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臨界の星穹  作者: Mr.佐藤焫焵
臨界の星穹:ロスト
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118. 親友からのキスは修羅場の始まり!? 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

雪風に戻った時、係留区の外側にはまだ二本の重工用修理アームが艦体に掛かっていた。あまり優しいとは言えないが、とりあえずこの老いた獣を無理やり人の形に押し戻してくれている鉄の手だ。


外板のあちこちに溶接補修の跡が残り、封鎖板には色の違いが目立ち、臨時で引き直したケーブルの束が装甲の隙間から覗いている。それでも、入港した時のあの、息をしながら血を流し、いつ部品をばら撒いてもおかしくなかった惨状に比べれば、今の雪風はずいぶん「船」らしくなっていた。


いい船ではない。 だが、少なくとも噛みつける船だ。


真紀と共に中段メイン通路に足を踏み入れた途端、配電モジュールを抱えたステーションの作業員二人と鉢合わせした。その後ろには雪風の記録兵が一人続いている。


通路には溶接直後の焦げた匂い、消毒液の匂い、金属冷却液の匂い、そして「全員死ぬほど忙しいが、今のところまだ死んでいない」という軍艦特有の人の気配が満ちていた。この光景はなぜか妙に安心させる。雪風がこの混乱の中の秩序ある喧騒を保っている限り、彼女はまだ生きていて、宇宙を漂う棺桶には成り下がっていないということだからだ。


「副長」記録兵は真紀を見るなり、すぐに姿勢を正した。「代理艦長が臨時艦橋でお待ちです。戻られたら、すぐに来るようにとのことです」


真紀は軽く頷いた。 「分かった」


彼女は歩きながら、先ほどの深層改修区画の情報を頭の中で並べ直しているのが分かった。仕事モードに入ると、彼女は一段と静かになる。冷たくなるのではなく、雑音をすべて自動的に外へ追い出し、本当に意味のあるものだけを残すのだ。こういう時に横で無理に茶々を入れれば、大抵は空気の読めない観賞魚のようになるだけだ。


……正直に言えば、普段からそう大差ないかもしれないけれど。


だから私はただ彼女の後を早足でついていき、そのまま雪風が今、臨時艦橋兼戦術会議室として使っている区画へと入った。


臨時艦橋とは名ばかりで、実際には真紀とアッシュが「まだ使える指揮室」を、力技で「ここはすべて正常に機能している」という体に押し上げた場所だ。CICは依然として封鎖中で、メインの戦術統合もまだ完全ではない。そのため、本来は専用システム内を流れるはずの多くの情報が、この一部屋に圧縮して押し込まれている。


メイン投影板、二組の補助戦術スクリーン、ステーション内の係留構造図、修理進捗バー、補給残量、外部受信ウィンドウ――それらが何層にも重なり合い、まるで誰かが駆逐艦一隻分の神経系統をまとめて荷造りし、まだ文句を言う暇もない部屋に押し込んだかのようだった。


アッシュはその中にいた。 本来代理艦長が座るべき席に腰掛け、手元には資材リスト二枚とステーション内の係留安全図、それにコーヒーに見えて実際は神経系にあまり優しくなさそうな濃い液体の入ったカップが置かれている。


蘭は右側の通信台の前でステーション内の航路更新を整理しており、ジェスは脇の席でタブレットに集中していた。私が入ってきた瞬間、「あ、情報が戻ってきた。これでゴシップが軍事行動に格上げできる」という目をこちらに向けた。


「戻ったか」アッシュが顔を上げて私たちを見た。 問いではない。


「今の私たち、戻ってきてないように見える?」と私。 「呼吸が少し速いな」と彼。 「さっきステーション内で海賊船を一隻見つけて、九島重工の新型ヘリウム・水素駆動炉を目撃して、氷晶の出所に涎を垂らし始めた連中まで見つけたばかりだからね」私は手にしていた板を一番近い机に叩きつけた。「これで呼吸が平静だったら、医官に脳への酸素供給を診てもらうべきよ」


ジェスが即座に顔を上げた。 「うわ、二人の収穫、私が今日算出した氷晶の損耗率よりずっと美味しそうじゃない」


「まず本題」真紀がそれを遮り、まっすぐメイン投影板の前へ進んだ。「蘭、調整権限へ。この段は共有記録層には入れないで」


蘭は余計な一言も挟まず、手を動かしていくつかの権限を切り替えた。ドアロック、室内の音響遮断、ローカル記録の封鎖が即座に起動する。ジェスの表情も少し引き締まった。これが普通の会議ではなく、チームの中枢だけによる非公開の戦術段階だということを意味している。


アッシュはカップを脇へ押しやり、少し姿勢を正した。 「最初から話せ」


真紀は無駄な前置きをしなかった。 まず私に、通行止めの場所から、古い保守区画へのルート、深層改修ドックの位置、キャプテン・ハックの略奪船の外形、改修ドックの警戒状況、レジャーのラインの人間の出現、そしてあの新型ヘリウム・水素駆動炉と氷晶の出所がすでに目を付けられているという会話まで、全部もう一度話すよう指示した。


私が話している間、アッシュは口を挟まなかった。 本当に聞いているのだ。しかも、こちらが語る細部の一つ一つを、異なるカテゴリーに分解しながら聞いている。何が情報で、何が感情で、何が推測で、何が現場の空気なのか。彼の頭の中では自動的に仕分けされるので、こちらが要約してやる必要がない。


私がキャプテン・ハックの「新型ヘリウム・水素駆動炉」という叫び声のところまで話すと、ジェスはすでに無言で口を大きく開けていた。外殻に「九島重工」の四文字が印字されていたと言うと、とうとう堪えきれずに息を呑んだ。


だが、ステーション内で私のデータが探られていて、私が氷晶の本当の出所へ通じる「ドアの取っ手」として見られている、という話まで進むと、部屋の空気は本当に変わった。


気軽さは気軽さとして、ゴシップはゴシップとして楽しめばいい。 だが、氷晶の出所を辿って雪風の背後を探ろうとする者が現れた時点で、それはもうステーション内の闇市トークではない。実質的なリスクの拡大だ。


私が最後の一言を言い終えると、部屋の中は二秒ほど静まり返った。


そして、アッシュが最初に問うたのは、駆動炉についてではなかった。


「最初に動いたのはどこだ?」


私は虚を突かれた。 「え?」 「氷晶の出所に異常な関心を示したライン」彼は私を見た。声は平坦だ。「一番最初に、あからさまにその方向へ舵を切ったのは、どちら側だ?」


少し考え、素早く答えた。「レジャーの側から先に漏れ出てきた。その後でキャプテン・ハックのラインが乗ってきた。親方は今は表向き抑えているけど、知らないわけじゃないと思う」


アッシュは頷いた。 「よし。それなら順序は合っている」 「順序が合ってるって、どういうこと?」ジェスが問う。 「つまり」アッシュはステーション内の勢力略図を投影板に出した。「ハイエナの群れが一斉に匂いを嗅ぎつけたわけじゃない。帳場と上層部が先に、氷原の品が一度きりの素材ではないかもしれないと気づいて、その後で下の連中がつられて騒ぎ始めた、という構図だ」


指先で図の上の三点を叩く。


「親方の人間は表の窓口を担い、レジャーの人間は掘る価値があるかどうかを判断する。キャプテン・ハックのような外来の略奪船は、匂いを嗅いだら真っ先に食いつこうとする典型だ。つまり、ステーション側はまだ正式に我々に手を出してはいないが、我々を『金払いのいい客』から『追跡する価値のある供給ライン』へと再分類するかどうかの検討に入っている」


ジェスの口元が引きつった。 「配給表と壊れた水道管の悩みだけだった頃が、急に恋しくなってきた」


「懐かしむのは自由よ」真紀が言った。「でも同時に、氷晶の現存量と支払い約束済みの分をもう一度詰め直して」


ジェスはすぐに姿勢を正した。 「はい、副長」


私は投影板を見ながら、「ああ、これは本当に大事になってきたな」という感覚が、どんどん輪郭を帯びていくのを感じていた。そして真紀が、ようやく話題をあの駆動炉に戻した。


彼女は手を上げ、私が記憶してきた外観構造の特徴と、現場で目視したコネクタ位置を、簡単な記号でいくつか書き込んだ。


「あのヘリウム・水素駆動炉は、民生規格の出口品じゃない」と彼女。


アッシュが目を上げる。 「確かか?」 「八割以上」真紀の口調は平板だったが、彼女がこういう時に「八割」と言うのは、実際にはほぼ確定に近いことを私は知っている。「外殻のマーキング、メインコネクタの配列、サブノードの対称形式、どれも合わない。商船や一般的な辺境艦向けに作られたものじゃないわ。少なくとも、正規の流通ラインに乗るバージョンじゃない」


蘭がようやく通信台から振り向いた。 「軍規格ですか?」


真紀は一拍置いた。 「軍規格寄り、あるいはそれ以上に厄介な代物」彼女は言った。「試作型の流出か、特規ラインの品の可能性もある。いずれにせよ、キャプテン・ハックの船に積まれているべきものじゃないし、ローレンス修理廠のような場所で半ば公然と組み込まれているべきでもない」


私は腕を組んで傍らに立ち、思わず口を挟んだ。 「私は駆動炉のことは分からないけど、一つだけ分かることがある――あなたが『それ以上に厄介』って言うなら、それはもう単なる『いい代物』じゃないってこと」


真紀が私を一瞥した。 「今回の判断は間違っていないわ」


……副長殿には、たまにはこういう正面からの肯定を控えてほしい。 色々な意味で危険だ。


アッシュは私が一瞬軍人としての自覚を失いかけた心拍数など気にも留めず、最も現実的な層に切り込んだ。


「雪風に使えるか?」


この一言で、部屋の焦点が本当に核心へと絞られた。


これは闇市の見聞録でもなければ、ステーション内の情報でもない。どこかの海賊船が身の丈に合わない高級品を積んでいる、という話でもない。 問われているのは――あの心臓を奪い取り、自分たちの胸に埋め込むかどうかだ。


真紀はすぐには答えなかった。 彼女は別の投影板の前に移動し、雪風の現行メイン反応炉システムの略図を引き出した。その図を見ると頭が痛くなる。線が多すぎ、注記が密集しすぎていて、あちこちにこの老艦らしい「死んでいるように見えて、実はただ意地を張っているだけ」という気質が反映されているせいだ。


彼女はいくつかのノードを指し示した。


「理論上、雪風の今の旧式核融合反応炉はまだ持たせられる」彼女は言った。「五日間なら問題ない。次に殴られても、その場で即死するとは限らない。でも、限界はもう明白よ。メイン出力は古く、熱効率は低く、瞬時推力の応答も鈍い。多くの新型モジュールは、外付けアダプターと妥協でどうにか互換させている状態」


アッシュが淡々と口を挟む。 「人間の言葉に翻訳してくれ」


「人間の言葉に翻訳すると」真紀は静かに言った。「雪風の今の心臓は、まだ動いてる。でも老いていて、遅い」


私は吹き出しそうになった。 ジェスも下を向いて咳払いをした。おそらく笑いを堪えているのだろう。


真紀は私たちを無視して続けた。


「あのヘリウム・水素駆動炉の規格が十分に近く、キャプテン・ハックたちに内部を滅茶苦茶にされていなければ、理論上は代替案になり得る。ただ差し込めば光って熱を放つような単純な話じゃなく、コネクタの全面的な再配列、出力の安定化、冷却システムの再構築、場合によってはメインエネルギーの配分ロジックまで書き換える必要があるかもしれない」


彼女は一拍置いた。


「でも、もし形になれば、雪風の推進応答、エネルギー効率、戦術機動の限界は、今よりずっと見栄えが良くなる」


私はその反応炉の接続図を見つめていた。頭では半分しか理解できていなかったが、胸の奥は、その可能性に向けてひそかに熱を帯び始めていた。


急に工学の天才になったからではない。 真紀の口から出る「ずっと見栄えが良くなる」という言葉が、通常のレベルのアップグレードを意味しないことを、よく知っているからだ。 まだ噛みつける老いた獣が、より鋭い牙を新たに生やし始めた老いた獣に変わる。そういう話だ。


ここでアッシュはようやく背もたれに寄りかかり、机の上で両手を組んだ。 「よし。技術的な価値は成立した」彼は言った。「なら、次は手段の問題だ」


私はすぐに続けた。 「買うか、盗むか、奪うか、それとも向こうが勝手に不運に見舞われるのを待つか」


ジェスが顔を上げてこちらを見た。 「その分類法、前線の美学があるわね」 「ありがとう。最近闇市で研修中だから」


アッシュは私の無駄話を無視し、直接三つの線を出した。


「第一に、ステーション内で公然と手を出すことはできない」彼は言った。「我々があの炉に過剰な関心を示した瞬間、親方も、レジャーも、帳簿烏も、マザー・アイアンまでもが、我々の支払い能力と本当の必要性を即座に見直す。価格が倍になるどころではない。ローレンス修理廠全体が我々を注視し始める」


真紀が頷いた。 「同意する」


「第二に、今は買えない」アッシュが続けた。


私は眉を上げた。 「そこまではっきりと?」 「今買うということは、我々がそれを必要としていると認めることになるからだ」彼は私を見た。「キャプテン・ハックが、雪風は『いい物を見て少し心が動いた』のではなく『本気でメイン反応炉のすげ替えに使うつもりだ』と知った瞬間、彼はもう海賊ではなくなる。即座にオークションの司会者に早変わりする」


……忌々しいほど的確な比喩だ。 ジェスが小声で付け加えた。 「しかも、値を吊り上げるのがやたら上手い最悪の司会者に」


「その通りだ」アッシュが言った。「第三に、ステーション内ではもう氷晶の出所を探る動きが始まっている。つまり我々には、ゆっくり芝居をしている時間があまりない。キャプテン・ハックがそれに気づけば、出港を早める可能性も高い」


蘭がその時、更新されたばかりの係留動態図をメインスクリーンに切り替えた。 「可能性ではありません」彼女は言った。「現在進行形です」


私たちは全員そちらを見た。 蘭は灰赤色にマークされた一つの係留区画を点灯させた。


「キャプテン・ハックの略奪船が、十五分前に追加の出航前補給を申請しました」彼女は言う。「高密度燃料カートリッジ、外部冷却液、武装区画の検査権限延長、それに短距離航路のクリアランス要求です」


私の喉が締まった。 「前倒しで出る気だ」 「そう」蘭が言った。


アッシュの目が、一段深く沈んだ。焦りではない。「よし、駒が動き始めたな」という種類の沈み方だ。


「雪風の第一段階修復が完了するまで、あとどれくらいだ?」彼は問う。


答えたのはアカリだった。ちょうどドアを押して入ってきたところで、手には取り外した配線板と新しい報告書を持ち、表情はいつもの通り、「この世界の設計は根本的にクソだ」と言いたげだった。


「あなたが欲しいのが『出港できて、戦えるが、見栄えは期待するな』という状態なら」アカリは報告書をテーブルに投げた。「十四時間後」


彼女はいくつかの項目を指差した。


「外板の再封鎖は七割八分。残りの穴は局所的な応急装甲で補える。二次配電幹線は八割二分回復、水循環は八割六分、機関冷却回路は九割一分。火器管制の外層校正がまだ少し足りないけど、帝国の一般的な巡防艦相手なら問題ない。CICは相変わらず死んでる。夢を見るな。メイン反応炉は相変わらず、あの古くて頑固な核融合の骨だけど、少なくとも今は咳をしただけで部品が落ちるようなことはない」


私は思わず感嘆した。 「あなたの報告スタイル、真紀に似てきたわね」 「いいえ」アカリは言った。「彼女は氷に近い。私はただ包装するのが面倒なだけ」


真紀は彼女を見もせず、要点だけを尋ねた。 「零式は?」


この一言に、私の心臓が微かに跳ねた。 彼女が何を尋ねているのか、分かっていた。 普通の艦載機のことではない。入港以来、正式にはずっと口にせず、しかし最初から後の切り札として温存されてきた、あの改修強偵察零式のことだ。


アカリは別のステータスバーを引き出した。 「機体外殻の補修完了。サイレントパッケージの更新は六割完了。センサーモジュールは校正済み。短時間高推力モードは使用可能。あとは古い姿勢制御ノズル二組の洗浄と再封鎖が残っているだけ」彼女は少し間を置き、真紀を見た。「『飛べるか』を聞いているなら、九時間後には飛べる」


私の背中が熱くなった。 よし。 意味はもう十分に伝わった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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