139.狩る者と狩られる者 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
正直なところ、「これから任務に出るんだ」という事実を本当に私の頭に叩き込んだのは、艦橋で脳みそを豆腐にする勢いで鳴り響いていた警報でもなく、メインスクリーンで高次元へ縮んでいく、三次元生物の知能を嘲笑うような幾何学的な怪影でもなかった。
飛行服のファスナーだった。
通常任務用のジャケットを脱いだ時、私の指は二回も引っかかった。
一回目は袖口がリストバンドに絡まった。二回目はもっと情けなかった。自分でファスナーの引き手を逆方向に掴んでしまったのだ。
「……上等ね、星野 シモ。まだ出撃もしてないのに、服に撃墜されるなんて」
私は更衣室の冷たい金属のロッカーの扉に向かって、小さく毒づいた。扉に映った顔はあまり愛想が良くなかった。医療ポッドから返品されたばかりのように白く、目の下には昨夜の寝不足の影が少し残っている。こんな顔を募集ポスターに貼ったら、キャッチコピーはこう書くしかないだろう。『雪風に入隊して、未成年の労災という新しい人生を体験しよう』
飛行服はシミュレーションの授業で着る訓練服よりも体に密着し、重かった。実際に重量がそれほど増しているわけではない。その包み込まれるような感覚が、一つの事実を私に認めさせるのだ。これから撃ち出されるのはシミュレーターのポッドでも、アルゴリズムでも、教官が後ろで採点してくれる安全なバージョンでもない。
私なのだ。
そして、リセットボタンはない。
私は深呼吸し、通信用のネックカラーを留めた。カチャッという音が、残酷なほど乾いて響いた。
腰をかがめて脚のサイドバックルを固定しようとした時、ドアの外から足音が聞こえてきた。艦橋の大人たちが立てるような、「死ぬほど忙しいから声を出すのも面倒だ」という足音ではない。もっと軽く、乱れていて、本来ならここにいるはずのない生き物たちが、思春期という免罪符を盾に軍用エリアまで入り込んできたような足音だった。
次の瞬間、ドアが開いた途端、私の予想が的中したことが分かった。
「あ、やっぱりここにいた!」
最初に顔を出したのは紗夜だった。その顔には「今来てはいけないことは分かっているけど、来ちゃいました。そして反省する気は一切ありません」と書いてあった。
後ろにいる小鳥遊澪はもう少し静かに立っていた。彼女の視線はまず私の飛行服をすーっと撫で、それからまだ完全に留め終わっていない胸の固定帯を撫でて、微妙に半秒ほど止まった。
……ちょっと待って、今のその間は何よ。
林拓也は入ってくるなりキョロキョロと辺りを見回していた。まるで次の瞬間、天井から誰かが逆さ吊りで降りてきて、全員まとめて反省文を書かされに引きずられていくのを恐れているようだった。一番後ろに立っている北条湊は、どこからくすねてきたのか分からない工具箱を抱えていた。本来なら本当に何か用事があったのに、途中でこの連中に巻き込まれて、私の人生の重大な事故を見物しに来てしまった、という顔をしていた。
私は胸のバックルに手を当てたまま、無表情でこの中学生たちを見た。
「あんたたち、何してるの」
紗夜は瞬きをして、堂々と言い放った。
「応援しにきたんですよ」
「……あんたたちの学校の先生は、他人が遺書を書く雰囲気を漂わせてる時に乱入しちゃいけないって教えなかった?」
「そのセリフ、縁起悪すぎじゃないですか!」林拓也が即座に抗議した。私が本当に次の瞬間、ポケットから遺書を取り出すのではないかと恐れているような大声だった。「それに、死にに行くわけじゃないでしょ!」
「ありがとう。あんたにそう言われると、急にもっと死にに行くような気がしてきたわ」
「なんでですか!」
「そういうセリフって、だいたい死ぬ五分前に出るものだからよ」
北条湊は黙って工具箱を抱え直した。自分が立つべき列を間違えたのではないかと考えているようだった。小鳥遊澪は笑わなかった。ただ一歩前に出て、私の胸の半分ずれていた固定帯を、ごく自然に真っ直ぐに直した。
指先が飛行服の表面に触れた瞬間、私は危うく条件反射で後ろへ縮み上がりそうになった。
嫌だったからではない。むしろ逆だ。その動作があまりにも自然すぎて、出かける人間の襟元を直してくれているようで、かえって私の脳をショートさせたのだ。
「曲がってました」
小鳥遊澪は言った。
「……そう」
「そんな格好で零式に乗るつもりなら、せめて死ぬ時はきれいな姿で死んでください」
「あんたのその慰め方も、どうかと思うんだけど?」
「そうですか?」
小鳥遊澪は私を見て、平坦な声で言った。
「私、すごく真剣ですよ」
その真剣さに、私は通信用ネックカラーを外して投げつけたくなる衝動をかろうじて抑えた。
紗夜が隣で吹き出し、すぐに私の顔の前に顔を寄せてきた。遠足に行く小学生のように目を輝かせていた――ここが軍艦の格納庫であり、遠足バスの集合場所ではないという事実を無視すればの話だが。
「星野先輩、本当にあの零式に乗るんですか?」
「じゃあ何、これを着て食堂で限定メイドでもやるって言うの?」
「それがあるなら見に行きますけど」林拓也が小声で言った。
私がそちらを向く。
林拓也はすぐに両手を上げた。「違います、俺が言ってるのは――例えですよ!比喩!」
「よろしい。未成年男性の発言が、すでに危険水域へ漂流し始めてるわね」
「俺、まだ何もしてないですよね!」
「あんたがこの会話に存在していること自体が原罪よ」
「ひどすぎませんか!」
北条湊がついに堪えきれず、顔を横に向けて小さく笑った。口を大きく開けて笑うのではなく、口角がほんの少しだけ無理やり引っ張り上げられたような程度だった。普段あまり笑わない人間が、たまに表情のロックを掛け忘れたような笑い。こういう人間が笑うと、大笑いするよりも殺傷力がある。なぜなら、隣で騒いでいる連中が一瞬だけ静かになるからだ。
それから北条湊は工具箱を抱え直し、私に向かって言った。
「あの……邪魔しに来たんじゃないんです」
大きな声ではなかったが、とても安定していた。
「あんたが外に出る前に、まだ生きていて、しかもあんたの味方でいる人間が何人かここにいるってことを、見せておきたかったんです」
……その言葉は、応援にしては反則すぎる。
言い返そうとしたが、何かに引っかかったように喉が渇いて締まった。艦橋では全員が恐怖をデータに切り刻むのに忙しかったのに、ここに来て、この子供たちが一番厄介な部分――「私たちは心配している」という事実を――包装すらせずに、丸ごと私の手に投げ込んできたからだろう。
紗夜は力強く頷き、沈みかけた空気を払うように早口で付け足した。
「そうですよ、だから絶対に帰ってきてください。無事に帰ってきたら、小鳥遊澪が隠してるお菓子、全部ばらしますから」
小鳥遊澪が即座に紗夜を見た。
「隠してない」
「隠してる」
「あれは保管」
「自分の枕の下に保管?」
「あそこが一番安全だから」
「それを隠すって言うんでしょ!」
二人が一瞬で噛み合い始めたのを見て、私は思わず吹き出した。
笑い声が出ると、安全帯で締め付けられていたような胸の息苦しさも、不思議と少し緩んだ。おかしな話だ。さっき更衣室にいた時は、艦全体に背中を押されて前へ進まされているような気分だったのに。今、この中学生たちにドアの前を塞がれて一通り騒がれたことで、かえって人間らしい感覚が戻ってきた。
林拓也が、ようやくまともな発言ができる隙を見つけたように咳払いをした。
「とにかく、星野先輩、頑張ってください」
北条湊も頷いた。
「頑張って」
紗夜はクラス行事で掛け声の音頭をとるように、片手を挙げた。
「星野先輩、隠れて顔も出せないような奴、思いっきりぶん殴ってきてください!」
「気合が入ってるのは認めるけど」
私はグローブを片方ずつ引き締めながら、わざとゆっくりと言った。
「戦術的に見ると、路地裏で誰かを待ち伏せする不良少女みたいな台詞よ、それ」
「違うんですか?」
「全然違うわよ。相手は高次元のステルス潜航艦。隣の学校の門前でカツアゲしてるチンピラじゃないの」
「でも、どっちもムカつくじゃないですか」
「……まあ、そこは否定しないわ」
最後のロックを押し込み、私は手を伸ばして紗夜の頭を撫でた。撫でてから、その動作があまりにも大人びていて、自分でも鳥肌が立った。気持ち悪い。私には似合わない。だから公平を期すために、ついでに林拓也の前髪もくしゃくしゃに掻き回してやった。
「えっ、なんで俺まで――」
「立ち位置がちょうど良かったから」
「どんな暴政ですか!」
小鳥遊澪は私を見て、静かにしばらく視線を留めてから、口を開いた。
「星野」
今度は『先輩』も、余計な語尾もなかった。
私は無意識に顔を上げた。
「無理、しないで」
たった、それだけ。
熱血な演説や必勝の掛け声なんかより、その短い言葉の方が、触れられたくない場所を正確に刺す針のようだった。なぜなら、私自身が一番よく分かっているからだ。今私が一番恐れているのは、無様に死ぬことではない――いや、それも怖いけど――本当の零式に乗るのは初めてなのに、あの位相震動弾を裂け目にぶち込めるのが私しかいないという状況で、余裕のあるふりをしなければならないことだ。
余裕なんてない。
ただ、かろうじて立っていられるだけだ。
「……分かってるわよ」
私は視線を逸らし、グローブの手首の縫い目を直すふりをした。
「馬鹿じゃないんだから」
紗夜が小声で刺してきた。
「だいたい、先にそう言う人って――」
「黙れ」
格納庫の方向から、短い予備ブザーが鳴り響いた。船の骨格をハンマーで叩いたような、低く重い音。その音が響いた瞬間、少しだけ騒がしかった空気がナイフで切り裂かれたように、再び現実へとピントが合った。
時間だ。
私は彼らの間を抜けた。金属の床を踏む靴底の音が急にはっきりと聞こえるようになった。自分の歩数が数えられるほどに。一歩、二歩、三歩。どの一歩も、勇ましい出陣というより、運命に頭を押さえつけられて前へ押し出されているような気分だった。ただ、ここまで押し出されてしまったら、もう文句を言っても始まらない。
角を曲がる前、私はやはり一度立ち止まり、振り返った。
四人の子供たちは、その場に立って私を見ていた。
紗夜はすでに両手を挙げ、艦全体の分まで叫んでやろうとでもいうように息を吸い込んでいた。林拓也もそれに倣って手を挙げたが、姿勢が少し不格好で、誰かの真似をしているみたいだった。北条湊は叫ばなかったが、背筋を真っ直ぐに伸ばして立っていた。小鳥遊澪はただ私を見ていた。その視線は安定していて、腹立たしいほど安定していた。
そして、紗夜がついに叫んだ。
「星野先輩、頑張って――!」
林拓也と北条湊も、半拍遅れて続いた。
「頑張って!」
「頑張って」
小鳥遊澪が最後に口を開いた。大きな声ではなかったが、なぜか一番はっきりと聞こえた。
「帰ってきて」
……その一言が、一番反則だ。
私は向き直り、手を挙げ、振り返らずに背中越しに「了解」のサインを出した。
「分かった」
「それと」
紗夜が後ろから追加した。
「初めての実機で、コクピットに吐かないでくださいね!」
私は危うく足を踏み外しそうになった。
「あんた、見送りに来たの? 呪いに来たの?」
背後で、どっと笑い声が弾けた。
よろしい。
これでいい。
少なくとも、私が本当に零式のコクピットに座り、格納庫の射出レールが開いた黒い鋏のように見えた時、頭に浮かぶ最初の考えは「死ぬかもしれない」ではなくなる。
帰ったら、まず紗夜を甲板磨きに引きずっていってやる。
英雄気取りの欠片もない、むしろひどくケチな考えだ。
だが、こんなにも小さくて、馬鹿げていて、人間くさい考えだからこそ、かえって少しだけ安心できた。
本当に致命的なのは、恐怖そのものではない。
出発する前に、自分の中の生きた人間の部分を、先に手放してしまうことだ。
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