128.三つ目の惑星 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
朝の医療区画には、雪風らしい残酷さがある。
誰かが目を開けた最初の一秒に戦術ブリーフィングを顔面に叩きつけてくるわけではない——もっともアッシュなら本当にやりかねないが——そうではなく、この艦は「昨日あんたは死にかけた、だから今日は宇宙を少し止めてやる」という概念を、根本的に持ち合わせていない。
反応炉は回り続け、換気は動き続け、艦内放送は決まった時間に例の過剰なほど冷静な声で、当直交代、補給、点検、そしてハーヴィーが昨夜途中まで弄っていたものには絶対に触れるな、さもなくば自業自得だと全員に通知し続ける。
世界は広く、トラウマは小さい。
少なくとも、システムはそう判定している。
目が覚めた時、最初に嗅いだのは消毒液、次にコーヒー、三番目は医療テープを剥がす時のあの微かなプラスチックの匂いだった。三つが混ざり合って、「おめでとう、まだ生きてる、でも今日も快適にはさせない」という朝の挨拶を正確に構成していた。
二度ほど瞬きして、まだ焦点が合いきらないうちに、アイダの声が脇から流れてきた。
「起きたなら一声出して。死体のふりは結構。昨夜散々見たから、朝一番に第二ラウンドはいらない」
「……患者への気遣いの仕方が」私はしゃがれた声で言った。「医学界の異端だと思う」
「文句が言えるなら、脳みそはまだ動いてる」アイダは手首の古い貼り薬を剥がしながら言った。動作の速さは、少しでも気が緩んだら艦の医療予算が即座に破綻するとでも思っているかのようだった。「安心した」
自分の手を見下ろした。
痣はまだある。昨夜より色が濃くなっていて、手首から上へ向かっていくつか見苦しい線を引いていた。正直に言えば、これが普段なら私はたぶん職業的な態度で一言メモしていただろう。「某敵性クズの握力は悪くない、工業用クランプのテストをしているようだった」とでも。でも今は見るだけで、ただ苛立つ。
苛立ちだけじゃない。
その苛立ちの中に、言葉にできない種類の吐き気が混じっていた。
アイダは私の顔色が変わったのを見たはずだが、何も聞かなかった。ただ綿に薬を含ませて押し当てながら、ついでのように一言刺してきた。
「その顔やめて」彼女は言った。「今のあんた、大切にしてた限定スイーツを床に落とされた人みたいな顔してる」
半秒、黙った。
「……だいたいそんな感じ」
アイダの手が一瞬止まり、目を上げた。
それから、非常に分かったふうに「ああ」と言った。
「まだあの下着のこと考えてる?」
私は顔を背けた。
「その件を、まるで注文を取るみたいな口調で言わないで」
「じゃあどうしろって? 半旗を掲げる?」貼り薬を貼り直しながら、彼女は淡々と続けた。「安心して。昨夜考えた。法律上は帝国兵を八つ裂きにしろとは勧められないけど、感情的には、その恨みを定年後まで持ち続けることを全面的に支持する」
「定年する気はない」
「ならもっといい、一生持ってなさい」
笑いそうになった。
なりかけただけで、止まった。
なぜなら次の瞬間、ベッドの反対側に、椅子の上にきちんと畳まれた清潔な衣服が置いてあるのが見えたからだ。
下着も入っていた。
新しいもの。
色も型も地味で、地味さが「今これについて考えたくないのは分かってる、でもとりあえず何か着るものが必要」と言っているみたいだった。そのサイズ、その選び方、そして一目見てアイダが選んだものではないと分かる、実用的なのに微かに優しさが混じっているあの感じ——それだけで、誰が用意したか一秒で分かった。
何も言わなかった。
アイダが私の視線を追って一瞥し、口角をごく軽く動かした。
「朝一番に補給棚を探しに行ったの」彼女は言った。「最初は二着持ってきて、ベッドの前に立って三分間じっと見比べて、最後に左を選んだ。研究熱心だったわ」
「……医療区画って、こんな細かいことまで観察するほど暇なの」
「私が暇なんじゃなくて、誰かが爆弾を解体するみたいな顔でベッドの前に立ってたから、見ないわけにいかなかったの」
耳の裏が少し熱くなりかけた。言い返そうとしたところで、隣のベッドから意図的な咳払いが聞こえた。
「補足するけど」ジェスは半分起こしたベッドに寄りかかり、脚はまだ固定されたまま、顔色は昨日より少しマシだったが、憎たらしい精神は七割方戻っていた。「三分じゃなかった」
指を立てて、数字を示した。
「四分半。途中で一回光に透かして見てた。下着じゃなくて、連邦の命運を決める光学部品みたいな顔で」
枕を投げつけたい衝動が戻ってきた。
「重傷患者じゃなかったの?」
「重傷患者だよ」ジェスはあっさりと言った。「でも目のある重傷患者でもある」
アイダが最後の貼り薬を押さえてから、ようやく体を起こした。
「よし、二人ともまだお互いを攻撃する元気があるみたいね。医療的にはリカバリー経過良好、社会的には今日の私の耳が安泰でないってこと」
ジェスが顎をしゃくった。
「で、真紀は?」
アイダが振り返り、病室の外を一瞥した。
「顔を洗いに行ってる。今の顔色のまま半時間ここに立ってたら、昨夜医療区画に運び込まれた傷患は実は三人で、三人目は自分で自分を怖がった人だって思われるから」
私は毛布の縁を見たまま、何も言わなかった。
ジェスは珍しく二秒ほど黙った。
彼女としては、かなりの稀少現象だ。
それから、ごく軽く鼻を鳴らして、視線を天井に向けた。
「正直に言うとさ」彼女は言った。「最初に入ってきて、まず人を斬って、ついでに私も怒鳴りつけるんだと思ってた」
「最初の読みは正確だった」私は言った。
「二つ目も間違ってはいなかった」ジェスが口角を引いた。「ただ、その時彼女に私を怒鳴る余裕がなかっただけ。あんたを見るあの顔——なんて言うか、もしこの艦があと十秒遅れてたら、あの基地を惑星の地図から消してたと思う」
アイダがそれを聞いて一瞥した。
「今日は随分よく喋るじゃない」
「鎮痛剤がちょうどいい加減に効いてる」ジェスは言った。「本当のことを言えるくらいには効いてて、遺言を言うほどには効いてない」
私は目を閉じた。
「二人して朝から私のベッドの前で分析会議、本当にトラウマ回復に向いてない」
「これは分析じゃない」アイダは薬皿を片付けながら、涼しい顔で返した。「患者の感情を、もう少し処理しやすい場所に置く手伝いをしてるの」
「人間語に訳すと?」
「このまま閉じ込め続けたら、すごく変なタイミングで爆発する」彼女は少し間を置いて、付け加えた。「たとえば誰かがうっかりブラジャーの話をした時とか」
「……もういい」
「了解、ブラジャー様」
「アイダ」
「はい、冗談やめる」
そう言いながら、その口調にはまだ憎たらしい柔らかさが残っていた。正直に言えば、私はずっと、彼女が「人の世話をすること」と「人を追い詰めること」を同じ専門スキルとして学んだのではないかと疑っていた。
でも、こういう時は、こういう言い方の方が、真面目に「大丈夫?」と聞かれるよりずっと効く。本当に壊れ物として扱われると、むしろ自分から壊れて見せたくなる。
病室のドアが、その時開いた。
ノックなし。
非常にアッシュらしい。
入ってきた時、彼の顔色は昨夜医療区画に運ばれたのが私ではなく彼自身だったみたいなほど悪かった。制服のジャケットはきちんと着て、襟元も一分の乱れもない。ただ目の下のくまが、昨夜反応炉のデータを夕飯代わりにしたのをはっきりと証言していた。
病室を一通り見渡した。
私が起きているのを確認し、ジェスがまだ生きているのを確認し、アイダが処置中なのを確認した。
それから彼は、ほっとしたような、そのほっとした自分に少し腹が立ったような、そういう理由で顔をさらに険しくした。
「まだ誰も死んでないようだな」と言った。
私は彼を見た。
「朝一番の気遣いの仕方、アイダと大差ない」
「回復の証拠だ、文句を言う余裕があるなら」アッシュはベッドの足元に来て、腕を組んだ。「例の通り確認に来ただけ」という顔だった。「身体の状態は?」
「まあまあ」
「まあまあって、どの程度?」
「喋れる、呼吸できる、今のところあんたを医療区画から蹴り出したくない」
「予想より良い」
そう言ってから、彼の視線が私の手首の痣の上で半秒止まり、また外れた。
動作は速かった。
誰かに見られたくないみたいに速かった。
私はその瞬間、この男が今日こんなに顔色が悪い理由が分かった。
面倒が増えたからじゃない。 計画が乱れたからでもない。
この一件が、彼が自分でコントロールできると思っていた範囲を、超えてしまったからだ。
アッシュという人間にとって、物事が制御不能になること自体がすでに不快だ。さらに不快なのは、その制御不能の中心が、信頼できる、使える、自分で持ちこたえられると、彼がいつの間にか当然のように思っていた人間だったことだ。
つまり、この艦は普段、私を道具として使っている。
ただ、使い続けているうちに、いつからか、道具が人間になっていた。
そして、もう少しで失いかけた時に、この艦全体がおかしくなるような、そういう人間に。
この認識に気づいて、心のどこかが微妙に動いた。
ジェスも当然見抜いていて、すかさず追い打ちをかけた。
「代理艦長」彼女は言った。「今の顔、一番大事な予備部品を誰かに動かされた人みたいに見えるんですけど」
アッシュは目線一つ動かさなかった。
「まだそんな余計なことを言える元気があるなら、鎮痛剤の量が足りてない」
「ほら」ジェスが私に向いた。「これ、典型的な感情管理失敗」
「黙って休め」アッシュがようやく彼女を一瞥した。
「先に緊張してたって認めて」
「私が緊張してるのは、二人の病人が起きた後に医療区画の騒音レベルが基準値を超えるかどうかだ」
「あ、私たちが死にかけたからじゃなくて?」
アッシュはすぐには返さなかった。
病室が一秒、静かになった。
彼はベッドの足元に立ったまま、私に視線を向けた。何かを直接言うべきかどうか、考えているようだった。最後に、あまり遠回りしなかった。
「使える戦力を失うのは好まない」彼は言った。「特に、失うべきでない種類の」
「その言い方、人間味がない」私は言った。
「人間味で指揮してるわけじゃない」彼はすぐに返した。
「じゃあ朝一番に医療区画に来たのは何のため」ジェスが聞いた。「物資の損耗確認?」
アッシュは無表情に彼女を二秒見た。
「肝心な時に場を持ちこたえる人間が、今日もまだ面倒を起こせる状態かどうか確認しに来た」
私は少し固まった。
ジェスも眉を上げた。
アイダまで薬皿の上から彼を一瞥した。その顔は大体こう言っていた。——へえ、この人、今日は少し人間の言葉を喋れるんだ。
アッシュは自分の言い方が少し踏み込みすぎたと気づいたのか、すぐに顔を元に戻した。
「誤解するな」付け足した。「褒めてるわけじゃない」
「その補足」私は言った。「先に人を海に突き落としてから浮き輪を投げるのと、何が違うの」
「違いは、少なくとも投げたこと」
ジェスが声を上げて笑った。笑いすぎて脚の傷に響いたのか、すぐに顔を歪めた。
アイダが彼女を押さえながら、極めて平静に口を挟んだ。
「はい、現在病室内の三名全員に感情矯正が必要と判断します。一名は死にかけても強がっている、一名は踏みつけられた脚でまだ口が動いている、もう一名は心配しているのに自分を後方支援報告書みたいに語っている」
アッシュが冷たく見た。
「私は患者じゃない」
「じゃあ何? 睡眠不足版代理艦長?」
「状況確認に来た」
「確認した結果は?」
アッシュは半秒黙り、私を見て、ジェスを見て、最後に平坦に言った。
「今日は誰も、彼女たちをすぐに現場復帰できる人間として扱うな」
私は瞬きした。
「ちょっと待って、それ、あなたが言ったの?」
「繰り返さない」
ジェスが口笛を吹いた。
「この艦、今日は太陽が反応炉から昇ってきたの?」
アイダが職業的な微笑みを浮かべた。
「記録に残します。代理艦長が完全な文で気遣いを表現することを学んだ」
「してない」
「してる」
「戦力配置の維持だ」
「了解、気遣い型戦力配置」
「アイダ」
「はい、代理艦長」
私は二人を見ながら、ふと笑いたくなった。
この会話が面白いからじゃない。この場面が、あまりにも雪風らしいからだ。昨日まで帝国の地下施設で怪物と嵐とクズ人間と一緒に命を転がしていたのに、今朝はもう医療区画で口喧嘩と報告書型の気遣いで互いの顔を叩き合っている。
馬鹿馬鹿しいほど、安心する。
その時、病室のドアが再び開いた。
真紀が入ってきた。
本当に顔を洗ってきたのか、前髪がまだ少し湿っている。制服も着替えていて、全体的に冷静で、自制が効いていて、九島家の家訓の横に手本写真として貼り出せそうな状態に戻っていた。ただ、よく見ると目の疲れは抜けていない。病室に入った時、視線が最初に落ちた場所も、あまりにも分かりやすかった。
まず私。
私が座っていること、起きていること、どこかが急に欠けたりしていないことを確認する。
それから初めて、病室の中の他の三人を見た。
アッシュが片眉を上げた。
「ちょうどいいところに来た」
真紀が足を止めた。
「何か?」
「ある」アッシュが顎をしゃくった。「彼女を見ていてくれ」
部屋全体が一秒静かになった。
私が先に反応した。
「ちょっと待って、見ていてくれって何」
アッシュは表情一つ変えなかった。
「文字通りの意味だ。今日のお前は単独行動に向いていない、アイダも二十四時間張り付くわけにはいかない。昨夜から一番離れようとしなかったのが彼女なら、そのまま担当させればいい」
真紀はドアの前に立ったまま、そこまで直接的に言われるとは思っていなかったのか、目が一瞬だけ微かに乱れた。
ジェスが即座に生気を取り戻した。
「賛成」彼女は言った。「非常に合理的。昨夜彼女が当直してる様子は、病室の外に蚊が一匹増えただけで斧を持って追いかけていきそうだったから」
「ジェス」私は歯を食いしばった。
「はい」
「今日本当に殴りたい」
「ありがとう、回復中です」
アイダは横で、観客として満足した様子でうなずいた。
「私も賛成。医療的に言えば、シモは今、強がる前に誰かに押さえ戻してもらう必要がある。心理的に言えば、自分が言うことを聞く相手が必要。戦術的に言えば、九島は昨夜この件で一番反応が速かったことを証明した」
私は真紀を見た。
彼女はすぐには承諾せず、すぐには断りもしなかった。
ただその場に立って、二秒黙り、それからごく平坦に言った。
「異論ない」
その四文字が出た瞬間、少し納得いかないような、少し気まずいような、それでいて妙に面倒を見てもらっているような感覚が全部一度に混み合って、うまく言葉にならなくなった。
アッシュは何かをようやく片付けたような顔になり、少しだけ表情が和らいだ。
「よし」彼は言った。「これで決まりだ」
「決め方が少し独裁的じゃない?」私は言った。
「民主投票がしたいなら、今すぐ全艦員を呼んでくる」彼は私を見た。口調は相変わらず憎たらしかった。「ただ、『星野 シモは今日おとなしくしていた方がいい』に何票入るか、知りたいかどうかは分からないが」
私は固まった。
「……どういう意味?」
アイダが非常に自然に補足した。
「昨夜あんたが運び込まれてから、状態を聞きに来た人が多すぎて、番号札を配ろうかと思ったくらい」薬を整理しながら続けた。「ハーヴィーが来た。起きたら伝えてくれって、反応炉のデータについての文句がまだ一つ残ってるって。蘭が来て、温かい飲み物を一本置いて帰った。ロイが来ようとして、私に追い返された。Dまで扉の前に三分立って、最後に一言だけ聞いた。『まだ口が動くか』って」
ジェスが横から追い打ちをかけた。
「証言できる。あの言い方、雪風版『まだ生きてるか』にそっくりだった」
私は口を開いたが、すぐには声が出なかった。
アイダはそのまま続けた。誤魔化す隙間を与えるつもりがないようだった。
「アカリからもメッセージが来てた。起きたら一言返してくれ、でないと昨日送った測位修正が零点三秒遅かったかもしれないって心配するって。代理艦長については——」
「そこまでにしろ」アッシュがすぐに遮った。
アイダが肩をすくめた。
「とにかく、安心して」彼女は私を見て、口調がさっきより少しだけ真面目になった。「昨日、あんた一人で持ちこたえてたわけじゃない。帰ってきてから怖かったのも、あんた一人じゃない」
病室が、急に静かになった。
ジェスも、すぐには喋らなかった。
私は自分の手首の新しい貼り薬を見つめて、何秒かしてから、かろうじて声を見つけた。
「……私って、こんなに面倒かな」
ジェスが最初に答えた。
「面倒」
アイダが二番目に答えた。
「非常に」
アッシュが腕を組んだまま、冷たく補足した。
「しかも頻度が高い」
目を白黒させる間もなく、真紀がベッドの傍まで来た。
冗談を言うでもなく、追い打ちをかけるでもなく。ただ、その新しい衣服を私のベッドの脇に置いて、怪我していない方の手にごく軽く触れた。
「でも、大事だから」と言った。
たった六文字。
余分な修飾は何もない。
昨夜の医療区画にあった、あと一歩踏み出したら戻れないような温度もない。
むしろ、事実を述べているだけのような、それくらい簡単な言い方だった。
なのに、こういう言葉が一番、逃げ場を作ってくれない。
喉が詰まって、その衣服に視線を釘付けにした。今の自分の顔が、正面から心臓を打ち抜かれた間抜けみたいに見えないようにするために。
ジェスが気を利かせて咳払いをした。
「前言撤回」彼女は言った。「この艦、今日は太陽が反応炉から昇ってきたんじゃなくて、一番人の言葉が苦手な何人かが揃って何かに取り憑かれた」
アッシュが鼻を鳴らした。
「全部喋り通せるくらい回復したなら、午後から追加リハビリだ」
「ほら」ジェスが私に言った。「やっぱり気遣いを恐喝でラッピングしてる」
「黙ってなさい」私はようやく声を取り戻した。「脚が治ったら、真っ先に訓練場から蹴り落とす」
「それにはまず、あんたが先に回復しないと」
「する」
そう言った時、最初は彼女の言葉に乗っかっただけのつもりだった。でも口に出してみたら、本当にそう思っていることに気づいた。
強がりの「大丈夫」じゃない。
もっと静かな、別の何かだ。
回復を待っている人がいる。 まだ口が動くか確認しに来る人がいる。 朝一番に新しい衣服を探しに行く人がいる。 戦力維持と言いながら、足は先に医療区画へ向かっている人がいる。 口は悪くても、自分とあいつが二人とも生きていることを、本当に息をついていい理由として受け取っている人がいる。
雪風。うるさくて、物がなくて、危なくて、規律はめちゃくちゃで、乗っている人間は口が悪いか気性が荒いか、たまに降下艇の半分をドアに突き刺してくる。
でも、こういう時になって初めて分かる。
自分がいつの間にか、彼らのあの小さくて、ごちゃごちゃしていて、見栄えのしない「大事な人間」リストに入れられていたことが。
しかも、それほど後ろの方ではない順番で。
小さく息を吐き出して、アッシュを見上げた。
「というわけで、代理艦長。今日は堂々とベッドで怠けていいですか」
アッシュは二秒ほど私を見た。
「駄目だ」
やっぱりそうだと思った。
でも次の言葉はすぐに続いた。
「ただし、アイダが出ていいと言うまで、堂々と医療区画にいていい」
アイダが満足そうにうなずいた。
「その言い方、気に入った」
ジェスが手を上げた。
「同じ待遇を申請します」
「申請権がない」アイダが言った。
「なんで?」
「どうせ逃げられないから」
病室で、ようやく誰かが笑い出した。
最初はジェス、次に私、それからアイダも少しだけ。アッシュの口角は動かなかったが、戦術兵器として使えそうなほど不機嫌だった顔が、入ってきた時よりは少しだけ和らいでいた。真紀は私のベッドの傍に立って、手すりに手を置いたまま、何も言わず、でも動きもしなかった。
昨夜、人をまるごと押し潰しそうだったあの重さが、この艦の不器用で、見苦しくて、でも非常に真剣な日常に、少しずつ引き戻されているような気がした。
忘れたわけじゃない。 何でもなくなったわけでもない。 ただ、誰かが傍にいるから、夜明けまで一人で全部抱えなくていい。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




