119. ロングレンジ・レコノサンス 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
私はその夜、一睡もできなかった。
この台詞を医官に向かって言えば、医官はきっと冷たく私を一瞥してから、カルテにこう書き込むだろう。「患者は主観的に不眠を訴えているが、実際の要因は自業自得の疑いあり」 残念ながら、医官もそう的外れではないだろう。
二等艙の小さな部屋の中、空調の音は安定しており、艦壁の奥からは雪風が修理半ばの時に特有の低い振動が伝わってくる。近づいたり遠のいたりするその音は、傷口を縫われながらも「俺はまだ生きているぞ」と喉を鳴らす老いた獣のようだった。 私はベッドに横になり、目を閉じ、呼吸を数え、外板溶接の一定のリズムを数え、自分にはあと何本の命が残っていて、それをどれだけ気前よく使い果たせるかまで真剣に数えてみたが、まったく無駄だった。
目を閉じるだけで、脳内で自動的に上映会が順番待ちを始めるからだ。
第一幕は、九島重工と印字されたあのヘリウム・水素駆動炉。重荷重ラックに横たわる冷たい銀色の外殻は、海賊船の腹の中に収まるべきではない高価な心臓のように見えた。
第二幕は、深層改修区画の影の中で、真紀が私を引き戻した瞬間。肩口に当てられた手、低く抑えられた声、「民生規格の出口じゃない」という言葉。
……第三幕は、卑怯すぎた。
ジェスのあの抱きついてきた動作。そして、泥棒のように短く、彼女自身でさえ本気で認める勇気がないほど軽かったあのキス。それは密航者のように私の頭の中に潜り込み、どれほど何でもないふりをしようとしても、一番浮かんではいけないタイミングで勝手に顔を出すのだ。
最後には寝たふりをするのを諦め、身を起こして壁にもたれ、顔を両手で覆った。そして、いい大人が唇に少し触れられたくらいで一晩を無駄にしていいものかどうか、真剣に考えた。
答えは、いい、だ。
特に、その人間が翌日には強偵察機に乗り込んで海賊船を尾行し、ついでに副長が状況をどうやってさらに悪い方向へ押し進めるのかを見届けなければならない場合、その無駄にする一晩には、いっそう深みが出る。
私が本当に少しだけ意識を落としたのは、おそらく夜明け前だった。 そして、どれくらい眠ったのか分からないまま、浅く、乱れた、無責任な夢の中から、ノックの音に強引に引き戻された。
「シモ」
ドアの外は、真紀の声だった。 二度目のノックはない。三度目の催促もない。 一声だけ。 それで十分だった。
ベッドから跳ね起きた時、頭はまだ完全には戻っていなかったが、身体はその声だけで自動的に当直モードに入っていた。髪が静電気を食らったように爆発し、顔色がおそらく昨夜の食堂のパティより酷いことに気づいた頃には、ドアはもう半分開いていた。
真紀がドア口に立っていた。 もう外勤装に着替えていた。艦橋のきっちりした制服ではなく、機関区や狭いコクピットの環境に適した濃い色の機組服だ。引き締まったシルエット、袖口と腰のラインはしっかり留められ、肩にはジャケットを掛け、手には薄型の端末板を持っている。通路の照明が彼女の横顔を切り出し、私が一生かかっても身につけられそうにない冷静さを、はっきりと際立たせていた。
一方の私は、古い毛布から引きずり出されたばかりの、落ちぶれた動物のようだった。
……上等だ。 教育的なほど鮮やかな対比だ。
彼女は私を一瞥した。 ただ一瞥だけ。
「眠っていないわね」真紀は言った。 問いではない。
とぼけたかったが、今の私の有様では、雪風で一番寛容な整備ドローンでも見抜くだろう。
「少しは寝たわよ」私は意地を張った。 「どれくらい?」 「……体感で、十分くらい」
真紀は一秒黙った。 「正直で結構」 「それ、褒め言葉?」 「違うわ」彼女は端末板を差し出した。「キャプテン・ハックが予定を前倒しにした。二十七分前に係留解除を申請、十五分前に外周の出港検査を通過。アッシュはすでに雪風を現状維持で動かさないようにした。私たちが先に景雲に乗る」
私は端末板に目を落とした。 更新されたばかりのステーション外の航路略図、キャプテン・ハックの略奪船の初期離港ベクトル、そして景雲二一型の出動準備状態が表示されている。一番下にはアッシュが書き残した注釈があった。文字数は少なく、腹立たしいほど冷静なスタイルだ。
「まず張り付け。先に手は出すな。帝国の巡邏部隊が介入した場合、優先して観察せよ」
上等だ。 本当に事態が動き始めた。
顔を上げた瞬間、眠気はきれいに引いた。
「五分後に機庫へ行く」 真紀がもう一言付け加えた。 「顔を洗って」
私:「……」
「それと」彼女は平坦な声のまま続けた。「もし後で景雲の後席で睡眠不足のせいで吐いたら、あなたを景雲の休息艙リストから永久に除名するわ」
「副長、その脅し方は本当に人情がないわね」 「効けば十分よ」
言い終えると、真紀はくるりと背を向け、そのまま歩き出した。 一切未練がない。
私は彼女の背中を二秒見送り、最後には自分の髪を掻き上げて「了解」とだけ返し、洗面所へ駆け込んで最速で自分を人間の形に整えた。
五分後、外勤ジャケットのジッパーを胸元まで引き上げながら、心の中でひっそりと認めた。眠れなかったことより、今もっと厄介なのは、自分が少し楽しみにしているという事実だ。
これは良くない兆候だ。 期待というものは、たいていリスクを意味する。 だが、私たちはどうやら、それを燃料にして生きている連中らしい。
*
雪風の機庫は今、奇妙な静けさに包まれていた。
誰も動いていないわけではない。 むしろ逆だ。動いている人間は多い。修理用の吊架はまだ両側に掛かり、地上要員が最終的な出力ラインの確認をしている。アカリの部下たちが機体の下でセンサーの校正をし、遠くの機関区からはヴィクトルが誰かを怒鳴りつける声まで聞こえてくる。まるで金属の暴龍が若い後輩に文明とは何かを教育しているかのようだった。
だが、そのすべての騒音は、もっと大きな何かに押さえ込まれていた。
それが景雲二一型だ。 より正確に言えば――雪風のこの改修強偵察機、景雲だ。
機庫の中央に停まる姿は、「美しい」機体には見えなかった。 美しくあるべきでもない。
それはむしろ、冷たく、細く、静かに研ぎ澄まされた一本の長刀に近かった。翼を持たない紡錘形/リフティングボディの機体は細長く伸び、表面のコーティングはほとんど光を飲み込むほどに暗い。外殻に余分な角はなく、センサー、放熱、そして静粛航行のためにどうしても必要な艙線だけが、抑制が冷酷さに近づいた生物の筋理のように走っていた。
尾部の二組の低輻射パルスイオン推進器はまだ起動しておらず、静かに機体後方に嵌め込まれている。背には、それほど目立たないが、明らかに普通の艦載機にはあるまじき大型高周波重力波アンテナマストが立っていた。
全体として「戦闘機」には見えない。深宇宙に潜み、尾行し、恨みを記憶し、最後に情報だけを持ち帰って他人に殺させるための、冷血な器官のように見えた。
機庫の入口で二秒ほど眺め、頭に浮かんだ最初の一言はこれだった。
――これ、本当に真紀に似合う。
……いや、今そんなことを考えている場合じゃない。
アッシュが機体前下方に立ち、端末を手に持っていた。隣には蘭とアカリがいる。ジェスもいた。端末板を抱え、昨夜まったく他人の唇を盗んでいないし、今日も堂々と軍事任務の準備に参加できる、という顔をしていた。
ジェスを見た瞬間、私の足が微妙に止まった。
ジェスも当然、私に気づいた。 視線がぶつかった一秒、彼女も珍しく半拍固まり、それから何事もなかったように端末板を胸元に抱き直した。ひどく後ろめたいのに、何もしていないふりを必死に装う常習犯のようだった。
……よし。 少なくとも、彼女も完全に平静ではないらしい。 私だけが内側で爆発していたという恥ずかしさが、〇・五割ほど軽減された。
そこでアッシュが顔を上げ、私をその益体もない内心劇から現実へ引き戻した。
「顔色が悪いな」と彼は言った。 「ありがとう。それを皆の前で確認する必要はないと思うけど」 「後で君を後席に縛り付けておくべきかどうかの判断材料だ」 「あなたたち今日は、私の睡眠状態を娯楽にしようと申し合わせたの?」
アカリが機体の下から半身を覗かせ、冷たく一言刺した。 「娯楽じゃない。リスク評価よ」 「あなたまで」 「だって今のあなた、高機動旋回の途中で急に人生を疑い始めそうな顔をしてるもの」
反論しようとしたところで、真紀が反対側から歩いてきた。ヘルメットと二組の機組用腕部コントロールモジュールを手にし、そのうち一組を無造作に私に投げてよこした。
「突っ立って何してるの」彼女は言った。「キャプテン・ハックは、あなたが眠れなかったからって、飛ぶのを遅らせてはくれない」
「その理屈は完全に正しいけど、感情的にはかなり残酷ね」 「感情は帰ってから処理して」
可惡。 今日の彼女は本当に、一言一言が急所を突いてくる。
腕部モジュールを装着しながら、彼女の後を追って機腹の搭乗ラダーへ向かい、ついでに聞いた。 「雪風の方は?」
アッシュが最新の航路図を私たちの端末に送り終えてから、答えた。
「雪風は元の泊位、元の修復のペース、元の交渉のペースを維持する」彼は言った。「親方のところには、新しい資材価格の異議申立書を一通投げておいた。今日の午前中は私と言い合うのに忙しくなるはずだ。キャプテン・ハックがなぜ前倒しで出港したのか、すぐに細かく詮索する余裕はない」
私は彼を横目で見た。 「あなたって本当に、ご馳走しながらこっそり相手の帳簿を空にするタイプね」 「ありがとう」 「これも褒めてないわよ」 「分かっている」
蘭が通信台の外部端末の前で、顔も上げずに付け足した。 「外周監測によれば、キャプテン・ハックの艦はすでに主港区の遮蔽帯を離れ、灰航道の第三層に進入しています。帝国の巡邏熱域とは今のところ直接交差していませんが、よく使われる巡邏航路が二本、彼の進行方向の近くを通っています」
「つまり」私は手袋を締めながら言った。「帝国軍が『たまたま』興味を持つ可能性がある」
今度答えたのは真紀だった。 「運が良ければ、ね」
彼女がそれを口にした時、表情はまったく変わらなかった。 それでも私には分かった。その「運」の中に、どれほどの人為的な成分が混じっているかが。
私はふと、キャプテン・ハックのために少しだけ黙祷したくなった。 本当に少しだけ。 海賊船長という職業は元々他人の不幸で食っているようなものだが、真紀に目を付けられた場合は、より精緻な不幸に変わる。
ジェスがそこでようやく、意を決したように口を開いた。 「シモ」
私は背筋が一瞬固まってから、彼女を振り向いた。 「……何?」
彼女は端末板を差し出した。動作は普通で、表情も精一杯普通を装っていたが、耳の付け根にはやはり少し、どうにもならない熱色が残っていた。
「今使える氷晶の枠と、支払い約束済みの下限をまとめたもの」彼女は言った。「この先キャプテン・ハックと交渉することになったら、命の話でも、炉の話でも、あの人の口をまだ顔に残しておくべきかどうかの話でも、これを先に頭に入れておいて」
私はそれを受け取った。 二人の指先が、端末板の縁でごく短く触れた。 一瞬だけ。
それだけで、私の頭には、昨夜のあの泥棒のようなキスが、ひどく役に立たない形で閃いた。
……終わった。 今の私は、人間の体温を伴う接触を何一つまともに処理できそうにない。
幸いジェスもそれ以上は言わず、ただ私にしか聞こえないほど低い声で、一言だけ付け加えた。
「帰ってきたら、好きなだけ怒らせてあげる」
私はじっと彼女を見た。 ジェスはそれでも、短く、後ろめたそうで、しかしなぜか少し可愛い笑みを私に向けてみせた。
本当に可惡だ。 しかも、人が一番忙しい時に、一番防ぎにくい場所を選んで、こっそり突いてくる類の可惡さだ。
私は最後に軽く鼻を鳴らし、ひとまずその貸しを記録しておくことにした。 そして踵を返し、真紀の後を追って景雲の搭乗ラダーを登った。
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