが存在すると教えてやれ」
「その表現は失礼だけど、好き」
私は海狼の上半部にある、まだ完全に収まっていない露出した構造の上に照準を掠め、機首の武装を切り替えた。
零式の機首上部の二門のパルスレーザー砲が、細かい青白い光束を吐き出した。
主砲ではない。決定打でもない。まともな艦対艦火力とすら言えない。相手の戦闘艇、センサー、露出した砲座を相手にするならまだしも、潜航艦の主装甲を一発で貫こうとするのは、コンパスで戦車を刺そうとするのと同じだ。ロマンチックな部分が物理的な可能性を大きく上回っている。
だが私は最初から物理の道理を説きに来たのではない。
煩わせに来たのだ。
第一連射が海狼の艦側を掃過し、青白い光点があの互いにずれた甲殻の上に一列に並び、細かい灼痕を残した。いくつかは偏向されたが、いくつかは衝撃波で乱された収束フィンの近くに当たり、その周辺に不安定な暗い光を弾き出した。
大きなダメージはない。
だが、反応した。
内側へ縮もうとしていた海狼の艦体が、案の定わずかに私の方へ傾いた。石を鼻に当てられた狼が、傷を舐めに戻ろうとしながら思わず振り返って歯を剥くような動きだった。
「転向しました!」
アカリがすぐに言った。
「いいわね」
ジェスの声が一段明るくなった。
「シモ、もっと煩わせて。今日のあんたの人生の使命は、奴にとって一番鬱陶しい蠅になること」
「そんな上品な立ち位置を見つけてくれて、ありがとう」
私はもう一連射を撃った。
今度は痛みを与えるためではなく、奴の視線を完全に引きつけるためだった。光束が海狼の前部にある、感測突起らしきものと露出した副砲基座の上を掠め、相手の全体的な姿勢をもう少し乱した。
そして、奴が撃ってきた。
第一の防空火線が私の左側を掠めた。暗闇の中で誰かが突然一本の光の筋を引き裂いたような速さだった。
首の後ろが一気に炸けた。
さっき高次元の切片に向かって投弾したのが、理不尽な怪物と度胸を競うようなものだったとすれば、今この瞬間こそ、本当の意味で戦闘が始まった気がした。相手がもはや「恐ろしいもの」ではなく、明確にこちらの顔に向かって火を吐き始めたからだ。
「防空火力、起動!」
蘭が報告した。
「見えてる!」
私はほとんど怒鳴り返した。
「よし、操縦士の視覚機能は正常と確認」
蘭は落ち着いて言った。
この女は本当に、他人が緊張している時に一番殴りたくなる台詞を言うのが得意だ。
第二の火線が追いかけてきた。
本能で操縦桿を押し込み、零式が半機身分急降下した。光がキャノピーの上方すれすれを掠めた。その瞬間、心拍が人間の限界を超え、耳の中が自分の血流の音で満たされた。それでも唇だけは固く結ばれていた。口を開けたら、指令ではなく悲鳴が飛び出しそうだったからだ。
「上に逃げるな!」
ロイがすぐに叫んだ。
「奴の下に潜り込め!」
「了解!」
私は機首をさらに押し下げた。
零式は誰かに指で強く弾き出された薄い刃のように、海狼の艦腹の下方から切り込んでいった。上方の防空火網はまだ追ってきていたが、角度が変わったことで、相手の巨大な艦体が逆に遮蔽物になった。
この光景はひどく滑稽だった。子供の頃、雨宿りをした時のことを思い出した。外が雨でなくなったからではなく、より大きなものの下に一時的に潜り込んだだけだった。ただし今の「軒先」は敵艦の腹で、いつでも砲身をこちらへ向けてくることができた。
……少女の人生経験というのは、本当に奇妙な方向へ広がっていく。
海狼の腹の下は、上より更に酷かった。
あるいは、弱点がより多かった、と言うべきか。
重相追潜弾に叩かれ、高次元への再突入を試みながら絶えず捻れている艦腹には、いくつかの構造縫が明らかにまだ収まりきっていなかった。普通の艦艇のような平整できれいな装甲板ではなく、半実体化したフィン状の支柱、散熱溝、そして三次元に引き出されることを強いられた収束節点が露出していた。
ほとんど第一眼で分かった。ここだ、と。
「シモ、角度がいい」
アイダが口を開いた。その声はいつも通り冷たかったが、冷たさの中にようやく点数をつけてもいいという気配があった。
「どうせ無茶をするなら、正しい場所でやりなさい」
「ありがとう。今日一番上等なラブレターね」
「撤回する」
私は少し笑い、それから武装を九九式に切り替えた。
零式の両翼の付け根がわずかに震えた。鎖を外された二頭の猛犬が同時に低く唸るような震えだった。次の瞬間、九九式回転式プラズマ砲が咆哮した。
レーザーのような切れ味のある光ではなかった。
灼熱の粒子感を帯びた青白いプラズマの塊が連続して、海狼の艦腹下方へ叩き込まれた。一発ごとに黒い金属を力強く抉るように、まだ半虚半実だった構造縫が次々と細かい電弧と破片を爆ぜさせながら引き裂かれていった。
「命中!」
アカリが叫んだ。
「散熱溝、貫通!」
ジェスが続いた。
「左側収束フィン、不均衡!」
アイダが珍しく速く補足した。
私は歯を噛みしめて撃ち続けた。
熱血になったからではない。逆だ。この機会が借り物の命ほどしか続かないと分かっていたからだ。今の海狼は三次元の縁に引っかかり、構造が乱れ、防空の角度を私に腹の下から切り開かれている。今ここで穴を開けておかなければ、奴が収束面を再び合わせた後、映像の再生で「なぜあの一秒多く撃たなかったのか」と後悔するだけだ。
プラズマが連続して艦腹下方へ叩き込まれ、その光と音が一帯をほとんど照らし出した。
美しくはなかった。
まったく。
普通の艦艇同士の交戦には遠距離の冷酷な秩序がある。だが今のこの距離でのプラズマ掃射は、ただの原始的な暴力だった。鑿を誰かの肋骨に当てて一路上へ削り上げるような感じだ。乱暴に聞こえ、やっていても乱暴だ。だが暗渠で転げ回るこういう豺狼を相手にするなら、乱暴こそが正義だ。
「もう十分、シモ、引け!」
真紀が突然声を出した。
「奴の尾部が転向する!」
私は視線を上げ、即座に海狼の後部が捻れ始めているのを見た。
普通の転向ではなかった。後半身全体を高次元に再収容しようとする痙攣だった。その姿勢を人間に例えれば、追い詰められて、退きながら蹴り返そうとしているようなものだった。
そして奴の尾部――より正確には、細長くて腹立たしい形状の主推進噴射口が――ちょうど私の前方で翻った。
その光景は宇宙が私に言っているようだった。
来いよ、一発入れないと自分に申し訳ないだろう、と。
……こういう時に堪えられるなら、私は星野 シモではない。
「最後の一発!」
私は叫んだ。
「星野――」
真紀が止めようとしたようだった。
だが、遅かった。
私は零式をわずかに引き起こし、収束不均衡で明滅している海狼の尾部の推進噴射口に照準を合わせ、九九式の残りの火力をすべて叩き込んだ。
「これでも食らえ!!」
青白いプラズマが、私が自ら点けた悪意の一連のように、海狼の大きな尻に直接潜り込んだ。
次の瞬間、相手の尾部全体が猛然と輝いた。
きれいな爆発ではなかった。「点火してはいけないものに点火された」という、明らかな制御不能の輝きだった。海狼の後部の収束紋様が瞬時に乱れ、奴の内臓に焼けた鉄砂を一掴み投げ込んだような混乱が広がった。
艇全体が激しく捻れ、かろうじて維持していた潜航姿勢が完全に崩れ、それと同時に半実体化した外殻と構造面がさらに多く三次元空間へ引き出された。
アカリがほとんど叫んだ。
「推進口、命中! 維相バランス崩壊!」
ジェスの方では、抑えようとしない笑い声が弾けた。
「シモ、あんた本当に奴の尻に花を咲かせたわね!」
「……その戦術報告、もう少し品よくできない!?」
「できない、正確だから!」
白眼を剥く暇もなく、海狼は実際の行動でこの件に対する極度の不満を示した。
尾部の乱気流が炸けると、防空火網全体が狙いを外し、私を追っていた数本の火線が真横へ逸れた。だが同時に、艇全体が非常に不穏な姿勢で横転し始めた。単純な被弾翻転ではなく、高次元収束機構と三次元の姿勢制御が同時に衝突した時に起きる「幾何学的な発病」だった。
「シモ、離れろ! 今すぐ!」
艦長代理が初めて声量を上げた。
私は全身を緊張させ、即座に機首を引き起こして離脱した。
零式は海狼の翻転する尾流の縁すれすれを掠め、艙罩の外に大きな歪んだ暗い光と制御を失った電弧が閃いた。その瞬間、機体全体が何か異常な重力の縁にわずかに引っ張られた。見えない場所から後頸を掴まれたような感覚で、気持ち悪くて夕食を前払いしそうになった。
「機体の状態!」
ロイが叫んだ。
「生きてる! 零式も生きてる! 胃もかろうじて生きてる!」
「よし、今のところ三つとも重要だ」
ロイが素早く返した。
私は全力で零式をその乱気流から引き抜き、雪風が視野の端に再び安定して映るようになってから、ようやく胸の中でずっと張り詰めていた気が少し漏れた。
前方では、海狼の後半部がさっきのあの陰鬱な余裕を完全に失っていた。
もはや暗闇の中で人を待つ狼ではなかった。
泥の中から引きずり出され、ついでに尻尾を思い切り叩かれた、狼狽えた悪犬のようだった。
私は息をしながら、深宇宙で狼狽えながら横転する帝国の潜航艦を見て、頭に最初に浮かんだのは「やった」ではなく――
……終わった。帰ったら、ジェスが「花を咲かせた」件で一年間笑いものにしてくる。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




