133.狂暴な惑星 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「星野」
アッシュの声が静かに入ってきた。平坦で、短く、こちらの苦悩を分担する気配は微塵もなかった。
「判断しろ」
ありがたいよ、本当に、艦長代理。
今ようやく、信頼の重さというものが分かった気がする。それは「信じてるよ」と肩を叩かれることではない。艦全体の呼吸が自分の前に積まれ、その上で十数秒のうちに「欲をかくか、生き延びるか」を決めろと言われることだ。
私はメイン画面を三層に分けた。
第一層は活性インジウム主鉱脈の切断進行度。
第二層は嵐晶体爆発区域の動態モデル。
第三層は、こちらに覆いかぶさってくる重力裂帯。
三層を一緒に見て、結論は二つしかなかった。
一つ、主目標に専念し、晶体には手を出さない。最も安全。
もう一つ、一発大きく賭ける。両方を取りにいく。ただし半拍遅れた瞬間、第一梯隊はこの惑星にまとめて返品される。
机上演習なら、私は成熟して堅実な大人を演じたくなっただろう。
ただ、ここは雪風であり、雪風の現状はこうだ。私たちは生き延びるための資源だけでなく、この艦を本当に走らせるための未来まで足りていない。
私は奥歯を噛み、通話キーを叩いた。
「第一梯隊、全員聞け」
艦橋が瞬時に静まり返った。
「主目標は変わらず、活性インジウム最優先」私は早口で言った。自分でも分かっていた。この後に一発刃物を重ねない限り、さっきの半拍の迷いは全員の心拍だけ浪費して終わる。「だが——」
嵐晶体群の中で、最も近い一簇だけを丸で囲み、拡大した。
「一番近いところだけ齧る」
メイン画面上で、眩しく輝く晶体群の九割を思い切って切り捨て、車両の右前方に最も近く、形成が最も進んでいて、裂帯が落ちてくる前に現実的に叩き落とせる可能性がある一簇だけを残した。
「Dは主鉱脈の切断続行、アッシュは援護。真紀は右前方第四亀裂へ。いちばん近い柱を叩き落とせ。制限時間は十二秒。それを超えたら、どれだけ叩き落とせていようと、全員即座に車両へ撤収」
私は間を取らずに、第二レイヤーの命令に畳みかけた。
「繰り返すが——これはおかわりじゃない。ついでの強盗だ。二本目に手を伸ばした奴は、私が自分の手で任務報告書に名前を書く。タイトルは『時計が読めなかったせいで死んだ人間について』」
公共チャンネルが半拍静まった。
そしてジェスが最初に吹き出した。
「こわ〜い、今日は」彼女は途中で言い直した。「星野中尉、ついに悪役のやり方を覚えたね」
「黙って。カウント頼む」
「喜んで」
アッシュは、この決定が賢いかどうかを評価しなかった。「いいアイデアだ」みたいな、私を動揺させる類の言葉も一切なかった。ただ、きっぱりと返した。
「第一梯隊了解。指示に従う」
真紀の声がそれに重なった。
「右前方第四亀裂、十二秒制限、了解」
あまりにも落ち着いた声に、私は通話器で自分の額を叩きたくなった。
頼むから、今受け取っているのは「暴走重力と晶体を奪い合いに行く命令」であって、食堂のデザート配分じゃないってことを、一ミリくらいは意識してほしい。あなたがそんな調子だと、艦橋で一人だけ心臓が故障しているのが私みたいに見える。
でも今、彼女にそれを言う資格はない。
この指示を出したのは、私だ。
車両脇では、多機能採取アームが活性インジウムの外層岩殻を容赦なく切り裂いていた。切断ビームが走るたびに、鉱層は内側から怒り狂う神経のように輝きを増した。
青い光が岩の割れ目を流れ、瓦礫と発光する金属粉塵が四方に飛び散り、カメラ越しでも、この惑星の不機嫌さでレンズが焼けそうに見えた。
真紀はすでに動いていた。
彼女は車両右側の掩蔽から離れ、この軽くなったり重くなったりする狂った地表を踏んで第四亀裂へと走った。外骨格の脚部ユニットと重力アンカーが同時に輝き、最初の低G浮力の波に持っていかれないように足取りを固定していた。
全身が、押さえつけられた刃物のようだった。速く、安定して、正確で、余計な動きが一つもない。
……腹立たしい。
本当に腹立たしい。
昨夜、あれほど私を追い詰めた本人が、今日この「山が空を飛ぶ惑星」の上で、こんなふうに理不尽なまでに格好いい。これ以上仕事のやりにくい環境があるなら見てみたいものだ。たぶんない。
「カウント開始」ジェスが言った。
今日の彼女の声は、完全に澄んだ刃物みたいだった。いつものわざとらしい色っぽさは、一切残っていない。
「十二」
真紀は半浮遊状態のフェライトの柱を飛び越え、正反対方向に動いている二つの岩片の間に、ぴたりと落ちた。
「十一」
Dの方では、活性インジウム主鉱脈の切断が内層に到達しつつあり、鉱脈コアの青光が大きく露出し始めていた。アッシュは車両の左側に立ち、銃口とアンカーを外へ向け、西側裂帯の影全体を見張っていた。
「十」
私は右下の輪機室ウィンドウを引き出し、進行状況を確認しようとしたところで、ヴィクトルの顔が勝手にポップアップしてきた。
結構。
この艦は運命ですら、タイミングを選んで邪魔をしに来る。
「輪機室、状況速報」ヴィクトルが話し始めるや否や、背景の音が艦橋の音声をかき消しそうな勢いで流れ込んできた。金属の衝突音、高圧ガスの解放音、大型設備がクレーンで引きずり回される擦過音。騒々しいが、工学的には美しい。
「旧炉の解体、半分突破。新しいヘリウム・水素駆動炉のメインインターフェイスは確保。ハーヴィー、お前から説明しろ」
画面が揺れ、油と疲労に二重にやられたハーヴィーの顔が現れた。髪は電流と喧嘩した後のように逆立っていた。
「要するにだな!」ハーヴィーは背景騒音に負けじと叫んだ。「こっちは今、最後の活性インジウムが神風炉の調合シーケンスに入るのを待ってる!純度と量さえ足りれば、主任機関長がすぐに新炉と越遷側の一次接続を始められる!」
「翻訳」Dが地表から冷たく言った。
ハーヴィーは間髮入れずに応じた。
「翻訳すると、今お前たちが切り出してる青く光るお宝一塊ごとに、雪風が単なる大型やかんから、ちゃんと点対点で跳べる艦に一歩近づくって意味だ!」
ヴィクトルが横から淡々と付け足した。墓碑銘の叩き台を読んでいるような声だった。
「さらに翻訳すると、空手で帰ってくるな、ということだ。さもないと、お前たち全員を炉の穴埋めに使いたくなる」
「主任機関長の士気高揚法、実にクラシックな味わいね」私は言った。
「効けばいい」ヴィクトルは言った。
「八」ジェスが静かにカウントした。
結構。
輪機室のこの一刀は、まさに必要なところに刺さった。
今、私が見ているのはただの採集作業ではない。雪風の心臓だ。地表で光る鉱脈は、単に任務のターゲットではなく、もうすぐ目にできるもの——炉心が再点火され、老船骨頭が新しい血に押し出されて前へ進み、あるいは真正跳離這一帯的可能性——の予感そのものだった。
これは人を貪欲にする。
同時に、冷徹にもさせる。
だからこそ、さっきの決断が正しかったと、より強く思えた。
一口だけ吃。
吃完就走。
不准對神明的桌子起貪念。
「七」
真紀は第四亀裂に到達した。
目標の嵐晶体は、さっきの映像よりさらに大きく見えた。人の半身ほどの高さがあり、異常なほど明るかった。雷に打たれた氷山の一部を無理やり岩の裂け目に突っ込んだような姿だった。彼女は片手で亀裂縁の固定ポイントを掴み、もう片方の手で多機能ツールを展開した。切断ヘッドが一瞬で光を放った。
「六」
最初の一撃が入った瞬間、嵐晶体全体が鋭く、薄い高周波の震鳴を上げた。石が砕ける音ではなかった。何かが露骨に不機嫌になって、悲鳴を上げているような音だった。
背骨が一瞬で痺れた。
「……今の音色、本気で嫌い」
「了解」ロイが答えた。「星野中尉の第二禁忌項目として記録:叫ぶ鉱石」
「トラウマ図鑑構築にご協力感謝」
「五」
Dの方では、活性インジウムの主鉱脈がついに切断され、液体の青い炎のようなコアが採取アームに挟まれて持ち上げられていた。車両後部の収容槽が自動で開き、第一の主目標を飲み込んだ。
よし。
少なくとも、本日の最重要収穫は動き出した。
次の瞬間、アカリが声を張り上げた。
「重力波の異常上昇!違う、西側裂帯じゃない。局所陥没からの反発——シモ!」
目がすっと細まった。
第四裂縫周辺の重力値が跳ね上がっていた。
徐々にではない。
あの一点だけ、まとめて地核へ押し込もうとするように。
「真紀、離れろ!」私はほとんど叫び返した。
だが半拍遅かった。
その半拍は短かった。
数値で言えば、一・二Gが四・三Gへと跳ね上がるのに要する時間。
感覚で言えば、警報音を聞いた瞬間に恐怖を理解する間もなく、先に世界の方が殴りつけてきた、そんな長さ。
メイン画面で、真紀の身体がぐっと沈み込んだ。
ただのよろめきではない。
見えない巨人の掌で直接押さえ込まれたような動きだ。
晶体の台座をやっと削り始めたところで、暴走した重力に膝を地面へ叩きつけられた。外骨格の脚部ユニットが歯を食いしばるような金属音を上げ、重力アンカーが地面へ深く喰い込み、砕けた瓦礫が放射状に吹き飛んだ。
私の心臓も、その瞬間、一緒に握り潰されたみたいに縮んだ。
「真紀——」
名前を呼んだ途端、自分の声がさっきまでとは違う質の失敗音になっていることに気づいた。
それでも、気にしている暇はなかった。
まだ完全には倒れていない。
左手で地面を支え、右手の多機能ツールも放していない。全身が半膝立ちで押しつけられて、肩と背中が怖いほどに張っていた。まるでそこだけを見えないワイヤーで締め上げて、弓を無理やり引き絞っているように。
「四・三G……まだ上昇中!」アカリが言った。
「D、左側掩護!」アッシュが即座に指示する。
「了解!」
Dが車両を側方から滑り込ませ、車体で真紀の側面に飛んでくる瓦礫を受け止めようとした。だがこれは弾丸や風圧の問題ではない。この惑星全体が彼女を気に入らないと判断して、ひとまず押し潰してやろうと言っているようなものだ。
私の指先は通信キーに食い込み、手のひらは汗で濡れていた。
呼び戻したい。
その場で中止を命じたい。
さっき下した「十二秒で一口だけ食う」という決定を、その場で飲み込みたい。
でも、それはできない。
一つ、今救うべきなのは彼女一人ではないから。
二つ目——これが一番腹立たしい——
彼女がまだ、手を離していないからだ。
真紀は、人を地面に縫い付けるような重圧の中で、晶体ツールをさらに一寸押し込んだ。
私は本気で、コンソールに頭をぶつけたくなった。
どれだけ理不尽なんだ、この女。
「真紀!晶体を離せ!」私は怒鳴った。
すぐには返ってこなかった。
反抗しているからじゃない。
四G超えの下から言葉を絞り出すには、肺そのものを持ち上げなければならないからだ。
チャンネルには、短く、重い吸気音だけがまず届いた。
それから、徹底的に押さえ込まれた低い声が続いた。
「……あと一秒」
私の血圧は、その場で惑星と一緒に跳ね上がるところだった。
「駄目だ!今すぐ離脱——」
「シモ」
この時点で、アッシュが割り込んできた。
たった一言。
声を張り上げもしない。
説教もない。
なのに、誰かに平手打ちを食らって、情緒の縁から指揮席へ叩き戻されたような衝撃だった。
私は歯を食いしばった。
そうだ。
今の私は、彼女の同室者でも、昨夜降参しかけた相手でも、好きな人間が地面に押し付けられているのを見て取り乱していい一般市民でもない。
私は艦橋の判読担当だ。
今、私が戻さなければならないのは、隊全体だ。
視線を、無理やり数値に引き戻した。
第四裂縫周辺の重力ピークは第二段階へと突入していた。でも車両の右後方に、ごく短い低Gの反発ポケットがある。一秒半だけ。位置も、その存在自体がこの惑星の気まぐれとしか思えない。
全員を同時に救うには足りない。
でも、真紀が圧点から抜け出すには足りる。
私は決断すると同時にチャンネルを切り替えた。
「真紀、聞いて」今度の声は逆に、背の刃のように平坦だった。「三時方向に半歩。立ち上がるんじゃなくて、横に倒れる。右肩から落として、アンカーの力で振り出されろ」
アカリが即座に続いた。
「反発ウィンドウ、一・四秒後に開いて、一・七秒継続!」
私はそのまま畳みかけた。
「D、彼女が点を離れたら車両を引き上げて出迎えろ。アッシュ、左側からカバー。真紀——」
ほんの半拍だけ、言葉を止めた。
「今は意地を張るな。私の指示を聞け」
公共チャンネルが一瞬、凍りついた。
それから、彼女が応えた。
短く。
かすれていたが、はっきりと。
「……分かった」
ちくしょう。
ただの一音節なのに、胸のどこかが、その「分かった」だけで崩れ落ちそうになった。
「反発来る!」アカリが叫んだ。
メイン画面上で、第四裂縫周辺の重力流線が大きく持ち上がった。その一・七秒の空窓が、本当に開いた。
真紀は無理やり立ち上がろうとはしなかった。
言った通りに、右肩から荷重を抜き、そのまま裂け目の縁に沿って横へ転がった。重力アンカーがその瞬間にロックを外れ、彼女を元の圧点から弾き飛ばした。Dがほぼ同時に車両を横滑りさせ、車体の側面で飛び石の雨をかすめ取りながら突っ込んだ。アッシュは左側から固定アンカーを一本打ち込み、二波目の乱流に巻き込まれる前に、彼女を防御範囲へ引きずり込んだ。
次の瞬間、彼女がさっき跪いていた地点全体が崩落した。
四・六G。
岩面全体が巨大な掌に叩き抜かれたように沈み込み、瓦礫と青い光が一緒に落ちていった。さっき彼女が割りかけていた嵐晶体の柱が、そのまま基部から折れ上がって半空に翻り、薄汚ないほど美しい花火になって炸裂した。
その光景を見つめながら、私の背中は完全にびしょ濡れだった。
「真紀!」また声のトーンを抑え損ねた。
今度は返答が少し早かったが、呼吸は乱れていた。
「……まだ生きてる」
本当に、世界で一・二を争う、安堵と殺意を同時に呼び起こす回答だと思う。
ジェスは隣で小さく息を吐いた。さっきまで一緒に息を詰めていたのが分かる吐き方だった。
「おめでとう」彼女は言った。「とりあえず任務報告書に『九島真紀、惑星から膝をつかされ死亡』みたいなダサい項目を追加しなくて済んだわ」
「黙れ」私とアカリがほぼ同時に言い返した。
ジェスは瞬きを一つして、両手を上げて降参した。
「了解」
でも唇の端に滲んだ短い弧は、完全には消えなかった。それは幸運でもなく、冷笑でもない。「よかった、まだみんな互いをからかう余力がある」とでも言っているような笑いだった。
ちょうどそのタイミングで、輪機室から再び音声が入った。
ハーヴィーの声はさっきよりも大きく、どうやら地表からの映像も見てしまって、エンジニアの魂の半分が鼻から抜けかけているようだった。
「先に言っとく!四Gだのなんだのって中であの代物を取りに行くなら、とりあえず活性インジウムを先に全部詰め込んでこい!こっちはお前らのために旧炉を半分解体してるのに、新炉に食わせるもんがなかったら、本気で泣くからな!」
ヴィクトルが背後から無慈悲に追い打ちをかけた。
「そいつが泣くと、うるさい」
「主任機関長!このタイミングで味方してくれないんですか?!」
「今、私が味方したいのは新炉の点火だけだ」ヴィクトルは言った。「お前ら地表の連中は、最初の一口だけ齧ったら、さっさと戻ってこい。神風炉に必要なのは燃料であって、殉職者じゃない」
この台詞は乱暴だった。
だが、ちょうどよかった。
さっきまで胸の中で暴れかけていた感情を、主軸へ引き戻すのに、これ以上の一撃はなかった。
そうだ。
私たちは格好つけに行くんじゃない。
誰がより恐れ知らずかを競いに行くんじゃない。
雪風の次の航路を、この発光狂惑星の手から奪い返しに行くのだ。
私は深く息を吸い込み、全体の映像を再構成した。
活性インジウムの第一塊はすでに格納済み。
嵐晶体の半分は切り落とした。
第一梯隊は全員生きている。
重力裂帯は南側へ回り込んでいく。
ウィンドウの残りは——少ない。
この惑星の歯軋りが、ほとんど聞こえる気がした。
通話キーを押した。
「第一梯隊、聞け」私は言った。
今度は、ようやく、自分が戻るべき線に戻ってきた感覚があった。
「嵐晶体は落ちてきた半分だけ。取れるなら取れ、取れなくてもいい。主鉱脈をもう一塊切ったら、それで十分。すぐに撤収。この惑星はもう機嫌を損ね始めてる。こっちに宥める義理はない」
公共チャンネルで、アッシュが「了解」と一言返した。
Dが小さく鼻を鳴らした。たぶん肯定だ。
真紀は半拍置いてから、低く返答した。
「了解」
さっき四Gオーバーに押し潰されかけたせいで、声はまだ少し掠れていた。金属の縁が削れたような響きで、その音を聞いた瞬間、胸がまた一度縮んだ。
本当にもう勘弁してほしい。
私はデータを見ながら、心の中でかなり真面目にこう考えた。
——もし今回生きて帰れたら、近いうちに九島真紀とじっくり話をする時間を取らないといけない。
別に大げさな話じゃない。
ただ、彼女がこれ以上「人を動揺させながら心臓も止めかけさせる」芸当を続けるなら、私は個人的な理由で連邦に追加の心理サポート予算を申請することになる。
前提は、まずこの惑星を生きて絞り尽くすことだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




