136.帰路 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
相部屋の居住区画に戻ったとき、時間はすでに遅かった。
ドアが閉まった瞬間、私の最初の反応は相変わらずこれだった。
ああ、終わった。また二人きりだ。
彼女が怖いわけではない。
……いや、少しは怖いかもしれない。
だがそれは「ナイフを持って追いかけられる」ような恐怖ではなく、もっとみっともない類のものだ。部屋の中に敵襲警報も、戦術投影も、火力を分散してくれる他人もいないと分かっているのに、特定の記憶が勝手に、そして情けないほど鮮明に脳内でリプレイされてしまう。
特に、深夜に再生すべきではない部分の記憶が。
真紀は私より一歩遅れて入室し、ついでにドアのロックを掛けた。カチャリという乾いた音が響いた瞬間、私の背筋はまたしても情けなく強張った。
彼女はそれを見た。
そういうことに気づく人間なのだ、彼女は。
いまいましい。
「何もしない」
彼女は言った。
「前回も、そういう口調の事前作業から入ったけど」
「……前回は私が自制を失った」
「知ってる」
私は端末パネルを机に置いた。動作をわざとゆっくりにした。私が真面目に片付けをしていれば、空気も一緒に「普通のルームメイトの夜」に戻ってくれるとでもいうように。当然、妄想だ。雪風は最近多くのものを修理したが、私と真紀の間に走った亀裂は、明らかにその修理リストには入っていない。
彼女は私の少し後ろに立ち、すぐには近づいてこなかった。
それが余計に厄介だった。
真紀が近づいてくれば、私は少なくとも軽口を叩き、防御し、忙しいふりができる。だが、ただそこに立たれると、一つの事実を明確に意識させられる。
彼女は待っているのだ。
私が口を開くのを。
私がもう、公務を盾にするのをやめるのを。
「大局を重んじる」なんて言葉で誤魔化せないものがあることを、私が認めるのを。
部屋に数秒の沈黙が落ちた。結局、先に口を開いたのは彼女だった。
「今日の会議で、点対点跳躍の話が出たとき、手が震えていた」
反射的に反論しようとしたが、無意味だと悟った。
たぶん、私自身よりも彼女の方がはっきりと見ていた。
「怖かったわけじゃない」
私は言った。
「知ってる」
「なら言うな」
「あんたは何かあると、すぐ『平気だ』という殻の中に縮こまるから」
私は振り返った。彼女もすでに上着を脱ぎ、ベッドの脇に掛けていた。減圧サポート帯のせいで立ち姿に少しの抑制感が混じっていたが、それが彼女を弱く見せることはない。真紀という人間のずるいところはここだ。負傷していても、「今はちょっと不便だから全員を殺すのは後回しにしてやっている」と、世界に礼儀正しく宣言しているようにしか見えない。
「あんたはどうなのよ」
私は問い返した。
「別の場所に縮こまったりしてないわけ?」
彼女は少し沈黙した。
「してる」
あっさり認められ、逆に私が言葉に詰まった。
彼女が歩み寄ってくる。今度はとてもゆっくりと。追い詰めるのではなく、私自身に「退くかどうか」を決めさせるような歩み。結果として、私は退かなかった。勇敢だからではない。これ以上後退し続けるのは滑稽すぎるし、今日はすでに艦橋でパラメータ表の前で一度恥をかいている。追加公演は御免だ。
真紀は私の目の前で立ち止まった。まつ毛の下に落ちた疲労の影が見えるほどの距離。そして、彼女自身も決して平穏ではないのに、無理やり押さえ込んでいるその痕跡も。
「シモ」
彼女が呼んだ。
……この人間は最近、気を緩めてはいけない場面に限って、私の名前をあまりにも「私の名前」らしく呼ぶ。
「なに」
「今日、航線を見たとき、最初に思ったのは帰れることじゃなかった」
私は瞬きをした。
「じゃあ、何を考えたの」
彼女は私を見つめ、低い声で言った。
「あの日、地表で、あんたの命令が一秒遅れていたら、私は戻ってこられなかったかもしれない、と」
私の指先が、きゅっと丸まった。
ああ。
来た。
こういうところだ。軽く流すこともできるはずなのに、彼女は毎回、絶対に軽く流してはいけない急所を正確に突いてくる。
私は視線を逸らし、彼女の肩口の、完全に伸びきっていない軍服の生地を見つめた。
「戻ってきたじゃない」
「ええ」
彼女は言った。
「だから今、ここに立って、あんたにありがとうと言おうとしてる」
「……あんたらしくない」
「知ってる」
また「知ってる」だ。
この人間は、いったいどれだけのことを知っているつもりなのだ。
私は少し苛立ちながら、前髪を払おうと手を上げた。だがその手は空中で、彼女に軽く手首を掴まれて止まった。
強くはない。
むしろ、死ぬほど抑制されていた。
だが、その抑制のせいで、直接壁に押し付けられるよりもずっと質が悪かった。
彼女の親指が私の手首の内側に触れ、その熱が皮膚を通して少しずつ這い上がってくる。手を離せと言うつもりだったのに、口から出た最初の言葉は、
「……なに」
だった。
威厳の欠片もない。
情けない。
さっきの自分を殴り殺したい。
真紀はただ私を見つめ、もう片方の手を上げると、私の頬の古い傷跡に指先でそっと触れた。
重さをほとんど感じないほどの接触。
それなのに、私は全身が硬直した。
以前にも触れられたことがある。もっと前には、まだ痛むかと聞かれたこともある。あの時はまだ誤魔化せた。別の言葉で流すことができた。でも、今夜は駄目だ。今夜、艦全体が「帰還」という方向へ舵を切っているのに、私たち二人だけが、誰も明確に言葉にしていない場所に引っかかっている。隔壁の中に抜けきらずに残った棘のように。致命傷ではないが、常にそこにある。
「ここ」
彼女は低く言った。
「やっぱり、最初に目が行く」
喉が少し渇いた。
「目つきが悪いわね。これだけ人がいるのに、よりによって私みたいな戦損品から見るなんて」
「ええ」
彼女は言った。
「私の目つきが悪い」
私は一瞬呆然とし、そのあまりにも平坦な肯定にバランスを崩しそうになった。
誰がそんなに素直になっていいと言った?
不公平だ。
私はまだ防御を続けられたはずだ。話題を明日に、航程に、『神風』に、ここより安全な別の場所へと押しやることができたはずだ。なのに、彼女が先に認めてしまった。彼女が認めた瞬間、私が用意していた防壁の言葉はすべて用途を失い、滑稽な残骸に変わった。
だから私は、ごく小さな声で言うしかなかった。
「真紀、それ、反則」
彼女は私を見た。笑ってはいなかったが、瞳の奥の死ぬほど硬い層が、ついに少しだけひび割れていた。
「あんたも同じ」
「私が何をしたって言うの」
「いつも他人を先に助けておいて、ついでだったふりをする」
私は、まともな反論を一つも捻り出せなかった。
部屋に再び静寂が落ちた。
だが今度は、気まずさではない。
二人とも、ある境界線まで歩いてきてしまったのだ。これ以上進めば落ちると分かっている。なのに、どちらもすぐには後退しない。
最後に手を離したのは真紀だった。
「今日は疲れてるはず」
彼女は言った。
「あんたもね」
「だから寝なさい」
「……それだけ?」
彼女は私を見て、その問いに半秒ほど虚を突かれたようだった。それから、ごく軽く一言だけ返した。
「他に何が?」
私は口を開いたが、一文字も音にならなかった。
上等だ。
星野 シモ。重力異常の惑星で第一梯隊のために十二秒のウィンドウを稼ぎ、艦橋で超光速航程のパラメータを処理し、ジェスのゴミみたいな軽口に三十ターン安定して打ち返せる女が。今、自分の部屋で、「他に何が?」の一言で完全に沈黙させられた。
もしこの事実が外に漏れたら、艦内の全監視データを物理的に破壊することを提案する。
真紀は先に背を向け、ベッド脇の小さな照明を消した。机の前の薄暗い読書灯だけが残る。彼女が自分のベッドに腰掛けるときの動作は、やはり普段より少し遅かった。私はその脚を見て、結局堪えきれずに口を開いた。
「明日も痛むなら、アイダのところに行きなさいよ」
「教材にされる」
「自業自得ね」
「付き添ってくれる?」
私は言葉に詰まった。
彼女は横顔をこちらに向けた。今度こそ、唇の端に本物の笑みが少しだけ浮かんでいた。思い通りになったという顔でも、からかっているわけでもない。彼女もようやく知ったのだ。毎回、自分の内心を戦術指令のように偽装して語る必要はないのだと。
私は鼻を鳴らし、ベッドに身を投げ出した。
「気分次第ね」
「分かった」
「それと、真紀」
「なに?」
私は顔の半分を枕に埋め、くぐもった声で言った。
「今日の会議で……点対点跳躍が実際の航程に入るって聞いたとき、緊張しただけじゃない」
彼女は急かさなかった。
だから私は、自分で後半の言葉を紡ぐしかなかった。
「本当は、少し嬉しかった」
一秒の沈黙。
やがて、向こう側の暗闇から、低く応じる声が聞こえた。
「私も」
雪風の隔壁の向こうで、『神風』の低い駆動音が規則正しく、安定して響いている。ようやく正しい鼓動の打ち方を覚えた心臓のように。
私は目を閉じた。第三日目のこと、あの白い航線のこと、艦橋で初めてはっきりと口に出された「帰還」のこと。そして、同じ部屋の中でまだ眠っていないもう一人の人間のことを考えた。
まだ語り尽くしていないことがある。
整理しきれていない感情の糸もある。
だが少なくとも今夜、私たちは互いに「何も感じていないふり」をすることはなかった。
それだけでも昨日より大きな前進だ。
……その前進する方向が安全かどうかは、まだ何とも言えないが。
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