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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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122. 今はただ、おやすみなさい 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

結局、私たちはキャプテン・ハックの一味を拘束しなかった。 理由は、言ってみれば単純だ。その必要がなかったから。


もっと口悪く言えば――自分でこれを言うのは、自分の顔を靴底で叩くようなものだが――私たちの先ほどの「帝国巡邏艇を一撃で花火に変え、海賊船に強行接舷し、乗り込んで家探しをし、ついでに相手の最も値打ちのあるものを根こそぎ奪う」という一連の行動は、海賊と比べても、せいぜい報告書の書式がしっかりしているくらいの違いしかなかった。


もし制服を脱ぎ捨てて、アッシュのあの文明的な言葉を吐く顔をタオルで隠してしまえば、事の性質は、あまり深く考えない方がいいレベルのものだ。


そして、この少しばかり体裁の悪い現実とは別に、もう一つ、あまりにも荒唐無稽で、自分が疲れすぎて高圧下の幻覚でも見ているのではないかと疑いたくなるような出来事があった。


アイダが、本当に自分の連絡先をキャプテン・ハックに渡したのだ。


社交辞令でも、「今後は雪風の公務窓口へ」といった公式の誤魔化しでもない。正真正銘、彼女自身の個人的な連絡コードを、あの黄色い歯と髭面で、十年は風呂に入っていなさそうな、呼吸するだけで犯罪の匂いがする老海賊に渡したのだ。


傍らでその光景を見ていた時、私の頭に最初に浮かんだのは戦術でも今後のリスクでもなく、ひどく情けなく、場違いな感想だった。


――上院でアイダ先輩を追いかけていたあのイケメンたちがこれを知ったら、きっと寮の屋上から順番に並んで飛び降りたくなるだろうな。


なにしろ、アイダは学校で決して追う人に困るようなタイプではなかった。成績、家柄、外見、話しぶり、頭脳、そのすべてが合格点以上、いや、はるかにそれを超えていた。彼女を追う男たちの多くは、本当に前途洋々で、容姿端麗で、靴紐の結び目すら人生設計より整っていそうなエリートばかりだった。


それが、何年も経って、実際に彼女の連絡先を手に入れたのが、しかも「今後、商売の話があればまた」という灰黒色の理由で手に入れた人間が――キャプテン・ハックだなんて。


老海賊。 石鹸で体を洗おうとしたら、まず石鹸の方を汚してしまいそうな老海賊。 宇宙の公平さには、反吐が出る。


私の内なる嫌悪感は、よほど顔に分かりやすく出ていたのだろう。最後のデータを送信し終えたアイダが、こちらを振り返って私を一瞥した。


その一瞥はごく軽く、優雅で、そして的確だった。 「星野さん、何かとても失礼なことを考えていないかしら?」


私は即座に背筋を伸ばした。 「い、いえ。まったく。あはは……」


その笑い声が出た瞬間、自分で自分をひっぱたきたくなった。 人間、本当に後ろめたいと、真空以外の環境では生きられないような奇妙な笑い声を進化させてしまうらしい。


アイダはそれ以上私を追及せず、端末をしまいながら淡々と言った。


「キャプテン・ハックみたいな人間を、拘束したり閉じ込めたりしても、意味がないわ」


「……そうですか?」


「そうよ」彼女は極めて平然と言った。


ごく一般的な資産運用の原則でも語るかのような平然さで。


「ああいう人間の最も良い処理方法は、その価値を骨の髄まで搾り取ってから、ボロ雑巾のように捨てることよ」


私はその場で二秒ほど沈黙した。


わあ。 やはり政治家出身の女は恐ろしい。


大声で怒鳴り散らしたり、テーブルをひっくり返してグラスを割ったりするような恐ろしさではない。 こちらの襟元を直してあげながら、ついでにその人間の利用価値が後どれくらい残っているかを値踏みするような恐ろしさだ。


私は小声で呟いた。 「……てっきり、『子犬のように飼い慣らす』とか言うのかと」


アイダには聞こえていた。 聞こえていただけでなく、彼女は笑った。


その笑顔は美しかった。 そして、危険だった。


「子犬?」彼女はわずかに首を傾げた。「私は銀河帝国の皇女たちみたいに、子犬を飼う趣味はないわ。まあ、でも――」


彼女は言葉を切り、ある商品の今後の使用方法を真剣に評価しているかのように続けた。


「彼がこれから心を込めて仕事をするなら、私の足でも舐めさせてあげないこともないわね」


私はもう聞いていられなかった。 道徳的な意味ではなく、精神的な意味で。


私の中でのアイダ先輩のキャラクター設定が、非常に具体的かつ高速で、金属疲労の音を伴いながら崩落していくのを感じた。それはひび割れなどではない。外壁が丸ごと剥がれ落ちるような崩落だ。


私が無言で半歩後ずさりした瞬間、アイダは背中に目でもついているかのように、手を伸ばして私の後ろ襟をガシッと掴んだ。


「星野さん」 「は、はい?」 彼女はまだ笑っていた。 「さっきの話は……内緒にしておいてね」


その「ね」の響きはごく軽かった。 羽毛のように軽かった。 だが、私の背中には一瞬で冷や汗が噴き出した。


もし私がいつか口を滑らせたら、次に雑巾のように搾り取られて捨てられるのは、十中八九私だろうと、微塵も疑えなかったからだ。


だから私は、冷や汗まみれで逃げ出した。 比喩ではない。 文字通りの逃走だ。


私はほとんど雪風の内部通路に沿って一直線に撤退し、まだ新しい溶接の匂いが残る角を曲がり、キャプテン・ハックの船から押収した物資を運ぶ工務員の隊列を避け、最後には捕食者の爪の下から逃げ出した小動物のように、食堂へと飛び込んだ。


食堂の照明は他より少し暖かみがあった。


雪風の多くの区画が急造の生存装置のように見える中で、食堂だけは時折「人間はただ死なないためだけに生きているのではない」という象徴的な尊厳を保っていた。もちろん、今日のその尊厳はさほど多くない。空気には加熱食品、濃いコーヒー、金属のトレイ、そして長時間の勤務を終えた人間の匂いが混ざり合い、疲労を細かく刻んで強火で炒めたような匂いがした。


奥のテーブルのそばに、一目で三人の姿が見えた。


ドワイト・"D"・バークリーが一番端に座っていた。 いつでも誰かを壁に殴り飛ばせそうな雰囲気を漂わせながら、制服だけは教範よりもきっちりと着こなしているあの姿だ。最近、竹中曹長に引っ張られて「訓練」を受けて以来、彼の気質には微妙な変化が生じていた。


温和になったわけではない。そんなことが彼に起こるはずがない。もともと近寄りがたい一本の刃が、新たに研ぎ直されたような感じだ。表面上は同じに見えても、実際にはその刃先はより静かに、より鋭くなっている。


向かいにはハーヴィーが座り、目の前に資料板を広げていた。顔色は典型的な「連続残業中だが、指摘しないでくれ。指摘されたら自分が死にかけていることをその場で認めてしまうから」という工学系末期の表情だった。


そしてジェス―― 彼女はその隣に座っていた。


彼女の姿を見た瞬間、私の頭の中では少なくとも三つの異なるバージョンの警報が同時に鳴り響いた。


一つは景雲の中でのあの事故から。 もう一つは廊下でのあの「友情のキス」から。 そして三つ目は私自身の羞恥心から。それは大声で私に警告していた。「今は絶対に、普通の人間のように振る舞え」と。


残念ながら、私はたいていそういうことが苦手だ。


ジェスが先に私に気づき、手を振った。笑顔は普段と変わらないようにも見えたし、それほど大げさではないようにも見えた。いつもの人をからかうような明るさが抜け落ちて、かえって少し……そう、普通に見えた。それが私をさらに不安にさせた。


ジェスが普通になる時、事態は彼女が狂っている時よりも処理が難しいことが多いからだ。


「よお、シモ」彼女は言った。「何その顔? とんでもない場所から逃げてきたみたいじゃない」


私が座る動作が、一瞬こわばった。 「ある意味、その通りよ」


Dが目を上げて私を見た。 「誰に追われてるんだ?」 「アイダ先輩のキャラクター設定に」


資料板を見ていたハーヴィーが、その言葉を聞いて本当に顔を上げた。 「……それは深刻そうだな」 「でしょ?」私は即座に共鳴者を見つけ、危うく彼の手を握りそうになった。「しかも彼女、さっきキャプテン・ハックに自分の連絡先を渡したのよ」


Dが眉を片方上げた。 ジェスは直接口笛を吹いた。 ハーヴィーは二秒ほど短くフリーズし、それからひどく苦しそうに言った。


「アイダが?」 「そう」 「連絡先を……キャプテン・ハックに?」 「そう」


ハーヴィーは沈黙した。 その沈黙は実に工学系らしいものだった。理解できないのではない。理解した後、大脳が現実のモデルを再構築するのに少し時間が必要なのだ。


最後に、Dが先に鼻を鳴らした。 「合理的だ」


私は彼を振り返った。 「どこが合理的よ?」 「使える人間には、連絡先を残しておくべきだ」と彼は言った。「キャプテン・ハックみたいなゴミは、捕まえてもスペースの無駄だし、逃がすだけでは安すぎる。借りを作らせて、泳がせておけば、後で勝手に這って戻ってくる」


私は彼を二秒ほど見つめた。 「……あなた、最近本当に保安隊みたいな口調になったわね」


Dは無表情のままカップを手に取り、一口飲んだ。 「竹中曹長の訓練の賜物だ」


その言葉が出た瞬間、テーブル全体が一瞬静まり返った。 なぜなら、「竹中曹長に鍛えられた」という言葉は、経験というより病名のように聞こえるからだ。


私はたまらず聞いた。 「それで、最近いったい何を教わってるの?」


Dはカップを置き、極めて淡々と答えた。


「職務質問。制圧。動線遮断。近接拘束。それから、相手を殺さない範囲で、大人しく協力するのが身のためだと理解させる方法」


「……」


「それに加えて、保安現場での対応マニュアルを三十七種類暗記させられた」


私は、「これらはすべて普通のことだ」と言わんばかりの彼の顔を見て、竹中曹長に少し同情し、同時に将来Dに合法的に処理されるであろうすべての人間にも少し同情した。


ジェスが笑いをこらえきれず、肩を震わせた。 「本当に暗記したの?」 Dが彼女を見た。 「文句あるか?」 「ないない、全っ然ない」ジェスは両手を挙げ、意地悪く笑った。「ただ、もし今後誰かが不運にもあなたに捕まったら、逃げることさえ教養がないように見えちゃうだろうなと思って」


ハーヴィーがここで資料板をテーブルの中央に押し出し、話題を彼がより制御しやすい世界へと強引に引き戻した。 「不運といえば、今一番不運なのは俺だ」


下を見ると、画面には先ほどキャプテン・ハックの船から運び込まれたばかりの機器のデータ、コネクタ図、出力曲線、そして普通の人間なら自発的に夕食を放棄したくなるような大量の技術パラメータが溢れていた。


「ヘリウム・水素駆動炉?」私は聞いた。 ハーヴィーは頷き、手を伸ばして眉間を揉んだ。


「アイダ先輩が、初期の受け入れと互換性の評価を先に俺に投げてきたんだ」 「先にあなたに?」私は瞬きした。


「これって、すごく重要なものなんじゃないの?」


「重要だからこそ、彼女は先に知りたいんだよ。『今すぐ雪風に取り付けたとして、心臓が一つ増えるのか、それとも爆発が一つ増えるのか』をね」


その言葉には説得力があった。 私はそれらのデータ曲線を見つめた。たとえ三割しか理解できなくても、あの九島重工のヘリウム・水素駆動炉がただの予備パーツではないことは分かる。


あれがもし本当に雪風に接続できたら、その意味はおそらく延命だけではない。この元々まともではない特改駆逐艦を、さらに理不尽な方向へもう一段階押し上げることができるのだ。


「自信はあるの?」私は聞いた。


ハーヴィーは、エンジニア特有の、「ない」と正直に言いたいが、今は腹を括るしかないと分かっている時の表情を浮かべた。


「『自信』なんて言葉は豪華すぎる。今の俺の目標は、二本目の配線に触れた瞬間、この区画ごと宇宙の塵にならないと確認することだ」


「その要求、すごくささやかに聞こえるわね」 「だろう?」ハーヴィーは疲労困憊の声で言った。「しかも、すごく現実的だ」


Dが資料板を一瞥した。 「人手は要るか?」


ハーヴィーが顔を上げ、複雑な表情で彼を見た。


「溶接できるか?」


「できない」


「反応炉のコネクタ図が読めるか?」


「読めない」


「高放射線警報が鳴った時、直感でどの冷却バイパスを先に閉じるべきか判断できるか?」


「できない」


ハーヴィーは頷いた。 「なら、祈っててくれ」


私は危うく吹き出しそうになった。


ジェスは頬杖をつき、首を傾げて私を見た。 「シモ、あなたは? あなたの方はどうだった?」


彼女にそう聞かれると、私の頭はまたしても不甲斐なく機能不全を起こし始めた。 彼女の問い方はごく普通で、語尾を特別に伸ばすこともなく、真面目とさえ言えた。だが、真面目すぎるからこそ、私は彼女が不真面目だった時のことを思い出してしまうのだ。


私を抱きしめ、泥棒のように私の唇に触れたあの光景が、まるで違法に埋め込まれた常駐プログラムのように、時折勝手に飛び出してきては旗を振って騒ぎ立てる。


私は無理やり注意力を引き戻した。 「どうもこうもないわ。最初は海賊船、次に盗品、最後はアイダ先輩にショック死させられそうになった」私は言った。「今日の情報量は多すぎて、労災を申請したいくらいよ」


ジェスは私を見つめ、唇の端を曲げた。 「じゃあ、私が少し慰めてあげようか?」


私は自分の唾で危うく咽せ死ぬところだった。 「結構」 「即答するなんて、冷たいわね」 「冷たいんじゃなくて、生存本能よ」


彼女は笑った。 騒々しい大笑いではなく、少し低く、少し意地悪で、私が緊張しているのを分かっていながらわざと突っ込まないような笑い。最悪なことに、私は今、彼女の様々な種類の笑い方を区別できるようになってしまっていることに気づいた。


この能力は少しも喜ばしいものではない。私が自分で認めたくないほど、深くはまり込んでいることを示しているだけだ。


Dは私たちを一瞥したが、何も言わなかった。 ハーヴィーは明らかに見て見ぬふりをして、資料板をめくることに没頭していた。普段よりもずっと集中しているふりをして、まるで工学パラメータさえ十分にあれば人間の感情など存在しないかのように。


こういう男が今まで生き延びてこられたのは、文明の奇跡だ。


ジェスは指でテーブルを二度叩き、不意に私の方へ少し身を乗り出した。 「でも真面目な話、顔色が悪いわよ」彼女は低く言った。「寝てないの?」


私の心の中で警鐘が鳴り響いた。 この質問は危険すぎる。 もし正直に答えるなら、「あなたのあの忌々しい友情のキスのせいよ」から始め、景雲でのあのさらに起こるべきではなかった事故まで語り、最後には羞恥心の過剰摂取でその場で蒸発しなければならないからだ。


だから私は、少し情けないが、生き延びられる道を選んだ。 「最近、誰がまともに眠れてるっていうのよ?」と私は問い返した。


ジェスは数秒私を見つめた。私がこれ以上話したくないのを聞き取ったのか、それ以上は追及せず、ただ軽く肩をすくめた。 「それもそうね」


たったそれだけのことなのに、私はかえって居心地が悪くなった。 もし彼女が強引に騒ぎ立ててくれば、私は口喧嘩を盾にできた。彼女がこうして手を引くと、逆に彼女が私の想像以上に多くのことを見透かしているような気がしてしまうのだ。


ハーヴィーがとうとう耐えきれなくなったように、資料板を脇に投げ出し、長く息を吐いた。 「駄目だ、コーヒーが要る」


Dが淡々と言った。 「今日、もう五杯目だぞ」 「それは、お前が見たのが五杯目ってだけだ」 「誇るようなことじゃない」 「自伝に書くつもりもない」


彼らを見ていると、ふとこの光景が少し奇妙に思えた。 雪風はついさっき外で激しい立ち回りを演じたばかりだ。帝国の巡邏隊、海賊、九島家の暗線、軍用規格の動力炉、武器の供給率を上げる材料、そのすべてがまだ熱を帯びている。


それなのに今、食堂では相変わらずコーヒーや保安訓練や、本物の豚肉には見えない夕食の豚カツについて話し合っている人間がいる。


たぶん、人間とはそういうものなのだ。 本当に大きな事態がのしかかってきた時ほど、自分がまだ座って話ができる世界で生きていることを証明するために、退屈に近いほど小さな事柄を必要とするのだ。


その時、雪風の艦橋放送が鳴った。 短いアラート音に続き、全艦のパブリックチャンネルに切り替わる微かなホワイトノイズ。


食堂に散らばっていた細々とした話し声が、一瞬で薄れた。


次の瞬間、放送からアッシュの声が流れた。 『全学生は、直ちに艦橋へ集合せよ。繰り返す。全学生は、直ちに艦橋へ集合せよ』


彼の声は相変わらずだった。平穏で、明瞭で、宿題の提出を忘れないように注意するような礼儀正しさ。 だが私はよく知っている。こういう時に彼から全艦放送で艦橋に呼び出されて、気楽な良い知らせだったためしはない。


Dはすでに立ち上がっていた。 ハーヴィーは目を閉じ、まだ飲めていない次の一杯のコーヒーに黙祷を捧げているようだった。


ジェスは首を傾げて私を見て、笑った。 「どうやら休憩時間は終わりのようね、シモ」


私も立ち上がり、深く息を吸い込んだ。 「いいえ、私たちは最初から休憩時間なんてもらってなかったと思うわ」


これが雪風だ。 この艦では、息をつく暇さえも戦況から施しを受けたようなものなのだ。

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